EVA マヤとシンジの愛の劇場   作:風都水都

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保護者に立候補させていただきます

シンジと一緒に過ごしたマンション。

 

「じゃあ、荷物は後で送っておくから……」

 

シンジを玄関まで送り出したミサトは、そう告げた。

 

「はい、ミサトさん。今までお世話になりました」

 

シンジはペコリと一礼した。

少年の表情は少し(さび)しげで、その眼はかすかに(うる)んでいた。

突然の別居。シンジは驚いたが、それが本部からの命令であり、前回の出撃の遅れが原因である事を知ると

 

「そうですね……」

 

納得したように(うなず)いた。

遅れるどころか、自分は綾波を見殺しにし、逃げようとしていたのだ。

自分は、もっとネルフの身近で保護……いや、監視される生活を送った方がいい。

顔を上げる。途端に、瞳をおおっていた湿り気が、小さな(かたまり)となって目尻から(こぼ)れ落ち掛ける。

シンジは慌てて顔を()せた。

 

「じゃ、じゃあ、失礼します」

 

「あ、それとシンちゃん……ちょっと待って」

 

靴を()こうとすると、急にミサトはシンジの手を取った。

そして、

 

「最後に……」

 

両手でシンジの頬に触れるミサト。指先に、冷たい(しずく)の跡を感じる。

 

涙を(さと)られたと思ったシンジは、少し顔を赤らめた。だが、次のミサトの言葉に、さらに赤面する。

 

「また、キスしちゃおっか……?」

 

ニッコリと微笑んで、ミサトは唇を近づけた。

 

「ちょ、ちょっと……ミサトさん!」

 

慌ててシンジはミサトの手を振り払った。真っ赤になった顔を()らす。

 

「あら、シンちゃん恥ずかしいんだ~?」

 

「もう、知りません!」

 

シンジは逃げるように玄関を出たのだった。扉を閉じる寸前に、隙間(すきま)から「そ、それじゃ、ミサトさん。またネルフで……」とだけ言葉を残して。

 

扉が閉まると、ミサトは微笑んだ。

 

「さようなら……シンちゃん」

 

これでいい。辛気臭(しんきくさ)い別れなんて、よけい(さび)しくなるだけ。

明日、またネルフであった時も、少しからかって上げよう。

うん……。私が、シンちゃんを「ちゃん」付けで呼ぶのを止め、上官と部下として割り切れるようになる前に、もう少しだけ、からかって上げよう……。

 

ミサトはリビングに戻った。

リビングには、大小の段ボール箱が並んでいた。全てシンジの荷物だ。

 

「それにしても……シンちゃんの荷物、気づかない内に結構増えたものね」

 

シンジの洋服に、学校の教材、ノートパソコン、雑誌……。詰めてゆく内に、段ボール箱が六つも出来ていた。

 

「シンちゃんが始めて来た時は、三つだけだったわよね……」

 

シンジがミサトのマンションに来た時、届いていた荷物は、たった二箱の段ボール箱と、包装紙に包まれたチェロだけだった。

 

一つ目の段ボールの中は、シンジの衣服と学生服。

二つ目の段ボールの中は、教科書と参考書。そして、今どき珍しいカセット式のウォークマンと、わずかな小物だけだった。

 

漫画やゲームといった子供らしい物は何もなく、少年の趣味をうかがい知れるような物は何も無かった。

前の保護者は何も買い与えてくれなかったのかと、ミサトは思った。だが、その事を食事の席で(たず)ねた時、少年はいった。

 

「余計な物は、全部置いてきました。新しい日常に、以前の物は、あんまり持ち込みたくなかったんです」

 

それがどういう意味なのか、ミサトにはよく分からなかった。

 

家電製品と書かれた段ボールの一つに触れる。

中には、ミサトが買って上げた小型のオーディオが入っている。

以前、シンジをショッピングに連れて行った時、荷物持ちのお礼として買って上げた物だ。いや、荷物持ちのお礼と称して、プレゼントした物だ。

 

