雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第31話 新たな敵と次なる目的地

「やったああああ!!」

「俺たち勝ったんスね!?」

 

 

 白恋中グラウンドは歓喜の声に包まれていた。

 先程まで行われていた雷門中対エイリア学園、ジェミニストームとの試合。

 3度目のこの対面で、とうとう雷門が勝利を収めた。

 破壊行為を止めて欲しければサッカーで勝ってみろと言ったのはエイリア学園の方。その条件に則って勝ったとあれば、これから先も起こるかと思われた破壊は阻止されたこととなる。

 

 

「我々が、負けた……!?」

「あら、地球にはこんな言葉があるのよ?"三度目の正直"ってね」

「何……!?」

 

 

 驚愕するレーゼに対し、サッカーで戦えないもどかしさを晴らすように夏未が煽りを入れる。

 それを受けたレーゼは怒りの表情を浮かべたが、すぐさまその表情は青ざめたものに切り替わった。

 

 

「監督!俺達勝ちました!ありがとうございました!!」

「ええ……おめでとう」

 

 

 自分達を勝利へ導いた瞳子に対し、例を述べる円堂。

 各々が歓喜に震える中、1人胸の辺りに手を当て、呆けている者がいた。

 ネビュラである。

 

 

(あの感覚は……一体?)

 

 

 ネビュラの脳裏に浮かぶのは、試合終了直前の円堂との一対一の光景。

 自身の全力の必殺シュート。1発目よりも高い威力を誇るそれを、1発目すら守れなかったキーパーが捕れるはずがないと高を括っていた。

 が、現実はどうだろう。

 そのキーパーは、土壇場で進化して自分のシュートを止めて見せた。1発目のように仲間の力を借りることも無く、完全な独力で。

 その姿を目にした時、ネビュラは言葉に出来ないか何かに支配された。

 

 その答えを探すかのように、ネビュラは円堂の元へと歩み寄る。

 

 

「円堂!」

「ん……?」

 

 

 当然、突如としてこちらに歩いてくる敵に警戒をしないはずがなく、最初にそれを視認した風丸が声を上げる。

 それに反応して円堂も後ろを振り返る。

 

 

「……」

「えっと……どうかしたか?」

 

 

 ネビュラは数秒の沈黙の後に口を開く。

 

 

「……分からない」

「へ?」

「先程のお前との攻防。敗れたのは私だが……言葉に表せない高揚感に包まれている。それが分からないと言っている」

 

 

 そのネビュラの言葉を聞いて、円堂は呆気に取られたような表情を浮かべる。

 が、すぐさま溢れんばかりの笑顔をネビュラに向ける。

 

 

「それは、お前もサッカーが好きだったって事じゃないか?」

「サッカーが、好き……?」

「そうさ!あんな凄いシュートを撃てるやつが、サッカーを嫌いな訳ないさ!」

 

 

 そう言って、円堂はグローブを外した手をネビュラに差し出す。

 グローブから顔を出したその手は、所々が黒くなっており、掛けられた負荷の重さを物語っていた。

 その手をネビュラは黙って見つめる。

 

 

「……この手は」

「握手だよ握手!……本当に凄いシュートだった。またサッカーやろうぜ!!」

 

 

 そう言ってまた笑顔を向ける円堂。

 それを見てネビュラは、更に理解の及ばないモノに包み込まれた。

 まるで、以前もこの目の前の男と会ったことがあるような感覚。何度も触れてきたように思えるこの熱意。

 が、ネビュラの記憶にあるのは、エイリア学園のソルジャーとしての自分。

 円堂との記憶など、存在しているはずがなかった。

 

 それでも、不思議と差し出されたその手は悪く思えなかった。

 握手に応じようと手を伸ばした、その時だった。

 

 

「無様だぞ、レーゼ」

「何だ……?」

 

 

 どこからともなくそう声が聞こえたと思ったら、次第にグラウンドに黒い霧が立ち込める。

 そして雷門イレブンの背後、グラウンドより少し高くなっている場所から赤い光が溢れる。

 レーゼはそれを確認して、さらに青ざめる。

 全員がその方向に視線を向けると、赤を基調とした、ジェミニストームのユニフォームと何処か似た造形の服に身を包む集団がいた。

 その真ん中には、それとは打って変わって黒い服に身を包む男。

 

 

「デザーム様……!」

「覚悟は出来ているな?……ネビュラ様、こちらへ」

 

 

