あなたがサキュバスゆかりさんになってマキさんに幸せにしてもらう話   作:Sfon

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四月四日、四月五日

四月四日(土)

 今日はあなたがこの世界に来てから初めての週末で、この間マキさんと約束していたデートをすることになっています。休日にしては早めに起きたあなた達は朝ご飯を食べ終えると、一番好きな服を着てお出かけの準備を始めました。あなたは服を買ってもらった日にも着ていた、白いオフショルダーチュニックに桜色のカーディガンを羽織っていて、黒いミニスカートを合わせています。

 マキさんは真っ赤なノースリーブのワンピースに真っ白なジャケットを羽織りました。ワンピースの首元はV字に少し大きく開いていて、胸の谷間が覗いています。圧倒的な質量を誇る彼女の胸は寄せなくても谷間ができるほど立派なので、下着できちんと形を作ればその完成度は素晴らしいものがありました。

「もう、そんなにおっぱいばっかり見ないでよ」

 彼女はあなたの目線に気づき恥ずかしそうに腕で胸を隠しますが、照れているだけで嫌ではないようでした。本当に見せたくないのならこんな服を着るはずがなく、あなたに見てもらいたいからこのような格好をしているのです。

 服を着替えたマキさんはドレッサーの前に座ると、棚から化粧品を取り出しました。慣れた手つきで次々とあれこれメイクをしていきます。あなたは後ろから鏡越しに彼女の顔を眺め、もともと可愛い彼女の顔がますます可愛くなっていくのを魔法のように見ていました。あっという間にメイクが終わったマキさんは、あなたをドレッサーの椅子に座らせます。

「今日はゆかりちゃんにもお化粧してあげるから、ちゃんとやり方を覚えてね?」

 彼女はあなたに一つずつお化粧の手順を教えてくれます。はじめに日焼け止めを兼ねた下地のクリームを薄く塗ります。おでこと鼻の脇にパフでフェイスパウダーをポンポンとかるくはたき、基本は完成です。眉を描き、ビューラーでまつげをくるんとカールさせてから目尻にアイライナーをひいて、マスカラを塗ります。どれも控えめながら、ちょっと手を加えるだけで目がさらにぱっちりと大きくなりました。頬にはほんのりチークをぬり、最後に薄く色のついたリップをぬって完成です。

 鏡の中をのぞくと、ただでさえ可愛いあなたがさらに可愛らしくなっていました。もともとが良いので大きく変える化粧はされていませんが、顔の作りの良さがさらに際立ちます。目はぱっちり、頬はほんのりと血色がよく、唇は潤いたっぷりです。

「やっぱり、土台がいいとお化粧も楽だなぁ。もともと可愛いからしなくても気づかれないだろうけど、お化粧するとやっぱり違うね。もっともーっと可愛くなったよ?」

 お化粧をしたあなたを見て、マキさんは大満足のようです。あなたも、女の子らしさがさらに増した自分の顔を思わずじっと見てしまうでしょう。

「よし、それじゃあ出発しようか。今日はゆかりちゃんをばっちり楽しませるからね!」

 今日のデートプランはマキさんに全部任せていて、どこに行くかは着いてからのお楽しみです。マキさんは黒く艶のある革製のショルダーバックを肩にかけ、あなたの手を取って街へ続くゲートに向かいました。

 街に到着してまず初めに向かったのは、様々なブランドのお店が並ぶブティック街です。石畳で舗装された並木通りを挟んで両サイドにお店がずらっと並んでいます。

「そういえばゆかりちゃんって鞄を持っていないよね。せっかくだから今日のお出かけ中も使えるように、最初に買ってあげるよ」

 確かに、今日も着の身着のまま、手ぶらで街に出かけています。ハンカチやティッシュくらいは持ち歩きたいですし、いつかお金を稼げるようになったらお財布も持ち歩かないといけません。

 マキさんに連れられて最初に入ったお店はいかにも高級感が溢れていました。入口にドアマンがいるのは当たり前で、店内にも白い手袋をはめたスーツ姿の店員さんがお客さんを丁寧にもてなしています。客層も三十代以降の裕福そうな女性が中心でした。

「とりあえずここは覚えておいた方がいいよ。私達にはだいぶ上のブランドだけど、ここのものを持ってる人はいいものを買ってるってことだから」

 彼女はあなたの耳元に囁いて教えてくれました。確かに、その人がどんなお金の使い方をしているか分かれば生活のレベルも測れるのでしょう。これから生活するうえで役に立つかもしれません。

「価格帯も何となく覚えておこうね」

 彼女はこのブランドの定番商品の前にあなたを連れてきました。ショルダーバッグが最低二十万円、財布が最低十万円、香水が最低三万円。いかにもブランド品といった価格です。

「大人になったら、このバッグとか欲しいんだよねぇ。かわいいでしょ」

 台形で両手サイズの黒い革でできた、ワンハンドルのバッグです。肩にかけるための紐もついていて、各所についている金色の金具がアクセントになっています。シンプルで悪目立ちのしないデザインです。中の生地はピンクに染められていて、蓋を開くと外が黒いおかげでさらに色が引き立ちます。

 かわいい見た目をしていますが、お値段は五十万円と全く可愛くありません。

「貴族のご令嬢さんとかだとこういうのもう持ってたりして、すごいよね。ちょっと憧れちゃうなぁ」

 ファンタジーには貴族と平民はつきものですが、この世界にもいるようです。記憶をたどれば、この世界についてのパンフレットにも簡単に触れられていた気がします。

「貴族といっても昔みたいに領地を持っていて住民から税金を取るとか、そういう感じではないね。会社を持っていたり、政治家だったり、ほとんど普通のお金持ちと変わらないかなぁ。あ、私のうちは割と普通だと思うよ。お金持ちとまではいかないけど、私の小遣いでもゆかりちゃんを養えるくらいはあるから安心してね!」

 一緒に住んでいるとはいえ、人ひとりを養えるだけのお金が学生のお小遣いになっていると思うと十分お金持ちのような気がしますが、果たしてこの世界の基準がおかしいのかマキさんが世間知らずなのか、さすがに直接は聞けませんでした。

 次に向かったお店はもう少し気軽に入れる雰囲気でした。ブランド感は多少あるもののだいぶ客層が近くなり、十代中盤から後半の女の子も見かけます。色使いもパステルカラーが多く使われていて、大人のエレガントさというよりは女の子の可愛さが押し出されていました。

「ゆかりちゃん、何か気になるものあったら言ってね。この辺とかだったらゆかりちゃんが持ってても何の問題もないし、結構似合うかも」

 マキさんはクリーム色の革製のショルダーバッグを指さしました。蓋を鞄の正面で止めるタイプのよくあるショルダーバッグですが、ステッチがアクセントになっています。ゴールドの金具がちょっと高級感を出していて、可愛さの中に少しだけ大人っぽい雰囲気が混ざっていました。

 あなたがじっと見ていると、店員さんが手に取ってみないかと勧めてくれました。店員さんから受け取って肩にかけ、鏡の前に立ってみると、ガーリーな服の雰囲気ともよく合っています。やっぱりあなたには大人っぽいハイブランドよりもガーリーなものの方が似合うかもしれません。

 店員さんも「よくお似合いですよ」と定型文ながら褒めてくれました。お客さんみんなに言っているのだとは思いつつ、やっぱり嬉しいものは嬉しいのです。それに、マキさんも可愛いと褒めてくれました。鞄が可愛いと言っているのでしょうが、自分のことを可愛いと言ってくれているような気がしてとっても嬉しい気分になります。

