綺麗なのは山々なんだけども、雪かきめんどくさいからこれ以上降らないでほしい…………。
ということで雪と全く縁がない本編いきます。
私は暗闇にいた。
私は血縁者を殺した。
それは間違っていなかった。
血の繋がった家族だったけど、あの人は殺されて当然だった。
後悔はしていない。
彼の言うとおり、人とは欠点だらけの出来損ないだった。
どんな生き方をしても汚点というものは生まれる。
そして、それを避けることはできない。
けれど、どんな人間でも避けられない終わりというものがある。
「死」とはいつかは通過する道。避けることはできない。
世界からたった一つの光を消し去っただけなのに
なのに、何故まだこんなにも私の前には…………
何も見えない、暗く冷たい夜道は続いているのでしょうか。
あれはきっと、あの子だ。あの子に違いない。そう思った私は友の愛犬「チャコ」を抱き抱えながら、
がむしゃらに一つの事に集中して回りが見えなくなるのは私の悪い癖だ。自分でもよく理解している。だが、幼いころから直らない。どうしても目の前の事は集中しないと解決できないのだ。
つまり、私は不器用な女なのだ。分かっている、分かってはいるのだ。だから、あの子にもこんな目に会わせてしまった。
私が回りをよく視認していなかったせいで色々な人に迷惑をかけてしまっている。勿論、今友達になったハルにもだし、あの子にも。
だが、今そんな困った癖が役に立とうとしている。確実に今、私は彼女が通りの向こう側を横切ったのを私は見たのだ。
この機会を逃せば彼女を救うチャンスは二度と訪れない。見失ったら終わりだ、と自分に言い聞かせながら、私は無我夢中で追いかけた。ハルと合流することは二の次だ。後でも合流は出来る。
徐々に速度を上げていきながら、人影に追い付こうと必死になる。次第には、チャコの毛が棚引くようになるほどの速度を保ちながら、走っていた。
人影は草むらのような場所へと駆け込んでいった。明かりも持ってきていなかったため、夜道を進むに連れて足元が見えなくなってしまっている。
ここは田舎町。照明灯もそう多くはない。足元で何かに躓かないように、慎重な足取りで進むことに頭を切り替える。
そして、草むらを歩いていくうちに段々と、登り道へと変わり始め、曲がりくねった道を進んで行く。そして、気付いた時には山道へと姿を変えていた。四つの灯篭が寂しく、鎮座しておりまるで廃れきってしまった神社のように殺風景だった。
「ここは………山……か?いつの間にこんな所へ来ていたんだ………?だが、まぁいい。兎に角今は、あの子を追いかけることに専念しよう。」
そして、私は再び足を踏み出そうとした瞬間。聞き覚えのある声に呼び止められた。まだ幼い少女の声だ。
「クレイお姉さん~!待って下さい!」
後ろを振り返ると、どういう訳かハルが追いかけてきていた。
何故、この場所に私がいると分かったのだろうか。それともただの偶然か………?何にせよ、渡りに船というヤツだ。チャコを返すことができる。
………………チリン、チリン……
突如、不気味に鳴る鈴の音が聞こえてきた。嫌な予感がする。すると、辺りが冷気に包まれ、私達は一瞬身震いを起こした。
「おい、ハル!待て!止まれ!」
「えっ!?」
ハルは私の指示通りに、その場に立ち止まり、動きを止めた。チャコは平然としているが、それに続いて私も動きを止めた。
沈黙が暫く続いた後、再び鈴の音が鳴り出した。
ペタッ、ペタッ、ペタッ
泥かタールでも踏みつけた時になる生々しい足音が私達の後を通過していった。当然、私達の肉眼では確認出来ない。普通の徘徊者ならば、大抵は灯りがあれば姿を確認することが可能だが、今回は異例だ。
何しろ、今私達は電柱の真下にいるのだ。常連の徘徊者ならばとっくに見えているはず。
頬に冷や汗がつたるのを感じる。心臓の鼓動が速くなる。
(怯えているのか………?この私が………?)
