一之瀬の加入で俺達のチームはさらに充実することになった。
パワーの修也、染岡。スピードの俺、風丸。テクニックの鬼道、一之瀬。ガードの壁山、土門、守。
他の皆もメキメキと成長し、それぞれの強みを確立しつつある。頼もしい限りだ。
このチームでなら、本当に全国制覇も夢ではない。いや、出来る。
「ちょっと聞いて!Aブロック準決勝の結果が届いたわ。」
「本当か。それで、勝ったのは・・・」
「・・・世宇子中よ。」
やはり来たか、世宇子中。
帝国の無念を晴らすためにも、必ず準決勝を抜けて決勝に行きたいな。全力で戦った以上、俺達もあいつらへの思い入れはあるからな。
悔しいのは鬼道だけでは無いということ。
「よーし皆!頑張ろうぜ!!」
「「「おう!!!」」」
次は木戸川清修。
確か・・・3つ子のストライカーがいるチームだったな。修也が抜けてなお、その三兄弟のスリートップによる高い攻撃力が売りだとか。
それでもって確かDFの西垣・・・だったか?あいつの守りも中々に硬いとの噂。
相手にとって不足なし、と言ったところだろう。
「は?守達が他校の生徒と喧嘩?」
「そうなんですよ!このままじゃキャプテン達が・・・あわわ・・・」
今日の部活は早上がり。
教室で係の仕事を終えて帰ろうとしたら宍戸が教室に飛び込んできてそんなことを言ってきた。
「他に誰かに伝えたか?」
「えっと、木野さんに夏未さん、一之瀬さんに土門さんです。」
「そっか、じゃあ俺行かなくても良さそうだな。」
「ええ!?ほ、本当に大丈夫なんですか!?」
「だって、修也に鬼道もいるんだろ?そんな厄介事にはならないだろ・・・多分。」
「多分って!?」
宍戸がそんな悲鳴を上げるが、俺は帰る。
なぜって?今日は仮面騎士イチゼロの特番なんだよ、リアタイで見れるなら見るに決まってるだろうが。
「で、まんまと挑発に乗って見事打ち破られたと。」
「・・・はい。」
翌朝、教室にて守と話をする。
宍戸が昨日言っていた守達に突っかかってきたのは例の木戸川清修の三兄弟。イチャモンつけてきたところで守がブチギレてPK勝負を挑んだそうだ。なぜ止めなかった、と鬼道に聞いたら「いい偵察になると思って」とのこと。
いやまあ、確かに噂の攻撃力を見るいい機会だったかもしれないが。
でもって相手の西垣?が一之瀬達のアメリカ時代の仲間だったらしい。それはあまり関係ないが。
「・・・天誅!」
「いてっ!!」
教科書で昭和さながらのツッコミのように頭を引っぱたく。うむ、いい音だ。
頭を抑え、涙目で手加減を訴える守。
「お前は試合で相手に手加減するのか。」
「これは試合でもなんでもないだろ!?話がまるで違うじゃないか!」
「あー聞こえなーい聞こえなーい。」
あーだこーだ言いながらこちらに迫る守の顔面を手で抑えながら言っていることを聞き流す。
勝負でゴッドハンドまで出さなかったのは及第点だな。
手の内全部明かしてたら流石にこの2階の教室の窓から外に放り投げていた。
命拾いしたな、守。
「・・・これはどういう状況だ?」
「敗者に口無しって状況。」
「・・・そうか。」
修也がツッコミを諦めたような表情で席に着く。
暴走列車円堂守号もようやく落ち着きを取り戻す。
「にしても、あいつらの攻撃は本物だ・・・ビリビリ来た。」
「トライアングルZ、か。あいつら単体では抑えきれるだろうが、連携されると厄介というわけだ。」
「ああ。それに守りも薄いという訳では無い・・・もしかしたらだが、トライペガサスの出番が来るかもしれない。」
「トライペガサスならまず間違いなく破れるだろうな。問題はどうやってそこまで持っていくかだが・・・」
そんな話をしていたら先生がやってきたので前を向く。とりあえず、今日の部活でまた調整だな。
『さあ全国中学フットボールファンの皆様、フットボールフロンティア全国大会もいよいよ佳境!本日はAブロック準決勝。木戸川清修対雷門中の試合でございます!!』
本日のスタメンはこうだ。
FW 俺、染岡、修也