 楽しい気分になってきたあなたはお店の中をちょこちょこと歩き回りながらあれこれ眺めますが、結局一番気になったのは最初にマキさんが選んでくれた鞄でした。

 あなたはもう一度その鞄を持たせてもらい、やっぱりそれが気に入ると、マキさんの様子をうかがいました。彼女はあなたの視線を受け取ると、優しく微笑んでくれます。

「それにするの?」

 あなたが頷くと、マキさんが店員さんにカードを手渡しました。クレジットカードのようなものでしょうか。店員さんはカードを受け取るといったんお店の奥に戻っていきます。

「気に入るのがあってよかったね」

 マキさんはなんだか嬉しそうです。あなたはなんだか彼女にいろいろ買ってもらってばかりなのが気になって、何度もお礼を言いました。そういえば値段を見ていませんでしたが、今となってはもう確認できません。

「女の子なんだから、かわいいバッグくらい持ってないと。今日はマニキュアとか、香水とかも買いに行こうね」

 どうやら今日はあなたの女の子度をさらに引き上げるアイテムをそろえてくれるようで、今まで全く触れてこなかった領域だけにワクワク感がつのります。お化粧をして喜んでくれたのですから、アクセサリーなどでもっとかわいく着飾ったらきっとマキさんはあなたのことをもっと好きになってくれるに違いありません。そうやって努力すれば、いつか振り向いてくれるかもしれないのです。

 マキさんと話していると店員さんが新品の鞄の入った箱を持ってきてくれました。マキさんが箱から出してもらうように伝えると、店員さんは鞄から緩衝材などを取り外してあなたに渡してくれます。

 あなたは鞄を受け取って肩にかけ、手で撫でまわしながら貰った実感を楽しみました。鏡の前に立って軽くポーズをとると、ニコニコと嬉しそうにしている自分の姿が映っています。

「そんなに嬉しがってくれるなら私も嬉しいよ。よく似合ってて可愛いね」

 マキさんもあなたに笑いかけてくれます。なんだかとっても幸せで、あなたは彼女の左腕に抱き着きました。あなたが彼女に幸せを伝える一番得意な方法はやっぱりこれで、マキさんもまんざらではなさそうです。鞄の入っていた箱の入った紙袋は彼女が持ってくれて、あなたは小躍りしそうな気分でお店を出ました。

 かわいい服を着て、かわいい鞄を肩にかけたあなたは街を歩くだけでも幸せです。さらにマキさんが隣にいる上に腕を組んでいるのですから、これ以上幸せなことは無いように思えます。あなたは鞄を眺めては、彼女にお礼を何度も言っていました。

「もう、そんなに言わなくてもいいのに。私がゆかりちゃんに持っていてほしくてプレゼントしているんだから、大切に使ってくれるだけで大満足だよ」

 彼女からもらったものは何でも大切ですが、この鞄はより一層大切に扱おうと決めました。

 次に向かったのは香水や化粧品などがたくさん取り揃えられているお店です。マキさんに手を引かれて中に入ると、あなたと同年代の女の子がたくさんいました。どうやら若い女の子に人気のお店のようです。

「割と買いやすいから、私もよく来るんだよね。いつもはお出かけに行くとき付けていくことが多いんだけど、ゆかりちゃんの嫌いな匂いだったら嫌だから付けてなかったんだ。今日は、ゆかりちゃんの好きな匂いを見つけてみようよ」

 マキさんは店員さんに声を掛け、軽めで清潔感のあるものと、女の子らしい甘めのものをそれぞれ試させてもらうようです。店員さんが細長い厚手の紙に香水を吹きかけてマキさんに渡すと、彼女はあなたの顔の前で紙を軽く揺らしてくれます。一つ目は石鹸のように清楚でさわやかな香りの中にフルーツの瑞々しさが漂いました。

「あんまり詳しくはないんだけど、付けていると時間が経つにつれて香りが変わるんだって」

 マキさんが軽く説明すると、店員さんが後を引き継いで詳しく教えてくれました。香水はアルコールの匂いが抜けたところを始まりとして、数時間かけて匂いが変化していくそうです。香りが変化したり続いたりする時間や香りの強さで種類が分かれていて、気軽に使うなら比較的変化や減衰の早いものを選ぶとよいのだとか。

 店員さんの話を聞きながら、二つ目の香水の匂いもかがせてもらいます。甘酸っぱい香りですが、時間が経つとフローラルな甘い香りに変わっていくそうです。どちらの香水の香りも嫌いではありません。

 せっかく二人でいるので、それぞれが違う香水を試しにつけさせてもらうことにしました。あなたは少し悩み、二つ目の甘めな香水を試させてもらうことにします。首元に一吹きしてもらい、暫くするとアルコールの匂いが抜けて甘酸っぱい香りが広がりました。マキさんももう一つの香水を一吹きしてもらい、清楚でさわやかな香りが広がりました。

「それじゃあ、ちょっと他のところでお買い物して、帰りにまた来ようね。今日一日試して気に入った方を選んでほしいな」

 店員さんにお礼を言って、また新しいお店へ向かいます。かわいい鞄に加えていい香りも纏ったあなたは、さらに気分が良くなっていきました。

「香水とか、マニキュアとか、自分で嗅いだり見たりするだけでもテンション上がるんだよね。学校じゃあんまりできないけど、休みの日くらいは、ね」

 マキさんは続いてネイル用品を取り扱っているお店に向かおうとしていたようですが、いつの間にかお昼時になっていました。鞄を見たり、街のショーウィンドウを眺めたりしているうちに思ったよりも時間が経っていたようです。

 マキさんに連れられて向かった先は、街で一番おいしいと噂らしいカフェでした。少し早めについたおかげで、あまり並ばずにお店に入ることができます。お店の中は明るい色の木製家具を基調とした暖かい雰囲気で、ここもあなたと同年代の女の子がたくさんいました。

「ここのお店、一度来てみたかったんだ。パンケーキが有名なんだって」

 店員さんに案内されて席につき、机の上のメニューを手に取ると表紙には大きくパンケーキの写真が載っていました。スフレタイプの小ぶりで厚いパンケーキの上にバターとシロップがたっぷりかかっています。ほかにはスコーンやワッフルなどもあり、どれを注文しようか目移りしてしまいます。あなたが悩んでいると、マキさんが嬉しい提案をしてくれました。

「ね、二人でパンケーキと何か他のを注文して分け合いっこしない? せっかくだからいろいろ試したくなっちゃって。どうかな?」

 注文を決めかねていたあなたはすぐその誘いに乗りますが、パンケーキは確定としても、もう一つを何にするか悩んでしまいます。スコーンもワッフルもとてもおいしそうで選べません。

 あなたが悩んでいると、マキさんが再び助け舟を出してくれました。

「じゃあ今回はワッフルにしておいて、また今度来た時にはスコーンを頼もうよ。午後に来ておやつにしてもいいし、どう?」

 さらっと次回の予定を取り付ける彼女のイケメン具合に驚きつつ、あなたはその案に乗りました。店員さんを呼ぼうとするとマキさんが先に声を掛けてくれて、あなたの分まで注文を済ませてしまいます。なんだか特別扱いされている気分です。

「なに、どうかした?」

 あなたは何となく、マキさんの顔をまじまじと見てしまいました。恋人にするなら、やっぱりマキさんみたいな人が理想な気がします。自分を引っ張ってくれて、何となく頼りがいのある彼女と一緒に居れば困ることはなさそうです。されているばかりだと悪いので何かお返しはしてあげたいですが、お金を持っているわけでもなく、勉強を手伝えるわけでもないので困ってしまいます。

