雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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またも誤字報告、ありがとうございます!
今回ももしかしたら誤字があるかもしれません・・・他力本願に思えて仕方ないですが、その際はよろしくお願い致します。


第20話 神への挑戦、目指せ高みを

 

 

「このままじゃダメなんだ・・・!」

 

 

 教室にやってくるや否や、守はこの落ち込み具合である。後ろからやってきた秋や豪炎寺に理由を訊ねてみたら、次の世宇子中のシュートを自分は止められるのか不安に陥ってるそうな。

 守にしては珍しいこともあるものだ。まあ、次はとうとう決勝・・・加えて相手は帝国を大差で破った奴らだ。少し不安になるのも仕方ないか。

 

 

 

 

 

 これは部活になっても続く。

 部室にて俺と守、修也に鬼道の4人で机のノートを囲む。守のおじいさん・・・大介さんが残したノートだ。

 この中にあったゴッドハンドを超える必殺技・・・マジン・ザ・ハンドのページを開いて頭を抱える。

 途中で土門、一之瀬も話に加わってくるがやはり分からない。

 胸の辺りがポイントらしいが・・・当事者以外にこれが読み取れるものだろうか。

 

 

「キャプテン!早く練習来てくださいでやんス!」

「皆・・・」

 

 

 悩むこちらの気も知らず、外で練習に励んでいた皆が部室にやってきて練習に来るよう囃し立てる。

 全員、決勝に向けて燃えている。目標がもう目の前なんだもんな、俺だって燃えているさ。

 けど・・・こうして課題と向き合ってみると、中々に楽観的でいるのは難しいというもの。

 

 

「よし、やろうぜ!!今さ、作戦会議してたんだよ、な?」

「・・・ああ。」

 

 

 守は無理に笑顔を作って誘いに応じる。キャプテンとして、チームの士気を下げまいとしての行動だろう。が、その笑顔はどこか引きつっているようにも感じる。やはり、不安は隠しきれないのだろう。

 その守の心を無駄にするわけにもいかず、俺達も守に同意する。

 

 

「世宇子中なんてぶっ飛ばしてやろうぜ!!」

「「「おう!!」」」

 

 

 問題は山積みだ。

 守備面だけでは無い、攻めの面でも同じことが言えるんだ。

 鬼道が言うには、今の俺達のシュートでは100%世宇子中のゴールを破れるかは分からないそうだ。

 俺達が持つ手札が何一つ通用しないかもしれないんだ。なら、新しい手札を増やすしかない。

 新しい個人技、新しい連携技・・・そして俺にはもう1つジョーカーがある。

 そう、化身だ。あの力を完璧にモノにすることが出来れば・・・きっと世宇子中だって何とかなる。

 だが、それを皆に話はしない。元より、本来なら俺が扱えるはずもない力のはず・・・それをイレギュラーとの邂逅をいいことに、身につけようとしているだけなのだから。

 それが出来なかった時、皆に不安を与える訳にはいかない・・・

 

 これは1人で向き合うしかない。

 

 

「円堂は大きな壁にぶち当たったな。」

「ああ・・・だが、誰でもレベルアップすればするほど壁にぶち当たるものだ。」

「その通り。なら、俺達で支えてやろうぜ。」

 

 

 鬼道の呟きを修也が拾い、俺がそう締める。一之瀬と土門もそのつもりのようだ。

 あいつの背中を、仲間である俺達が支えてやらないとな。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 そのまま時間は過ぎていく。

 次第に守の焦りは募り始め、無茶な特訓に手を出し始めた。

 かく言う俺も・・・焦っていないといえば嘘になる。

 化身の前提として、帝国戦で見せたあの力・・・あの感覚をまずは掴まなければならない。感覚は身体が覚えている。だが、あの力を意図的に再現は未だ出来ていない。

 前段階にすら到達出来ていないのだ。・・・こんなことなら、天馬にコツを聞いておくべきだったか。

 

 

「よし来い!!」

 

 

 既に夕暮れ。部活が終わった後も鉄塔広場にて守は特訓に励む。それに修也、鬼道、俺も手を貸す。

 俺は自分を優先しても良いのだが・・・不確実な俺よりも、模範例がハッキリとしている守を優先した方がいいだろう。

 木にタイヤを吊るし、守自身もタイヤを背負う。

 吊るしたタイヤは振り子のように不規則に揺れ、その間を俺達がシュートを通す。

 そのシュートを守は正面から受け止めようとする。

 が、そんな簡単に行く訳がなく守はみるみるうちにボロボロになっていく。

 途中、秋や夏未が止めに入ってきたが、勿論守がそれで止まるはずもない。

 