「よく考えたら、携帯も、オーディオも、服も……増えた荷物のほとんどは私が買っちゃったのよね」

 

ミサトは苦笑した。

 

「まだ一ヶ月も経たないのに、こんなに男の子に(みつ)いじゃうなんて、私もダメな女ね」

 

使徒・サキエルを撃退した日から三週間、使徒・シャムシエルを倒してから二週間強。

二人の同居生活は、たったそれだけの期間に過ぎなかった。だが、ミサトとシンジに取っては、忘れ難い長い長い日々だった。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「ここにシンジ君が住むんですか……」

 

「いや、取り合えずって事らしいよ、マヤちゃん。新しい保護者が見付からないようなら、学生向きのもう少し増しな部屋を用意するって、赤木博士が言ってたよ」

 

当直の職員が寝泊りする仮眠室。

そこを覗き込むマヤに、日向は説明した。

 

「良い保護者が見付かるといいですね。あの年で、独りぼっちで暮らすなんて、ちょっと可愛そうです」

 

「そ、だねえ……」

 

シンジがミサトの元を離れる原因を作った張本人だけあって、日向は少しバツの悪そうな顔をした。

 

マヤは、日向と分かれると、トコトコと技術局の方に向った。

 

「さてと、資料の整理でもしようかしら」

 

テラスに面した廊下に差し掛かる。ジオフロントの内部を照らす青い明かりが、廊下に淡く差し込んでいる。

 

ふと、マヤは足を止めた。

テラスで、ジオフロントの風景を眺める、学生服姿の一人の少年。

マヤは黙ってテラスに出ると、少年の横に並んだ。

 

「シンジ君?」

 

テラスの(ふち)に寄り掛かり、何気なく風景を眺めていたシンジは、名を呼ばれ、隣を振り返った。

 

「あ、マヤさん……」

 

「何しているの?」

 

「いえ、何となくテラスに出たら、そよ風が感じられたものですから……地下空間なのに、風が吹くなんて不思議だなって思って」

 

「あら、ほんとうね。今まで気づかなかったわ」

 

シンジと同じように縁に寄り掛かって風を感じる。

 

「シンジ君、私のフルネーム覚えてくれた?」

 

「伊吹マヤ……さんですよね」

 

「そう、碇シンジ君。技術局一課所属、二尉、伊吹マヤよ」

 

マヤは、ニッコリと微笑んだ。

 

「ねえ、シンジ君。ここに来てから一ヶ月近く経つけど、まだ名前覚えてない人だとか、まだ分からない事とか、結構あるんじゃない?」

 

マヤの言葉に、シンジは少しためらってから(うなず)く。

 

「それに……訓練中の時だって、葛城さんや先輩がいう専門用語が良く分からないまま、結構、返事しちゃってない?」

 

見透かされ、シンジは再び(うなず)いた。

 

「やっぱりね、私もそうだったんだ……。初めてここに来た時、先輩以外の名前を覚えるのがすごく苦手で……ろくに他の人とお(おしゃべ)りしなかったせいだけど……同僚全員の名前を覚えるだけでも何ヶ月も掛かっちゃったの」

 

意外と心地よいそよ風に、マヤは少し伸びをした。

 

「いつも分かったような顔して、今更(いまさら)聞けないような事も沢山あって……ちょっと苦労したわ」

 

「そうなんですか」

 

「シンジ君も、ウカウカしてたら、分からないまま月日を送っちゃうわよ。分からない事だとか、今更聞けない事とか、遠慮なく私に聞いてくれるといいわ」

 

「ありがとうございます……じゃあ、時間がある時にお願いします。本当に分からない事が多くて……」

 

「シンジ君は、今、忙しい?」

 

「いえ、今日は何も……」

 

マヤは、テラスの胸元の高さまである柵に寄り掛かった。柵の上に肘を乗せ、頬杖をつくと、心地よい風が、マヤの柔らかい髪をなでて行く。

 