 あなたは何かしてほしいことが無いか尋ねましたが、彼女はあなたに見返りを求めているわけではないようです。

「うーん、笑っていてくれるのが一番かなぁ……。かわいい服を着て、幸せに暮らしてくれてたらそれで正直満足なんだよね」

 欲が無いのはいいことかもしれませんが、ここまで求められないと逆に困りものです。あなたはせめてできることをと思い、着せたい服があったら何でも着るといってほかの話題に移ろうとしました。

 ところが、マキさんはあなたの発言に食いつきました。「何でも着るっていった?」とどこかで聞いたようなセリフを口走り、あなたが若干引きつつも肯定すると、彼女は満面の笑みを浮かべました。なんだか嫌な予感がします。

 マキさんがあなたを眺めながらニヤニヤしているのを赤面しながらしばらく耐えていると、注文した料理が到着しました。とりわけ用の皿とともにふわふわのパンケーキとワッフルが並び、甘く良いにおいが広がります。

 スポンジケーキのように柔らかいながらもしっとりとしたパンケーキはバターやシロップとの相性が抜群で、次から次へと口に運んでもペースが落ちません。ワッフルは外側がサクサクとしているのに噛むともちもちとした弾力があって、かかっているチョコソースやホイップクリームも完璧です。時折マキさんに「もう少し小さく口を開けて食べないとダメだよ?」と注意されてしまい気を付けるのですが、あまりにおいしくてすぐ頭から抜け落ちそうになってしまいます。

 淫魔になって便利になった体質に、いくら食べても太らないというものもありました。バターやシロップ、生クリームなど、カロリーの高いものは総じておいしいのです。それらをいくら楽しんでも体形に影響が出ないなんて、なんと都合のいい体なのでしょう。あなたは悩む必要がないのをいいことに、甘くておいしいお昼を心の底から堪能しました。

 

 ご飯を食べ終え、あなたの食べっぷりに若干嫉妬していたマキさんが連れてきたお店で、あなたは顔を真っ赤にしていました。ここはランジェリーショップ。異性を誘うために作られたような向こうの透けて見える生地のベビードールや、背中が大きく空いたネグリジェなどがたくさん取り揃えてありました。

「ゆかりちゃんは大人っぽい雰囲気もいけるからこういうのも結構似合うね。やっぱりこういうのはスレンダーな子が着るのが一番だわ、うん」

 何でも着ると言質を取られたあなたは彼女に抵抗できず、目線の行方に困りながら彼女の後ろをついて回っています。彼女が持っている籠にはすでに何枚もの扇情的な寝間着や下着が突っ込まれていました。レースで飾られた黒い下着のセットや肩が丸見えの白いスケスケベビードールをはじめとして、紫やピンクなどの色違いも次々に追加されていきます。

「これから風呂上りには基本的にこれを着てもらおうかなぁ。なんでも着てくれるんだよね、ありがとう!」

 今のあなたにできることといえば、自分の体を彼女の好きなように使ってもらうことくらいです。彼女が喜んでくれるならどんな服でも着てあげたいとは思いますが、恥ずかしいのに変わりはありませんでした。

 ほくほく顔でランジェリーショップを後にしたマキさんとは対照的に、あなたはすっかり萎縮してしまっていました。大人の女性の雰囲気が漂う店内にすっかりあてられてしまったのです。ちょっとは罪悪感があったのか、マキさんはあなたを公園に連れていきました。

 ちょっとした森の中にある公園には中央の湖を囲むようにベンチが置かれています。マキさんと隣り合ってベンチに座ると心地よい風が吹き、葉擦れと鳥の歌声が穏やかな時間を作り出していました。街の喧騒からは隔離され、少しは気持ちが落ちつくでしょう。

「ゆかりちゃん、膝枕してあげようか?」

 あたりに耳を傾けていたあなたを怒っているもののとらえたのか、彼女がおずおずと申し出ました。お店ではしゃぎ過ぎていたのは自覚があるようです。化粧で服が汚れないように太ももにハンカチを敷いてから膝をポンポンと叩いてみせるので、あなたはお誘いに甘えることにしました。大好きな人に膝枕をしてもらうなんて、なんだかドラマの一幕みたいなシチュエーションです。

 彼女と反対側を向いてベンチに横になり、太ももに頭をのせます。彼女の柔らかい感触が頬や耳に伝わってきてちょっとドキドキしますが、頭をなでられているとだんだんリラックスしてきました。

 春の暖かな日差しと風のおかげでだんだんと眠くなってきたあなたは、自然と目を閉じ、彼女に身を預けました。首元に吹きかけて貰った香水は甘い花の香りに変化していて、周りの青々とした木々の匂いの上に漂っています。

「起こしてあげるから、寝ちゃって大丈夫だよ。風が気持ちよくて眠くなっちゃうでしょ」

 彼女の手があなたの頭を優しく撫で、すっかりリラックスしたあなたは心地よいまどろみに身を任せました。

 

「ゆかりちゃん、そろそろ夕方になっちゃうよ」

 あなたが軽く肩をゆすられて目を覚ますと、日はだいぶ傾いていました。体を起こすと、なんだか気分がすっきりしています。心地いい風と香水の香りのおかげでしょうか。

「あんまり遅くなっても寒くなっちゃうし、香水を買って帰ろうか」

 あなたはマキさんに連れられて、午前中に香水を試したお店に向かいます。マキさんが紙袋を全部持ってくれていることに今更気づきましたが、「だって手をつなぎたいでしょ?」と微笑みながら腕を差し出されては無理に持てません。あなたは彼女の左手と手をつなぎ、途中からそっと恋人つなぎにして、抱き着いて歩きました。

 彼女の腕に抱き付くとき、あなたは意識して自分の胸を押し付けてみました。自分の女の子の部分をできるだけマキさんに意識してほしくなったのです。あまり大きくないとはいえ、くっつけば柔らかさが伝わるでしょう。これで彼女があなたの気持ちの本気度に気づいてくれればいいのですが、彼女はなんとも思っていないような雰囲気でちょっと悔しい気持ちになりました。

 お店につくまで、どちらの香水の方が好きかマキさんと話していました。女の子らしい香りという点では自分にかけてもらった甘いにおいの香水が好きですが、マキさんには清潔感のある香水も似合っていると感じます。今思えば、店員さんが選んでくれた二つの香りはあなたとマキさん、それぞれによく似合っているような気がしました。しかし、どうせなら一緒の匂いを付けたい気持ちもあります。なかなか悩ましいところです。

 お店についても、二つの香りで悩んでいました。両方買ってもいいと彼女から提案されましたが、あなたがお揃いの匂いがいいというと黙ってしまいます。女の子らしい方か、清潔感のある方か。しばらく考えていると、店員さんが新しい香水を差し出してくれました。

 はじめはシトラスのようなさっぱりした香りが広がり、徐々にフローラルな香りに変わっていく香水だと言います。紙に吹き付けて少ししてからかがせてもらった香りは清潔感のあるさっぱりとした香りですが、数回振って十分に乾かすと花の甘い香りに変化しました。これなら、悩んでいた二つの香りの好きなところが両方詰まっています。

 あなたはこの香りをとても気にいり、マキさんも同じように気に入ってくれました。首元に一吹きしてもらうと、さっぱりとした香りが広がります。家に帰ったころには甘い香りに変わっているでしょう。

 あなたとマキさんは顔を見合わせると、お互いにクスリと笑いました。二人の匂いが両方感じられる香水が見つかって大満足です。マキさんが支払いを済ませ、店員から紙袋を受け取って帰路につきました。

