深夜廻 もう一つの物語   作:はるばーど

10 / 17
春みたいな気温になってきて、花粉辛いです(笑)


後、影廊にどハマりしました。あまりにも面白いのでギャグ小説として短編で出すかもしれないです。



それはともかく本編どうぞ。


第八章 赤と青の狛犬と妖怪

あの赤いリボンを身につけた女の子を見失ってしまった。

 

 

 

もう道標がない。

 

 

 

後にも引けないし、未知の道を進むしか術が残っていない。

 

 

 

そのために、

 

 

 

ひたすらあの子を追いかけるしかない。

 

 

 

しかし、まるで砂漠で蜃気楼にでもあったかのように

 

 

 

追いかけても追いかけても

 

 

 

追い付けない。

 

 

 

救いがドンドン遠退いていく。

 

 

 

嫌だ

 

 

 

そんな

 

 

 

ウッ…………!?

 

 

 

何、頭が急に痛く………!

 

 

 

そこに映ったのは、記憶。

 

 

 

血塗れの遺体の記憶。

 

 

 

焼き尽くされた記憶。

 

 

 

私を救ってくれたあの少女の記憶

 

 

 

そして、

 

 

 

私をいたぶった悪魔の記憶。

 

 

 

そうだ、思い出した。

 

 

 

私は

 

 

 

あの男から

 

 

 

逃げて

 

 

 

 

「よぉ、何処へ行くんだ?お嬢ちゃん」

 

 

 

 

急に肩を叩かれた

 

 

 

おそるおそる振り向くと

 

 

 

あの男がいた。

 

 

 

「酷いじゃないか、パパに断りも入れずに外出するなんて」

 

 

 

物凄い力で引き戻されそうになる

 

 

 

あぁ

 

 

 

い、嫌

 

 

 

も、もう復讐するなんて言わない

 

 

 

だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

助けて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワン!ワン!

 

 

 

 

 

 

 

 

犬の声が聞こえる。

 

 

 

すると、更なる力で引き戻された

 

 

 

手のひらに温かい感触が伝わる

 

 

 

足元を見るとあのリボンの女の子が私の手をしっかりと握り締めていた

 

 

 

体格差がかなりあるのに、この子はぐんぐんと私の手を引っ張る。

 

 

 

その強引な引きで私達は走った。

 

 

 

負けじと男も怪物へと姿を変え、追ってきている。

 

 

 

どれくらいの距離を走ったでしょうか。

 

 

 

時間の感覚が霞んでしまうほどに頭が朧気だ。

 

 

 

あの男は姿を消していた。

 

 

 

何処へ行ったのだろう。

 

 

 

ひとまず、危機は去ったらしいです。

 

 

 

お礼を言いたい

 

 

 

しかし、今の今まで手を握っていたはずの少女も

 

 

 

消えていた

 

 

 

そして、握られていたはずの掌には手足がちぎられてバラバラになった人形があり

 

 

 

それと同時に顔半分に燃え盛るような痛みが走った気がしたが、私は無表情で頬を撫でた

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

「ん?……………なんだこの狛犬」

 

 

 

私は今、とある場所へと訪れていた。図書館から北上し、山の神社へと向かおうとしていた。理由としては……………正直ない。本は読んだのだが、手掛かりとなるものは一切記載されていなかった。

 

 

 

載っていた情報としては、彼女の母親に当たる家系の記録だった。50年ほど前のことだろうか。近代化が進み土地が開拓され、国が大きな発展を遂げる頃。自然を守るためにとある巫女が燃焼する化け物を退治する物語。

 

 

 

蛙の姿をした怪物を封印し、山に聳える神社にて代々その使命を継いできた。そんなことは従姉である私は当然知っている。目新しい情報は何処にも残っていないのだ。

 

 

 

怪しいとすれば、封印された怪物がその子孫であるルキアを連れ去り、拷問しているという私の勝手な説だ。

だが確証はないし、第一連れ去った犯人はその封印された化け物とも限らない。

 

 

 

と長くなってしまったが宛がなくなり、この街の怪しい場所をくまなく捜索することにしたのだ。時間は掛かってしまうが、何も行動しないで待つよりかは幾らかマシであろう。

 

 

 

そんなこんなで私と新しい友『ハル』は現在、謎の狛犬の前に訪れたというわけだ。

 

 

 

「…………赤いね」

 

 

「……………そうだな」

 

 

 

