「着いたぞ、白恋中だ!!」
「ここが・・・」
数日かけて漸く北海道に到着した雷門。
道中の自然の中での特訓などを経て、漸く豪炎寺と柊弥の脱退による気分の落ち込みが晴れつつあった。
ここへやってきた目的は1つ。熊殺し、ブリザードとも称されるストライカーである吹雪士郎を仲間に引き入れるため。
「それにしても、さっきのアイツは無事に帰れたかなあ・・・」
「自分で大丈夫って言ってたし無事だと思うけど・・・」
"アイツ"とは、白恋中へ到着する少し前に雪道で凍えていた少年のことである。
円堂が少年をキャラバンに乗せ先へ進むと、大柄な熊に襲われるというトラブルに見舞われたが、サッカーボールを持ったその少年が外に出て少し経つと、その熊はノックアウトされていた。
この少年がやったのか・・・?という疑問を抱えつつもキャラバンは進み、吹雪が止みこそすれど周囲には雪だらけの場所でその少年とは別れた。
「まあまあ。とにかく、吹雪ってやつを探そうぜ!」
円堂がそう言ってキャラバンを飛び出す。
それに全員が着いていき、白恋中へ足を踏み入れると雷門の面々は凍えるような気温に反し熱烈な歓迎を受けた。
全国大会で優勝したというその実績の恩恵を実感しつつも、吹雪士郎の所在について訊ねる。
「吹雪君なら今頃スキーじゃないかな?」
「いや、きっとスケートだよ。」
「オイラはボブスレーだと思うなあ。」
吹雪を知る者達から飛び出た単語はどれもサッカーからはかけ離れたもの。
それでいて熊殺しという異名を持つことに風丸は首を傾げる。
すると、一同が話していた教室の外から物音がする。
「あ、帰ってきたんじゃない?」
笠のようなものを被った少女、荒谷が教室の外を覗く。
「吹雪君!お帰りなさい!お客さんが来てるよ。」
「お客さん・・・?」
聞こえてきた新たな声に円堂達は驚きを隠せなかった。
何故なら、先程聞いた声と同じだったから。
「あれ、君達か。」
「さっきの・・・!?ってことは・・・吹雪士郎ってお前だったのか?」
「うん、そうだよ。」
「お前が熊殺しか!?」
染岡が食ってかかるように吹雪にそう訊ねると、 吹雪はよく誤解を招くんだと頭を掻きながら笑って答える。
吹雪が染岡に手を差し出すと、そのイメージに幻滅した染岡は教室を飛び出していく。それを追おうとした円堂を引き止め、木野が染岡の後を追っていった。
「吹雪君、少し時間いいかしら?」
「ええ。えっと・・・」
吹雪が浮かべた疑問符に反応するように瞳子は自己紹介をする。
「お話ですか。それなら折角北海道に来ていただいたんですし、雰囲気を感じられる場所でどうです?・・・かまくらとか。」
「私はどこでも構わないわ。」
「監督!俺達少し雪遊びしたいっス!!」
「・・・話をしている間、許可するわ。」
ということで全員外へ出る。
後ろから外に出ていった染岡とそれを追った木野も着いてきた。
一面雪が降り積もる開けた場所に続く階段を降りている時、屋根から雪が滑り落ちる。
その音を聞いて蹲ってしまう吹雪。ただ雪が落ちただけ、と荒谷が声を掛けると吹雪は立ち上がる。
それを見てますます吹雪の印象が分からなくなる一同だったが、雪原を目の当たりにした瞬間そんなことはどうでも良くなったのか、各々が雪だるま作りや雪合戦など、積雪ならではのレジャーに勤しみ始めた。
数人が入れる規模の大きなかまくらで瞳子、円堂、木野、音無は吹雪と話を始める。
「仲間を?」
「ええ。音無さん。」
そう言って音無はエイリア学園によって破壊された校舎の写真を吹雪に見せる。
音無は柊弥を失ったことに対する悲しみは未だ晴れ切ってはいないが、他の者同様に前を向き始めた。
「エイリア学園は数日前から、この北海道で校舎を破壊しているわ。」
「でもうちは大丈夫ですよ、狙われる訳ありません。やっとサッカー部として活動できている弱小チームですから。」
「白恋中だけの問題ではないわ。これ以上エイリア学園のすきにさせる訳にはいかないの。」