 鞄に服、香水と女の子度の上がったあなたを見てマキさんはずいぶん嬉しそうです。片手に紙袋を三つも持ち、もう一方はあなたに抱き着かれているのに足取りは軽やかでした。あなたが今日一日楽しかったとお礼を言うと、ますます嬉しそうに笑顔を浮かべます。

「わたしも、ゆかりちゃんとゆっくりお買い物できて楽しかったよ。かわいい鞄も買えたし、香水も買えたし、まぁ、服もね。できたら着てほしいけど、無理はしなくていいよ。悪乗りで買っちゃったところもあるし……」

 彼女は半ば無理やりセクシーな服を買ったことをずいぶん気にしているようでした。そんなに気にされてはかえって悪いことをしている気分になるし、彼女の喜ぶことをしてあげたいとも思うのです。あなたは彼女が喜んでくれるならと思って、毎日は難しいかもしれないが週一回くらいなら着てもいいと伝えると、彼女は途端に破顔し、お礼まで言い始めました。現金な人だなぁと思いながらも、自分がする格好を楽しみにしてくれるのは悪い気がしませんでした。

 

 寮に戻り、晩御飯を食べている間もマキさんはずっとソワソワしていました。よほどあなたが今日買った服を着るのを楽しみにしているのでしょう。今日着るとは言っていないのですが、そんなに期待されては応えるしかありません。マキさんを置いて先にシャワーから上がったあなたはスウェットを着て部屋にもどり、ベッドの上に買った服を広げて眺めます。

 黒いレースの下着セット。白く向こうが透けて見えるオフショルダーのベビードールとTバックのセット。背中が大きくあいている紫やピンクのネグリジェやキャミソールなど、どれも体のラインは見えてあたりまえのつくりをしています。丈は短いものが多く、ベビードールは太ももの真ん中あたりまでしかありません。悩みに悩んだあなたは白のベビードールを着ることにしましたが、さすがにTバックははくのが恥ずかしいので黒いレースの下着を履き、その上からいつものパーカーを羽織りました。少なくとも、部屋の明るいうちは恥ずかしくてパーカーを脱ぎたくはありません。

 今日着なかった服をハンガーにかけて自分のクローゼットにしまっていると、白いネグリジェ姿のマキさんが帰ってきました。あらかじめ服に吹きかけてあったのか、今日買った香水の、さっぱりしたシトラスの香りが漂います。格好はばっちりなのに、期待しながら帰ってきたのか、顔が若干にやけています。彼女曰く恋愛対象は男性で女の子も無しではないらしいですが、この様子だけ見れば女の子バッチコイな百合女子に思えました。

 部屋に戻ってきた彼女はあなたの格好に気が付くと上から順に眺めていき、視線が太ももで止まりました。あなたはパーカーの裾を引っ張ってできるだけ隠そうとします。ベビードールの裾がパーカーよりも短いせいで、はたから見たらパーカーしか着ていないように見えてしまうのです。寝る前なので靴下を履く訳もなく、生足をさらしているので普段よりもいっそう恥ずかしさが増していました。

「お茶飲む?」

 あなたから視線を外したマキさんがいつものように飲み物を差し出してくれました。あなたはそれを受け取り、ベッドに腰掛けます。ベッドの感触で自分が下にショーツ一枚しか履いていないのを自覚してしまい、足をぴったりとくっつけてもそれは変わらないので、あなたはマキさんに早く照明を消すようお願いしました。このままゆっくりしていても落ち着かないので、早くベッドに入ってしまおうと考えたのです。

 彼女はあなたのお願いを素直に聞き入れ、照明を消してからソファーに座りました。そしてお茶を一口飲んでから、あなたにパーカーを脱ぐようリクエストします。パーカーの下に着ているのだから、買ってもらった服を着る約束は果たしたと言い張ることもできるでしょうが、せっかく買ってもらったのですからちゃんと見せてあげないといけない気もします。

 それに、もしも自分の格好を見て興奮してくれたら嬉しいな、と期待もしていました。昨日あなたが紫のオフショルダーワンピースを着たときは、彼女からキスをしてくれたのです。それも、思い返せば魔力はゲートでの移動位でしか使っていなかったので、キスする必要はなかったのにしてくれたのです。あれはきっと、あなたの格好をみた彼女が興奮してくれたのではないでしょうか。

 パーカーを脱ごうとするあなたの胸はどんどん高鳴っていました。まるで初夜を迎える若い娘のような気分です。彼女の視線は遠慮なくあなたの体に突き刺さり、意識しないではいられません。でも、それだけ期待してくれている彼女の気持ちが感じられてちょっと嬉しくなってもきました。

「ほら、立ってパーカーを脱いで見せてよ」

 貴方は彼女のお願い通り、ベッドから立ち上がってパーカーのチャックをゆっくりと下ろしました。部屋の空気が胸元から入ってきてベビードールを揺らします。薄く軽い素材でできているため、ちょっとした風でも動くのです。

 パーカーのチャックを全て下ろしたあなたは、ここで詰まってもどんどん恥ずかしくなるだけだと思って勢いよくパーカーを脱ぎ、ベッドの上に置きました。これであなたは下着の上によく透けて見えるベビードールだけを着た姿になったのです。

 なぜか下着姿を見られているよりも胸がドキドキと早鐘を撃ちます。それもそのはず、この服を着ているということは、相手に見せるためにこの格好をしているというサインなのです。着替え途中に下着姿になっているのとはわけが違います。あなたはレースの付いた大人っぽいデザインの黒い下着をつけている姿を彼女に見てもらうために、わざわざこうして透けるネグリジェを着ているのです。

 上半身はベビードールがギリギリ透けない厚みになっているおかげで、ブラを付けなくてもあなたの胸が見えることはありません。胸元にはフリルが付いているので、先端が浮き出てることもありません。しかし、その代わりおなかから下は可能な限り薄い生地が使われているせいで肌の色やおへその形、腰の括れ、ショーツの色や柄、太ももの付け根、そしてお尻の形が丸見えです。

 恥ずかしくてうつむきたくなりますが、彼女の顔が見えなくなって反応が分からないのはどうしても不安で、横目でちらちらと様子をうかがいます。マキさんはあなたの姿をじっと真顔で見つめ、視線を上下に動かしていました。

 せめて何か言ってくれないかと思いながら耐えること数分。ようやく彼女が反応を返してくれました。彼女はソファーから立ち上がるとあなたのすぐ前に立って囁きます。

「ゆかりちゃん、かわいいよ。普段と違って大人っぽいゆかりちゃんもとっても魅力的だね。よく似合ってる」

 彼女はそう言いながらあなたの頬を撫で、首から肩へと手を這わせていきます。素肌の上をすべる彼女の手からは快感が走り、思わず肩をすくめてしまいました。彼女の手はそのまま腕を撫で、手を取ると自分の腰に回してあなたに抱きしめさせました。あなたが彼女に誘われるまま両手で腰を抱きしめると、彼女はあなたの顎とうなじに手を当てます。少し細くなった彼女の目があなたを見つめました。

「それじゃあ、今日もキス、するよ」

 今日も魔力をほとんど使っていないので精力の補給も必要ありませんが、それでも彼女はあなたにキスをしてくれるようです。あなたは目を閉じて、彼女を受け入れました。唇に熱を感じながら薄い布越しに肩や背中、そしてお尻を撫でられるといよいよもって雰囲気にのまれてしまいます。胸には自信がありませんが、お尻の柔らかさはなかなかのものだと思っているあなたは、彼女がお尻を撫でてくれるほどに、もっとしてほしい気分になってきます。あなたの頭はすでに彼女に体を捧げる気分になっていて、体をぎゅっと押し付けました。あなたも彼女の背中を撫でながらキスに応え、お互いに熱を交換しあいます。