 

「うわッッ!?」

 

 

 とはいえ、限度は弁えなければな。

 守が体勢を崩した弾みに頭を強く打ち付けた。

 これでは無理だろう。とりあえず、響木監督のところに行くか・・・腹も減ったし。

 

 

 

 

 

 

「これまた派手にやったな。」

「ええ・・・泥臭い特訓の賜物ですよ。」

 

 

 監督と話をしていると、どうやら監督もマジン・ザ・ハンドのことを知っているということが分かる。

 が、監督は身につけることが出来なかったという。それでも、守なら身に付けられるかもしれないと励ます。

 

 

「おいおい、どうしたお揃いで。」

「鬼瓦さん。」

 

 

 鬼瓦さんがやってきた。すると夏未が鬼瓦さんと冬海が接触したと言う。

 

 

「影山を探す為にな。」

 

 

 40年前のあの事件、そして雷門対帝国で起こったあの事件。その背中を追うために影山の過去を調べているそうな。

 鬼道が何か知っているのかと訊ねると、鬼瓦さんは険しい表情を浮かべる。

 

 

「こいつらも知りたがっている。話してやったらどうだ?」

 

 

 監督がそう言って水を差し出す。

 差し出された水を1口飲むと、鬼瓦さんは話し出す。

 影山は、かつてプロサッカー選手の父親を持っていた。が、その父親へ次第に失墜していく・・・守のおじいさん、大介さんを中心とする若手の出現により。

 やがて父親は失踪、母親は病死したことで影山は1人になった。その原因となったサッカーを恨みこんなことになったそうだ。

 そして修也に、夕香ちゃんの事件にも影山が関係しているかもしれない・・・と話した。

 

 

「影山が・・・!」

「修也・・・」

 

 

 夕香ちゃんから貰ったペンダントを握り締める修也。その表情は怒りに満ちている。

 

 

「許せない・・・どんな理由があってもサッカーを汚していい訳がない。」

「影山は今どこに?」

「まだ分からん・・・」

 

 

 そして、プロジェクトZなるものの存在を話してくれる。そして、影山が空にいるとも。

 何か関係があるのだろうか・・・答えは見えない。

 俺達にできるのは、影山がバックについているであろう世宇子中を破ること、それだけなのかもしれない。

 そのためにはやはり・・・特訓だな。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 それからも、守は特訓を続ける。いや、守だけでは無いな・・・俺も、皆もそうだ。

 やはり、化身の手掛かりは掴めない。

 あの時同じく化身を出した守にも聞いてみようかと思ったが・・・やめた。マジン・ザ・ハンドで手一杯な守に余計なことを言うべきではないと思った。

 

 

「みんな!おにぎりよ!!」

 

 

 悩みつつも練習していると、マネージャー達がおにぎりを作って持ってきてくれた。ありがたい・・・塩分も不足してきたし、何よりエネルギーが足りなくなってきた頃合だった。

 

 

「柊弥先輩!どうぞ!」

「お、おう。ありがとう・・・デカくね?」

 

 

 春奈から他のおにぎりの5倍はあろうかというおにぎりを手渡される。うん、デカくないか?

 

 

「音無さん、俺もそのおにぎり欲しいッス!」

「だーめ、これは柊弥先輩にしか作ってません!」

 

 

 俺を特別扱いしてくれた、という訳だ。

 いや、ありがたいことに変わりはないんだが・・・その、周りの目線が少々。ほら、鬼道に至ってはゴーグル越しでも分かるくらいに目見開いてるぞ。

 他の奴らもやたらニヤニヤしながら見てるし・・・

 

 まあ、悪い気はしないが・・・

 

 

「ちゃんと食べて、練習頑張ってくださいね!」

「ああ・・・ありがとうな。」

 

 

 何はともあれ、心遣いはありがたい。

 これで後半の練習も頑張れる。

 ・・・心做しか、鬼道からのパスはいつもより重かった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 守の練習は更に強度を高め始めた。

 ドラゴントルネードとツインブーストを同時に撃ち込んでこいと言うのだ。

 熱意に押され渋々修也に染岡、鬼道に一之瀬が撃ち込む。

 その時だった。

 突如どこからかやってきた男がそのシュートの両方を簡単に止めてしまったのだ。

 長髪で、何処か中性的な顔立ちをしている。女と間違えられてもおかしく無さそうだ。

 が、特筆すべきはそこじゃない・・・服装だ。

 あのユニフォームは・・・

 

