都合の良い世界   作:茶ダックス

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『結城友奈は勇者である』の二次創作を書くのは初めてです......大丈夫かな?


始まりの忘却

ヒロインの危機には主人公が現れる。

 

ピンチには覚醒する。

 

何故かその場に必要な物を持ち合わせている。

 

事件の証拠を馬鹿な友人が偶然見つける。

 

違和感ゴリゴリの主人公補正。

 

 

―――人は "それ" を『ご都合主義』と称する。

 

 

『汝は何を望む』

 

問われる。

 

一度終わりを迎えた人生。確かに覚えているのは体から赤黒い血が止まることなく溢れる光景。人生で一度きりであり、最後の記憶ともなる明確な『死』だ。

 

『―――次の人生、汝は何を願う』

 

問われる。

 

死の瞬間から何秒、何分、何時間経ったのかも分からない。でも、そこは確実な死後だった。真っ白な世界で、青年は死と生の気配を濃密に感じる。

 

神様に願った。もしも、作中の彼女らを助けられるのならば―――無力な自分には『ご都合主義』が必要だと。

 

『そうか...最強の力よりも―――理不尽なチートよりも "それ" を望むのだな。自分で運命を創る道よりも、身を削って紡ぐ物語を―――』

 

「...はい」

 

真っ白な世界で、青年は老人の問いに短く答える。

 

『お前の言う、『ご都合主義』は可能性でしかない。絶体絶命の危機で覚醒を成すかもしれない。確かに凄まじい能力だとも言える。―――だが、これは "かもしれない" だ。その事を理解しているのか?』

 

「...はい、俺の言う『ご都合主義』はほんの少ししかない『可能性』を少しだけ手繰り寄せるだけの能力なんですよね。ピンチには死ぬ "かもしれない" 。ヒロインの危機にすら気が付かない "かもしれない" 。そんな不安定な力」

 

青年の望む『力』は最強にも最弱にもなり得る。

 

―――青年はこう思う。

 

この『力』は可能性を生む能力ではないかと。

 

普通に考えよう。漫画やアニメで有り触れているピンチ時の覚醒とは、果たして簡単に出来るものなのだろうか?

 

――否、そんな筈がない。

 

もしも、彼ら彼女らが覚醒を果たしたとしたら、其れは重要人物だからだ。主人公が、ヒロインが、敵が―――全員が主要人物だから、いわゆる贔屓を受けているのだ。

 

モブは目立たない―――必要が無いからだ。

 

最初の敵はすぐやられる―――主要人物の踏み台なのだ。

 

 

だから、自分は願う。もしも自分が何の力も無いモブに生まれたとしても、彼女らを守りたい。優しさだけでは何も成し得ない。力だけだと両手から溢れ落ちる。

 

―――守るために、主人公になりたい。

 

だから、一か八かの『ご都合主義』に賭けるのだ。

 

 

『心は決まったな?では、これよりお前を転生をさせる。だが、原作の記憶は消させてもらう。...まあ、その『ご都合主義』があれば知らずの内に物語が発展することも無いだろう。それは所謂主人公補正なのだからな。主人公を置いて物語は進まんだろう?』

 

不思議な老人―――神は悪戯に笑いながら問いかける。厳格な雰囲気はその一瞬だけ無くなってた。

 

「...俺は...勇者(ヒーロー)になれますか?」

 

『ふっ、なれるとも。これはお前が勇者(ヒーロー)になる物語なのだからな。原作は骨組みでしかない。肉付けはお前の役割なのだぞ』

 

「つまり、俺の転生する世界は原作に限りなく似ただけの別世界...ってことなんですか?」

 

「ああ、そうだ」

 

一言の肯定を最後に、白い世界が光りだす。人生を終えた自分が第二の人生を送るための合図だ。

 

 

 

―――さあ、お前を魅せてみろ。

 

 

 

 

 