それ以外に残す言葉がない。赤い狛犬の像。暫く眺めたり、何かないか探ってみたりしたが、特に目立った現象は起きない。なので私達は黙って立ち去ることにした。

 

 

 

時間を無駄にした気がした。私達は廃墟となった商店街を横切ろうとしているところである。この場所は比較的図書館に近い場所に位置している。故にあれからそんなにたいした距離を移動したわけではない。

 

 

 

しかし、どうせならば赤い狛犬を見つけたのだから青い狛犬もいるかもしれない。そんな幼稚な考えを巡らして、私は近道である一本道に足を進める。

 

 

 

すると、頭上から何か落ちてくる音が聞こえた。私は危険を察知し、ハルを抱え前転する。

 

 

「な、何………!?」

 

 

「気をつけろ!まだ来るぞ!」

 

 

とは言ったものの、なんだこいつは…………!?顔の形をした異形が空から降ってきただと……!?

 

 

 

どういう経緯でそうなったのかは分からないが兎にも角にもまずはコイツを撒かないと話にならなそうだ。

 

 

 

私は足の遅いハルをそのまま抱えたまま、やむを得ず来た道を引き返した。進行方向に立ち塞がれてしまってはこの一本道では逃げ場がない。

 

 

 

持久力には自信あるが、ハルを抱えたままではいずれじり貧になってしまう。やはり何処かに身を潜める必要性がある。

 

 

 

相手は不気味な笑みを浮かべながら、瞬時に移動し私に襲い掛かろうとしている。時々顔と色が反転し、猛スピードで迫ってくるなど相手も戦法を変えてくる。

 

 

 

「フン、そんなに私が好きか。全くモテる女とは辛いものだ」

 

 

「冗談言ってないで、早く逃げてよ!」

 

 

 

私は素早く近くにあった小さめの鳥居へと駆け込んだ。流石にこんな得体の知れない怪物などこの神聖な場所へは立ち入れないと思ったからだ。

 

 

 

しかし、そう思ったのも束の間。怪物はそんな鳥居もお構い無しに突き進んできた。

 

 

 

「クソッ!やはり、効果は薄いか…………!」

 

 

 

万事休すである。何か策はないか。そう思って辺りを見渡して見るも抜け道らしきものもなく、この状況を打開するのは難しそうだ。

 

 

 

ここまでなのか?こんなところで終わってしまうのか?私はまだルキアに出会ってもいないのに。まだだ、まだ終われない。せめてもの抵抗だこれでも喰らえ!

 

 

 

「ウオオオオオッ!!」

 

 

 

私は足元に落ちていた岩を掴み、相手に殴り掛かった。これで死んでも私が最初に徘徊者に立ち向かった間抜けな者として、ハルはきっと語り継いでくれるだろう。そう信じている。

 

 

 

すると、眩い光が辺りを包み込んだ。私とハルは思わず腕で視界を覆ってしまった。敵を目の前に見失うのは非常に不味いのだが、やむを得ずそうしてしまった。

 

 

 

光が晴れると化け物の姿は消えていた。待ってくれ、状況が飲み込めない。何処にあの怪物は行ったのだろうか?

 

 

 

「あ、狛犬さんの口が……………」

 

 

 

ハルが指差した方向には先ほど見た狛犬とは違う、また別の狛犬が佇んでいた。よく見ると何かをたった今喰らったかのように、口元がべっとりと血に濡れていた。

 

 

 

「まさか………あの狛犬が?…………!」

 

 

 

私は何かを察した。あの顔の怪物はもしかして妖怪などの類いではないだろうか。それと日本で神聖な動物として知られる狛犬。だからこそ邪悪であるそれを喰らって私達を救ってくれたのではなかろうか。

 

 

 

とにもかくにも、今のうちにここから早く去ろう。そう思って私はハルの手を繋ぎ、急ぎ足で神社から駆け出した。狛犬が守ってくれたとはいえ、奴がまだ死んだとも限らない。

 

 

 

あの妖怪の感知範囲から逃げ切れば、ハルだけでも逃げ切れるかもしれない。

 

 

 

暫くしてあの路地へと戻ってきた。そして、私の期待は見事に裏切られた。何事もなかったように妖怪が再度上から降ってきた。

ズシンと着地した辺りが揺れる。ハルを抱え、再び同じ道を戻ろうとしたその時、

 

 

 

「ウッ!?」

 

 

 

突如、足が言うことを聞かなくなり私は地面に崩れた。

 

 

 

「クレイお姉さんッ!?」

 

