深夜廻 もう一つの物語   作:はるばーど

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一度に二話書いていたので、早めに投稿です。

今日、暖かったので虫や鳥が春と勘違いして朽ち木などから目覚めてましたね………


明日になったら寒さでアイツら死んでんじゃねーかな(笑)

本編いきます。


第一章 黄昏 もう一人の友達編

 

 

ある夏の日のことだ。

 

 

 

 

 

 

ある殺人事件が発生した。

 

 

 

 

 

 

それも単なる無関係の他人の家で起きた出来事ではなかった。

 

 

 

 

 

私の親戚に当たる人物が殺害されたと言うのだ。

 

 

 

 

 

 

かなり酷い現場だったようで、辺りは血の海だったらしい。

 

 

 

 

 

しかも、殺害を企てた犯人はこれまた他人ではない人物だという。

 

 

 

 

 

何の因果か、その犯人というのが私の従妹だというのだ。

 

 

 

 

あの可憐な灰色の髪を持ち、キラキラと透き通っている黒目の瞳。美しい白い身体に、きらびやかな顔立ち。

 

 

 

 

私の自慢の従妹。いや、ここまでいくともう一人の姉妹にさえ思えてくる。

 

 

 

 

そんな従妹が、叔父に当たる人物を殺害して行方不明となった。

 

 

 

 

あの大人しくて、虫も殺せないほど優しい性格をした彼女が殺人など犯して、逃げ出したなど納得できない。

 

 

 

 

確かに一度、風の頼りで彼女が虐待されていると聞いたことがある。その時はまだ、私も幼くて親に訴えるなどとはとてもじゃないが出来なかった。

 

 

 

助けられなかった。自分にとってとても大事な存在であるはずなのに。

 

 

 

 

 

しかし、今回ばかりは違う。

 

 

 

 

 

友人に聞いた。「彼女はまだ、夜の道を彷徨っている」と。

 

 

 

 

ならあの時、何も出来なかった無念をここで晴らすべきではないかと。

 

 

 

 

まだ助けられる。

 

 

 

 

そんな「深夜廻」の始まりはあの少女との出会いからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━2日前

 

 

 

 

私は高校のクラスルームにいた。現在、高校の3年生で進路に悩まされる日々を送っている。至って、普通の学生生活。

思えば、この時はまだ幸せだったのかもしれない。この時、私は従妹に会えなくなって、かなりふてくされていた。

 

 

 

何故なら、毎日が退屈だったからだ。

 

 

 

確かに私は、友達はそこそこいるし、悩み事があったとき、相談に乗ってくれる先生や両親だっている。端から見れば充分、贅沢な環境といえるだろうが、私は満足できていなかった。

 

 

 

従妹と連絡が途絶えたのが、彼女の父が亡くなってしまった以来だったものだから、仕方ないといえば仕方ないとは思うが、あまりにもその期間は長く、まだかまだかと首を長くして待っているというのに、一向に連絡をくれる気配はなかった。

 

 

 

そのため、普段は積極的な性格をしている私でもかなり長期間、機嫌が悪い状態が続いている。

 

 

 

この時は、彼女に身に何が起きているのかも知らずにただ、ひたすら普通の学校生活を送っていた。

 

 

 

「おーい!委員長!ちょっと、手伝ってくれぇ!」

 

 

 

廊下のほうから自分の名前を呼ぶ男の声が聞こえた。私はもたれ掛かっていた教室の壁から背を離し、声のする廊下へと足を運ぶ。

 

 

 

すると、私のクラスメートの男子が重そうに段ボール箱を二つ抱えながら、教室の目の前に立ち止まっていた。顔は汗だくで今にも、倒れそうなくらい真っ赤だ。凄まじく暑そうである。

 

 

 

現在は昼休み。本来は皆、昼御飯を食べている時間帯のはずなのだが、何の用だろうか。

 

 

 

 

「私に何か用か?隆。随分と重そうなものを抱えているが……。どうしたのだ?」

 

 

 

すると、男は私がやって来たことに気付き、喜びの表情を浮かべた。

 

 

 

「ああ、委員長!助かった! 悪い、暇ならこの荷物体育館に運ぶの手伝ってくれないか? バスケットボールやった後だからクタクタなのに、先生に押し付けられちゃってさ。」

 

 

 

昼休みは4時限目の後にあるのだが、その時間は私のクラスでは体育なぞ行っていないし、仮に行っていたとしてもバスケットボールなんてこの季節にやるスポーツではない。

 

 

 

サボったことを堂々と私の目の前で発言するのもどうかと思う。

が、気にしていても仕方ない。どうにもならない連中もいると割りきるしかあるまい。

 

 

 

しかし、この程度の力仕事ならば、私にとっては容易いものだ。依頼を受けても問題なさそうである。見返りもきっと貰えるだろう。

 

 

 

「よし!承ったぞ。ただ、これは私が今、機嫌が良かったから引き受けただけの話だからな。勘違いはするなよ、隆。」

 