「本当に気持ちいいわね。ほら、シンジ君も」

 

シンジも、マヤの隣に寄り掛かる。

 

「ちょうど、手持ち無沙汰(ぶさた)だったの……今からでもいいから、何でも聞いて。ゆっくりお話ししましょう」

 

「はい」

 

シンジは恥ずかしそうな様子で、今まで分からないままにしていた事を、一つ一つ、マヤに尋ね始めた。

いつも皆が口にする『シンクロ率』について。

訓練中に投げ掛けられる、軍事用語の意味について。

階級の違いが理解できず、誰がどの程度の地位の人なのか、良く分かっていない事も。

 

一つ一つの疑問に、丁寧に答えてくれるマヤの言葉を聞きながら、シンジはふと思った。

 

(そういえば、ミサトさんと一緒に暮らしてたのに……ミサトさんから聞こうとした事なんて、一度もなかったな……)

 

なぜか、同居中はほとんど仕事の話をしなかった。ミサトさんの方が、わざと()けていたように思える。

保護者として、少年との生活の中に、仕事を持ち込むまいと決めていたのかも知れない。

 

「でも、階級と役職は違うものなのよ。役職はあくまで命令系統上の……つまり隊長とか本部長とか、そういう地位の事ね。

対して階級は……少なくともネルフでは、その能力と功績に応じて与えられる『印』みたいなものかしら。お給料の額も役職じゃなくて、階級に応じるの。

役職に空席が出来た時なんかは、その役職に相応しい階級の人から選ばれるのよ。ああ、でも例外もあるわね。葛城さんなんかは、一尉に過ぎないのに、作戦本部長を勤めちゃってるから」

 

そこまで話した時、マヤは言葉を止めた。

すぐ隣で、熱心にマヤの説明を聞く少年。あどけない、まだ14歳の少年の顔。だが、そこには確かに司令の血をうかがわせるものがあった。

雰囲気こそ違うが、確かに似ている。

 

「ねえ、シンジ君……こんな事を聞くのも変だけど」

 

少し躊躇(ちゅうちょ)してから続ける。

 

「シンジ君って、お父さんの事が余り好きじゃなかったわよね……でも、どうして、ネルフに来たのかしら?」

 

シンジは、マヤからジオフロントの風景に視線を()らすと、どこを見つめる訳でもなく、柵の上に腕を組んで、深々ともたれかかった。

 

目を閉じ、ポツリとつぶやく様に応える。

 

「……変わりたかったんです」

 

「変わりたかった……?」

 

シンジは(うなず)いた。

 

「ボク、向こうにいた時は、自分の夢だとか、そういうものが何も無くて……ただ、先生に与えられた事を繰り返すだけの毎日を送ってたんです。あ、先生っていうのはお世話になっていた伯父さんの事です」

 

シンジは、伯父が音楽家である事と、その伯父からチェロを習っていた事を話した。そして、一時期はチェロの奏者を夢見、途中で諦めた事も。

 

「学校が終わったら、家でチェロのレッスン。毎日毎日その繰り返し。お陰で、気づけば趣味だとか親しい友達だとか、自分には何も無くて……ずっと、このまま同じ日常を送って、目標も無しに何となく大学に進んで、何となく就職するのかと思うと……何だか(むな)しかったんです」

 

人生に(むな)しさを感じる……まるで退屈な日常を送る大人が言いそうなセリフ。でも、こんな小さな子供でも、そんなふうな感情を抱いていた。

 

「中学に入ったら、少しは変われるかと思ってました。ほら、漫画だとかTVに出てる中学校って、不良だとか恋愛だとかいろいろあるじゃないですか……。そういうのを期待してたんです。でも、実際に入ってみたら、子供の人口が少ないせいで同級生はみんな同じ顔ぶれで……」

 

シンジは、寄り掛かっていた柵から起き上がると、自分の学生服に視線を落とした。

 

「変わったのは、制服くらいでした」

「そんな時に、お父さんから呼び出しの手紙が届いた」

 