「ク、クレイさん………あ、足元………!」
目線を下側へと向けるとそこにはおびただしい数の人間の足跡があった。しかも、ただの足跡ではない。その足跡は血に濡れ、真っ赤に染まっており、生臭い悪臭を放っている。
「ウッ………!?」
思わず目線を反らしてしまった。若干の吐き気も襲ってくる。息づかいもままならなくなってきた。生の血痕というのは、どうにも慣れない。自分にも流れているというのに、普段見慣れないとこうも体が拒否反応を起こしてしまうものなのか。
チリン……、チリン…………
再度、鈴が鳴り、そして止んだ。足元からは血痕は徐々に消えてゆき、気配は完全に去った。ドッと疲れが襲ってきたのか、肺に溜め込んでいた空気を一気に吐いた。私はチャコを手放し、その場に座り込んで尻餅をついた。
「はぁ、はぁ、はぁ………………!」
「チャコ!」
チャコは喜んで、主人であるハルの元へと戻っていき、ハルも嬉しそうにチャコを抱え込んだ。
「あ!そうだ、クレイお姉さん!クレイお姉さん大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ…………何とかな………ハハ。」
地面に座り込んだ私は気弱そうに情けない返事を返した。震えが止まらない。姿が確認できないだけでこんなにも恐怖が増すとは思っても見なかった。
ハルはそんな私を見て、何か難しそうな顔を浮かべた。そして、何か閃いたのか腕をならした。
「もしかして………クレイお姉さんって………。お化けとか苦手なんですか?」
「ッ!!?ハル!お前はわ、私が幽霊を怖がっていたとでも思っているのか!!?バ、バカを言え!そんな訳ないだろう!私が怖いなどと………怖いなどと………。」
必死に私は弁解した。けれど身体は正直だったようだ。私の身体は小刻みに震えていた。そして、声もまた震えていたのだ。逃れようのない状況に立たされて、その上戯れ言を吐けばそれはもう言い逃れるための言い訳にしか聞こえない。
私は悟り、素直に自分の気持ちを伝えることにした。
「…………恥ずかしい話だが、そうだ。いや、正確に言えば、幽霊が苦手という訳ではない。いつ危険にさらせられるか分からない状況下が苦手なのだ。」
「………大人ぶってるクレイお姉さんでも、そんな子供っぽい一面もあるんですね。」
「…………うるさい。」
私は恥ずかしくなり、ハルから目線を反らした。
「ん?何だ?」
目線を反らした先には、何か落ちていた。あの現象と関係があるのか分からないが、一応拾ってみることにした。
「壺?何故、こんな所に………。さっきまでここには無かったのだが、いつの間に………。」
「なんだろう、何か入ってる気配がしない?クレイお姉さん?」
とハルが不思議そうに壺の中を覗き込んできたので、私も気になって壷の中を軽く覗いてみた。しかし、何もない。だが、ハルの言うとおり、壺からは異質な気配が漂っているのが感じられる。不気味さが異様に漂っていることから私はこれを「ぶきみなツボ」と呼ぶことにした。
ネーミングセンスダサいとか言ったヤツ、こっちに来い。
しかし、今起きたあの現象は何だったのか。この壺といい、興味が絶えない。この場所では一定の確率でこのような現象が発生しているのか、はたまた偶然なのか。
いずれにしても、この場所。いや、この町はやはり何処か他の町とずれていることだけは間違いない。
あの子を見つけ出すには、もっと情報が欲しい。救いだす手段は勿論、この夜に関する情報も必要になる。ならばハルとチャコにサポートを頼みながら、渡り歩く術を身につけるしかない。
「さぁ!まずは私の用事を済ませよう。そういう約束だよ、クレイお姉さん。」
「そうだったな。よし、さっさと用事を済ませて私の頼みを聞いて貰うぞハル。」
「うん。クレイお姉さん。あ、いや、
彼女は呼んで欲しい呼び方で私を呼んでくれた。 私は嬉しくなり、思わずにやけてしまう。頼もしい相棒だ。これからも宜しく。
「あ、もう私を置いて何処かに行かないで下さいよ。探すの大変だったんですから。」
「…………以後、気を付けます………。」
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