これから転生する世界は『結城友奈は勇者である』に限りなく似た世界。人物も性格も、歴史の流れも原作と同様だ。一つの違いは、その男の有無だ。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

―――躓いた。何度も泣いた。諦めそうにもなった。

 

でも、精一杯を込めた。守るべき彼女達はいつの間にか、自分を一番支えてくれた。だから、これから消える記憶も―――また作れば良いんだと思える。

 

 

 

『―――よう、相棒...もう...体が動かないな。でも、アタシ達は生きてる...アタシ達は勝ったんだな...!』

 

それは本来ならば残酷な死の運命を辿る筈だった赤い少女の歓喜。倒れる自分と彼女は満身創痍。―――でも、生きている。何日、何週間、何ヶ月と治療を受ければ死ぬことは無い。

 

倒れながらも、お互いに『やったぜ!』と拳を合わせる。

 

 

 

『私に...私たちに、キミを守らせて。私は銀のように勝気な性格じゃないし、そのっちのように機転を利かせることも出来ない...でも、キミを守りたいの!』

 

それは国防を胸に刻んだ少女の小さな叫び。守るべき存在だと魂に刻まれていた自分が、その考えを一変させる要因となった。

 

苦笑いしながらも、お互いを守り抜くと決めた。

 

 

 

『キミがぜーんぶ忘れても、わたしとミノさんは覚えてるから、心配しないでね。......ごめん、本当はつらい...全部終わったあとに泣くと思う...でもね、確信してるんだ〜。キミがいつか、全てを思い出すって』

 

それは普段はぼーっとしてる少女の直観。その直観に何度も命を救われた。だから、無償で信じれた。消えゆく記憶を感じながらも、穏やかな気持ちで居れた。

 

別れは言わない。必ず、また相見えるからだ。

 

 

 

そして、少年は忘れた。圧倒的な力の代償として、大事な思い出を奪われた。でも、その瞬間までは悲しくなかった。

 

 

『必ず思い出す』それは少女が―――リーダーが断言したからだ。当たり前だと不敵に笑って返す。

 

 

『また会おうぜ』それは少女が―――相棒が泣きそうな笑顔で強がった言葉だ。直ぐに会いに行ってやるよと自分も強がる。

 

 

そして、少年は忘れる。記憶は虫食いになり、大事な彼女達と勇者についての記憶を失くした。最後の瞬間まで、同じく記憶を失くす少女の手を握り―――

 

 

 

「またな...園子、銀、須美」

 

 

 

"またな"

 

永遠の別れじゃない。また直ぐに会ってやる。それが、少年の最後に消えた記憶だった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

意識が浮上する感覚と共に目が覚める。

 

「...夢か?...なんでだろう...懐かしいような......あれ、泣いてる...?」

 

頬に流れる涙。心を温める謎の既視感と覚えのない記憶。違和感とも言えた。

 

(確実に...『何か』を忘れてるよな。あの爺さんに会ってから転生したけど...所々の記憶が無い。『ご都合主義』の主人公補正の面で何かに巻き込まれたのか?)

 

怪獣とも称せる化け物と戦う夢。生憎と、現在中学生の自分を取り巻く環境には化け物の化の字も無い。至って平和な日常系アニメの世界に転生したとしか思えない程だ。

 

(...心がざわつく)

 

理由は分からないが、先程の夢をただの夢だと断言したくない。そんな自分の知らない自分が居た。

 

「あーもう!もどかしい!!」

 

 

 

―――冴宮(さえみや)春樹(はるき)、現在讃州中学校の二年生。

 

 

所属する部活は『勇者部』だ。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆オマケ◆◆◆◆◆◆◆◆

 

主人公の容姿

・髪は明るい茶髪。割と長いので、運動時には後ろで結ぶ。中性的な顔立ちであり、身長も風とほぼ同じ。表情が豊かだが、ポーカーフェイスも得意。悪戯好き。

 




続く...(多分)
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