マヤの言葉にシンジはうなずく。

 

「ボクをほったらかしにしていた父さんの事は、好きじゃありませんでした。別に、父さんの事を怨んでたってワケじゃないんです。でも、ずっと連絡もくれなかった父さんが、突然、ボクを呼び出した時は「今更」って思えて、すっごく腹が立って……。だけど、同時に思ったんです。あ、明日から違う日常が始まるんだって……だから、ここに来る気になったんです」

 

シンジは、ジオフロントの風景に視線を戻した。

 

「平凡な日常が、少しは変わると思ってたんです……でも」

「でも、ただの子供からエヴァのパイロットなんて、変わり過ぎよね」

 

シンジは「自分の心は何も変わらなかった」というつもりだったが、後を取ったマヤの言葉に、少し苦笑した。

 

確かに、ただの中学生が、急に世界の運命を(にな)う機関に所属し、ただチェロを弾く事しか能がなかった少年が、エヴァのパイロットに変わったのだ。

マヤの言う通り、変わりすぎだろう。

シンジは素直に(うなず)いた。

 

「ふ~ん、そっか……そういう事だったんだ。じゃあ、私と一緒ね」

 

「マヤさんも?」

 

「うん、ここに来る前は、私も毎日、同じことの繰り返しだったわ……」

 

マヤは、(なつ)かしそうに自分の過去を話し出した。

 

この時代は、セカンドインパクトで親を失ってしまった人は珍しくは無かった。葛城ミサトも、そして、マヤも同じだった。

父親の手で育ててもらったマヤは、高校に入学すると、それを契機(けいき)に独り暮らしを始めた。別に、親元を離れて自由になりたかったワケじゃない。

意中の人がいながら娘に遠慮して、父が再婚を()けている事が分かったからだ。

 

父には、学費も生活費も、自分の特技……プログラミングのバイトで稼ぐから、仕送りはいらないといった。そして、大学に進学してからは、そのまま実家には戻らずに、第三新東京で仕事を見つけて就職するつもりだと告げておいた。

 

独り暮らしを始めてからは、大した趣味も気の合う友達もできず、学校以外では、2DKのマンションの一室で、PCに向き合って過ごす日々を送っていた。

 

「大学に進学しても、別に目的とか無くって……そのうち学校にも余り通わなくなって、毎日、ディスプレイの前に座ってばかりいたわ。毎日、どこかのサイトに侵入したりとか、ちょっと悪戯もしちゃって……それで名が知られてくると、少し調子に乗っちゃって」

 

余計な部分は曖昧(あいまい)(にご)しながら、マヤは続ける。

 

「自分の悪戯がちょっとした騒動を起こしたり、名前が有名になったりすれば、その時は嬉しかったけど……別にそこから何か得られるって訳じゃなくて……。ほら、名前が知られるって言っても、WEB上に存在するハンドルネームが、『架空の私』が、有名になるだけだし」

 

マヤは当時の事を思い返し、溜め息を付いた。

 

「PCから離れて現実に戻った時、そこにいるのは、ただの可愛い女子大生。将来の目標もなく、何となく生きているだけの、ごく有り触れた……まあ、そこらの子よりは可愛い……女子大生。今から思うと、その現実を否定したくて、あれほどWEBの世界にどっぷりと浸かってたのかも知れないわ」

 

マヤは自嘲(じちょう)した。

 

「でも、おかしな話よね。そんな現実逃避に走るからこそ、同じ日常の繰り返しになって、余計に(むな)しくなるだけなのに……」

 

そのマヤの言葉に、シンジも自分を振り返った。

 

(そういえば……なんでチェロを続けてたんだろう……?)