 前者はレーゼ達ジェミニストームに向けられたものだろうと分かった。

 そしてその後に、ネビュラだけはまるで違う扱いかのような言葉を続ける。

 

 

「……さらばだ」

「え?おい!」

 

 

 円堂の手を握ろうとしたその手を引っ込め、ネビュラは現れた集団の元へと一瞬で移動する。

 真ん中の男がネビュラにボールを手渡すと、そのボールは赤いスパークを纏い始める。

 そして無言のままにそれを蹴る。そのボールの向かう先はジェミニストーム。

 そして一際強い光がそのボールから発せられ、その光が止む頃にはそこにいたはずのジェミニストームは姿を消していた。

 

 

「なっ!?」

「我らはエイリア学園ファーストランク、イプシロン。地球の民達よ、貴様らはやがてエイリア学園の真の力を知るだろう」

 

 

 そう言って、イプシロンと名乗ったその集団も光に包まれ始める。

 

 

「……また会おう、円堂守。そして雷門イレブン」

 

 

 そのネビュラの呟きは誰の耳に届くこともなかった。

 イプシロンを包み込んだその光が止むと、ジェミニストーム同様にその場には誰もいなくなっていた。

 

 

「……イプシロン、か。あの口ぶりから察するに、ジェミニストームよりも強いチームなんだろう」

「やっと倒したた思ったら……まだいやがったのか」

「ああ……」

 

 

 勝利への歓喜から一転、姿を現した更なる敵に気分が落ち込む雷門イレブン。

 その空気を払拭したのは円堂だった。

 

 

「暗くなってもしょうがないさ!次の敵が現れたなら、また倒せばいいだけだ!」

「……それもそうだな」

「宇宙人になんて負けないでヤンスよ!!」

「でもちょっと怖いっス……」

 

 

 その一言にいつもの調子を取り戻した雷門イレブン。

 それを他所に、円堂は一人思慮に耽る。

 

 

(あいつ……何だったんだろう。他のエイリア学園のヤツらとは何かが違うような……)

 

 

 ネビュラと対面した際に感じた違和感。どうしてもそれが拭えずにいた。

 が、いくら考えても分からないので思考を切り替え、大人しく仲間達の輪に混ざることにした。

 

 そして、違和感を感じていたのは円堂だけではなかった。

 

 

(あの人、やっぱりどこかで会ったような……何なんだろう、この気持ち。……もしかして、柊弥先輩なの?)

 

 

 音無である。

 ネビュラが姿を現した最初も同じようなことを思った。

 そして、有り得るはずのないその結論をすぐさま否定する。

 

 

(……って、そんなはずないよね。声も髪型も違うし、あんな変な機械付けるはずが無いもの。早く会いたいな……柊弥先輩)

 

 

 柊弥への想いからそんな考えに至ってしまったと結論づけ、自分の考えを嘲笑う。

 知らぬ内に再会が果たされ、知らぬ内に再び離別したことを知るはずはなかった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……お疲れ様でした。ネビュラ様」

「ああ」

「私はレーゼ……緑川達の後始末に向かいます」

「いやいい。私がやろう」

 

 

 ネビュラの隣に並び立つその男……デザームはそうネビュラに話しかけた。

 デザームが零した"緑川"というその名は、レーゼの本来の名である。

 エイリア学園は元々、()()()()()()()である。

 エイリア学園として戦い、万が一破れるようなことがあれば"追放"と称して、エイリア学園としての役割を剥奪し、計画が終了するまで軟禁に近い状態に置く方針だ。

 

 

「ですが……」

「良いと言っている。下がれ」

「……失礼致します」

 

 

 ネビュラがそう圧を掛けると、デザームは大人しく引き下がる。

 マスターランクとして扱われているネビュラの言葉に、反論する筈もなかった。

 

 

「ネビュラ様……」

「……エイリア石を回収する」

 

 

 "エイリア石"

 それは、ジェミニストーム、そしてイプシロンの力を増幅させる力を持つ石である。代償と言うべきか、その力に心酔して精神に悪影響を及ぼす効果もあるが。

 このエイリア石による力の増幅こそが、力の正体である。

 だが、マスターランクと呼ばれる3チームの選手達と、ネビュラはその石の加護を受けていない。

 エイリア石を持たせたジェミニストームとイプシロンを相手にし、地力を高めた。それがマスターランクである。

 