「俺達はエイリア学園を倒す為に地上最強のサッカーチームを作ろうとしているんだ。だから吹雪、お前を誘いに来たんだ!」
「貴方の噂は聞いているわ。私達と一緒に戦って欲しい・・・貴方の実力を見せてくれるかしら?」
それを吹雪は快諾。かくして、雷門中と白恋中の試合が行われることとなった。
「監督、作戦は?」
「好きにしていいわよ。吹雪君の実力を見たいだけだから。」
(誰も、豪炎寺と加賀美の代わりにはなれやしないんだ。)
逆側のベンチでメンバーを鼓舞する吹雪を見て、染岡はそう心の内で吐き捨てる。
「吹雪さんって凄いストライカーって感じがしませんよね。」
「え?」
「ほら、豪炎寺さんや柊弥先輩っているだけで点を取ってくれそうな雰囲気あったじゃないですか。」
「そうね。確かにあの2人と比べたら彼には凄みを感じないわね。」
なんて話をマネージャー陣が交わす。
その発言はもう間もなく覆されることになるとは知らずに。
各々がポジションにつき、試合開始のホイッスルを待つ。
そこで雷門イレブンには衝撃が走る。
ストライカー、と聞いていた吹雪はなんとDFのポジションに着いているのだ。
「吹雪はFWじゃなかったのか!?」
「FWだよ。今はまだ違うんだ。」
後半からポジションチェンジして来るのか、はたまた何なのかという疑問は拭えぬまま。結局は試合の中で確かめればいいと鬼道は思考を切り替える。
『鬼道のキックオフで試合開始!!』
そうして試合が始まった。
揶揄われているのだと憤慨した染岡は、その怒りに身を任せてゴールへ突撃する。染岡の凄みに怯んだ白恋は簡単に染岡の全身を許す。
そしてゴール前にて、染岡と吹雪は一対一。
「そういう強引なプレイ、嫌いじゃないよ────アイスグランド!!」
フィギュアスケートのようなアクセルをして着地。着地際、吹雪の足元から氷が広がっていき染岡は為す術なくボールを奪われる。
(何てディフェンス、あれを破るのは大変だぞ。)
鬼道は吹雪のディフェンスを目の当たりにし驚愕した。
ストライカーと聞いていた男が、全国でも通用するであろうディフェンスを披露して見せたのなら無理もないだろう。
吹雪は喜多海にパスを出すが、そのパスは風丸がカットした。
(他のプレイヤーは吹雪程の実力ではないな・・・)
風丸は内心そんなことを思いつつも染岡にパス。再び染岡は吹雪と対面するも、無理矢理にゴールを奪おうと己の必殺技を放つ。
「ドラゴンクラッシュ!!」
染岡の煮え滾るような怒りに呼応するように、蒼い龍は咆哮と共にゴールへ、その前に立つ吹雪へ襲い掛かる。
が、吹雪は避けようとはせずにそのままボールへ蹴りを入れると、蒼い龍は姿を消してしまった。
『なんと!吹雪がドラゴンクラッシュを止めてしまったァァ!?』
雷門イレブンに衝撃が走る。豪炎寺と柊弥なき今、染岡がチームの中で1番のキック力を誇っていた。が、その染岡のシュートを意図も簡単に目の前の男は止めて見せたのだ。
必殺技を止められた染岡は、吹雪がキープするそのボールを奪おうとスライディングを仕掛ける。
「──出番だよ。」
吹雪が誰にも聞こえないくらいの声でそう呟き、愛用のマフラーに触れる。
その瞬間だった。
吹雪を中心に雪を舞い上げながら風が巻き起こる。
ボールを奪いに来た染岡を逆に弾き飛ばして見せた。
風が止み、包み込んでいた雪から姿を現した吹雪の眼は先程の眼とは変わって黄色に染まり、その口元には先程の吹雪からは想像出来ないほどの獰猛な笑みを浮かべていた。
「この程度かよ?甘っちょろいヤツらだ!」
「雰囲気が変わった・・・!?」
別人のように変貌した吹雪を前に驚嘆。
そのまま吹雪は単独で駆け上がる。
一之瀬が仕掛けたショルダーチャージをそれ以上の力で押し退け、鬼道と風丸のボールを挟み込むようなスライディングも──
「うらァァァァァァァァァ!!」
──獣のような咆哮を上げながら弾き返す。
土門のキラースライドも軽やかに跳躍して躱し、あっという間にゴール前へ。
(感じるぜ吹雪、お前のシュート・・・絶対凄いはずだ!!)
