新年明けましておめでとうございます。そして、投稿遅れてしまい、申し訳ないです。どうしても休みの日はARKやDARK SOULSなど他のゲームなどに走ってしまい、疎かになってしまうのですよね(笑)
それはともかく本編いきます。
「クレイ…………さん、ですか。ず、随分変わったお名前ですね。」
「フハハハ!よく言われる。」
今、少女「ハル」の目の前には大きな声で高笑いを挙げる女の人が佇んでいる。
金髪の「クレイ」と名乗る女子高生はこの恐怖に満ち溢れた町に何一つ恐怖していない。それどころか活気溢れる感情が沸々と伝わってくる。
幾度もこの町は歩いたが、決して怖い雰囲気からは逃れられないと知っているハルは、どうしても不思議でたまらなかった。
そんな彼女が私の反応を見て、急に嬉しそうに高笑いをするものだから、ハルは一歩引いた。ちょっとおかしい人に出会ってしまったかもしれない。そうハルは思った。
「で?君は何故こんな夜に一人で徘徊しているんだ?危ないじゃないか。」
それはこっちのセリフなんだけど、とハルは言いたかったが止めた。理由は単純。なんだか面倒臭くなる予感がしたからだ。
「いえ………特に意味はないんだけど………。ただ、もうすぐ引っ越ししちゃうからもう一度………。」
「町を見納めておきたい…………と?」
「は、はい…………。」
返事を返すと再び、ハルは態度が小さくなってしまった。
ふむ、と首を傾げるクレイだったが、急に笑顔に戻ってハルに話し掛けた。
「おい、ハル!じゃあ、お前はこの町の構造に詳しいのか!?」
「え!?……う、うん、ある程度のことなら分かるけど……。」
「なら私にこの町を案内してくれ!私もこの夜の町に用があるんだ。何分私はつい最近、この町に越してきたものでな。恥ずかしい話だが、道が分からず困っていたのだ。」
突然、頼み事をされ、またまた困惑するハル。だが、押されてばかりもいられないと感じたハルは彼女の頼み事に条件を突き付けてやろうと考えた。
「じゃ、じゃあ、クレイお姉さんも私の行きたいところについてきて下さいよ。それが条件です。」
「承知した。何処へ行くのかは知らぬが、付き添ってやろう。後、ハル。悪いのだが………。」
彼女、神谷 クレイはキョロキョロと目を泳がせた後にむず痒そうに頭をポリポリと掻いた。そして、ハルに対して若干、恥ずかしそうにお願いをしてくる。
「その……………『お姉さん』という呼び方を止めてくれないか?むず痒くて敵わないのでな……。」
「あ、え?は、はい!分かりました………!」
「クレイだ。クレイでいい。」
「分かりました、クレイさん!」
どうも納得がいかなそうな表情を浮かべたクレイだったが、気を取り直して再び嬉しそうな表情に戻った。
そして、ハルに対して握手をするように手を差し伸べてきたのだ。
「改めて宜しく、友よ。所で………すっかり忘れていたがお前、何か用があって急いでいたんじゃないのか?私に勢い良くぶつかってしまったのもそれが原因なのだろう?」
「あっ!?」
彼女に言われて、ハルは今まで自分が何をしていたのか思い出した。
見失ったチャコを追いかけていたことを。彼女、クレイと完全に話し込んで忘れてしまっていたのだ。
何をやっているのだろう。早く、チャコを追いかけなきゃいけないのに。
ハルはそう思いながら、急いでポシェットを背負い直して、再びあらぬ方向へと走り出した。
クレイは、いきなり慌てて走り出したハルに驚き、急いで後を追う。
「おい!いきなりどうしたんだ!?」
「ごめんなさい!うちで飼っているワンちゃんが逃げ出したことを思い出したの!」
「本当か!?それはすまないことをした!なら、私にも手伝わせてくれ!まだ、この町には不慣れだが精一杯努力させてもらう!」
クレイは、情熱に火が付くと走るスピードが一段と増した。それどころか、かなり離れていたハルに追い付くほどまで距離が縮まっていき、いつの間にかハルに追い付いてしまったのだ。
これもクレイ、彼女の困った癖の一つだ。彼女は一度やる気の感情に火が付くとその目の前の事以外の周りが見えなくなってしまう。本来、熱血な性格なのだが、ある人物が消息になっていたため、しばらくの間だけ冷静さを取り戻していただけなのである。
とはいえ、本人はとてつもなく嬉しそうな表情で友、ハルの犬を追いかける。どんな姿かもまだ知らないのにひたすらかけ進んで行く。
少なくとも、ハルの足を引っ張るつもりはないのは確かで、何より彼女にとって嬉しかったことは大事な人が見つかるかもしれないという事実と新しい友が出来たことに違いない。
クレイはしばらく人と関わることを楽しむことを忘れてしまっていた。この感情と胸の高鳴りはきっとそこから来るものなのであろう。
ついに、彼女はハルを追い抜かした。そして、その事に気が付いていない。ただ、ブレーキが壊れた暴走列車のように走り続ける。
「ちょっと待って!クレイさん、速いよ!」
当然、ハルの声も彼女の耳には届かない。クレイの足の速度は留まることを知らず、みるみる引き離されていく。
もちろん、クレイ自身も気付いておらずに走っている。
引き離してしまって完全に置いてきてしまったことに気が付いたのは1里ほど進んだ後だった。
周辺を見渡してみても、青いリボンをした少女は見当たらない。
彼女はやってしまったと言わんばかりに頭を抱えた。
「~~~~~ッ、し、しまった………。私としたことが……。犬の特徴も聞かずに飛び出していっただけでなく、ハルまでも見失ってしまうとは………。まぁ、仕方あるまい。あの子は見た感じ、様々な困難をくぐり抜けてきた雰囲気を漂わせていたし、心配する必要はないだろう。」
ハルよりも寧ろ心配すべきなのは、自分だとクレイは察した。金属を引きずるような音が聞こえたからだ。ただの金属音でないことと物凄い殺気を感じ取り、クレイは近くの自動販売機の裏へと身を隠した。そして、顔を覗かせて様子を伺う。
(出たか…………徘徊者め………!)
