今日も今日とて終業のチャイムが鳴る。それと同時に勢いよく教室を飛び出したサッカーバカを追いかけるのは私、加賀美柊弥でございます。どうもどうも。
周りの目線が痛うございまする。
「柊弥ー!早く早く!」
「分かった分かった・・」
サッカーバカこと円堂守はいつもこうである。授業を終え、清掃を終えるとすぐ部活。正しく天性のサッカーバカである。せめて授業中に寝るな起きろ勉強しろ。俺達もう二年生なんだから・・・
さて、守を追いかけ部室までやってくる。サッカー部が無かった入学当時からうってかわり、部員がある程度集まったことによりサッカー部としての活動が可能となった今、来たるフットボールフロンティアに向け、徹底した練習が求められる、のだが・・・
「さあ!練習だ!」
守の声に答える者は誰一人いない。ゲームをしている者、漫画を読んでいる者、トランプをしている者。選り取りみどりというやつだ。
ここ、サッカー部の部室だよな・・・?拳法してる奴もいるし・・・
「さあ!練習!!」
再度守が声を上げるが、相も変わらずである。
「どうしたどうした!もうずっと練習してないんだぞ?」
「グラウンド、借りられたのかよ。」
「うっ・・・」
痛いところを突かれてしまった、と言わんばかりに守が肩を竦める。
「これからまたラグビー部に交渉して──」
「だろうと思った。」
「どうせ笑いものになるだけでやんす!」
無気力極まれりである。
アフロヘアーの宍戸が、七人ぽっちならテニスコートで十分だと言われるだけだ、と呟く。実際そう言われたからなあ・・・
次々に部員達からの無気力を投げ掛けられた隣から、ふつふつと何かが煮えたぎるような音がする・・・ただの比喩だが。
「俺達はサッカー部なんだ!!フットボールフロンティア、今年こそこれに出ようぜ?な?」
一人一人に同意を求めに行くが、何処吹く風と言った様子でちゃらんぽらんな返事しか返されない。
哀れ守よ・・・
「お前らなあ!サッカーをやりたくて入部したんだろうが!」
とうとう守が怒声をあげる。
「サッカー部がサッカーやらなくてどうすんだよ!」
と言って部室から飛び出してしまう。
「お前ら・・・守の言う事も最もだろう?少しはやる気をだな・・・」
「人も足りない場所もない。そんなんじゃやれるもんもやれないだろうよ。」
「染岡さんの言う通りっス。」
ダメだ、何言っても無駄だこれは。
・・・守を追いかけるか。
外に出てすぐのところで守とマネージャーである秋が話していた。
「あ、加賀美君。」
「柊弥、皆は?」
首を横に振ると、やっぱり。と言った表情で項垂れる二人。分かる、分かるよその気持ち。
「仕方ないな。柊弥、河川敷行こうぜ!」
「おっけー。」
河川敷では、ちびっ子達がよくサッカーをしているのだ。場所がない時はそこに混ぜてもらっている。
相手していて中々楽しいからな、サッカーも出来るし一石二鳥ってやつだ。
「小学生相手で練習になるの?」
「あいつら、結構やるんだぜ?」
秋の最もな疑問に守は即答する。
・・・言っていいことではないが、練習にはならないだろう。それを口に出すような野暮なことはしないが。
河川敷にてサッカーを始め、気づけばもう日が沈み掛けていた。夕日に照らされた河川らきらきらと光り、中々どうして美しい。
ちびっ子達が帰る準備をしている横で、俺と守はPK形式で練習をしている。
「ふっ!!」
「ナイスシュート、柊弥!」
もう何本も全力で打ち込んでいるが、俺にも守にも疲労の色は見えない。
やはり、守を相手に打ち込むのは楽しいな。
「柊弥、必殺技ありでやらないか?」
「いいね、俺もそんな気分だ。」
守の申し出を受け、少し気合いを入れ直す。
一年前、天馬やフェイと共にプロトコル・オメガと戦った時に引き出せた化身を始めとするあの力・・・
どういう訳か、彼らと別れたらまた元通りになってしまったが、あの時の感覚は身体が覚えている。それに近付くため色々試してはいるが、実力は向上こそすれど、あのレベルまでは至らない。
とはいえ、俺も守も地区大会ではトップレベルなのでは、と思う。それを確かめる機会が無いのが残念だが。
「行くぞー守。」
「よし来い!柊弥!」
一呼吸。
俺の意識は集中の極地へと至る。
ボールを踏みつけ、回転を与えると共に電気を帯びさせる。上昇しきって強くボールが輝きを放ったタイミングで蹴り抜く。イメージは抜刀術。
「轟一閃!!」
空気を切り裂きながらゴールへと突き進むシュート。
