深夜廻 もう一つの物語   作:はるばーど

2 / 17
夏の夜は何処か暗く、悲しげな雰囲気を感じる・・・そういう風に思う人もいるといるかと思います。
でも、田舎町は冬の夜の方が怖い()



では本編いきます。


黄昏
第一章 黄昏


とある夏の日のこと。

 

 

 

 

私の大切な友達とさようならしました。

 

 

 

 

赤いリボンを付けた女の子。

 

 

 

 

名前は「ユイ」といいます。

 

 

 

 

でも、新しい友達も出来ました。

 

 

 

 

名前は「チャコ」。

 

 

 

小さいけど勇敢で私を守ってくれた頼もしいワンちゃん。

 

 

 

もうすぐ私は引っ越しちゃうけど、この子が居れば大丈夫。

 

 

 

そう思って見ても、やっぱり馴染みがあるこの街から離れるのはちょっぴり寂しい。

 

 

 

学校や遊び慣れた場所もあるし、何よりユイと離ればなれになるのが、割りきったとはいえ、どうしても寂しかった。

 

 

 

だから、お散歩に出掛けることにした。それも暗い暗い夜道のお散歩。

 

 

 

あの神様に貸してもらった鋏も返さなければいけないし。

 

 

 

そして最後に一目、この町を見据えておきたいという私の単なるワガママなのだけれども。

 

 

 

その二度目(・・・)の夜。私は、とある不思議な女性に出会いました。

 

 

 

彼女は家族を探している、と言っていました。元気な性格で何処までも頼もしい姿をした人。しかし、何処か悲しげにも見え、誰かに固執しているようにも見えるその性格。

 

 

 

その目的と本人の性格がなんとなく、ユイに似ていてどうにも他人事に思えなかった。

 

 

 

だから、助けてあげよう。このお姉さんを。悔いが残らないように精一杯。

 

 

 

そうあの時は思っていた。

 

 

 

あの人との出会いはユイとの別れを告げた、2日程後の夜だった。

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

私は何時通り、自宅の自室にて今まで集めたものを整理していた。今まで、大切に扱っていた物まで殆ど置いていかなければならないのは、心に相当な負担をかける。

 

 

しかしもうすぐ、このお家から引っ越しをしなければいけない、その事実は変わらない。

 

 

 

今日はお父さんもお母さんも家にいて、何やら引っ越しについての話題が上がっている。しかし、穏やかに話している雰囲気という訳ではなく何やら、もめているようで時々、お母さんのつんざくような奇声が聞こえてくる。

 

 

 

内容は私の腕について話していて、お母さんはそれを心配してお父さんともめているみたい。

 

 

 

私はユイとお別れするために、ある神様に腕を捧げた。この小さかった左腕。後悔はしていない。しかし、親からしたら大問題もいいとこで物凄く心配している様子だった。

 

 

 

二人には、この件はまだ言っていない。というか、言ってはいけない。そんな気がする。

 

 

 

両親には悪いと思いつつも私は二人の目を盗み、ポシェットを持って、静かに玄関の戸を開けて、黄昏の町へと再び踏み込んだ。

 

 

 

再び踏み込んだ夜の景色はより鬱蒼としていた。空は若干、朱色に染まっていたものの、もう殆ど見えないほど。

これから完全な闇夜がやってくる。

 

 

 

そして、今回の夜廻(・・)にはチャコを連れてきた。理由は私一人ではまた拐われてもおかしくないから。

後、単純に怖かった。幾ら見慣れた町並みとはいえ、夜になるとその状況は一変する。

 

 

 

敷地から出て、すぐに右を向くと顔だけの大きな鯨が道を塞いでいる。

まるで私に目的の方角へと行かせないと言わんばかりに道を阻んでいる。

 

 

 

(うーん、困ったな……。神社へはこっちの道からしか行けないのに………。)

 

 

 

仕方ないので、回れ右をして反対方向へと向き直り、迂回することにした。

 

 

 

相変わらず、チャコが私の前を先導して歩いてくれて心強い。お化けがいても、ワンとかわいらしい鳴き声で居場所を知らせてくれて、すぐにその存在に気がつくことができる。

 

