雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第16話 まさかの報せは一度ならず

 

「あー・・・疲れた。」

 

 

 戦国伊賀島との1回戦を勝ち抜き、次に向けさらに特訓に励んでいる。

 今はイナビカリ修練場にて、超強度のトレーニングに励んでいる。本来キーパーが特訓に使うボールガトリングと、そうではない存在を抹消されそうなレーザーガン。ボールは弾き、レーザーは避けることを並行して行うことで反応、速度、力の3つの面をすべて鍛えることが出来る。

 ちなみに言うとかなりハードだ。少しでも気が緩んだら超高熱のレーザー、超高速のボールが襲いかかってくるからな。

 練習時間常に切らさないような極限の集中力も必要になるわけだ。

 

 

「そんなわけないだろ!!」

 

 

 突如、離れたところにいる守の大声が響いてくる。

 ここまで聞こえてくるということはかなりの大声なのだろう、何かあったのか?

 そう思い、使った器具の片付けを手早く済ませ声の方向へと足を運ぶ。

 そこには豪炎寺に染岡、春奈の姿が。

 

 

「守の声がしたと思ったんだが・・・本人はいないようだな。」

「柊弥先輩・・・キャプテンは今飛び出して行きました。恐らく、帝国のお兄ちゃんの所へ。」

「鬼道の所に?それまた急だな。何かあったのか?」

「はい、実は───」

 

 

 春奈の口から語られたのは、"衝撃"の一言に尽きる。

 あの帝国が、0-10の大差で敗北したと言うのだ。無名の相手・・・世宇子中に。

 それは再戦の約束が果たされることは無くなったことを意味していた。

 

 

「・・・帝国が、ねえ。」

「はい・・・私も信じられなくて。」

「それでいても立ってもいられなくなって飛び出してったわけだ。守は。」

 

 

 守らしいと言えば守らしいが・・・下手に鬼道を刺激しないように祈るばかり。

 一瞬俺も後を追おうかと考えたがやめた。今は部活中だ。他人を気にかけるよりも、自分達のことを優先すべきだ。

 

 

「・・・俺は練習を続ける。春奈、サポート頼めるか?」

「あ、はい。分かりました!」

 

 

 兄の敗走に何も感じない訳では無いだろう。

 されど、あくまで自分のチームとは別のチームの話、それとこれとは別であると割り切っている・・・と言ったところか。

 何はともあれ、俺も近いうちに鬼道と接触は図りたいところだ。世宇子中の情報も聞いておきたいしな。そうだ、後で試合映像を見せてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

「凄いですね、柊弥先輩。こんなメニューをこなすなんて。」

「まあな。自慢じゃないけど、これに耐えられるのは雷門に2人いるかいないか・・・位だと思う。」

「実際、その通りだと思いますよ。やっぱり柊弥先輩は凄いです!」

「よせよせ、そんな褒めたら調子に乗る。」

 

 

 もう一度同じメニューこなす。

 さすがにフルでやったら死ぬので、時間短縮版だ。機械を止めるのは自分では無理なため春奈を呼んだわけだ。

 全身の筋肉が軋んでいるのを感じる。泥臭いことを言うが、この痛みが自分を強くすると考えればなんてことは無いな。

 

 

「次の対戦校は・・・まだ決まってないんだっけか。」

「いえ、試合自体はもう終わっているんですけどまだ試合結果がアップされていないんですよね。明日には分かると思います!」

「そうか、引き続きよろしく頼むな。」

「はい!」

 

 

 2人で器具の片付けを終え、イナビカリ修練場を後にしようと出口へ向かう。すると、後ろから修也がやってくる。

 どうやら修也も追加でメニューをこなしていたらしい。

 

 

「・・・お邪魔だったか?」

「何が?」

 

 

 ふと修也がそう呟く。が、何のことを言っているのか微塵も理解出来ない。

 春奈は何か分かっているようだが・・・俺には教えてくれなかった。

 何だ疎外感・・・泣きそう。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「皆!全国大会2回戦の相手は千羽山中に決まりだ!」

「千羽山中は山々に囲まれ、大自然に鍛えられた選手達がいます。特筆すべきは無限の壁と呼ばれる鉄壁のディフェンスです。未だかつて得点を許していません。」

 

 

 今に至るまで無失点でことか・・・これは破るのに苦労しそうだ。

 春奈曰く、攻撃はそれほどだがそのディフェンスを持ってしてここまで上がってきたそうな。

 無限の壁かあ・・・1人で打ち破るのは非現実的か。となると、連携技重視で行った方が良さそうだ。

 相手が鉄壁の守りならこちらはダイヤモンドの攻めと守が意気込む。うん、分からん。

 いや、言わんとしてることは分かるが分からない。

 