対する守は、エネルギーを手に集中させ、そのエネルギーで大きな掌の形を作り、それを持ってしてシュートを受け止める。
「ゴッドハンド!!」
火花を散らしながら雷と神の手がぶつかり合う。
数秒の拮抗の後、ボールは勢いを失い、守の手の中に収まる。
「くううう!やっぱり柊弥のシュートはビリビリ来るな!」
「電気帯びてるしな・・・しかし流石だな。いつもより手応え、いや足答えか?があったのにしっかり止められた。」
「へへっ。でも確かに、いつもよりドーンって来たぜ!」
この男、時折こうして謎の表現を使ってくるのである。
お爺さん譲りのようだが、ご両親もそうなのか?いや、あの人達は至って普通だったような・・・
「誰だァ!これ蹴ったの!」
突如河川敷に怒号が響く。
声の方向に目を向けるとデフォルメ的な不良がいた。うわあ・・・関わりたくない。
ちびっ子が青ざめてることから、その中の誰かがやってしまったことが伺える。
「大丈夫ですか!すみませんでした・・・」
気付いたら守がその二人の前に飛び出していた。
謝罪を述べ、ボールを返して貰えるよう頼んだ。その時だった。
チビの方が守の腹に蹴りを入れやがった。
介入すべくそこに歩み寄ろうとしたら、こちらを見ているある視線に気づく。灰色の髪の、どこかクールさを感じさせつつも熱さも感じさせる。そんな男だった。
俺は、この男を知っている・・・
「ヤスイさん、お手本見せてあげたらどうです?」
「いいねえ・・・やってやろうじゃねえの。」
ヤスイ、と呼ばれた長髪の男がボールに唾を吐きかけた。こいつ、タダじゃおかねえ・・・
そしてその男は、ボールをハチャメチャな方向に蹴り飛ばす。そこには、ちびっ子・・・マコちゃんがいた。危ない!
「ふッ!」
間に合う距離だった為、ボールとマコちゃんの間に割り込もうとした。が、それより早く、この状況を見ていたさっきの男が割り込む。
ヤスイの顔面に向かって正確にボールを蹴り返す。あの速さ、正確さ、威力。やはりこの男・・・!
「ヤスイさん!」
チビの方がぶっ倒れたヤスイに声を掛ける。そして激昂してボールを蹴り返した男に怒鳴り散らす。
俺は特に危害を加えられていないが、不愉快だったのでチビの方に向かってボールを蹴る。当てはしない。鼻の先を掠める程度だ。
「ヒッ!!??」
「そいつを連れてさっさと失せな。・・・次は当てるぞ?」
面白いくらいの速さで方向転換し、ヤスイを連れてチビは退散する。
何から何までデフォルメだな。奴ら。
マコちゃんの安全を確認して、男はこの場を去ろうとする、が。守が引き止める。サッカーやってるのか、どこの学校なのかを根掘り葉掘り聞こうとする。
「初めまして・・・木戸川清修のエース、豪炎寺修也。」
男・・・豪炎寺に俺も声をかける。
そう、この男。全国レベルの学校である木戸川清修のエースストライカーである。去年のフットボールフロンティアの中継で見た。
「・・・」
が、豪炎寺は何も答えることなく階段を登り、去っていく。
何も語らず、って訳か。
「あ、おい・・・」
「まあまあ。」
少し残念そうな顔をする守を宥める。もう日が沈むし、明日も学校だからここいらで引き上げないとだしな。
それにしても豪炎寺修也が何故ここに・・・?考えても分からないな。
だが、何故だろうな。近いうちにまた会う気がする。
「あああああああああああああ!?」
「守、うるさい。」
翌日、朝のホームルームにて転校生が紹介される。
・・・近いうちにまた会う気がする、とは言ったものの。再会早過ぎないかね、豪炎寺さんよ。
「何だ、知り合いか?」
担任の先生が守に問いかけるも、しどろもどろな返事を返す。
豪炎寺の席は空いていた一番後ろ。隣は俺だ。
「やあ昨日ぶり。・・・よろしく。」
「ああ・・・よろしく。」
手を差し出して握手を求めると、特に拒むことなく応じてくれる。
昨日みたいに無視されたらどうしようかと思ったが、そんなことは無かった。
昼休みになると、守が熱烈な勧誘を仕掛ける。が、豪炎寺の表情はいまいち優れない。
・・・何か事情があるとみた。
「・・・サッカーは、もうやめたんだ。」
「辞めたって、どうして・・・」
「よせ守。下手に他人に介入するのは良くないぞ。」
無神経な守を止めに入る。豪炎寺が目線でありがとうと言ってきたのを見逃さなかった。
「円堂!冬海先生がお前を呼んでる。校長室に来いってさ。」
半田が突如声を掛けてくる。校長室に呼び出し・・・?
