EVA マヤとシンジの愛の劇場   作:風都水都

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第一話目の位置に、「登場人物紹介」をぶち込んだ為、皆様のブックマークの位置がずれてしまいました。ごめんなさい。(´・ω・`)


マヤさん不潔です(1)

「はい、あなたのログは削除削除~」

 

リビングのテーブルに、マヤは二台のノートパソコンを並べていた。

削除削除とつぶやきながら、右手で右のノートパソコンを操作し、

 

 

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萌えウサ:お腹空いた~。(´・ω・`)

 

トリトン:最近、ご飯前に、おかしばっか食べてる~

 

ミンメイ:太るわよ~

 

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左手では、左のノートパソコンを使って『エヴァ・レボリューション ファン倶楽部』のチャットに興じていた。

 

「あら、追跡受けてるじゃない。遮断遮断~」

 

右手でまた何か操作する。

マヤが右のノートパソコンで行っているのは、torrentで違法ダウンロードしているユーザーたちの救済活動だった。

キモオタたちが、torrentでエロゲーを幾ら落としてもパクられないのは、日夜繰り返されるマヤの慈善活動のお陰である。

 

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トリトン:萌えウサさん、これからご飯作るの?

 

萌えウサ:ううん、今日はシン・ショタが作ってくれてる~(*´ω`*)

 

ミンメイ:チャットしてる間に、ショタがお夕食作ってくれるって、どこのラノベよ

 

萌えウサ:ふふふ、うらやましいかあ~(´▽`)

 

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マヤはキーを打ちながら、キッチンで夕食の準備をしているシンジに視線を移した。水色のエプロンを羽織(はお)った少年の後ろ姿が見える。

マヤが仕事をしていると思い込んでいるシンジは、今日はボク一人でやりますと張り切ってくれていた。手ごねハンバーグに火を通しつつ、焦げ付かないようクリームシチューの鍋をかき混ぜている。

 

マヤは、ジッと、その後ろ姿を眺めた。

視線をディスプレイから()らそうが、会話しながらであろうが、常に両手の指でキーを打ちながら作業ができるマヤだったが、なぜか彼女の左右の手が止まってしまった。

 

左のノートパソコンの画面では、常連たちがチャットを続けていたが、右のノートパソコンの画面にはアラームがポップアップされた。しかし、マヤは対処せずに、シンジの方をボンヤリと見つめていた。

 

無言で立ち上がる。

 

クリームシチューをかき混ぜる手を止めると、シンジはハンバーグの焼き加減を確認した。串を指し、もれでる煮汁の色を見る。

 

(いい感じ。最後にもう一度裏返して……念の為、蓋をして少し蒸すかな)

 

シンジがフライパンに蓋をした時、ふと、誰かの手が肩に触れた。

ビクリと身体が反応し、驚いたが、同居人は一人だけなのだ。その白い手を見るまでもなくマヤだと分かった。

 

「マヤさん?」

 

シンジが振り返ると、マヤは慌てて顔をそむけた。

 

「どうしたんです。マヤさん?」

 

マヤはそむけた顔を見せようとしなかった。気付けば、シンジの肩に触れる手が小刻みに震えていた。

 

(マヤさん、もしかして泣いてる……!?)

 

「マヤさ……」

「ごめんなさい」

 

シンジがもう一度声を掛けようとした時、マヤは顔をそむけたまま言った。

 

「つい、シンジ君の後ろ姿を見てたら……死んだ弟の事を思い出しちゃって……」

「弟ですか……」

 

死別したマヤの弟……初耳だった。だが、15年前のセカンドインパクトで大勢の人々が不幸に見舞われたのだ。兄弟を失った人も決して珍しくはなかった。

 

(そうか……マヤさんも)

 

「ご、ごめんなさいね。急に感傷に(ひた)っちゃって……あ、ハンバーグ()げないように気を付けて」

 

マヤは一瞬だけかぶりを向けると、逃げるようにリビングへと戻ってしまった。

シンジは慌ててフライパンの蓋を外したが、マヤが見せた一瞬の表情を見逃さなかった。

 

(……やっぱり)

 

震える手。そして、一瞬見せた赤く染まった顔色。涙を必死にこらえている顔だった。

マヤに悲しい過去を思い出させない為にも、シンジは余計な事は言わない事にした。取り合えず、ご飯でお腹を満たせてあげよう。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

マヤは、紅潮した顔のままリビングに戻った。

 

(ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ)

 

ノートパソコンの前に座ると、胸の鼓動が静まらぬまま、チャットを続けた。

 

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萌えウサ:ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、マジやばかった。

 

トリトン:どったの?

 

萌えウサ:例のシン・ショタが、キッチンでお料理してくれてるのよ。

 

ミンメイ:何か事故った?

 

萌えウサ:私のハートが事故った。

 

ミンメイ:ホワイ?

 

萌えウサ:シン・ショタが、エプロン姿でお料理してるのよ。

 

トリトン:そりゃ、エプロンくらいするでしょ。

 

萌えウサ:その後ろ姿が可愛くて可愛くて、もう辛抱たまらんようになっちゃって……。

 

トリトン:萌え死んだ?

 

萌えウサ:気付いたら背後に歩み寄ってて、思わず抱きしめる所だった。

 

トリトン:コラコラ。

 

ミンメイ:通報した方がよろしいでしょうか?

 

トリトン:ってか未遂?

 

萌えウサ:肩に触れた瞬間気付かれたから、慌てて顔()せた。真っ赤かになってたと思う。

 

ミンメイ:変に思われなかった?