MF 鬼道、一之瀬、松野
DF 風丸、壁山、土門、栗松
GK 守
攻守量対応の万全の布陣だ。
対する木戸川は三兄弟のスリートップ。攻めてくる気満々という訳だ。
さて、前回の決闘の時は俺はいなかったからな。こいつらのシュートを見るのが少し楽しみだったりもする。守が止められなければあれだが。
まあ、さらに猛特訓を重ねた守ならきっと大丈夫だろう。
俺は俺の役割を果たすことを考えよう。
『木戸川清修には2年連続の決勝進出、雷門中には40年振りの決勝進出がかかっており熱い戦いになること間違いなしだ!!ここでキックオフ!!木戸川清修のボールからスタートだ!!』
ホイッスルと同時に攻め上がってくる三兄弟。
三兄弟と言うだけあってシュート以外の面の連携も取れている。あっという間に俺達前陣組が抜かれてしまった。
中陣、後陣も抜かれてあっという間にゴール前。
「バックトルネード!!」
高くセンタリング。そのボールに向かってファイアトルネードとは逆回転で跳躍、かかと落としを叩き込む。
蒼い炎を纏いながら迫るボール。
「爆裂パンチ!!」
連続で拳を叩き込む。
が、ボールの勢いは衰えることを知らず・・・
「「円堂!!」」
「ぐわッ!?」
ゴールを許してしまった。
クソッ、こんな早く先制点をもぎ取られるとは・・・相手もやはり伊達ではないということか。
「どうなってんだ・・・この前のバックトルネードとは桁が違う・・・!」
「何驚いちゃってんの?前回の対決はデモンストレーションに過ぎませんよ。」
「試合前に本気出す訳無いだろ?」
と言って大笑いしてくる三兄弟。
あいつらよくよく見るとムカつくな。絶対試合終わりで吠え面かかせてやる。
その後も木戸川清修の攻めを上手く抑えられず劣勢を許す。あの三兄弟・・・厄介ではあるが少々3人先走りすぎだな。
そこに漬け込むことが出来れば・・・なんてことを既に鬼道なら考えてそうだ。
指示はあいつに任せるか。
「バックトルネード!!」
「ゴッドハンド!!」
今度は止めて見せた守。流石ゴッドハンドだ。
前回の対決では見せなかったゴッドハンドに少しばかり驚いている三兄弟。
だが奴らにはまだ隠し球・・・あの連携シュートがある。油断は禁物だ。まずは1点俺達が取り返さなければ。
攻める三兄弟の内1人を鬼道とマックスが囲む。やむを得ずパスを出したところを土門が空中でクリア。
が、すぐさま取り返して再びバックトルネード。
「爆裂パンチ!!」
今度はバックトルネードを爆裂パンチで弾いてみせる。
段々乗ってきたな。
弾かれたボールを持つ選手は目まぐるしく入れ替わり、やがて相手MFへ。
MF同士でパスを回していると三兄弟が割り込む。やはり、あいつらは3人でサッカーをしているようなものだ。仲間との連携を欠いたプレイなんて、所詮たかが知れている。
「ザ・ウォール!!」
攻め上がる三兄弟を壁山が阻む。いいディフェンスだ。
続くMFのパスミスを三兄弟は責め立てる。FWとしては一流でもサッカープレイヤーとしては三流もいい所だな。
そしてとうとう鬼道の指示が言い渡される。
焦りを見せ始めた三兄弟。俺達が今すべきは攻め。が、修也はじめ俺らFW陣は警戒が強い・・・なら、それを利用してトライペガサスを狙っていこう。とのことだ。
「豪炎寺、染岡、加賀美。頼むぞ。」
作戦はこうだ。修也と染岡がサイドから上がって囮になる。
その隙に守、一之瀬、土門でトライペガサスを狙う。そして俺は手薄になるディフェンスの補強に入る。
守のゴールキック、ボールは土門へ。
「ちょ、マジ!?」
「わざわざチャンスを!」
が、それと同時に2人が駆け上がる。俺は後ろへ。
それに気を取られた隙を着いてボールは鬼道へ回り、守、土門は攻め上がる。
そしてボールは一之瀬へ、3人は上がっていきやがて一点で交差する。
蒼く煌めきながら羽ばたくペガサス。凄まじいエネルギーを周囲に放ちながら顕現した。
「「「トライペガサス!!」」」