 いつしかキスはただ触れ合うものからもっと深いものに変わっていきました。唇をなめられたり、甘噛みされたりするたびに体が快感で跳ね、快感を覚えていることをマキさんに伝えてしまいます。そんなあなたの反応に気をよくした彼女は小さく笑うと、あなたの口の中に舌を差し伸べてさらに深くまであなたを侵食しました。

 彼女にキスをされるたび、あなたは彼女が愛おしく思えて仕方がありません。自分を求めてくれる彼女が大好きで、もっと深くまで奪ってほしい欲望があふれてきます。キスだけでもこんなに気持ちがいいのに、彼女から体を求めてくれたらどんなに気持ちが良いのだろう。精力不足で理性が飛んでいない、自我のはっきりした状態で彼女に触れられたらどんなに幸せなのだろうと想像するだけで、下着が湿ってくる気がします。

 彼女の舌はあなたの舌をからめとるように舐め回し、口蓋をなぞりました。そのたびにあなたの喉からは声が漏れ、鼻から抜けていやらしい響きとなり、部屋に響きます。あたりにはあなたの声と口から響く水音、そしてあなたとマキさんの吐息が充満しました。彼女から漂う香りはシトラスから花のフローラルなものに変わり、お互いの体温が上がっているのが伝わります。

 触覚も嗅覚も聴覚も彼女に支配され、あなたは彼女のとりこになってしまいました。自分のすべてを彼女に捧げたい。自分を好きに使って喜んでもらいたい。頭のてっぺんから足のつま先まで、全部彼女に貰ってほしい。そんな思いでいっぱいです。

 しかし、あなたの思いが彼女に届く前に、夢のような時間は終わってしまいました。彼女はあなたから腕を離すと、あなたが回していた腕をそっと外します。もう終わってしまうのか、続きはないのかとあなたは彼女を物欲しそうに見つめますが、応えてはくれません。

「はい、今日の分のキスはこれで終わり。さあ、寝ようか」

 彼女は一足先にベッドに潜り込み、あなたも早く入るように手招きしました。彼女はもう気持ちを切り替えているようですが、あなたの欲求は消えません。向こうを向いて寝ている彼女の背中に抱き着くと、全身を密着させました。

 うなじに顔を押し付け、鼻から息を吸うと彼女の甘酸っぱいにおいが胸いっぱいに広がります。濃厚なキスをされたあなたは我慢できなくなって、彼女にねだりました。ここで止めないでほしい。この前みたいにもっと体を触ってほしい、とできるだけ甘い声で彼女に訴えます。はしたない女の子だと思われてしまうかもしれませんが、どうしても彼女に触ってもらいたくなったのです。

 ごくり、と彼女がつばを飲み込んだ音が聞こえましたが、それ以上の反応はありませんでした。彼女は少し身じろぎをしてから深呼吸をして、このまま寝るアピールをします。どうやらあなたの誘惑はある程度効いたようですが、一線を越えることはできなかったようです。

 あなたは耐え切れなくなって、彼女に回していた腕を外し、下着の中に手を差し込もうとしました。彼女がそばにいるのももはや関係ありません。それほどまでに追い詰められているのです。

 しかし、それは彼女に止められてしまいました。あなたの腕を彼女がつかみ、抱きしめるのをやめさせてくれなかったのです。

「だめだよ、ゆかりちゃん。女の子なんだから自分でしちゃだめ。我慢だよ」

 彼女から言われてはどうしようもありません。彼女は自分を養ってくれているのです。こうして満足に服を買い与えてもらい、アクセサリーや鞄、香水も買ってくれているのですから、いうことは聞かないといけないでしょう。それに、大好きな彼女の言葉はあなたの中で絶対でした。

 しかし、体の熱はそう簡単に下がりません。あなたは日が昇るまでずっと欲望と抗い続け、やがて気絶するように意識を手放しました。

 

 

四月五日(日)

 翌朝目覚めるとマキさんは腕の中からすでに抜け出していました。ベッドから起きると、布団から出た途端に薄い布地が肌にひらひらとあたり、今自分がしている格好を思い出します。窓からは朝日が差し込んでいて部屋の中は十分明るく、あなたが身にまとっているスケスケの白いベビードールもレースの黒い下着もよく見えました。

 あなたが思わず布団を手繰り寄せて体に巻き付け、部屋の中を見渡すと、マキさんがソファーに座ってあなたを眺めていました。

「おはよ」

 彼女は笑顔を作って挨拶してくれますがどこかぎこちない様子です。きっと、あなたが昨晩ベッドの上で彼女を求めたからでしょう。あなたは彼女の表情で昨晩の出来事を思い出し、挨拶するや否やどうしてキスはしてくれるのに体は触ってくれないのか聞きました。

「だって、キスはゆかりちゃんの精力を回復するのに必要だからやっているんだよ。この間は事故が起きちゃってあれしか方法が無かったからゆかりちゃんの体を触ったけど、昨日はそこまで精力を消費していなかったでしょ」

 気まずそうに答えた彼女の弁は最もではありますが、それを言うなら昨日はキスする必要もなかったはずです。その前、結月ゆかりの衣装を着たときも、たいして精力を消費していないのに彼女からキスをしてくれました。それはどういうことなのか彼女に聞いてみると、あからさまに視線をそらされ、いじけたようにぽつりぽつりとあなたに呟きます。

「だって、あんな格好をされたら、その、さすがに私も我慢できないっていうか……。でも、体はダメなの。私は魔術師、ゆかりちゃんは使い魔なんだから。私はそのうち男の人と結婚するんだし、その人と同じくらい深い仲になるわけにはいかないの」

 どうやら彼女はあなたの姿を魅力的に感じてくれていたようです。少し照れたように顔を赤らめながら話す彼女の姿はまるで初恋に戸惑う少女のようで、今にも抱きしめたいほどでした。しかし、ここで手を緩めるわけにはいきません。

 あなたはもう、彼女を諦められなくなっていました。魔術師とか使い魔とか関係なく、彼女ともっと深い仲になっていちゃいちゃしてラブラブになって暮らしたいのです。あなたはどうして男の人と結婚しないといけないのか、自分では満足できないのかと問いただします。

「ゆかりちゃんは可愛いし、とっても好きだよ。でもダメなの。お父さんに私が生んだ子供を見せないといけないんだから、女の子同士はダメ。ちゃんと家庭を作って、お父さんに報告して、安心させてあげなきゃダメなの」

 親を安心させたいという彼女の気持ちはわかります。しかしあなたはどうしても彼女をあきらめることができません。あなたは口を真横に結んで彼女を不満げにじっと見つめますが、彼女は黙ってうつむいたままでした。やがて朝ご飯の時間が近づき、彼女はそれを口実に洗面と着替えを済ませます。今日の彼女は白いワンピースを着ていました。あなたはその間ずっとベッドの上で自分の体を抱きしめ、彼女を眺めていました。

