雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第36話 懐かしき雷門町にて

真・帝国学園との戦いから数日。

イナズマキャラバンは雷門町へと戻ってきていた。

イプシロンとの再戦まで残り1週間である。

その間の休息も兼ねて、メンバーの大部分の故郷であるここへ戻ってきているという訳である。

 

 

「よ、戻ってきたぜ」

 

そう呟いたのは円堂。

1人サッカーボールを抱え、自らの原点とも呼べる鉄塔広場へとやってきていた。

円堂が自分で作ったタイヤによる特訓装置も、聳え立つ鉄塔も円堂の中の記憶のまま。

懐かしみを感じつつ、吊るされたタイヤと向き合う。

 

 

タイヤを引いて、思い切り投げる。

縄で木と吊るされたタイヤは、振り子のようにその勢いのまま円堂にぶつかってくる。

それを真正面から受け止める。

のしかかるその重みがより懐かしさを彷彿とさせる。

ここでは自分だけではなく、他のメンバーが特訓することもあった。

現在のイナズマキャラバンのメンバーも、先程見舞いに行った入院中の半田や宍戸達も。そして、行方不明の柊弥に豪炎寺も。

特に、円堂と共にここで過ごした時間が長いのは柊弥だ。

サッカー部に入部する前から、幼い頃から2人でここ、或いは河川敷でボールを追いかけていた。

 

どこか感傷にふけっていると、円堂は視線を感じて振り返る。

もしかしたら、という期待を込めて。

 

 

「柊弥───」

「やっぱりここにいた」

「──秋か、家に帰ったんじゃないのか?」

 

 

振り返ったところにいたのは思い描いた人物とは違かった。

それを態度に出す訳でもなく、円堂は木野へと声をかける。

 

 

「さっき半田達の見舞いに行ってきたんだ。皆元気になってて、早くエイリア学園と戦いたいって意気込んでた。やっぱり仲間は良いよなあ、仲間の元気は俺の元気だ」

「円堂君らしいね。皆も同じ気持ちみたいよ?」

「へ?」

「河川敷に皆集まってるの」

 

 

 


 

 

 

「吹雪、やろうぜ」

「良いけど・・・脚は大丈夫なの?」

 

 

河川敷にて、円堂を除くメンバーと杉森、そして円堂達が旅立ったと同タイミング、ジェミニストームによって校舎が破壊されたタイミングで転校してきたシャドウがボールを追いかけていた。

先日の試合で怪我をした染岡は、吹雪に連携シュートをやるぞと声を掛ける。

吹雪から見ても染岡の怪我は決して軽いものでは無い。言ってしまえば今こうして動いてるのも不思議なくらいだ。

 

「お前、以外と心配性なんだな・・・おい杉森!今すげえもん見せてやるぜ!」

 

 

染岡は吹雪の心配を一蹴し、シュート体勢に入る。

高くボールを蹴り上げて地中から姿を現したワイバーン。空中でぐるりと一回転し、染岡の脚元へとボールが戻ってくる。

それを撃ち出すと、その後ろから咆哮と共にワイバーンが追従する。

そしてそれを受け取るのは吹雪。

自身の十八番、エターナルブリザードと同じようにそのシュートに更に勢いを乗せる。

 

 

ワイバーン・・・!

ブリザァァァド!!!

「ぐおッ!?」

 

 

来ると分かっていても杉森は反応しきれず、ゴールに押し込まれる。

真・帝国学園との戦いで見せた兆しを完璧にモノにしていたのを見て、周囲からは賞賛の声が浴びせられる。

 

 

「吹雪と言ったか?お前、立派に豪炎寺と加賀美の代わりを務めているじゃないか!」

「あん?」

「豪炎寺でも加賀美でもねえよ。吹雪は吹雪、あいつらはあいつらだ」

「へっ・・・会ってみてえもんだな、その豪炎寺と加賀美によ」

 

 

その後も練習は続く。

染岡と吹雪は何度もワイバーンブリザードを放つ。

が、それが仇となったのか、元々ダメだったのか。

徐々に染岡の様子に異変が感じられるようななってきた。最も、それを察する者は誰もいない。

 

 

「お、やってるな!俺もやるぞ!」

「おう円堂!見てろよ、染岡!もう一度だ!」

 

 

が、その吹雪の呼び掛けに対する反応がない。

吹雪は染岡がバテたのだと思い、発破をかける。

染岡は当然のように、それに対して強気に返事をし、再びポジションに着く。

心做しか、それを見ていた木野には皆の調子が良いように感じられた。

このままの調子でイプシロンとの戦いにも勝てれば・・・そう思っていた矢先だった。

 

 