 

「世宇子中キャプテン、アフロディだな。」

「やあ、お初にお目にかかるね・・・加賀美柊弥くん。」

 

 

 衝撃が走る。

 次の対戦相手のキャプテンが乗り込んできて俺達のシュートを止めて見せたのだ。しかもキーパーじゃないこいつが、だ。

 

 

「宣戦布告にでも来たのか?」

「宣戦布告か・・・ふふっ、私は君達と戦うつもりは無いよ。君達は戦わない方がいい・・・それが君達の為になる。」

「俺達の為、ねえ。何故だ?」

「何故なら・・・負けるからさ。」

 

 

 全員の顔つきが険しくなる。

 実際に戦う前にお前らは負ける、なんて言われるのは侮辱以外の何物でもない。

 練習も無駄、と吐き捨てるアフロディ。

 

 

「そんなことない!!練習はおにぎりだ!俺達の血となり肉となるんだ!!」

 

 

 守らしいことを言ったな。それでいて中々的を得ている。

 それを笑うアフロディに、笑うことではないと怒りを露わにする守。

 

 

「それじゃあ・・・それが無駄なことであると証明してあげるよ。」

 

 

 突如ボールを高く蹴りあげるアフロディ。気づいたらその姿を消し、ボールと同じ高さまで。

 そしてそのまま蹴る。

 なんだあのシュート、必殺技でも無いのにこの威力・・・見ているこちらまで寒気がするような威力だ。

 守は簡単に弾き飛ばされる。

 

 

「守ッ!?」

「大丈夫か円堂!!」

 

 

 俺達を振り払い立ち上がる守。

 もう一度撃ってこい、本気じゃないだろと憤慨する。ダメだ、ムキになっている・・・

 

 

「よせ、守。らしくないぞ。」

「離せよ・・・さあ、撃ってこいよ!!」

 

 

 が、そのまま姿を消すアフロディ。

 これでいい。これ以上撃ち込まれたら守が持たなかった。

 

 

「立てるか、守。」

「ああ・・・悪い、ちょっと焦っちまった・・・大丈夫、今ので新しい技がちょっと見えた気がするよ。」

 

 

 守に手を伸ばし、立ち上がらせる。冷静さを取り戻したようだ。

 しかし、これでハッキリした。

 世宇子の攻撃は俺達よりも強い。遥かに。

 やはりマジン・ザ・ハンドの力が必要か・・・それに、化身の力も。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「合宿をしよう。皆で飯でも作ってな。」

 

 

 決勝戦2日前、響木監督がそう提案する。

 確かに良いかもしれないな・・・皆の仲をより深めるいい機会だ。試合前に団結力を高めるためにも、いい考えだ。

 

 

「でも、そんな呑気なことを言ってる場合じゃ・・・」

「まあいいじゃないか守。気を張りつめすぎても良いことは無いぞ。」

「けど柊弥・・・」

「まあという訳で、17時にまた荷物を持って集合だ。」

 

 

 合宿をやること言う方針で固まった。守はどことなく腑に落ちないといった様子だったが、やってる内にその考えもなくなるだろう。

 さて、ここで練習は一旦終了だし俺も帰って荷物もってくるか・・・

 

 

 

 

 

 17時近くになり、皆が集合する。

 枕投げをしているヤツら、布団の前にフィギュアを並べてるヤツ、皆気が緩みきっている。

 ま、こんくらい緩めておいた方がいいパフォーマンスが出来るかもしれないしな、良いんじゃないか。

 

 夜飯はカレー、早速準備に移るそうだ。

 俺は春奈と一緒にじゃがいもの皮むきだそうだ。それを伝えに来た秋の顔がどことなくにやけているのを俺は見逃さなかった。

 

 

「柊弥先輩、料理も出来るんですね。」

「まあな。趣味の一環としてたまーにな。」

「今度私にも振る舞ってくださいよ!」

「いいぞ、今度家に来るといい。」

 

 

 何か知らぬ間に家に招待することになってしまった。

 まあ、いいが・・・

 ある程度準備を終え、火を扱う段階に入った。

 役割ごとに割り振られており、ここまで来ると俺のやることは無いため1人外れる。

 ・・・ここなら、誰も来ないか。

 

 

「集中、集中だ・・・」

 

 