ペガサスは相手ゴールへと翔ける。相手キーパーは一切の抵抗が出来ず、ゴールを許す。まずは1点取り返したな。
『なんとキーパー円堂の加わった攻撃で雷門中同点に並んだァァァ!!』
ここで前半終了。
折り返し時点で同点に並べたのはかなり大きいな。
さて、中陣とあの3人の連携に漬け込めば何とかなるかもしれないが、恐らく後半からは奴らも修正してくるはず。
その上、まだトライアングルZを隠している。
「大丈夫さ!どんなシュートだろうが、俺が必ず止めて見せる!」
そう意気込む守。頼むぞ。
そして後半が始まる。
「そろそろ見せてやろうじゃん?行くぜ!!」
不敵な笑みを浮かべながら三兄弟が上がっていく。
「まずい、止めろ!!」
そう声を上げたが、3人の見事な連携の前に次々と抜かれていく。こいつら3人だけで見たらかなりのレベルなんだがな・・・!
誰も止めきれず、3人は気づけばゴール前・・・守を信じるしかない。
「「「トライアングルZ!!」」」
シュートの後、変なポーズを取る。ノーコメント。
だがシュートの威力は本物だ。こちらまで凄まじいパワーが伝わってくる。
「ゴッドハンド!!」
輝く神の手で応戦する。
両者しばらくせめぎあい、先に力を失ったのは神の手の方だった。
『木戸川清修!!武方三兄弟のトライアングルZで2点目を奪った!!』
「あいつらの好きにはさせない・・・!」
修也が静かにそう呟く。その瞳は誰よりも燃えていた。
こちらのボールから試合再開。
修也と染岡が上がっていくがボールを奪われ、また攻め込まれる。
が、鬼道がマックスと一之瀬を動かし素早いチェックに着く。それを受け取った三兄弟、ダイレクトで守に撃ち込むがそれをしっかりキャッチ。
そしてそのままトライペガサスを狙う。が、西垣が修也のマークを振り払い3人へ立ち向かう。
「スピニングカット!!」
右脚から放たれた青い衝撃波は地面に刻まれ、そこから衝撃波が噴出。3人は吹き飛ばされた。ボールもラインの外へ。
「ペガサスの羽が折れたな。」
そう呟く西垣。守達は苦い顔をせずにはいられない。これはもしかしてまずいか?俺達の警戒も、トライペガサスの警戒もされている。点を取れる手段が限られつつある。
「焦るな円堂!俺が必ずゴールを決める!」
焦る守を修也が制する。
修也はやる気だ、どんなに警戒されようともゴールをもぎ取るつもりだ。
よし、なら俺はそのサポートに回ろう。
再びこちらへ切り込んでいく木戸川。三兄弟に出されたパスをなんと後ろまで下がった修也がカット。そのまま上がっていく。が、1人では限界があるだろう。
「修也!!」
「任せた!」
ボールを受け取り上がっていく。突破力なら修也よりも俺の方が上。ボールを前に運んでいくなら俺だろう。
そしてゴール前、修也が俺より前に上がったのを確認して構える。即興ではあるが・・・思い出せ、最初の帝国との試合を。
「轟一閃、改!!」
「ファイアトルネード・・・改!!」
互いに進化した十八番を放つ。
雷を纏ったボールへ炎が吹き込まれる。これは連携シュート、と言うよりはシュートチェインに近い。よく良く考えればドラゴントルネードも雷龍一閃も、シュートチェインのようなものだ。
が、高威力を誇る俺達のシュートなら──
「タフネスブロック!!うわッ!?」
相手ごとゴールへ押し込んだ。
取られた分は取り返した。スコアは2-2のイーブン。
「ナイスシュート、修也。」
「柊弥、ナイスシュートだ。」
互いのシュートを讃え合う。
これで完全に対等・・・残り時間もあと僅か。ここからは地力の比べ合いだな。
「うおおおお!!」
「させるかよ!!」
互いに攻め、互いに守りしのぎを削る。
同点のまま消耗が続き、こっちもあっちも全員息を切らし始めた。
中々に決め手がない・・・このままでは延長突入も視野に入れなければならないな。
そんな極限状態でも必殺技が入り乱れる。放った側も放たれた側も、それでさらに消耗する。
まさにギリギリの真剣勝負。準決勝に相応しい・・・!