 

「さあ、練習開始だ!!」

 

 

 グラウンドに出て練習開始。

 早速パス回し、連携技など様々な練習に取り組むが・・・何かこう、噛み合わないのだ。

 ベストだと思ってパスを出しても相手にとってはベストではない。その逆も然り。相手がベストだと思って出したパスは俺にとってベストではない。

 なんと言うか・・・基盤となるものがズレているような。

 しかも、連携面だけではなく個人技の面でもそれが見られる。シュートひとつとっても、タイミングが会わずに不発で終わったりが見られる。はて、何が原因だ・・・?

 

 

「柊弥、連携シュートの練習に入ろう。」

「ああ。」

 

 

 修也にそう声をかけられ、染岡も交えて必殺技の練習を始める。

 ドラゴントルネード、雷龍一閃、雷龍一閃・焔、ファイアトルネードDD。

 一通り試して見たが・・・やはり噛み合わない。息が合わずに途中でボールは勢いを失う。

 だが、シュートの起点となる最初の人の力は明らかに上昇しているのだ。それに対して後続が上手く合わせられていない、と言ったところ。

 同時に打ち込むファイアトルネードDDに至っては、俺と修也のキック力は目に見えて上昇しているのに関わらず、ボールを打ち上げる高さ、飛び上がる高さ、ボールを捕える高さ、果てにはタイミングがズレてしまい、かなり強力なシュートだがファイアトルネードDDでは無い、と言った仕上がりになってしまった。

 と、ここでようやく気付く。

 

 

「・・・個人的な力が短期間で格段に上昇したのが原因だな。」

「と言うと?」

「自分と相手の身体能力の向上の差が掴めていないんだ。ドリブルとか単独のシュートはともかく、単純なパスだけでも相手のスピードがイメージ通りのスピードと違ってイマイチ正確さにかけるし、連携技なんて全く合わない。」

「そうか、そういうことか・・・となると、まずいな。」

「ああ・・・連携どころか、自分の技すらままならないとなると、千羽山の守りを砕くのは難しい。」

 

 

 全体的な見直しが必要だな。

 これは俺達3人の間での共有に留めておこう。下手に不安を煽る必要は無いからな。

 

 

「はい、ちょっと休憩!」

「スポーツドリンクで水分補給してくださいね!」

「レモンのはちみつ漬けもあるわよ!」

 

 

 選手の連携はイマイチでもマネージャーの連携は完璧だなおい。見習わなければ。

 それにしても、レモンのはちみつ漬けなんていつの間に用意したんだろうか。有難い限りだ。

 マネージャーの熱意に俺達も応えなければなあ・・・

 

 再び練習開始。

 それぞれがそれぞれの課題に取り組む中、ゴール前で修也と秋、土門が何やら話をしている。

 なにやら聞きなれない必殺技の名前が出てきたが、それに混ざらず俺は俺で練習に取り組む。

 個人間の蟠りを無くすためには、まず自分を正確に把握する必要がある。

 そのためにはひたすらに反復練習だ。以前の自分と違うところを徹底的に炙り出す!

 

 

「・・・あれ、柊弥先輩。少しいいですか?」

「ん?ああ。」

 

 

 メモを取っていてくれた春奈が抜け出して校門を跨ぐ。

 ・・・誰か見ていたのか?

 春奈が飛び出すような人間・・・鬼道か。俺も行ってみよう。あいつ俺に連絡返してくれないし。

 

 

「よ、鬼道。」

「加賀美・・・」

「全く、連絡寄越さないと思ったらコソコソ顔出しやがって。」

「今の俺には、お前らは眩しすぎるんだよ。」

 

 

 完全にブルーになってるなこれ。

 あの鬼道がここまで落ち込むとは誰が想像出来ただろうか。

 昨日自分達のことに集中しよう、だなんて決め込んだが・・・少しお節介を焼くとしようか。

 

 

「・・・俺達の練習が終わったら、河川敷で少し話そうぜ。嫌なら来なくてもいい。」

「河川敷で・・・」

「ああ。俺は待ってるぜ・・・じゃ。」

 

 

 と言って俺は練習に戻る。

 思いついたことがある。これは響木監督にも相談しないとな。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 夕暮れ時、河川敷の傾斜に腰かけて鬼道と話をする。春奈もいるが。

 

 

「帝国のことは・・・残念だった。」

「・・・残念なんてものじゃない。俺の目の前で仲間があんなことに・・・こんな悔しいことがあるか。」

 