「守・・・お前万引きでもした?」
「してない!!人聞きの悪いことを言うな!」
顔を真っ赤にして否定する守。あー面白い。
半田に促されるがまま校長室に向かう守。はて、なんの用やら・・・冬海先生が呼び出した、ってことは部関連の話だろうが。
「とうとううちも廃部かね?」
「廃部・・・どうしてだ?」
「部員、足りてないんだ。この頃廃部の噂が出ててな。俺も薄々そんな予感がしてたんだ。」
豪炎寺が疑問に思ったのだろう、問いかけてくる。
隠すことなく話すと、豪炎寺の表情に少し揺らぎが見えた。ほんの少しだが。
少しすると守が帰ってくる。
「守、先生はなんて?」
「・・・・・・帝国と練習試合、だってさ。」
・・・は?
「待て待て、帝国って、あの全国王者の帝国?」
「そう、あの帝国。」
Why?ワターシ、リカイデキナイネ、HAHAHA!!!
じゃねーよ。おかしいだろ、なんで帝国なんだよ。
「それまでに部員が集まらない、もしくは試合に負けたら・・・廃部だって。」
「・・・オーマイガー。」
「加賀美君が壊れた!」
秋が悲鳴じみた声を上げる。すまない、本当に今思考がフリーズしている。
流石に、急すぎやしないか・・・?
「とにかく、今日から部員を何としてでも集めなきゃ。そして特訓して、勝たないと俺達は廃部だ!そんなことは絶対にさせない!!」
「・・・はあ、頑張らないとな。」
部活の時間になり、部室でその話をすると案の定と言った反応だった。「終わりだ。」「廃部だ。」などなど。
それを聞いて守が再び激昂。本気で勝ちに行く気なのだろう。
無論、俺も同じだ。だが、部員がいないんじゃなあ・・・
そして鬼の勧誘大会が始まった。
他の部活にバカにされながらも、俺と守、秋の三人で部員を集めるべく奔走する。
ま、めぼしい成果は得られなかったが・・・
途中、新聞部からインタビューを受けたりもしたが、それっぽいことを言って部員の宣伝を頼んでみた。ずっこけられた。デスヨネー・・・
今日の部活は勧誘だけで終わってしまった。既に空はオレンジに染っている。
これから守は鉄塔広場で練習するらしいが、俺は今日はパスだ。
久々に親が帰ってくる日なんでな。
自慢じゃないが、家がでかいのだ。
会社の経営者である父、プロのピアニストである母。どちらも国内、あるいは世界を飛び回っている人だ。
そんな人達だから、常に一緒にいられる訳では無いのだが、二人共俺がサッカーをやりたいと言った時も否定することなく応援してくれた。金銭面でも苦労しないし、感謝感謝。
「ただいま──」
「お帰りなさいませ、柊弥様。」
家のお手伝いさんだ。両親が留守の間も泊まり込みで家の世話をしてくれている。
「柊真様と弥生様は既にお帰りです。さ、こちらへ。」
「ありがとうございます。」
ふたりが待つ部屋に案内される。扉を開けると、良い匂いが鼻腔をくすぐり、空腹感を掻き立てる。
「柊弥、お帰りなさい。」
「ただいま、母さん。父さん。そしておかえり。」
「ああ、ただいま。」
そこから親子の他愛もない会話が始まる。近況報告が主であるが。
「ところで柊弥、部活はどうなったんだ?部員が足りないと言っていたが・・・」
「ああその事・・・未だに足りないよ。そんでもってさ、全国王者との練習試合が急に決まったんだ。それに負けたら廃部って・・・あまりに急だよなあ。ま、部員は集めるし、試合にも勝ってみせるけど。」
「流石私たちの息子!逞しく育ったわ!」
「よせやいよせやい・・・二人は次はいつ発つの?」
「いや、しばらく家に入れることになったんだ。もし大会に出る時は応援に行けるな。」