「延長なんて必要ないっしょ!!」
栗松からボールを奪い取り、三兄弟がゴールへ迫る。
まずい、トライアングルZは今の守では止められない。このままでは・・・!
そんな心配など知ったことではない、と言った風に無慈悲にもシュートは放たれる。
「「「トライアングルZ!!」」」
「ゴッドハンドッッ!!」
ぶつかり合ったその瞬間火花が散る。
両者先程以上の出力。力と力のぶつかり合いがこちらにまで伝わってくる。
が、徐々に押し込まれる守。両手で止めにかかるもまだ足りない。
このままゴールを許してしまうのか・・・と思った、その時だった。
「キャプテン!!」
「危ないっス!!」
栗松と壁山が守の後ろに飛び込み、その背中を支える。
3人がかりのシュートには3人がかりのキャッチを。
3人の咆哮と共に神の手が放つ光はより強く。
その光が収まる頃には、ボールは煙を上げながら守の手の中に。あいつら・・・最高だ!
「円堂!!」
「おう!!」
フリーの修也がボールを受け取り攻め上がる。それを追いかける三兄弟。三兄弟が修也の前に立ち塞がったところで、修也はノールックでヒールパス。それを受け取ったのは一之瀬だ。
「今だ!トライペガサスを!!」
後ろから守、土門が上がってくる。それをさせまいと再び西垣はスピニングカット。
視界を遮られるように展開された衝撃波。だが、3人はそれを突っ切って前へ進む。
3人は一点で交差。蒼のエネルギーに包まれたボールは空へと舞う。最高点にて、そのボールの色は蒼から燃える炎へ。
空中を羽ばたくはペガサスではなく、フェニックス。
不死鳥の雄叫びはスタジアムを包み込む。
「「「うオオオオォォォォォォ!!!」」」
トライペガサスと何ら変わりないモーションでボールを打ち出す。が、そのエネルギーはトライペガサスとは比にならない。
「冗談じゃないっしょ!」
「僕達はこのままじゃ終われない!!」
「決めさせるか!!」
三兄弟が立ちはだかるも、不死鳥はそれをいとも簡単に薙ぎ払う。
キーパーそれに反応出来ず、ゴールネットは揺らされる。
『雷門中ついに逆転!!ここで試合終了!!雷門中が激戦を制し、40年振りの決勝進出だァァァァァァ!!!』
「いよっしゃァァァァァァ!!!」
「やったァァァァァァ!!!」
全員喜ばずにはいられなかった。
とうとう決勝進出なんだ、喜ばないはずがない。
待ってろ世宇子中・・・お前達に勝って、俺達が全国一になってみせる!!
【原作との相違点】
・2点目、豪炎寺と柊弥の連携によりタフネスブロックをそのまま打ち破る。
木戸川清修決着、という訳で次はもう1話挟んでとうとう世宇子中戦ですかね。
見応えのある話に出来るよう頑張ります。