 目を閉じて座り込む。

 化身は、俺流に言葉で表すなら内に秘めるエネルギーが見える形として具現化したもの。それを常に出し続けるから消耗も激しいというわけだ。

 内なるものを解き放つには、まずはそれを知覚しなければならない。

 何の音もしない場所で、1人目を瞑り気を巡らせる。

 俺の中のエネルギーを感じ取ろうと試みる、が何も感じられない。

 ・・・この練習法は違うのだろうか。

 

 数十分そうしていると、皆の方向が騒がしくなり始めた。

 ・・・出来たのだろうか。行ってみよう。

 

 

 

 

 

 

「幽霊?」

「はい、それでみんな校舎の中に・・・」

 

 

 残っていた春奈に話を聞く。他にも監督や夏未、執事さんやらはいるが。

 幽霊ねえ・・・大方壁山辺りが恐怖から幻覚でも見ただけなんじゃないかねえ。

 

 数十分後、見慣れない人達と一緒に皆が帰ってくる。

 雷門OBの人達だ。

 出来上がったカレーを食べながら何故ここにいるのか話を聞く。何でも、"アレ"を持ってきたらしい。

 ・・・アレって?

 

 そんな疑問は割と早く解決することになる。

 カレーを食べ終え、イナビカリ修練場へと向かう。そこには見慣れない機械が。

 マジン・ザ・ハンド養成マシンだそうだ。40年前・・・OBの人達がマジン・ザ・ハンドを身につけるために開発した。

 それを使って守が練習を始める。

 手動で動く様々なギミックを避けながら、交互に両脚でマークを踏みながら奥まで渡る・・・という機械らしい。

 これでマジン・ザ・ハンドに大切なへそと尻の使い方をマスターできるらしい。これを乗り越え、実際に試してようやく完成するそうだ。

 

 

「大丈夫か?」

「少し休憩にするか?」

「だったら、俺達で回すでやんス!」

 

 

 1年達が俺達の代わりにギミックを動かす役を買って出る。それをみて他の皆も協力すると言い出す。

 

 

「・・・何やってんだ俺は。こんな仲間がいるのに、マジン・ザ・ハンドが出来ないからって1人で焦って・・・俺は大馬鹿者だ!」

「そうだぜ守・・・皆ついてる。」

「ああ・・・皆、頼むぜ!」

 

 

 守が仲間の大切さを認識し、練習再開。

 どのくらい経過しただろうか。皆で協力して装置を動かしながら、守はとうとうその機械の奥まで渡りきってみせた。

 

 

「よっしゃぁぁぁぁ!!」

「よし、次のステップだ!!」

 

 

 

 

 

 場所を変えて、守に対して俺、修也、鬼道が向き合う。

 

 

「へそ、尻に力を入れて止めてみろ!さっきの感じを忘れるなよ!」

「はい!!」

「よし、行くぞ!」

 

 

 鬼道が高くボールを蹴りあげる。ボールは稲妻のようにエネルギーを纏いながら落ちてくる。それを俺ら3人が撃ち出す。

 

 

「「「イナズマブレイク!!」」」

 

 

 守の代理を俺が務めてイナズマブレイクを放つ。

 すると、守には先程まで無かった力が満ち始める。これは・・・完成の兆しか!

 が、イナズマブレイクを止めきれずゴールに押し込まれてしまう。

 

 

「もう1回!!」

「行くぞ!!」

 

 

 が、やはり成功しない。

 

 

「監督・・・」

「ああ・・・何か一つ、根本的なものが欠けている・・・やはりこれは幻の必殺技なのか?」

 

 

 思わず暗い雰囲気に包まれる。

 が、その雰囲気を打破したのは秋だった。

 

 

「まだ試合は始まってもいないんだよ!?10取られたら11点、100点取られたら101点、取り返せばいいじゃない!!」

「木野先輩の言う通りですよ!!」

「確かに・・・その通りだ。」

 

 

 すぐさまそんな雰囲気は熱意へと変わる。

 

 

「よし、俺達の底力見せてやろうぜ!!」

「「「おう!!!」」」

 

 

 決意を新たに、今日はここで練習終了。

 風呂を沸かし、全員入ったところで就寝だ。

 ・・・が、俺は1人抜け出す。

 やはり、化身に繋がる何かを手に入れておきたい・・・

 

 

 

 

 

 

「はあ、はあ・・・ダメか。」

 

 

 思い当たる節は全て試したが、やはりダメだ。

 極限の集中力の下、自分を追い込む・・・これが俺の出した結論だったが、これも違かった。

 あの時・・・俺は確かに追い込まれていた。だから自分を追い込んでみたが・・・

 