「ゆかりちゃんも着替えて、朝ご飯を食べてね。今日はお父さんにゆかりちゃんを紹介しないといけないから。この間から使い魔をみせろみせろってうるさくて……」

 そう言い残して朝ご飯代を机の上に置いた彼女は、一足先にご飯を食べに行きました。部屋に一人残されたあなたは大きくため息を一つつくと、布団を脱いでベッドからおりました。鏡の前に立ってみると、扇情的な服装をした結月ゆかりがあなたを見つめ返しています。その表情は暗く、何か思い詰めているようでした。あなたは気持ちを切り替えるためにも洗面を済ませ、服を着替えます。今日は白いブラウスに紺のジャンパスカートにしてみました。丈がふくらはぎまであるジャンパスカートは落ち着いた雰囲気で、昨日買ってくれた鞄を肩にかけてみるとよく似合っています。あなたはご飯代の入った封筒をもってマキさんが向かう生徒用のものとは違う、一般に開放されている食堂に向かいました。

 一人で朝ご飯をすませて部屋に戻ると、マキさんがお化粧をしていました。あなたがソファーに座っていると、化粧を終えた彼女があなたをドレッサーの前に呼びます。

「ほら、まだ練習してないし、今日は私がしてあげるからここに座って」

 昨日お化粧をしてもらったときは気分が上がっていたのに、今日は退屈に感じます。鏡の中でどんどん可愛くなっていく自分の表情は相変わらず浮かないものでした。お化粧が終わり、最後に香水を首元に一吹きしてもらったあなたは、マキさんに連れられて学校にあるゲート広場に向かいます。

 学校の玄関にほど近いそこには屋外にたくさんの門が並んでいます。黒曜石のような深い紫色に輝く石でできた高さ五メートル、幅四メートルほどの長方形の枠の中に、紫色の光の幕が張っています。これが何度か使ったことのあるワープゲートのような装置です。マキさんが門に触れて何やら操作すると、紫色の光の幕の向こうにうっすらとまだ見たことのない街角の景色が映りました。ある一定の範囲内であれば、門同士を自由につなげて通ることができるらしく、あなたは彼女に手を引かれ、門をくぐり抜けました。

 通った先に広がっていたのは、昨日遊んだ街よりも少し落ち着いた雰囲気の商店街でした。彼女に連れられて歩くと遠くでは朝市が行われていたり、レストランが開店作業をしていたり、これぞ欧州の街並みといった雰囲気があります。広場の噴水の脇を通り、しばらく商店街を奥に進んだところで彼女は立ち止まりました。目の前にはどこか馴染みのある、喫茶店があります。

「ここが私の家だよ。お父さんが喫茶店のマスターをしているの。お父さんには私から全部説明するから、ゆかりちゃんは静かに私の後ろに立っていてね。さすがに、一から十まで言うわけにもいかないからさ」

 確かに、実の娘から「私の使い魔は淫魔です」といわれる父親の気分は計り知れません。あなたが頷くと、マキさんに連れられて『準備中』の看板がかかったお店の入り口から入りました。

 店内に入ると入店を告げるベルがカランコロンと鳴りました。店の中はシンプルで、四人掛けのテーブルが通りに面した窓際に三つあり、カウンター席も六つほどあります。グラスや食器の並べられたカウンターの奥には、初老の男性が立っていました。マキさんの父親のようです。

「ただいま、お父さん」

「おかえり、マキ。その子は?」

「紹介するね、私の使い魔のゆかりちゃん」

 あなたが軽くお辞儀をすると、男性はあなたの顔をじっと真顔で見つめました。一人娘をもらいに来た彼氏もこんな気分なのでしょうか、なんだか底知れない圧力を感じます。あなたもその視線に負けじと気を張り、綺麗な姿勢で見つめ返すと、ふっとその圧力が和らぎました。彼は一転して柔和な笑みを浮かべ、あなたを迎え入れます。

「マキの父です。娘が世話になってるね。使い魔を連れてきてくれるとは聞いていたけど、まさかこんなに可愛い女の子だとは」

「ちょっと、変な目で見ないでよ? どうして使い魔になったのかよくわかってないけど、女の子に違いはないんだから」

「大丈夫、わかってるよ。コーヒーが入ったら持って行ってあげるから、部屋でゆっくりしてきたらいいんじゃないかい?」

「そうだね。ゆかりちゃん、行こうか」

 マキさんはあなたの手を引き、カウンター脇の通路を進み、少し急な木製の階段を上っていきます。細い板張りの廊下を進んだ先には、『マキの部屋』と小さな看板のかかった扉がありました。マキさんが扉を少しだけ開けて中の様子を確認してからあなたを迎え入れます。

「ここが私の部屋だよ。十二歳くらいまで使ってた部屋だから子供っぽいでしょ」

 床には白いカーペットが敷かれ、ベッドやカーテンもパステルカラーの可愛らしいものでした。椅子や机、棚にも花を模した彫刻がされていて、いかにも女の子の部屋といった印象です。確かに、寮の彼女の部屋はもう少し落ち着いた雰囲気でした。

「なにか面白いものあるかなぁ……。あ、アルバムとかあるよ。見てみる?」

 あなたが彼女から受け取ったのは、分厚い革の表紙のアルバムです。ずっしりと重く、大きさも四辺が手首からひじ先くらいまではあります。一言断って表紙をめくると、生まれたばかりの赤ちゃんの写真が貼ってありました。横には『マキ誕生』と書かれたメモが付いています。

「自分のアルバムを見せるの、なんかちょっと恥ずかしいね……」

 ほほを掻いて照れ臭そうにしているマキさんを横目にペラペラとページをめくっていくと、写真の中のマキさんがだんだん成長していきます。初めてのクリスマス、誕生日、幼稚園の入学式、イベントごとにおめかしして写真に写る彼女はどれもかわいらしいのですが、どこかに違和感がありました。

 しばらく眺めて、その違和感の正体に気づきました。父親の姿はしばしば写っているのに、母親らしきの姿はないのです。その代わり、若い二人の女性がしばしば彼女の父親とともに写真に写っています。あなたは彼女に聞いてみようかと一瞬考えましたが、プライベートなことは彼女から話してくれるまで触れない方がいいと口をつぐみました。

 もっとも、その疑問についてはそう時間が経たないうちに彼女から話してくれました。

「私のお母さんは私が生まれてすぐに死んじゃったみたいなんだよね。その代わりに、お父さんのお母さんとその知り合いがお父さんの子育てを助けてくれたんだ。そこに写ってる二人がそうね。小学校に入るくらいまではこまめに家に来てくれて、いろいろ教えてくれたよ。もちろん、お父さんも頑張ってたんだけど、二人に言わせれば危なっかしくてしょうがなかったんだって」

 あなたは写真を指差し、本当にこの若い、いくら多く見積もっても三十台の女性が彼女の父の母親であるか聞き返します。

「見た目すっごく若いよね。ほんと、なんでこんなに若く見えるのかわからないけど、確かに私のおばあちゃんだよ」

 マキさんは当時を思い出して懐かしんでいるようで、決して悲しんではいないようです。彼女はアルバムをめくり、写真を見ながら昔話をしてくれました。キャンプに行った話、みんなで劇場に行った話、学校の友達も読んでクリスマスパーティーをした話。どの話をしているときも幸せそうです。

 彼女にとって唯一の肉親である父親を早く安心させたい、そんな彼女の気持ちがうっすらと伝わってきます。男性と結婚してちゃんと家庭を作り、子供をもうけて幸せに暮らしたい。片親家庭に育った彼女には、その気持ちが余計に強いのかもしれません。彼女ともっと仲良くなりたい気持ちは抜けませんが、彼女の幸せを思うと手を引くしかないのかもしれないとあなたは感じました。