 

 

「ありがてぇ!じゃあ、これ一個体育館に持って行ってくれよ!流石、校風委員長(・・・・・)!頼りなるぅ!」

 

 

 

「……………フン、こういう時にだけすぐにごまをする癖辞めた方がいいぞ。」

 

 

 

「えへへ…………すんません。」

 

 

 

そう言って私は、ひょいと3㎏ほどありそうな段ボール箱を持ち上げた。

 

 

 

「やっぱり、お前力凄いなー。それけっこう重いはずなんだけどな。」

 

 

 

確かに重い荷物だが、そこまで苦に感じるほどでもない。

私も女の中ではそこそこ、力があるほうだと思っているが、たかが毎日100回スクワットしているのと、水泳教室で十年ほどとバスケットボール大会で3回優勝した程度だ。

これくらいでは、力が強いとは言えないだろう。

 

 

 

「そうか?こんなもので弱音を吐いていたら、男としてどうかと思うぞ。」

 

 

 

「へいへい、相変わらず手厳しいこって。じゃ、頼むぞ!」

 

 

 

彼は結局荷物を私に全て押し付けて、元来た昇降口方面へと逆走していった。

 

 

 

「お、おい!待て、隆!!……………全く、相変わらず人の話を聞かないヤツだ………。」

 

 

 

ため口を利いても仕方ないと判断した私は、大人しく段ボール箱を運送することにした。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━数時間後

 

 

 

 

 

あれから、私は何事もなく段ボール箱を運搬し終えた。そして、何時間かたった後に部室によったら隆が体育の教師に叱られているのを目撃した。顧問の先生に伺ったところ、どうやらあの荷物は授業をサボっていた隆に対しての罰だったようなのだ。

 

 

 

それを私に預けて、逃げ出したことは結局、バレてしまったらしい。その件で叱られているのだろう。

何しろ6㎏の段ボールを女に押し付けて逃げたのだ。当然の報いだな、と私は奴に同情はしてやらなかった。

 

 

 

そんな形で部活も終わり、今は帰路にて、友達と話をしながら下校しているところだ。友達といっても自分が通っている陸上部の生徒でもなく、文化部で活動している後輩なのだが。

いつも通り、そいつと会話をしているとこんな話題が出てきた。

 

 

 

「なぁ、知ってる?あの殺人事件。」

 

 

 

といきなり、後輩が殺人事件などと物騒な話題を持ち掛けてきたのだ。普段は、のんびりしていて穏やかな話しかしないのに、今回ばかりは少し真剣な表情をして話していた。私は首を傾げて返事を返した。

 

 

 

「ん?殺人事件?いきなりなんだ?それがどうかしたのか?」

 

 

 

「そうそう、なんでも2日ほど前に隣街の住宅で40代くらいの男性が殺害されたって事件なんだけどさ。」

 

 

 

「ほう、それで?」

 

 

 

「どうやらその犯人が灰色の髪をした若い女性だって言うんだよ。隣街って割と近いし、年が近いってのもあってちょっと怖くてさぁ。」

 

 

 

(灰色の髪…………?)

 

 

 

犯人の特徴である灰色の髪という言葉が引っ掛かった。

 

 

 

世界で探しても中々、珍しい部類の人間なのに、この辺りの町で灰色の髪をした女はあの子以外に考えられない。

 

 

 

だけど、私はまだ確証が得られないのだ。もしかしたら、偶然にも同じ灰色の髪をした人がいて、その人が事件を起こしただけと信じたかったから。

 

 

 

気になった私は、彼が犯人の名を存じているのか尋ねてみることにした。

 

 

 

それは私が安心感を得るためのただの自己満足でしかなかったのだが、この時はそんな気持ちは眼中になく、考えている余裕もなかった。

 

 

 

「お、おい、その犯人の名前は分かるか……?」

 

 

 

心臓の鼓動が高鳴る。この一言で決まるのだ。なるべくならば早く述べてほしい。

 

 

 

「え?犯人の名前?え、えーっと、確か…なんて言ったっけかなぁ…………ルキ……ルキなんとかだったような………。」

 

 

 

(…………ッ!)