 

「あーもう、何が足りないってんだよ・・・」

 

 

 何が足りないのか、何も分からない。

 ダメだな・・・焦りすぎている。一旦思考をリセットしよう。

 全てを投げ出すようにして芝生に寝転がる。

 すると、急に額に冷たいものが触れる。あまりに急なものだから変な声を出してしまった。

 

 

「・・・何だ、春奈か・・・驚いた。」

「ふふっ、今変な声出てましたよ、柊弥先輩。」

 

 

 寝転がる俺の隣に春奈は腰掛ける。

 

 

「もう遅いんだぞ。寝なくていいのか?」

「それ、柊弥先輩が言いますか?折角お風呂にも入ったのにまたこんな汗だらけになって。」

「・・・何も言えないな。」

 

 

 しばらく沈黙が続く。先にその沈黙を破ったのは春奈の方だった。

 

 

「柊弥先輩・・・私の事、どう思ってます?」

「どうって・・・働き者で気も遣えて、いいマネージャーだと思ってるよ。」

「そうじゃなくて・・・その、女性としてどう思われてるのかなって・・・」

 

 

 ・・・まずい、なんて返せばいいか分からない。

 変に口説くようなことを言ったら、どうなるか分からない。

 もしかしたら鬼道に殺されたり──

 

 

「私は、柊弥先輩の事が好きです。」

「──へ?」

「いつもの一生懸命なところも、私に向けてくれたあの優しいところも、全部好きです・・・」

 

 

 心臓の音が高鳴るのを感じる。かつてないほどに。

 

 

「もう一度聞かせてください・・・柊弥先輩は、私の事どう思っているんですか?」

「・・・それは。」

 

 

 これじゃ、まるで告白されているみたいじゃないか。

 この前も春奈と話したように、告白されるのは初めての事じゃない・・・けど、今回は違う。

 

 最近、悩んでいたんだ。俺は春奈をどう思っているのかって。

 鬼道に話した通り、悪くは思っていない。寧ろ良く思っている。一緒にいれば楽しいし、信頼も出来る。他の人とは何か違うって、最近自覚し始めた。

 けど、これが好意なのか何なのか・・・俺には分からない。

 

 

「・・・それは、今は言えない。なんて言えばいいか分からないんだ。」

「・・・そうですか。」

「でも約束する。決勝が終わった時・・・必ず答えを出すよ。俺は。」

 

 

 自然にそう口に出していた。

 

 

「決勝が終わった時、ですか・・・分かりました。じゃあそれまで・・・私待ってますから。」

「・・・ああ。」

「それじゃあ・・・おやすみなさい。あまり遅くまで起きてちゃダメですよ?」

「心配には及ばないさ・・・おやすみ。」

 

 

 春奈はこの場を去っていく。

 決勝が終わった時・・・か。我ながら勝負を焦ったかもしれないな。

 明後日には告白の答えを返す。って宣言したようなものじゃないか。

 

 

「はあ・・・分かんねえ。」

 

 

 それは化身の出し方か、はたまた春奈についてか、自分のことについてか。

 だが、言ってしまった以上もうあとには引けない。

 絶対にこの想いにケジメはつける。絶対に・・・

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 勝負の日の朝。

 洗面台にて自分の顔と向き合う。

 あれから、俺の化身は音沙汰無いし、守のマジン・ザ・ハンドも結局未完成のまま終わってしまった。

 だが、それでもやるしかないんだ。

 ・・・俺の結論は、もう決まっている。

 

 

「行ってきます。」

 

 

 戸を開けて外へ出る。

 穏やかな朝日が周囲を照らし、これから死闘を繰り広げることになるとは一切感じさせない空気だ。

 これから俺が赴くのは戦場。真剣勝負の場だ。

 勝たなければならない。ここまで頑張ってきた自分達に報いるためも。

 だが、忘れてはならない。

 勝ちに執着して、焦ってはいけない。

 そう、俺がやるべきなのは───

 

 

 

 

 

 

 

 ───サッカーを楽しむことだ。




【原作との相違点】
特に無し。

というわけで、世宇子戦の前の描写でした。
柊弥の決意が読者の方々に伝われば良いなあ・・・と思います。
次回から世宇子戦、恐らく2話構成です。
前半は今日のうちに投稿できると思います。
そして、この2話で終わりかな・・・とも思います。
どうか、お付き合い下さい。
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