深夜廻 もう一つの物語   作:はるばーど

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マジ花粉症辛いです(笑)


小説が書けないのも全部花粉のs


本編いきます


第九章 虚ろ

ある山に白い髪をした巫女様がいました。

 

 

とても優しく慈悲深いお一人でそんな彼女は村のある男に恋をし、一人の娘が生まれました。代々、自然を守ってきた後の巫女になるための大事な跡取りです。

 

 

その方の母親はいいました。

 

 

 

「この子や他の人々のために山の自然を犯さないでほしい。その事をこの子に教えてあげてほしいのです」

 

 

 

村人はこの言葉を掟として語り継いできました。そしてその巫女の娘も掟に従い、時折村に降りては子供達と遊んでいました。

 

 

 

そんなとき一匹の蛇が娘の前に現れました。この島では見たことがなかった種です。

 

 

 

そしてその蛇は娘の側に近寄ってきてこう言いました。

 

 

 

「私達とお友達になって」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「お久しぶりですね。元気にしてましたか?」

 

 

 

不気味な微笑みで此方に語り掛けてくる灰色の髪をした女。その人は今までずっと探し求めていた人物だった。

 

 

 

「ほ、本当にお前なのか………?」

 

 

 

私が知っている彼女はもっとクールだった。常に冷静で隙は見せない。けれど何処か可愛げもあって私といた時は少なくとも複雑な表情は浮かべなかった。それは笑いという表情をも含めて、だが。そのせいか今は彼女が全くの別人に見える。

 

 

 

そして彼女は今、笑っている。不気味なまでに微笑み続けている。その表情は上部だけ。彼女の瞳に宿る虚ろがそれを教えてくれる。それに彼女の顔に大きな火傷の痕が出来ている。少なくとも私が一緒にいたときはこんなものはなかった。

 

 

 

私の思い過ごしかもしれないが、ルキアは何かに取りつかれてでもいるのか……?

 

 

 

「ク、クレイお姉さん………!もしかして……!?」

 

 

「えぇ、ハルさん。私がそこの者が探し求めていたルキアです」

 

 

 

彼女は私を指差しながらそう言った。

 

 

 

しかし探している人物がいきなり出てくるなんて不自然じゃないのか?しかも、ハルの家から出て3分ほどの場所でなんて。あまりにも都合が良すぎて疑惑の念がますます私の中で膨れ上がる。

 

 

 

「でもなんで、わたしの名前を………?」

 

 

 

ハルがルキアに対して率直に質問した。そういえばそうだ。何故、彼女はハルの名を知っているのだ?ルキアとハルは会うのは今日始めてのはず。知り合いから教えられでもしない限り、知っているわけがない。

 

 

 

「あぁ、そうでした。何故、私が貴方の名を知っているか教えていませんでしたね。聞いたのですよ、隣街の友人に」

 

 

 

友達…………?我々の家族は越してきたのはつい最近だ。あまり口に出したくはないが、ルキアは人間関係を作るのが苦手なヤツだった。故に友達など作るのには彼女一人では少々荷が重いはずだ。ならば強引にも彼女を止めねばならないのか………

 

 

 

はっ!お、落ち着け私。その判断は冷静でない証拠。よくよく考えてみればここに来てからもう2年近く経過しているではないか。

とにもかくにも、まずはルキアが操られているのか確認せねばなるまい。ここはいつも通りの対応で行こう。そうすればボロが出るかもしれない。

 

 

 

私はルキアに近付き、向かい合った。数秒ほど沈黙が続いた後、私は口を開いて彼女に話しかけた。

 

 

 

「ふっ、お前が友達だと?人付き合いが苦手なお前がよく作れたものだな」

 

 

「いつまでも子供扱いは止めてほしいですね。フフッ、しかし……………随分見ない内に貴方も変わりましたね、姉さん」

 

 

「ほう、私の何処が変わったというのだ?言ってみろルキア」

 

 

「なんで罵り合いになってるの………?」

 

 

 

ハルが心配そうな顔でおどおどしている。しかし、私は彼女から何か聞き出すまで尋問を止めない。

 

 

 

「そこの少女のお友達ですよ、姉さん。…………しかし、私が言うのも難ですが人付き合いが苦手なのは貴方も同じなのではなかったのですか?」

 