 

 

この町は永遠にお化けが徘徊したままなのだろうかと、時々疑問に思ってしまうことがある。たくさんお化けがいるけど、時々見ているのも辛くなるくらいかわいそうな見た目をした人もいる。

 

 

 

死んだままの状況が把握出来てしまうほど、リアルに形が残ってしまっているお化けも少なくない。

幾度も想像してしまう。彼らはどんな目に会ったのだろう。自分もいつかこんな体験をするのかな。などと余計なことを考えてしまう。

 

 

 

だってそうでしょ。死んでしまって、見も心も変わってしまった彼らの気持ちなんて分かるはずなにのに。

 

 

 

そんな彼らのことを考えながら、徒歩を進めていたが、とあることに気が付いた。

目的の方向とは全然違うほうへと導かれていることだ。さっきから迂回路を進もうとしても鯨に阻まれて、目的地の北の山から反対方向へと遠ざかっている。

 

 

 

何かがおかしい。こんなことはあの時(・・・)以来なかった。お化けはただ、自らの憎しみに身を任せて行動しているはずなのに、知性がある行動が分かる。

 

 

 

「キャン!、キャン!」

 

 

 

「チャコ!?どうしたの!?」

 

 

 

チャコが突然、前方に向かって吠え始めた。チャコはだいたいのことでは、滅多に鳴いたりしない利口な子だ。

何かとてつもなく恐ろしい気配が近付いている証拠であることは間違いない。

 

 

 

「に、逃げなきゃ………。」

 

 

 

私は途端に嫌な予感がし、進行方向とは反対に足を向け、一気に走り出した。

チャコも続いて、走り出し私の後をついてくる。心臓の鼓動が速くなる。息が苦しい。後ろを振り返ると白いモヤモヤが追いかけてきていた。

 

 

 

前に何度もみた、白いお化け。目が肥大化し、不気味なうめき声を上げて、何処までも追いかけてくるお化け。人のような形は残していても、もはや人とは違った存在になってしまっている。

 

 

 

だけど、何故なのか。何処か安心感に似た気持ちを抱いた。

正体を知ったからなのだろうけど、それにしてもお化けを見て安心感を抱くなど、前の自分にはあり得なかった話だ。

お化けを見ると、何も考えずに怯えて逃げ出していたものなのに。

 

 

 

私はそっと胸を撫で下ろした。少し冷静さを取り戻し、私は背負ったポシェットから白紙で作られた紙飛行機を取り出す。そして、ひゅっとお化けの方へ投げつけた。

 

 

 

すると、お化けが紙飛行機の飛んでいった向きに身体を向け、ゆっくりとそれを追いかけていった。

 

 

 

「今のうちに…………!」

 

 

 

お化けから遠ざかり、なんとか十字路を曲がってやり過ごすことができた。

だけど、ほっとしたのも束の間。

 

 

 

 

 

シュララララララ……………

 

 

 

 

 

と蛇のような鳴き声が聞こえてきた。チャコが再び警戒して、うなり出す。

辺りを警戒して見渡すと小さな手の平くらいの大きさをした蛇が一匹、こちらの様子を伺っていた。

 

 

 

普通の蛇かと思ったけれど、この辺りで見掛ける蛇とはちょっと違う。

まず、角が生えていた。頭の後ろに左右2本ずつ生えていて、計4本生えている。それに禍々しい黒の模様に三本に別れた尾。首は1つしかないからテレビとかで見る怪物によく似ている。

それに鋭い眼光。今にも睨み殺されてしまうんじゃないかと思うほど荒々しい眼差しを此方に向けている。

 

 

 

 

襲ってくるような様子は見られないが、チャコが鳴きやもうとせず、ずっとその蛇に対して警戒心を抱いていた。そして、

 

 

 

「あっ!チャコ!」

 

 

 

掴んでいたリードごと引っ張っていってしまい、その蛇に襲い掛かろうとした。

しかし、 蛇は一目散に十字路の奥へと逃げ出した。それを追いかけて、チャコも続いて行ってしまった。

 

 

 

二匹の足はとても速くて、もう目視で確認できないほど離されてしまった。私はポツンと十字路に取り残された。

 

 

 

 

「ど、どうしよう………。見失っちゃった………。でも追い掛けないと!また一人で取り残されたらあの子も悲しいからね!」

 

 

 

柄にもなく私は無理矢理、自分を正当化し、フォローをしながら、 二匹の向かった先へと足を進めようとしたその時━━━━━━━

 

 

 

ガンッ!!