 

 

どうやら気付かぬ内に足の体力がとうに限界を超えていたらしい。それもそのはず。何しろこの短時間でどれだけ長い距離を歩き、走ったのは始めてなのだ。逆によくここまで休みなしでもったと感心したいぐらいだ。

 

 

 

そんな私に気がついて、此方に振り向くハル。彼女には生き残ってほしい。従妹も救えていないのに、他人の命を道連れにするなど、きっとルキアが怒るだろう。彼女は自分を犠牲にしてまで、他人を思いやる優しい子だったから。こんなことで命を無駄にすれば、きっと笑われてしまう。

 

 

 

「い、行け!ハル!私はいい!お前だけでも逃げろ!」

 

 

「で、でもそんなことしたらクレイ《・・・》が!」

 

 

「私のことを心配してる場合か!?お前は別れた《・・・》友の分まで生きねばいけないのだろう!?だったら生きてくれ!私の分まで!」

 

 

 

汗が額を伝い、意識が朦朧としてしてきた。そんな中、ハルは急いでここから立ち去っていくのがかろうじて確認できた。目元が涙に濡れているのが見えた。涙がポタポタと地面に落ちていくのも。

 

 

私は死を覚悟した。こんなにも死が怖いと感じたことはなかった。父様と母様ごめんなさい……。そして、目を瞑った。

 

 

 

しかし、予想外の事態が起きた。妖怪は私に目も暮れずハルを真っ直ぐ追いかけて行った。なんてことだ、てっきり人を無差別に襲う知能が低い妖怪だと勝手に思い込んでいた。

 

 

 

追い掛けようにも、足が全く言うことを聞いてくれない。これは誤算だった。狙いは最初から私ではなくて、ハルだったとは。

 

 

 

「動け、動いてくれ………!私の足!」

 

 

 

その願いも届かず、私はただただ妖怪がハルを猛スピードで追い掛けて行くのを呆然と見ていることしか出来なかった。

そして、駄目なのかと思い始めた直後に肉がミートハンマーで潰されたときの生々しい音が聞こえてきた。

 

 

 

まさか、そんな

 

 

 

「ハルッ!!!!」

 

 

 

私は友の名を大声で呼んだ。死んだなんて認めたくなかったから。すると、ヘロヘロになった血塗れの生命体が前から歩いてくるのが見えた。私はそれが誰だか即座に分かった。

 

 

 

「うえええ…………」

 

 

「ハル!」

 

 

 

私は妖怪の肉まみれで涙ぐんでいたハルを思い切り抱き締めた。自分も血塗れになったが、そんなことはどうでも良かった。兎に角、生きていた。それだけが何よりだった。

 

 

 

「おい、ハル。あの怪物は………?」

 

 

「あのね、私あの赤い狛犬の所に行ったんだ。そしたら、あの怪物が青い狛犬のときと同じように食べられちゃって………。」

 

 

 

ならば、あのオッサンみたいな顔をした化け物は死んだのか………。あの妖怪はルキアと何も関わりがなかったと祈りたいのだが。

 

 

 

「なぁ、ハル。そしたら、さっきの神社へ戻ってみないか?何かあるかもしれないからな。」

 

 

「ただ気になるだけでしょ。」

 

 

「うるさい、私が行くといったら行くのだ!」

 

 

 

半強制でハルとチャコを神社に連れていくと近くの祭壇にミニサイズの狛犬の置物が置かれていた。先程きた時には祭壇には何も置かれていなかった。

心なしか本物より可愛いデザインになっている気がする。気のせいかもしれないが。

 

 

 

私はこれらを『狛犬セット』と名付けた。

 

 

 

「名付けのセンスないよ。クレイお姉さん。」

 

 

 

ハルに心を読まれた気がした。腑に落ちん。

 

 

 

引き続き、死ぬような思いをしたが私達は家に置物を戻し、探索へと乗り出した。

 

 

 

「さて、次は何処に行こうか?…………ハル?」

 

 

 

ハルに尋ねても返事がない。イラッとしたので目を向けると彼女は呆然と門の前を見つめていた。チャコもそちらに向かって吠え始めた。理由を知るために私も門の方へ目線を戻した。

 

 

 

すると、門に人影が見えた。灰色の髪に虚ろの瞳。私以上の身長を持つ人影。どうやら女のようだ。そしてその人物に私は見覚えがあった。

 

 

 

「……………お久しぶりですね。元気にしてましたか?」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。