「染岡!」

「おう!ワイバーン・・・ぐッッ!?」

 

 

ボールを吹雪に向かって撃ち出すために脚で触れた瞬間、激痛が走り前のめりに倒れ込む。

額に滲む脂汗と染岡の苦痛の表情、呻き声。

その時誰もが確信した。

あの怪我はやはり深刻だったのだ、と。

即座にベンチに運ばれる。

剥ぎ取るようにしてソックスを降ろし、患部を確かめる。

異常なまでに真っ赤に腫れ上がった右脚。誰がどう見ても骨折のそれである。

 

 

「真・帝国戦の後、ちゃんとケアしなかったんだろう」

「こんなの気にする程じゃないですよ・・・!」

「強がってもいいことは無いぞ」

「・・・イプシロン戦はあと1週間後なんです。それまでに治るんでしょうか」

「1週間やそこらで治る怪我ではないわい。入院が必要になるだろう」

 

染岡の悲痛な訴えを退けるかのように古株は諭す。

その場にいた全員が深刻な表情で黙りこくっている中、その言葉は告げられた。

 

 

「染岡君、貴方にはチームを外れてもらいます」

「監督・・・」

 

 

その宣告に真っ先に噛み付いたのは風丸だった。

 

 

「本人がやるって言ってるんです!やらせてやってもいいじゃありませんか!今の俺達に必要なのは自分の身体がどうなっても勝つという気迫です!!」

「風丸・・・」

「円堂、お前も分かるだろ!?染岡は最初から雷門サッカー部を支えてきた仲間なんだよ!!」

「仲間だからこそよ。彼は仲間のためなら無理をするわ。その結果、皆が彼を気遣って十分な実力を発揮できなくなる」

「でも!!」

 

 

その時、鈍い音が鳴り響き風丸の言葉を遮った。

それは染岡がベンチを殴りつけたことによって発した音だった。

余程強い力で殴ったのだろう、染岡の拳の表面は赤く変色し、僅かに出血している。

よく見ると、歯を食いしばり、肩を震わせていることも分かる。

その行動の意図を汲み取れないほど、仲間達は鈍くはなかった。

 

 

「悔しいけど・・・監督の言う通りだ、仕方ねえよ・・・吹雪、雷門のストライカー、任せたぜ?」

「あ、うん・・・」

「・・・なんだよ皆、そんな顔すんな!一時撤退ってやつだよ、またすぐに戻ってくる」

 

 

そう強がる染岡は、未だ小刻みに身体を震わせていた。

そして暫くの静寂。それを最初に破ったのは円堂だった。

染岡の肩を掴み、必ず戻ってこいと告げる。それに対して染岡も力強く返事を返す。

 

依然として空気は重い。

それを見兼ねてか、音無が木暮に注目を集める。

雷門中敷地内にあるイナビカリ修練場での特訓により、イプシロン戦で見せたあの必殺技をマスターしたのだと。

その言葉を皮切りに、周囲の雰囲気が徐々に変わり始めた。

 

 

木暮の実力を試すべくグラウンドに入る一同。

木暮を中央に据え、木暮を除く全員が木暮を取り囲む。所謂"鳥かご"のような陣形をとる。

そして合図を持って塔子が木暮に向かってボールを蹴る。

対する木暮は、地に手を着け逆立ちのような構えをとり、その後間もなく独楽のように回転し始める。

回転する小暮に触れたボールは一瞬で弾かれ、鬼道の足元に。塔子と同じようにボールを蹴ると、木暮はまたそれを弾く。

その勢いは、最後の円堂の番まで衰えることは無かった。

 

 

「素晴らしい技ですね、"スパイラルレッグス"とでも名付けましょうか?」

「ダサい」

「ダサい!!??」

「俺の技の名前は・・・"旋風陣"だ!!」

 

 

次々に木暮へと賞賛の声が浴びせられる。自身のネーミングセンスを否定された目金はひねくれた声を掛けるが。

そして、風丸に支えられて染岡が木暮に近寄る。

 

 

「すげえ技じゃねえか木暮、この調子で頑張れよ」

「俺、このチームに来てよかったよ」

 

 

そう言って2人は握手を交わす。

その直後、染岡は顔を青くして震え上がる。

染岡の手の中に握られていたのは、毛虫を模したやけに質感のリアルな玩具。

穏やかな表情から一転、顔を憤怒一色に染めて木暮に怒声を浴びせる。怪我のせいで追いかけ回すことは不可能である。

 

 

「よし皆!木暮に続いて俺達も強くなるぞ!!」

「「「おう!!」」」

 

 

全員の顔を見渡すようにして視線を送り、円堂はこう言葉を続ける。

 

 