彼女の推測通り、日常生活では決して見ることの出来ない形状をした
人よりは一回り小さく、一見黒いタイツを纏った男にしか見えないが、注目すべきは体ではなく頭部だった。そして、引きずっている刃物は下手をすれば使っている本人より大きい。切り刻まれでもしたら、人溜まりもないだろう。
(だが…………あれは野球ボールだな……。知能は低そうだ。)
確かに野球ボールのような頭部の特徴を模している化け物だ。それ故に、目玉と思わしき部位が何処にも見当たらない。そこで彼女は閃いた。音を操って工夫すれば、ヤツの気を反らせるかもしれないと。
そこで、彼女は近くにあった手頃の良い小石を拾った。何故かこれを投げると白い犬が飛び出して、トラックに引かれてしまうような気がした。
しかし、それはあくまでも気のせいだ。クレイは気にせずに石を投擲しようとしたその時━━━━━━━
シャキン、シャキン
また、金属音が聞こえた。いきなり出現したため、思わず彼女は再び自動販売機の物陰へと隠れ、そっと影から顔を覗かせる。
(何だ、あいつ……!?、腕………?いや、ハサミ………!?それにしては随分とまたデカイな……。)
一見、その化け物は拳のような形状をしているかと思われたが、実際にはその手のひらの中に何本か持ち手や口がくっついており、さらに背後に腕のようなものがびっしりと蠢いていていたのだ。
クレイはこの状況は好ましくないと悟った。前方には野球ボール頭をした殺人鬼、後方には謎のハサミを持った化け物だ。
まさに前門の虎、後門の狼という状況である。
(不味いな……。八方塞がりだ……、どう切り抜ける………?)
だが次の瞬間、彼女にとって奇跡と言える状況が生まれた。と同時に想定外の出来事でもあった。
ジャキン
なんとハサミを持った化け物が刃物を持った幽霊を真っ二つにしてしまったのだ。幽霊同士も殺し合いをするのだろうか、そんなことを考えて始めていたが何にせよこれは逃げるチャンスなのである。
ハサミの化け物は何かを探しているように辺りをうろうろしているため、クレイは慎重に自動販売機の裏から抜けた。
「………ふぅ、何とか撒いたか。しかし、何なのだ?アイツ、仲間を真っ二つに切断したな………。どういう関係なんだ……?化け物同士は味方じゃないのか……?」
彼女は思考を耽っていると、遠くから何か小さい生き物が吠えているのが聞こえた。
彼女は、手を耳に当て辺りの様子を伺う。
(これは…………犬の鳴き声か………!)
確信を得たクレイは、全速力で声のする方向へと向かう。すると、そこには茶色の毛並みをしたポメラニアンがいた。
「キャン、キャン!」
恐らく、この子がハルの探していたチャコという飼い犬だろう。そう目星を付けたクレイは早速ハルの元へ持って行かなければと思い、何とか手懐ける方法を考えた。
チャコは警戒しているのか、クレイに対して吠えるのを止めない。
「ほらほら、大丈夫だぞ。 私は危険な人物じゃない。お前を探していたんだチャコ。さぁ、主人の元へ帰ろう。」
そうは言っても相手は犬。言葉が通じる道理もない。それに彼にとってクレイは他人だ。そう簡単に懐く訳がない。
どうしたものかと考えていると、彼女はあることを思い付いた。制服のポケットからあるものを取り出したのだ。
それは小さな、
「これは…………私の家族が作ってくれた御守りなんだ。白い髪をした私の従妹がな。まぁ、御守りなのかは甚だ信じがたいが……。だが、これならお前も私に敵意がないことを分かってくれるだろう。」
半笑いで呟きながら、彼女はそっとそのストラップをチャコの元へと置き、一歩下がって様子を見た。
すると、やはり効果があったのかチャコは暫くそのストラップを臭いを嗅いだり、足でいじった後にそれを口にくわえてクレイのところに持ってきたのだ。
「そうかそうか!やっと分かってくれたか!全く手こずらせやがって……!」
嬉しそうに彼女はチャコの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「よし!ハルを探すぞ!」
「キャン!キャン!」
もう一度ハルを探すために、彼女はチャコを抱えてすっくと立ち上がる。そして、歩きだそうとした瞬間。人影が見えた。ユラユラとした歩き方で遠くの十字路を横切る人影。
最初は
「待ってくれ!お前、もしかして………!」
そして、彼女はチャコを抱えたまま、走り出してしまった。また、ハルにチャコを返すという目的を忘れて。