 

「そうなの?クレイお姉さん?」

 

 

「ま、まぁ人付き合いが好きかと聞かれればそうでもないが…………。って違う違う!こんなことを話している場合じゃない!いいか、単刀直入に言うぞルキア!お前は数日前に叔父さんを殺して行方不明と聞いた!何故だ!何があったのだ!?」

 

 

「…………別に。………どうもしませんよ。ただあの男に腹が立った。それだけのこと」

 

 

微笑みを浮かべていた彼女の表情が崩れ、先程までの余裕が少しなくなったように見えた。

 

 

「ならば、一度家に帰ろう!私の家族もお前が殺人を犯したなんて何かの間違いだと信じている!何か危険なことがあるなら言え!私達が何とかしてやる!だから…………!」

 

 

「なら私は!!尚更、貴方の処に帰ることは出来ません!!!」

 

 

 

彼女は柄にもなく大声で私の問いかけに反論した。こんなにも取り乱しているルキアを見たのは始めてだった。私が側にいない間、何があったのか。手の届きそうな距離にいて今にも救えるというのに、とてつもなく遠い場所に行ってしまう。そんな気がしてならない。

 

 

 

彼女は私に背を向けた。私とハルに情けない姿を見せまいとしているのだろうが、体が小刻みに震えていて何かに怯えている様子がまる分かりだ。そんなとき、ルキアはふと何かを思い出したかのようにハルの元に向き直り、近づいた。

 

 

 

ルキアは私よりも高い身長を持つためまだ幼いハルからしたら彼女はまるで巨人だ。すっかり怯えきっているハルの前で彼女はしゃがみ込み話しかけた。

 

 

 

「…………ハルさん。多分、貴方もご存知の人でしょうが、隣街に私の友達がいるのです。是非、私にあったと伝えてほしいのです。こんな夜更けですが、お願い出来ないでしょうか」

 

 

 

ハルは無言でコクッと頷いた。すると、無表情だった彼女は少しだけ微笑みを取り戻した。それはかつて私にも向けてくれた表情だ。彼女が安心した時に浮かべる表情。

 

 

 

「そういうことですので、もう姉さんは私を探さなくて良いということです。では、さようなら」

 

 

「ちょっと待て!まだ私はお前に何があったのか知らない!せめて敵の名だけでも教えてくれてもいいだろ!」

 

 

「……………あのおとぎ話を知っているならば、分かるはずです……………!」

 

 

 

そう言って彼女は目の前で姿を消した。どんな手を使ったのかは不明。おとぎ話………。何のことかさっぱり分からない。完全に足取りが失くなってしまった。これで終わり……………?

 

 

 

 

 

 

いや、これから(・・)だろう。

 

 

 

 

 

私は内に秘めた決意が沸き上がってくるのを感じた。確かに今、ルキアを見失ってしまった。残していった言葉の意味も謎だ。

 

 

 

しかし、救わなくていいと言われれば尚更救いたくなる。挑まなくていいと言われると尚更挑みたくなる。往生際の悪さ、異様なまでな好奇心。それが私の個性だ。

 

 

 

前にも言ったが久しぶりなのだ。こんなにもスリルがあって刺激が感じられる日を迎えるのは。もう、私は自分を攻めない。私は私。大事な人であるルキアを取り戻す。

 

 

 

「ねぇ、おとぎ話ってさっきクレイお姉さんが読んでた本?」

 

 

「おそらくそのことだろうな…………。……………それにしてもハル。お前、隣街にも友がいたのか?」

 

 

「うん、数日前に出来たばかりだけどね」

 

 

「ふむ…………なるほど。……すまない、ハル。一つ頼みがあるのだが…………」

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

先程、姉に会った。いえ、会いに行った(・・・)という方が正しいでしょうか。ふと思い出したかのように自然と彼女のいる方向に足を運んでいた。

 

 

 

助けを求めに行ったはずなのに何も言えなかった。長年顔を合わせていなかったからだろうか。いや、そんな単純な理由じゃないでしょう。

 

 

 

私は頭を抱え、夜の街を彷徨う。記憶に靄がかかっていてよく思い出せない。

 

 

 

徘徊者達は私に見向きもしなくなった。寧ろ怯えて私を避けているようにも見える。

 

 

 

しかし思い出せない。何でしたっけ………私は何のために彼女の元へ行ったのか………

 

 

 

彼女……………彼女?