 しばらくアルバムを眺めていると、彼女の父がコーヒーの入ったマグカップを片手に持ってやってきました。

「マキ、ちょっと話があるからきてくれるかい? ゆかりちゃんはアルバムでも眺めて待っていてほしい」

「わかった。ゆかりちゃん、ちょっと待っててね」

 彼女の父はマグカップと一緒に砂糖とミルク、スプーンをあなたに渡すと、部屋を出ました。マキさんも彼の後をついて部屋から出て、あなたの周りは急に静かになります。コーヒーを一口飲んでみると苦くてとても飲めず、砂糖とミルクをたっぷり入れて甘くしてから口を付けました。

 彼女が帰ってくるまでアルバムを眺めていると、ふと気になるものが目に入りました。キャンプの一幕、マキさんを中心に彼女の父親と仲のいい女性二人が横に並んでいる写真です。パッと見ただけでは何の変哲もない写真ですが、その女性二人に注目すると見過ごせないものがうつっています。片割れの上着の丈が短くへそが出ているのですが、穿いているデニムのウエストからわずかに、二つの山が横に並んだ刺青のようなものが覗いているのです。

 ほかの写真にも同じようなものがうつっていました。水着を着ている写真には、化粧品か何かで隠されてはいますが、うっすらとハート型の模様が見える気がします。あなたにはよく見覚えのあるマークです。なにせ、自分の下腹部にもよく似たものが付いているのですから。もしかしたら、この女性はあなたと同じ淫魔なのかもしれません。

 ということは、彼女の父親は淫魔と誰かの間に生まれたということになります。話しぶりやあなたが淫魔だと父親に打ち明けていないところを見ると彼女は気づいていないようですが、これがもし事実だとしたらなかなか見過ごせません。もしかしたら、自分がマキさんと幸せになるための突破口になるかもしれないのです。

 アルバムを眺めていると、マキさんが帰ってきました。

「ただいま。用事も済ませたし、そろそろ帰ろうか」

 あなたを迎えに来た彼女の表情は晴れやかです。二人で話していて何かあったのでしょうか、ずいぶんとすっきりした様子です。あなたは彼女に連れられて生家を後にし、昨日も来た街のカフェでパンケーキとスコーンを食べて帰りました。

 

 寮に帰ったあなたは部屋着に着替え、ベッドの上でゴロゴロしていました。今着ているのは昨日買ってもらった紫のオフショルダーワンピースと黒いうさ耳パーカーです。ちょっとでも彼女の気を引けるなら、この位の恥ずかしさは我慢できる気分になっていました。

 あなたがうつぶせになってマキさんの持っていた百合小説を読んでいると、居住まいをただしたマキさんがあなたに話しかけました。

「ゆかりちゃん、ちょっとお話があるんだ」

 妙に緊張した面持ちの彼女をみて何かあるのかと感じたあなたは、ベッドの上で正座して彼女に対面します。彼女を緊張させないように柔らかい表情を意識して彼女に向き合っていると、意を決した彼女が口を開きました。

「私、ゆかりちゃんにちゃんと向き合おうと思う」

 あなたは意図を測りかねていました。すでに彼女は服やバッグ、香水を買ってくれたり、化粧を教えてくれたりと、女の子としてきちんと向き合ってくれているように思えます。しかし、彼女にとっては違うようです。

「私ね、今まで絶対に男の人と結婚しないとって思ってた。でも、今日お父さんのところに行ったらさ、『家の存続とか考えないで、きちんと好きな人と結婚するんだぞ』って言われちゃってさ……。なんだか全部お見通しだったみたい」

 それはまるで、女の子と結婚しようとしていると言っているような口ぶりです。

「私、頑張って好きな男の人を探すのやめることにするよ。男も女も関係なく、本当に好きな人と結ばれたいから。だから、ゆかりちゃんにもチャンスあるよって、それだけ!」

 彼女は手を叩き、ハイ終わりと話を区切りました。唐突に放り込まれた話題を反芻して、ようやく事態が呑み込めます。つまるところ、彼女はあなたからアタックされればきちんと受け止め、気分が乗れば返してもくれるようになったのです。

 あなたは居てもたってもいられず、マキさんに抱き着きました。すぐには言葉が出ず、体で表現する方が早かったのです。ソファーに座った彼女の足をまたいで座り、太ももの上に軽くお尻を乗せて体を彼女に預けます。首の後ろに腕を回し、ほほをくっつけました。あなたの体と彼女の体が密着し、お互いの暖かさが伝わります。

 マキさんも、あなたの背中に腕を回して抱きしめてくれました。そうしていると幸せな気持ちで胸の中がいっぱいになり、口から愛情があふれだしました。あなたが彼女の耳元で大好きだと何度もつぶやくと、彼女は頭を撫でてくれます。

「私も好きだよ。でも、まだ恋人っていうよりは親友かなぁ。私から告白したくなっちゃうくらい、夢中にさせてくれるのまってるね」

 彼女はそう言うと、あなたの耳にキスをしてくれました。リップ音と彼女の吐息が頭の中に直接響き、思わず体を震わせてしまいます。呼吸が乱れ、快感を覚えているのが彼女にばれてしまいますが、あなたは思い切って自分から小さいながらも可愛く喘いでみました。彼女の行為があなたの欲求をすぐに満たしてしまうことを教えてあげたくなったのです。

 やがて彼女はあなたの耳から口を離しました。

「ゆかりちゃん、もうすぐ晩御飯だから、今はここまでね」

 

 二人で晩御飯を食べ終えた後は、二人一緒にシャワーを浴びます。今日のあなたは先日のあなたと一味違いました。変に物怖じせず、マキさんと並んで髪を洗います。思い返せば初日に『自分以外に色目を使うな』といわれていたのですから、彼女の体を見ても文句を付けられるいわれはないでしょう。

 あなたは自分の髪をいつもよりも丁寧に洗い、マキさんと歩調をそろえてみました。今まではシャンプーとコンディショナーだけでしたが、今日はトリートメントを挟んでみました。どちらかだけでも良いようですが、マキさん曰くトリートメントは内側、コンディショナーは外側を補修してくれるらしいです。彼女の髪を洗う時間が長かったのは、あなたよりも一工程多く手入れしていたからのようでした。

 そして、彼女と一緒に体を洗います。あなたは自分の体を洗いながら、何気なく彼女の体に視線を向けました。自分以外の女の子の体を眺めるのは流石に緊張してしまいますが、今のあなたは女の子なのですから、同性の友人の体を見てもきっと騒ぎ立てられることはありません。

 彼女の体はあなたの体と勝るとも劣らない綺麗な肌をしていて、胸は大きくもハリがありふっくらとしています。姿勢もよく、グラビアアイドルでも十分やっていけそうなプロポーションです。

「なに、どうしたの?」

 あなたの視線に気づいた彼女が、ちょっと恥ずかしそうにしながらあなたの顔に視線を向けました。あなたが綺麗な体に見とれていたと褒めると、ほんのりと頬を染めて照れた表情を浮かべます。

 彼女はできるだけ素手で体を洗うタイプのようで、泡立った石鹸をまとった手が彼女の肌の上を滑っていきます。彼女の指が胸の下を通るたびに大きな二つの包みがフルフルと揺れ、その動きをじっと見てしまいました。あなたは自分の胸も同じように洗ってみますが、動きはするもののあんなに揺れることは到底なさそうです。

 あなたは思い切って、彼女に触らせてもらえないか聞いてみました。同性でもちょっと親しいくらいでは触らせてもらえなさそうですが、とても親しい間柄なら可能性はあるでしょう。あなたは自分の立ち位置を確認する意味も込めて、尋ねます。