 

 

 

「うわっ!!?」

 

 

「キャッ!?」

 

 

 

曲がり角で誰かにぶつかり、私は尻餅を着いた。勢い良く、ぶつかってしまったためにおでこが少々痛む。一方で盛大に転んでしまった制服をきた大きな人は座り込んだまま此方を振り向いた。

 

 

 

「ご、ごめんなさい!まさかこんな時間に人がまだいるとは思っていなかったので!」

 

 

「痛てて………すまないこちらこそ、前を視野出来ていなかった…………ッ!?」

 

 

 

男口調で背も高かったので、男の人かと思ったけれど、確認するとそれは女の人だった。年は18歳くらいでおしゃれなブラウンの制服を着ている。紫色の瞳でクールな表情。髪の毛は意外にも金髪で綺麗な髪質をしていた。

 

 

 

しかし、彼女は驚いた表情で私のことをまじまじと見詰めている。私はドキッとして思わず、目線を反らしてしまう。

 

 

 

(ど、どうしよう………。こんな大きな女の人なんてお母さんくらいしか会ったことないから、どう話していいか分かんないよ………。)

 

 

 

どうにか話を反らして、早くチャコを追いかけたいのだが、なんて声を掛ければいいのか分からず、ゴニョゴニョと小声でしか喋ることができない。

どうすればと混乱していると口を開いたのは彼女のほうからだった。

 

 

 

「君は…………。」

 

 

 

そうポツリと呟いた。やっと頭がハッキリとしてきた。ようやく言葉が浮かび上がってきそう。しかし、目の前のお姉さんは呆然と私を眺めているので、今度はこっちから声を掛けてみた。

 

 

 

「あの、大丈夫ですか。お姉さん………?」

 

 

 

すると、お姉さんは我に還ったかのように目をぱちくりさせ、首を振ってから私に対して、ようやく話し掛けてくれた。

 

 

「…………ん?あ、あぁ、重ね重ねすまないことをしてしまったな。」

 

 

私は彼女に手をさしのべ、お姉さんの手をとる。立ち上がった彼女はますます大きく感じた。下手したら、普通の大人の女性よりも大きいかもしれない。それにさっきは気付かなかったけれど、髪にかけてあるヘアバンドがとても綺麗な色をしていた。

 

 

 

彼女は少し乱れた髪をかきあげて、整えると唐突に額を押さえ出して、小さく笑いだした。

 

 

 

「フハハ、情けないものだな。貴女のような女性に手を煩わせてしまうとは。君、名前は?」

 

 

 

(えっ!?)

 

 

 

この流れで突然名前を尋ねられるとは思って見なかったので、少しドキッとした。

しかし、改めて見るととても日本人とは思えないほど綺麗な人だ。金髪だし、それに背が予想以上に高くて私がまるでこどもにでもなったかのよう(実際子供だけど)。

 

 

 

今度はこっちが見とれている形になってしまい、金髪のお姉さんは、よくわからなそうに首を傾げた。私は慌てて我に返り、何とか誤魔化そうと自己紹介をすることでお茶を濁す。

 

 

 

「あ、はい!私、ハルです!よ、よろしくお願いします!それでお姉さんの名前は……?」

 

 

「よろしく頼むぞ、ハル。おっと、私の名前だったか?すまない、名乗るのをすっかり忘れてしまっていたな。

 

 

 

 

私の名は……………

 

 

 




一応、捕捉しておきますが、この物語は私の書いていた「夜廻 振り返ってはならない夜の道」の続編に当たる話です。

ですが、見なくても分かる話が多いので、安心してくださいね(笑)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。