 ジェミニストームからエイリア石を回収したネビュラは、メンバーを自室へ戻るように促す。

 ジェミニストームの後ろ姿を見送るネビュラに、声を掛ける者がいた。

 

 

「やあ、ネビュラ」

「グランか」

「見てたよ。特訓の成果が出ていたようで何よりだ」

 

 

 しばらく黙りこくるネビュラ。

 

 

「……十分とは言えないだろう。事実、私の介入があった上でも雷門に敗北した」

「仕方の無い事じゃないか?元々、彼らは異常な程の速さで成長を遂げていた。加えて君は、ジェミニストームのメンバーとして練習をしていた訳でもない。連携が取れないというのは当然のようにも感じるよ」

「……そうか」

 

 

 そう言ってネビュラはグランに背を向ける。

 が、グランはネビュラにまだ話しかける。

 

 

「そうだ。どのチームに入るかは決めてくれたかい?俺達ガイアか、ガゼルのダイヤモンドダストか、はたまたバーンのプロミネンスか」

「……まだだ」

「そうか。まあ焦らなくても良いよ。俺達マスターランクの出番はまだだからね。それに……どのチームがザ・ジェネシスを襲名するか。それが決まってからそのチームに入るのも構わない。そう父さんは言っていたから」

 

 

 伝えるべきことを全て伝えたのか、グランはそれ以上口を開くことはなかった。

 ネビュラは自室へと向かう。

 その心は、先程の試合を忘れられていなかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 時を同じくして、北海道の雪道を進む車があった。

 乗用車……と言うには、あまりに重々しい風貌ではあるが。

 この車は護送車。犯罪者を刑務所へと運ぶ車である。

 そしてこの車に運ばれているのは、長身で長い髪を纏め、サングラスを掛けた一人の男。

 影山零治、その人だった。

 

 

「何だ……?この音」

 

 

 護送に当たっていた警察官が呟く。

 地を鳴らすような音。それは段々と大きくなっていることから、音の原因がこの護送車に近づいてきていることが分かる。

 やがてその音が護送車を包み込んでもみくちゃにする。

 その音の正体は雪崩。豪雪に包み込まれた護送車は転倒し、見るも無惨な姿へと変貌を遂げていた。

 

 

「あらよっと」

 

 

 突如、車の外からそんな声がして扉が開かれる。

 外から顔を覗かせたのは、モヒカンの少年。その少年は影山の腕を掴むと、一気に引っ張って外に出す。

 

 

「お迎えに上がりましたよ、総帥サン」

「……ご苦労」

「素っ気ないですねェ、まあ良いけど」

「無駄口を叩くな、行くぞ」

「はいはい」

 

 

 影山はその少年と共にどこかへ姿を消した。

 更なる陰謀を胸の内に秘めて。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「えっ、イプシロンから襲撃予告?」

「ええ。予告先は京都の漫遊時中よ」

 

 

 ジェミニストームとの試合の翌日、次のエイリア学園からの襲撃予告に備え、北海道から本州へと戻っていた雷門イレブンは、途中のサービスエリアにてイプシロンの情報を耳にする。

 

 

「漫遊時中……?聞いたことないな」

「確か、フットボールフロンティアにも参加してなかったわよね」

「漫遊時中は、学校のモットーが心と体を鍛えることで、サッカー部も対抗試合はしないのよ。でも、フットボールフロンティアに出場していたら間違いなく優勝候補の一角と呼ばれるような学校よ」

 

 

 その情報に声を合わせて驚く。

 仮に出ていたら、優勝していたのは自分達ではなく、その漫遊時中だったのかもしれないという事実。

 

 

「厳しい修行で鍛え抜かれた身体と、研ぎ澄まされた心を持つ漫遊時中のサッカーはスピード、パワー。何をとっても超一流。イプシロンは、無差別に学校を襲っていたジェミニストームと違い、隠れた強豪校に照準を定めているようね。イプシロンを倒せば、エイリア学園の本当の目的が分かるかもしれないわ。直ぐに漫遊時……京都へ向かうわよ!」

「「「はい!」」」

 

 

 イナズマキャラバンは京都へ向かう。

 更なる戦いへ身を投じるために。




【原作との相違点】
・ジェミニストームを転送したのはデザームではなくネビュラ。


敗北後のジェミニストームの扱いについては捏造設定です。
多分こんな感じで軟禁され、ジェネシス戦後に警察に保護されたんじゃないかなあ・・・と。
今日のうちにもう1話更新します。
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