「その、いいけど交換だよ。私もゆかりちゃんの触るからね」

 彼女は取引条件のような口ぶりで言いましたが、あなたにとってはむしろご褒美です。あなたは快諾し、彼女の胸に手を伸ばしました。

 下からふよふよと軽く持ち上げてみると、ズッシリとした重さが両手に伝わります。両手で一キロほどあるでしょうか。巨乳の印象はありましたが、実際間近で見てみると「これが胸だ」といわんばかりの迫力です。下から手を添えて上から見ると、手のひらのほとんどが隠れました。これが巨乳、圧倒的です。

「ほら、そろそろ交代!」

 ぷにぷにふよふよとあなたが遊んでいると、強制的に打ち切られてしまいました。むしろだいぶ長く触らせてくれたなと思うほど彼女はあなたに胸を好きにさせてくれて、これは自分と彼女との距離がだいぶ近いのではないかと感じます。

 攻守交替し、今度はあなたが触られる番です。彼女の方を向いて姿勢を正すと、彼女の手がおずおずと差し出されてあなたの胸に触れました。大きなふくらみとは言えませんが、彼女の指があなたの胸元を下から持ち上げると、確かに脂肪がついているのが分かります。

 それにしても、こんな胸を触って楽しいのかは疑問です。彼女の表情をうかがうと視線が胸元に釘付けになっているので退屈ではなさそうですが、どこが気になるのでしょう。あなたは直接聞いてみました。

「胸がっていうより……こう、肩から鎖骨、胸、おなかってラインが綺麗だなーって。モデルさんって服をキレイに着ないといけないから胸の大きさよりラインの綺麗さが大事っていうけど、ゆかりちゃんは完璧モデル体型だよね」

 多分褒められているのでしょう。きれい、モデル体型といわれて悪い気はしません。

 マキさんは胸から手を放すと、あなたの体全体を眺めました。

「うん、やっぱりゆかりちゃんはモデルさんだね。どんな服でも似合いそう。今月は結構お買い物しちゃったから無理だけど、来月になったらまたお洋服買いに行こうね。今度はどんなのがいいかなぁ。ボーイッシュなのとかもよさそう。デニムのショートパンツとパーカーでストリートっぽくして見るのもいいなぁ」

 彼女はあなたに着せたい服をいろいろ想像しながら、自分の体を洗うのに戻りました。あなたは彼女に合わせて自分の体を洗いながら、何とか彼女と女の子っぽい会話ができたことに内心ガッツポーズを決めています。

 自分の体を見られるのはなかなか恥ずかしかったですが、彼女に褒められたのですから結果良ければ何とやらでしょう。二人ともほとんど同時に体を洗い終わり、シャワーで石鹸を流して風呂から上がりました。

 今日から、シャワー上がりに着る服が新しくなりました。マキさんとお揃いのバスローブです。彼女がアイボリー、あなたはラベンダー色で、各々の髪色に寄せてみたのです。

 なぜ急にバスローブにしたかといえば、どうせこの後部屋で寝間着に着替えるからでしょう。マキさんはネグリジェをよく着るので別にシャワー上がりにそのまま着てもいいのですが、あなたは今日から寝間着を攻めたものにしようと決意したのです。この寮は女性しか住んでいませんが、さすがにそんな恰好をして廊下を歩くわけにはいかず、かといって毎回スウェットを着ては脱ぎを繰り返すのも面倒になってきたのでした。

 

 髪を乾かし、部屋に戻るとマキさんがりんごほどの大きさの四角い瓶を手渡してくれました。中には白いクリームが入っていて、彼女は既に手に取りソファーに座っています。

「これ、ゆかりちゃんは必要ないかもしれないけど、ボディークリーム。試してみる?」

 物は試しと、あなたは彼女を真似してブドウ大のクリームを手に取り、ベッドに腰かけました。

「まずは手のひらであたためて、腕とか、足とかのマッサージをするの。結構気持ちいいよ」

 バスローブをめくり、見よう見まねで腕全体に伸ばしてから、握りこぶしを滑らせるようにして、マッサージしていきます。ほんのりとフローラルな香りが漂いました。あなたが気にいった香水に似た、好きな香りです。

「そうそう、そんな感じ。結構うまいじゃん」

 両腕が終わったら、今度は両足です。太ももの付け根からつま先までゆっくりとなじませ、膝の裏や土踏まずをもむと一日歩いた疲れが癒されていきます。ここ数日は放課後に歩きっぱなしだったので、だいぶ足に疲労がたまっていたようです。隣にマキさんがいるので足を大きく広げるわけにはいきませんが、はしたない動きが抑制されるので女の子らしい動きの練習をするいい機会でしょう。

 両手両足のマッサージを終えてすっかりリラックスしたあなたはそのまま寝てしまいそうになりましたが、今日の日課はまだ済んでいません。マキさんが寝間着のネグリジェを着たのを見て、あなたも着替えます。

 今日着るのはライラック色のベビードールとショーツです。昨日ベビードールを着たら彼女からのウケが良かったので、今日も続けて着てみることにしたのでした。この服もやはり胸元は隠れますがそれより下はかなり透けています。それに、今日は昨日よりも胴回りが体にフィットしていて、あなたの体のラインが完全にあらわになっていました。

 お風呂の中でマキさんがあなたの体のラインを褒めてくれたので、見せつける自信がわいたのです。あなたは勉強机で本を読んでいる彼女の後ろに立ち、ポンポンと肩を叩きました。そして、振り返った彼女に日課をおねだりします。

 あなたの姿を見たマキさんはつばを飲み込み、あなたのお腹に視線をじっと向けています。腰の細さがはっきりとわかる服だけあって、彼女の目は釘付けです。あなたは彼女の前に回り込むと、足の上にまたがって彼女に抱き着きました。お風呂上がりの石鹸の匂いと、ボディークリームの花の匂いがふんわり漂っていていい匂いです。

 太ももの高さの分だけ、あなたはマキさんよりも視界が高くなっています。逆に、あなたの体を見つめるマキさんの目の高さにはあなたの胸元がちょうどあって、ちょっとドキドキするでしょう。あなたはマキさんの首に腕を回し、もう一度キスをおねだりしました。

 しかし、なかなか彼女は返事をしてくれません。じれったくなって、あなたは彼女にキスすることにしました。勝手に唇にするわけにはいかないので、彼女の肩や首、うなじ、頬に唇を落としていきます。そこまでしてようやく彼女は我に返り、あなたの頬を手で撫でてくれました。

「どうしたの。今日は積極的だね。そんなに私とのキスが楽しみだったの?」

 あなたは正直に、ずっと楽しみにしていたと答えます。彼女に出会ってからまだほんの数日しか経っていませんが、あなたは彼女のキスにすっかり夢中になっていたのです。

「今日はお預けって言ったら、寂しい?」

 当然でしょう。彼女にキスしてもらえない日が一日でもあったら、人恋しくてたまりません。あなたは彼女を真正面から見つめ、とっても悲しいと訴えます。

「こんなにかわいい格好、私に見せてくれるためにしてくれたの?」

 それ以外にありません。マキさんに見てほしくて、喜んでほしくて、興奮してほしくて着ているのです。ほかの人にはチラリとも見せたくありません。あなたはこの姿を彼女に独占してほしいのです。

「そっか、それじゃあ今日もキスしてあげる。今日は目を閉じて、そのままじっとしていてね」

 あなたは言われたとおりに目をつむり、彼女を待ちました。やがて両頬に手が添えられ、彼女からそっと熱を受けとります。今日はいつもよりずっと穏やかで、心の底まで染み渡るような口づけでした。

 

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