 

萌えウサ:死んだ弟の姿とダブったとか適当に言って誤魔化して逃げて参りました。

 

ミンメイ:萌えウサさん、弟いたの?

 

萌えウサ:うるわよ。脳内に百人くらい。

 

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まだ少し火照(ほて)っていた為、マヤはパタパタと手で顔を仰いだ。心を静めようと、息を吐きだす。

 

(大事な任務をはたさなきゃならないのに……こんな事くらいで興奮してちゃダメね)

 

マヤは、かたわらのミラーレスカメラに視線を落とした。

今日、碇司令から受けた任務の事を思い出す。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「本部技術開発部・技術局一課所属・伊吹マヤ二尉、参りました」

 

大きな扉の前で、敬礼して控える。

所属を名乗ったマヤは、緊張の面持ちで息を吐きだした。

扉の前を通り過ぎる事はあっても、くぐる機会は一度もなかった総司令室の入り口。それが今、その大口を左右に開き、自分を招き入れようとしている。

 

窓が閉じられているのか、それとも元々そんなものはない構造なのか。開け放たれた空間の中は、暗く、わずかなライトの灯りしかなかった。

 

「入りたまえ、伊吹二尉」

 

薄暗い空間の奥。デスクに鎮座する碇司令が告げると、マヤはゆっくりと足を踏み入れた。

背後で、音もなく扉が閉じる。

 

「し、失礼いたします……」

 

マヤは、奥のデスクに向って進んだ。しかし、数歩進んだ所で

 

「そこでいい」

 

碇司令に制された。

戸惑(とまど)うマヤの前に、デスクとチェアが、床からスライドして浮上する。

 

「掛けたまえ」

「は、はい……。失礼いたします」

 

二人の席が、三メートルほどの距離を挟んで向かい合う。手を組んだままマヤを見据える碇司令と、緊張の面持ちで視線をちらちらと()らすマヤの間で、しばし静寂が支配した。

 

(な、なんの用事で呼ばれたのかしら?)

 

たった一人で総司令室に来るようにと言われたマヤは、心当たりを探った。

過去に、マギにウィルスを仕込んだ件がバレたのか、それともブラディーエンジェルである事がバレたのか、それとも……。

 

(逆に、能力が認められて昇進という可能性も)

 

朗報への期待も浮かんだが、碇司令の気難しそうな表情を見ただけで霧散した。

 

「伊吹二尉」

「は、はい」

 

碇司令は自分のデスクに触れた。何かがデスク上にスライドして現れる。

コーヒーカップだった。

 

「机の右のパネルに触れたまえ。好きな飲み物が出せる」

 

デスクを確認すると、確かにカップのアイコンが並んだパネルがあった。マヤは取り合えずココアを出した。

 

「緊張せずに一服して落ち着きたまえ」

「は、はい」

 

碇司令がコーヒーを口に付けると、マヤも習ってココアを少しすすった。

二人の間に、しばしの沈黙がただよう。

緊張から、マヤが再び口を付けようとした時、

 

「実は君に、重要な任務がある」

 

碇司令の言葉に、マヤは慌ててコップから手を離した。

 

「じゅ、重要な任務ですか?」

「極秘事項だ。これからいう事は、他言無用だ」

「は、はい……」

 

極秘任務と聞いて、マヤは、かつてブラッディーエンジェルとして世界中の政府機関を荒らし回っていた時の事を思い出した。碇司令は、一体、どこに潜入させようというのだろうか。

 

「君は、サードチルドレンの保護者を務めているな」

「はい」

「サードチルドレンのデータ取集が任務だ」

「はい?」

 

碇司令の言葉は、予想外のものだった。

 

「シン……いえ、サードチルドレンのデータなら、毎日、司令所のテストで収集していますが?」

「司令所で得られるデータだけでは不足だ」

 

碇司令はマヤの言葉を否定すると、デスクのパネルを操作し、碇シンジのホログラムを二人の前に映し出した。

 

「電極につなぎ、脳波を測定し、各種のシュミレーションに掛け、定期的な臨床検査を行った所で、得られる情報には限界がある」

 

碇シンジのホログラムがゆっくりと回転する。

 

「もっと身近で、その言動、思考、表情を観察できる者にしか分からぬ情報というものがある……私は、その情報こそが、エヴァとチルドレンたちを繋ぐ重要なキーワードになり得ると考えている」

 

碇司令はホログラムを消すと、またパネルを操作した。マヤのデスクの中央がスライドし、内部から何かがせり出してきた。

 

「……カメラ?」

「ネルフで開発したコンパクト・ミラーレスカメラだ」

 

碇司令は椅子の背もたれに身体を(あず)けると、椅子を真横に回転させ、明後日(あさって)の方を向きながら極秘指令を告げた。

 

「そのカメラを君に与えよう。まずは、サードチルドレンの日常生活と喜怒哀楽の表情を被写体に納めたまえ」

 

コーヒーを手に取り、口を付ける。

 

「その他、サードチルドレンの学校生活、交友関係、日常の出来事、何某(なにがし)かのイベント……それらを毎週報告したまえ」

 

すました顔で任務を与える碇司令に、マヤは小首をかしげた。

 

「あのう、要するに……」

 

少し躊躇(ためら)ってから言ってしまう。

 

「息子が元気にしてるか、定期的に報告しろって事でよろしいでしょうか?」

 

碇ゲンドウは、盛大にむせた。

 

「あくまでパイロットのデータ収集だ!」

 

さらに咳込み、吹き出したコーヒーをハンカチで拭きながら念を押す。

 

「極秘任務ゆえ他言無用……あと、写真はなるべくクローズアップでな……」

 

 

 

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