珍しいこともあるものだ。二人揃ってフリーの時期が来るとは。
「そっか、それは良かった・・・大会、楽しみにしててよ。」
そこからも親子の時間は続く。
時は飛んで試合当日。
サッカー部室にて、戦いに赴く部員達がミーティングをしていた。
足りなかった部員も、勧誘の甲斐あってか11人ピッタリまで揃った。
「ちょっと!!聞いてないですよ、僕を抜いて11人揃えるなんて!」
突如部室の扉が開き、眼鏡をかけた少年が鬼の形相で訴えてくる。あまりの剣幕にその場いた全員がたじろぐが、我に返ると全員一様に「なんだこいつ」と言った表情を浮かべている。
「はいこれ入部届。背番号は10番でいいですよ。」
「んだとテメェ・・・10番は柊弥の──」
「まあまあ染岡。俺は構わないよ。」
染岡が目金に掴みかかろうとするが、柊弥が制する。
(試合に出す出さないは別だし。)
柊弥は内心ほくそ笑んでいた。
ミーティングを終え、雷門サッカー部は外にて来訪者を待ち構える。
すると、次第に風が強くなり、地響きが鳴る。
辺りには不穏な空気が漂い、その場いた全員が気圧されつつあった。
そして現れる帝国。
黒煙を巻きながら、装甲車にも見える大型車を雷門中校門前に停車させる。
中から現れるのは帝国の面々。その様はさながら軍隊のよう。
「・・・あれが帝国。あれが、鬼道有人。」
柊弥がふと呟く。
先頭を切るドレッドヘアーの男、鬼道有人。帝国サッカー部キャプテンだ。
彼の出す指示は一流のそれ。チームの流れを滞らせることなく作るプロとも呼べる所業である。
そして車の上に姿を現したのは帝国サッカー部監督であり、帝国学園総帥である影山零治。
鬼道を育て上げたのは彼の手腕のところによるものだ。
帝国の面々がグラウンドにてウォーミングアップを始める。
そのレベルの高さに雷門は声を失うが、それを見ても堂々とした態度を崩さない者が二人。キーパーでありキャプテン、円堂守とフォワードにして現雷門のエース、加賀美柊弥。
「守、帝国をどう見る。」
「やっぱりすげえ奴らだ!あんなのと試合できるなんて楽しみだな!柊弥!」
「ああ、心が躍るな。」
(あの二人・・・中々できるな。)
鬼道は横目で二人の様子を伺っていた。
(特にあの男・・・加賀美柊弥。奴は小学生の頃からサッカークラブに所属していて、全国大会にまで行っていたはず。先程データに目を通したばかりだが、中々期待できそうだ・・・まさか豪炎寺の他に、こんな奴が潜んでいたとはな。)
鬼道が指を鳴らす。すると突如として、パス回しの速さが段違いのものとなる。そして高く打ち上げられたボールを鬼道が鋭く蹴り飛ばす・・・
「・・・!?」
一つは円堂に、一つは柊弥に向けられたものだった。突如のことに驚きこそすれど、円堂はそれを難なくキャッチする。
柊弥はというと、迫るボールを空高く打ち上げ、落下に合わせて蹴りを叩き込み、直線を描きながら鬼道へと打ち返す。
(ほう・・・反応、威力共に申し分ない。しかも全力じゃないな。)
円堂と柊弥は少し呆けたが、二人揃って同じ反応、同じ言葉を口にする。
「「面白くなってきた!」」
それを聞いて帝国はさらに獰猛な笑みを浮かべる。
獲物を喰らう狩人となるのは帝国か、はたまた雷門か。
お察しの通り、天馬たちの介入を受けて円堂と柊弥は微強化されております。
ちなみに化身は出せません。
さてさて、次回は帝国戦。
外部の介入なく、雷門サッカー部として初の試合ですね。
私が書いた他の小説と先方達の小説を読み比べ、少し書き方を変えて見ました。どちらの方が良いか教えて頂けると幸いです。