 

 

 

あの人、なんて名前だったでしょうか…………。頭を掻きむしっても記憶は取り戻す処か失われていく。一つ、また一つと。

 

 

 

そしてまた、顔に刻まれた火傷の傷が疼いた。私はそっと手を頬に添えた。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

「えっ、今からとなりまちに行くの!?」

 

 

 

ハルは驚いた表情で私を見詰めていた。確かにハルの言うことには一理ある。もうすぐ日付が変わる時間帯になるし、私一人で行けよ、という発想になる。

 

 

 

しかし、私は何分越してきてまともにこの町を歩いたことがなかったから道のりが分からない。……………何度も言ったかもしれないが。

 

 

 

「そうだ、ハル。ここまで来てお前はあの子を放っておけるのか?」

 

 

「…………それはそうだけど………。でもあの人何か怖かったし………」

 

 

「徘徊者に比べれば幾らかマシだろう」

 

 

「…………………」

 

 

「よし決まりだな、さぁ!案内してくれ!」

 

 

「まだ何も言ってないよ!」

 

 

ハルとは裏腹にチャコは今にも出掛けたさそうに尾を振って指示を待っている。私はしゃがんでハルとチャコの頭を優しく撫でた。

 

 

 

「お前達は私の盟友だ。お化けからは私が守る。だから頼むぞ」

 

 

「もう……………ずるいよぉ」

 

 

 

照れくさそうにしていても、ハルはちゃんと私の言うことを聞いて次なる目的のために足を動かした。なんだかんだ言ってもとても良い子だ。それに意気揚々と夜の街を歩くポメラニアンのチャコ。

 

 

 

この犬も小さいながら勇敢なヤツだ。この殺伐とした世界でしっかりと私達を守ってくれる。この冒険が終わったら、ハルの引っ越しを手伝おう。そして、送り出してやりたい。何時までも元気に盟友としていられるように。

 

 

 

ハルの首元に下げてある懐中電灯の弱々しい光が先の見えない闇夜を映し出す。そんな中、出立してからまだ時が立つ前にとある出来事が発生した。

 

 

 

 

アア………アア………

 

 

 

嗄れたうめき声を出す白い徘徊者。道中に幾度と見てきたが、何やら様子がおかしい。いつもならば生者に対する恨みを込めて、一直線に襲い掛かってくる。

 

 

 

が、今回は私達に見向きもせずに目の前を通りすぎていった。怨霊が逃げ出すなどよっぽどのことだ。どれだけの怪異が迫っているのかと内心肝冷やしたが、振り返っても何もいない。電灯の灯りがうっすらと暗闇に見えるだけだ。

 

 

 

ワン!ワン!

 

 

「どうしたのチャコ…………!?」

 

 

 

チャコが何かを察知して前方に威嚇を始めた。犬が危険だと警告する時はどうにも嫌な予感しかしない。しかし、徘徊者は私達を無視していた。となると徘徊者ではない別の驚異と考えられる。

 

 

 

徘徊者以外の驚異となると身構えた処で太刀打ちできないだろう。慎重に行動することを心掛けながら、進んでいるとそれは現れた。

 

 

 

 

 

いや、それら(・・・)か。奴らは2体同時に現れた。

 

 

 

 

 

「ハル!後ろだ!」

 

 

「えっ、」

 

 

「ぐっ…………!」

 

 

突然、真っ赤に錆び付いた刀身をした裁ち鋏がハルを狙っていたため、私は滑り込んで間一髪、ハルを救出した。

 

 

 

「あ、ありがとう…………!でも…………なんでコトワリ様が…………?」

 

 

「私が知るか!元々、ああいう性格じゃないのか!?」

 

 

「で、でも神様だよ!理由もないのに襲ってくるなんて…………。…………!」

 

 

「な、なんだ………?あの巨大な蜥蜴は………?」

 

 

 

コトワリ様とは反対方向から普通の倍以上の大きさをした蜥蜴が接近していた。焔のように燃え盛るその身体を燻りながらゆっくりと。

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