吹雪は軽く上げたボールを、両脚で挟み込み回転を掛ける。するとどこからか冷気が漂い始め、ボールを包み込む。
どんどんその出力を上げていくボールを、吹雪は一切の躊躇無く撃ち出す。
「エターナルブリザァァド!!」
永遠の吹雪、と名を冠するそのボールは凄まじい勢いで吹雪かせながらゴールへ迫る。
あまりの速さに溜める余裕がなく、円堂はゴッドハンドでそのシュートを受け止める。が、ボールに触れた瞬間ゴッドハンドは凍りつき、薄氷のように砕け散る。
『ゴォォォル!!吹雪の必殺シュートが雷門ゴールに炸裂!!なんと先制したのは白恋中だァァ!!』
「ゴッドハンドがあんな簡単に・・・!?」
「これがブリザードの吹雪・・・」
ベンチからそれを眺めていたマネージャー陣が驚きの声を漏らす。当然、驚いているのは選手達も同様だった。
自慢の必殺技を破られた円堂は、未だ手に残る感触を噛み締める。
「いいかよく聞け・・・俺がエースストライカー、吹雪士郎だ。」
そう言って吹雪は自陣へと戻っていく。
「あのスーパーディフェンスに素晴らしいシュート力・・・噂以上だ。」
「どんなにシュートが凄くても・・・豪炎寺と加賀美の代わりはいねぇんだ・・・!」
吹雪の背中を見送りながら、鬼道と染岡は呟く。
ボールを拾い、このままじゃ終われないと意気込む染岡の声に反し、瞳子は試合終了を言い渡す。
「このまま終わらせてたまるか・・・!」
その指示に従うことなく、染岡は吹雪にボールを蹴る。それに反応した吹雪はボールを高く蹴り上げる。
「お前に負ける訳にはいかねえ!!」
「やる気か・・・おもしれェ!!」
落ちてきたボールに互いに蹴り込む染岡と吹雪。それに打ち勝ったのは吹雪だった。
「その程度か、話にならねえ。」
と、地に伏せる染岡を見下しながら吐き捨てる吹雪。
「こんなもんじゃ満足できねえ・・・もっと楽しませろォ!!」
と、戦意が収まることを知らない吹雪は叫ぶ。そしてその場で自分の象徴とも言える必殺技の構えに入る。
「エターナルブリザード・・・らァァァァァァ!!!」
コート中央から再び放たれたエターナルブリザード。暴風を伴って突き進むそのシュートに塔子と壁山が立ちはだかる。
「ザ・タワー!!」
「ザ・ウォール!!」
そびえ立つ塔と壁。が、荒れ狂う吹雪はそれら全てを突き破ってゴールへ迫る。
離れた位置からのシュート、それに加えて2人のシュートブロック。これにより余裕が生まれた円堂は自身の最強技の構えを摂る。
心臓に手を近付け、エネルギーを一切の無駄なく注ぎ込む。
「マジン・ザ・ハンド!!」
突き出された魔神の手。しかし、シュートはその手に触れることなく明後日の方向へと飛んで行った。
「チッ!あれでコースが変わったか・・・!」
倒れ込んだ塔子と壁山に駆け寄り、立ち上がらせる円堂。
吹雪のシュートの凄さを語る塔子。その言葉に円堂は閃く。
「円堂!どんな強力なシュートもこの方法なら・・・!」
「うん、エイリア学園を倒せるかも!」
同じ閃きを得た鬼道に同調し、更なる希望を見出した。