 

 

 

間違いない。あの子だ。

 

 

 

彼女の名前は私と同様に漢字では書くことが出来ないし、他にそんな名前が付けられた人物は見たことがない。十中八九、彼女で間違いないだろう。

 

 

 

しかしまたどうして殺人なんて行ってしまったのだろうか。

あんなに優しい子がどうして………。行動の理由に辻褄が合わない。

 

 

 

だが、理由と彼女の安否が知りたい以上、じっとしてはいられなかった。

 

 

 

「…………すまない、私は先に帰るぞ。家族の危機かもしれないのだ。」

 

 

 

「……………?…………!お、おう!なら気を付けてな!ここら辺は彷徨う者(幽霊)が出るって噂だから、あんまり夜遅くまで彷徨くなよ!」

 

 

 

彼は一瞬、私が何を言っているのか理解出来ずに首を傾げていたが、察したのかいつも通りの言葉で私を送り出してくれた。

 

 

 

私はその場から駆け出し、急いで自宅へと向かう。

 

 

 

今週一週間は父と母は弟を連れて、都会の方へ滞在している。大人にも警察にも頼れない。仮に言ったとしても頭がおかしくなった哀れな若者にしか見えないだろう。

 

 

 

彷徨う者達(幽霊)についてはここに引っ越してきたときに一回だが出会ったことがある。

当初は、ただの迷信としか考えていなかったが、奴らに出会って初めて分かった。生者が生きている中、彼らは今も現世を彷徨っている。

 

 

 

そして、そんな死者の魂は生きている我々生者の事を常に憎み、妬み、羨んでいる。それ故に夜間に消息不明になる事件が跡を立たないという。

 

 

 

そんな彼らが良く出没するこの街は特に変わっていると思う。

何しろ、住民は夕暮れになると一切外出をしなくなるのだ。彼らに聞くと「古い伝統のようなものだから」と言って皆、しらを切って言う。

 

 

 

皆、彷徨う者達に危害を加えられないためにやっている。そして、その意識はここ最近さらに強みを増したと思う。

例の事件が隣街で発生してから、商店などの閉店時間などが早まったのだ。皆、人が殺されたと分かっておきながら見てみぬふりをし、隠れることを選択する。しかも、本人達はそれを自覚すらしていない。

 

 

 

今回の事件の犯人だって彼らの被害者であることは明らかのはずなのに、捜索はなんと2日で打ち切られてしまった。

 

 

 

良心の欠片もない連中だ。何処に行っても彼らは変わらない。しかし、これで大人は頼れないというデメリットはついてきたが、心置きなく一人で探索が出来るというもの。

今まで感じていたモヤモヤした気持ちが一気に晴れた。

 

 

 

彼女には私の家族も愛着を抱いていた。一時期、彼女の両親が亡くなったときも、引き取ることも考えていた程、大切にしていた。

 

 

 

彼女が帰ってくれば、両親も弟も喜ぶはずだ。

 

 

 

早く笑顔になった彼女の顔が見てみたい。私は何度か彼女とは幼いころ会っているが、一度しか笑顔は見たことがなかった。私ともう一度出会えばきっと彼女も嬉しいはずだ。

 

 

 

そう思うと何だか力が漲ってくる。今なら、どんな困難なことでも乗り越えられそうな気がする。

早速、私は全速力で家に向かおうと考え、曲がり角に差し掛かったその時━━━━━━

 

 

 

ガンッ!!

 

 

 

「うわっ!!?」

 

 

「キャッ!?」

 

 

 

突然、曲がり角から何者かが飛び出してきて、思い切り激突してしまった。

いや、躓いたというほうが正しいだろうか。私は体制を崩し、盛大に地面に倒れ込んだ。

 

 

 

「ご、ごめんなさい!まさかこんな時間に人がまだいるとは思っていなかったので!」

 

 

 

「痛てて………こちらこそすまない、良く前を視野出来ていなかった…………………ッ!?」

 

 

 

顔を上げると、そこには予想だにしていなかった人物が佇んでいた。

なんと、声の主はまだ幼い小学生ほどの少女だった。クリーム色の髪にトレードマークと言っていいほど、とても大きな青いリボン。

 

 

 

ここまで見ればただの一般的な少女だが、注目すべき部位は腕だった。左腕がまるでハサミでそのままスッパリと切断されてしまったかのように、肘の辺りから腕が消失しているのだ。

 

 

 

驚きのあまり、私は差しのべられた手に気付くことが出来ず、まじまじとその少女を見詰めていた。

 

 

 

「君は…………。」

 

 

 

「あの、大丈夫ですか。お姉さん………?」

 

 

 

「…………ん?……あぁ、重ね重ねすまないことをしてしまった。」

 

 

 

私は目の前の彼女の手を取り、起き上がった。

 

 

 

「………フハハ、情けないものだな。貴女のような女性に手を煩わせてしまうとは。君、名前は?」

 

 

 

そうすると、何に反応したのか彼女は少し顔を赤らめ、まじまじと見詰め返されてしまう。そんなに引っ掛かるようなことを言っただろうか。ただ、名前を尋ねただけなのだがな………。

 

 

 

すると、はっとした顔をした少女が慌てた様子で声を掛けてきた。

 

 

 

「あ、はい!…………私、ハルです。よ、よろしくお願いいたします。それでお姉さんのお名前は?」

 

 

 

「おっと、名乗るのをすっかり忘れてしまっていたな。私の名は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クレイ(・・・)、「神谷 クレイ」だ。よろしく頼むぞ、ハル。」

 

 

 

これが、新たなる「深夜廻」の始まりの瞬間だった。

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