 

 そう言って拳を振るわせる鬼道。案外、人間らしい面も持ち合わせているんだな。

 これなら、提案する余地がありそうだ。

 

 

「・・・よし、少し動こうぜ。その悔しさ俺にぶつけてみろ。」

「・・・ああ。」

 

 

 グラウンドに降りる時、ふと横目に修也の姿を捉えた。何だ、来てたのか。

 混ざるか?とアイコンタクトをしてみたが首を横に振った。俺に任せるってことだろう。

 鬼道は上着を脱ぎ、動きやすい格好に。

 それを見計らってボールを蹴る・・・強めに。

 そのボールを鬼道は打ち返す。それをまた俺は蹴り返す。

 

 

「悔しいかよ、鬼道!!」

「悔しいさ!!俺は、世宇子中を倒したいッ!!」

「だったらやってみろよッッ!!」

「無理だッッッ!!!帝国は・・・既にフットボールフロンティアから敗退しているんだ・・・!」

 

 

 そう力なく呟く鬼道。

 夕陽をバックに、悲壮感を漂わせていた。

 違うぞ、鬼道・・・お前は、こんな所で終わる男じゃないはずだろ。

 

 

「自分から負けを認めるな・・・もう一度、這い上がってみせろォォ!!」

 

 

 轟一閃を放つ。手を抜くわけでもなく、全身全霊で。

 放たれた閃きは鬼道の横を一瞬で過ぎ去り、傾斜に叩きつけられる。叩きつけられたボールはクレーターのように穴を作り、ボールは破裂する。

 

 

「・・・1つ方法がある。お前も、守に背中を預けてみる気は無いか?」

「円堂に・・・?どういうことだ。」

「大会規約にこうあった・・・試合前に転入手続きを済ませておけば、チーム間の移籍を認めると。そしてこの話は俺達の監督には通してある・・・」

「それは、つまり。」

「ああ。雷門に来い、鬼道。帝国の無念・・・俺達と晴らしてみろ。」

 

 

 鬼道に手を差し出す。

 それを見て、天才ゲームメイカーは───

 

 

「・・・よろしく頼む。」

「歓迎する、鬼道。」

 

 

 ──差し出された手を取った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 翌日、フロンティアスタジアム。

 千羽山との試合当日だ。昨日鬼道と話す前、今一度連携の見直しをしたが・・・やはり噛み合わない。

 その歯車を今からやってくる天才ならば噛み合わせてくれるはず。

 そんな二重の期待をしつつベンチに腰かけている。

 

 

「監督、いい加減にしてください!もう全員揃っているじゃないですか!!」

「そうですよ、誰を待っているって言うんです!?」

「いいや、まだだ・・・まだ来る。」

「そうだ。だから待て。」

「加賀美まで・・・このままじゃ、試合放棄で不戦敗になるんだぞ!?」

 

 

 不戦敗になるまでの時間を審判が刻み始めたその瞬間だった。

 

 

「・・・来たか。」

 

 

 思わず口を歪ませる。

 響木監督、修也も笑みを浮かべる。

 全員が大きくなり始めた足音の方、入退場口の方へ向かう。

 

 

「「「えええええええええ!?」」」

「よっ、鬼道。」

「・・・ふん。」

 

 

 雷門のユニフォームに身を包み、マントをたなびかせた知将がそこにはいた。

 予想だにしなかった登場に全員驚きの声を響かせる。雷門だけでなく、会場にいた全員。

 

 

「さて、スタメンを発表する。」

 

 

 FW・・・俺、修也、染岡

 MF・・・半田、鬼道、松野

 DF・・・風丸、壁山、土門、栗松。

 GK・・・守

 

 

 鬼道の参戦で宍戸がベンチに下げられたことに、半田の表情が険しくなったのを俺は見逃さなかった。

 

 

「半田・・・気持ちは分かるが、ここは鬼道を信じる俺を信じると思って分かってくれないか?・・・あいつなら、俺達を勝ちに導いてくれる。」

「加賀美・・・分かったよ。お前がそう言うなら、俺も信じるよ。」

 

 

 話せば分かってくれた。意識の面でも蟠りがあってはいけないからな。

 さあ、千羽山の鉄壁の守り・・・俺達が打ち破ってやるよ。




【原作との相違点】
・豪炎寺、染岡が不調の原因を柊弥によって知る。
・鬼道の説得を豪炎寺ではなく柊弥が試みる。
・柊弥の説得により半田の不信感が最初から解消。


アンケートの結果、原作との相違点を後書きに書くことにしました。
アンケートのご協力ありがとうございました。
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