 

チェロのレッスンを(おこた)らなかったのは、先生の命令だったから?今まで、そう思っていた。

けれども良く考えれば、周囲の大人たちから投げ掛けられるわずかな()め言葉が欲しくて、続けていたといえるかも知れない。

 

それにチェロの音色に(ひた)っている時は、余計な感情にとらわれる事はなかった。少なくとも、(むな)しさを忘れる事ができた。

web上で騒動を起し、名前が知られる事が嬉しかったというマヤ。虚しい現実を忘れる為に、PCを続けていたというマヤ。

同じじゃないか……。

 

マヤがさっき言った言葉

『でも、おかしな話よね。そんな現実逃避に走るからこそ、同じ日常の繰り返しになって、余計に虚しくなるだけなのにね……』

 

ボクだってそうだ。

変わりたいと思いながら、平凡な日常を忘れる為にチェロを弾き続け、自ら同じ事を繰り返していた。

 

 

「でも、そんなときに偶然、先輩と出会ったの……先輩と初めて会った時、先輩は私にネルフへの推薦状を書いてくれたわ。その時、私もシンジ君みたいに思ったの、『明日から違う日々が始まるんだ』って……」

 

「そうだったんですか……それでマヤさんも変われたんですね」

 

だが、マヤは首を振った。

 

「変わったかも知れないけど、良く分からないわ。

初めてネルフに来た時、私は、シンジ君と同じで他人と話すのが苦手で……。今でこそ、同僚の前では堂々と話せるようになったけど……司令の前だとか他の部署の人の前では、以前のままなの。

昔よりも友達だって増えたし、趣味だって出来たけど、自分自身はそんなに変われたとは思えないわ。時たま、形が違うだけで、また同じ日常を繰り返しているだけじゃないかって思える事も」

 

「それはボクも同じです。ボクは、普通の中学生からエヴァのパイロットになったけど、それは環境が変わっただけだって思えるんです。

その中で生きる自分は、本当に以前とは違う自分になれたのか……ただ命令されるままチェロを弾いていた日々が、今度は、ただ命令されるままにエヴァを操縦する日々に変わっただけじゃないかって……そう思えるんです」

 

「あら、チェロを弾く日々と世界の為に使徒と戦う日々じゃ、ずい分と違うと思うけど」

 

「でも、マヤさんだって、PCに向き合う日々から世界の為に活躍する日々に変わったのに、自分は変われたって実感が湧かないんですよね」

 

マヤは苦笑した。

 

「そうね、確かにそうだわ……私とシンジ君は同じね」

 

ふと、マヤは先輩の言葉を思い出した。

 

『それにしても良く似ているわね』

 

オートウォールで、シンジらとすれ違った時に、先輩が言った台詞。

 

(そっか……先輩の言ったことって、そういう事だったんだ……)

 

マヤは、何か思いついたらしく、ポンと手を叩いた。

 

「よおし、決めた!」

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「という訳で先輩。不詳・伊吹マヤ。保護者に立候補させていただきます!」

 

何かの書類に目を通すリツコ。

突然やってきたマヤが、自分のマンションがネルフに近い事や、ネルフでは自分が最も少年と親しい事などを言い立てても、彼女は、終始黙って聞いているだけだった。

だが、シンジの保護者に立候補すると宣言した所で、彼女はチラリとマヤを一瞥(いちべつ)した。

そして、

 

「そう、じゃあ、お願いするわ」

 

アッサリと許可してしまった。

 

「え……あの、いいんですか?」

 

余りにも簡単に許可が下りた為、マヤは拍子(ひょうし)抜けた。

 

「シンジ君の荷物の送り先は、既にアナタのマンションに指定してあるのよ。アナタをどう説得しようかと思ってたんだけど、ちょうど良かったわ」

 

何と、リツコは、初めからマヤに頼むつもりだったらしい。

リツコは、目を通していた書類をデスクにおいた。そして、(さと)すような顔で、マヤの肩に手をおく。

 

「だって、アナタたち二人は……」

 

「似た者同士ですものね」

 

かつては不服そうな表情で否定したマヤが、笑顔で認めるのを見ると、リツコは満足げに(うなず)いたのだった。




■後書き■

また番外入れます。

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