そこで瞳子が割り込み、完全に試合を止める。
「吹雪!俺、お前と一緒にサッカーやりたい!」
「僕もさ!君と、君達となら思い切りサッカーをやれそうな気がするよ!」
互いの健闘を讃えあった後、円堂が吹雪に勧誘の言葉を掛ける。それに吹雪も頷く。
「吹雪君、正式にイナズマキャラバンへの参加を要請するわ。一緒に戦ってくれるわね?」
「ええ、良いですよ。」
「・・・雷門の新しいストライカー、誕生よ!」
吹雪の正式な加入。
そして放たれた瞳子の一言に染岡は歯ぎしりし、その場を走り去る。そしてその後を追いかける円堂。
「おい染岡!待てよ!」
「円堂・・・お前は良いのかよ!?豪炎寺と加賀美の代わりがあんなヤツで!」
「そんなに吹雪のことが嫌いか?俺は面白いヤツだと思った!あんな凄いシュートを撃てるヤツに悪いヤツはいないよ。」
吹雪への嫌悪を隠そうとしない染岡に円堂が自分の感想を述べる。
が、それでも染岡の不満は治まらない。
「アイツらはいつだってサッカーと真剣に向き合ってきた・・・それをアイツは楽しませてくれただと?ふざけるな!!」
「・・・別に、それでいいんじゃないか?」
染岡の言葉を円堂は遮る。
「サッカーを楽しむ。うちのチームでそれを誰よりも心掛けていたのは・・・柊弥だぞ?アイツはどんな時だって、サッカーは楽しむものだって言っていた。なら、それでいいんじゃないか?」
「・・・だけどよ!」
それを聞いても、染岡は吹雪を認めようとしない。
「俺だって、アイツらがいなくなって寂しいよ。こう考えようぜ!柊弥と豪炎寺が戻ってきた時が地上最強のメンバーが集まる時なんじゃないかって。だったら、俺達にできることは・・・その地上最強のメンバーになっていることじゃないか?」
それを聞いてようやく染岡は自分の言葉を呑み込む。
「分かった。でもまだ、仲間と認めたわけじゃねぇからな!」
「うん、それでいいさ。」
「大変です!!」
そう声を上げた音無の周りに雷門、白恋の全員が集まる。
音無のパソコンに映し出されたのは・・・レーゼを始めとするジェミニストームの姿。
『白恋中の者たちよ。お前らは我々エイリア学園に選ばれた。サッカーに応じよ!断ることは出来ない・・・負ければ破壊が待っている。助かる道は勝利のみだ。』
そういって映像は途切れる。
突きつけられた襲撃予告。それに白恋のメンバーは恐怖を覚えるが、円堂がその不安を祓う。
「大丈夫さ!俺達雷門が、必ずエイリア学園に勝つ!この学校は破壊させない!」
「うん。僕も雷門の皆と戦う。大丈夫だよ。」
その言葉に吹雪が便乗する。
が、今の雷門では力不足とあることは歴然としている。
その為に更なるレベルアップを図るため、雷門イレブンの闘志は更に燃え上がるのだった。
【原作との相違点】
特に無し
という訳で雷門には吹雪が加入です。
次回は特訓回。そしてその次はジェミニストームとの決戦ですね。
因みに予告ですが、ジェミニストーム戦は原作とガラリと展開を変えます。
お楽しみに。