いつの日か西方に行けると信じて。

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東方幻想郷~時間の西方~

幻想郷のいつの日かの事。歯車の幾つかが交換された。

傍観者は語る。我々は死後、西方に旅立つという。では、悠久の時には西方は訪れるのだろうかと。回る、廻る、巡る。歯車が回る。喜怒哀楽を奏でながら。カタカタ、カタカタと時を刻む。時を刻めなくなったそれは西方へ旅立つ。

歯車はさぞかし嘆く。私がいなければ時は刻めぬと。カタカタ、カタカタと時を刻む。

ある日、メイドさんが死んだ。家族同然の者たちに看取られ旅立った。双方は嘆く。君が居なければ生きて行けぬと。彼女の寿命が悠久なら家族の寿命はなんだというのだ。「無限」と言えるかも知れない。悠久の時を刻んだ歯車は時間の西方へと向かう。無限の者は何時までも西方へは辿り着けない。そして時は回り、廻る。彼女の懐中時計が時を刻む。何時までも刻む。狂いながら、確実に。彼女はまだ、西方には行けそうにない。

ある日、現人神が死んだ。神々に看取られ死んでいった。彼女は神になることを拒んだ。燃料の事など気にせずひた走る機関車の様に生きていた。多くの人々が君を無くしては生きて行けぬとわめく。乾と坤の神々は娘を再び神と祀った。如何やら世間は可愛い娘を旅立たせるには惜しいらしい。可愛い子には旅をさせよとはよく言ったものだが、それは受け入れらないという事だろうか。

ある日、魔法使いが死んだ。二人の友を残して。

誰よりも勤勉で健康な君が死ぬことを誰もが恐れ、忘れていた。必ず明日が有る事を信じて皆、眠った。そのまま時は止まったのだ。彼女だけ。

多くの屍の上を歩いてきた三人だが、いざ、仲間の屍が足元に有るとなるとそれは受け入れがたい真実となる。けれども今日もその屍の山を乗り越え生き延びる。しかし、愛しい人を失った二人の人生は生き永らえるとしか言えない。二人にはまだ西方は遠い。

ある日、先代の巫女が死んだ。最後の最後に死んだ。けれども時は回り、廻る。多くが嘆き、悲しむ。幻想郷は雨模様。降り続く雨は嘆きを生む。だが、誰かが西方の空を眺める。その空は大群青の空だった。降り続けた雨は大地を潤すが、時を流す。大地に沁み込んだ記憶さえも流す。流れた記憶はいずれ大河となり今の大地を削る土砂流。そしてそれすらも大群青の海と空に成る。群青の空からコウノトリがやって来た。三匹やって来た。如何やら欠けた歯車を補給する為らしい。こうして人々は亡き人を忘れ、新たな生を祝う。死が有る限り生の充足が保たれる。今日の東方も平和であった。


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