「俺、サッカーやってて良かったよ。こんなに仲間が増えてさ、やっぱりサッカーは面白いんだ。それを宇宙人にも教えてやろうぜ!!」

 

イナズマキャラバン一同はその一声に続き、ボールを追いかけ始める。

エイリア学園をただ倒すのではなく、自分達が感じているこのサッカーというものの素晴らしさを伝えようと、そう決意して。

 

 

 

 

 

「どうした?一之瀬、行こうぜ」

「・・・ああ、今行くよ」

 

 

立ち止まって一点を見つめていた一之瀬に対し、土門は促すように声をかける。

土門はほんの一瞬、一之瀬が浮かべた表情に気づくことは無かった。

そして一之瀬は背中を追い掛けて進み始めた────胸を抑えて。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「ぐあああああああ!?」

 

 

悲鳴に似た叫びが響き渡る。

その悲鳴の主、ゼルは宙を舞った後に地面に数回バウンドしてその場に蹲る。

辺りを見渡してみると、ゼルと同じようにして倒れている者ばかりである。

立ち上がっているのは2人。

方やボロボロで、方や平然としている。

 

 

(この数日間でどうやってここまでのレベルアップを・・・!?)

 

 

そう思案するのはデザーム。

息を切らしながら目の前の男・・・ネビュラに視線を向けている。

連携の確認をしていたイプシロンの元に現れたネビュラは、自分も参加させて欲しいと頼んできた。

上の立場にあたるネビュラの頼みを断る訳にもいかず、キャプテンであるデザームはそれを承諾した。

高い能力を誇るネビュラ相手を、イプシロン全員を相手する。

その結果がこれだ。

ボールを奪おうと襲いかかった者は尽く返り討ちにされ、全員もれなく這い蹲うことになった。

 

 

(分からん・・・不愉快だ)

 

 

雷門と真・帝国の試合を観戦している中で突如自分を襲い始めた頭痛。

単に体調不良から来る頭痛ではないと分かっていた。

何かが引っかかる、気になる際に生じる頭痛。

だがその"何か"が理解できない。

デザーム達イプシロンに半ば憂さ晴らしのような形で相手をさせたが、いくら蹂躙したところでその頭痛が晴れることはなかった。

もちろん、ネビュラがこのような惨状を作り出すに至った動機が憂さ晴らしなどと、デザーム達は知るよしはない。

 

 

「ネビュラ様、これ以上は──」

 

 

デザームがそう懇願したが、無情にもネビュラはシュートの構えに入る。

その直後だった。

ネビュラの背後から微弱な炎を纏ったシュートが飛来する。

迫る危険を感じ取ったネビュラはすぐさま向きを反転、真正面から迎え撃つ。

ボールに脚がめり込み、来た道を引き返すように真っ直ぐ飛んでいくと、何処からともなく燃えるような赤い髪の男が姿を現し、ボールを胸でトラップした。

 

「随分と荒れてるなあ?おい」

「何の用だ・・・バーン」

 

 

受け止めたボールを指でくるくる回しながらバーンがネビュラに近付いてくる。

目的がはっきりとしないバーンの行動にネビュラは身構える。

 

 

「あーあーこんなボロボロにしちまって、今はイプシロンが表立って動いてんだから加減してやれよ?」

「もう一度聞く、何の用だ」

 

 

バーンの茶化すような口調に若干の不快感を覚えつつ、ネビュラはバーンに問い直す。

その瞬間、指先でつつくようにして浮かせたボールをバーンが至近距離からネビュラに撃ち込んだ。

ネビュラは至って冷静にそれを受け止めた。

 

 

「なあに、簡単なことよ。こんなヤツらとの特訓で燻ってないで、俺達プロミネンスとやろうぜってだけだ」

「お前には何の強制力もないが」

「まあな、けど考えてもみろよ。お前はイプシロンの連中をボロ雑巾に出来るくらいにレベルアップした。つまりそんだけ力の差が開いてるってこった。そんな環境で数重ねても、これ以上のレベルアップは見込めねえんじゃねえの?」

「・・・」

 

 

バーンの発言は的を得ていた。

だが、バーンの見え透いた魂胆がネビュラを警戒させ、簡単に頷くには至らなかった。

マスターランクチームの間で見られる、ネビュラを引き入れたものが"ザ・ジェネシス"の称号に近付くという風潮。

ネビュラはそのこと自体には何も思わない。

引っかかるのは、絶対的な忠誠の対象である吉良の言葉。

3人が争うように仕向け、更なるレベルアップをさせろ。

ここでネビュラがバーンの誘いにのれば、なし崩し的にプロミネンスに所属する運びとなるだろう。

ネビュラからしてみれば、それは吉良の言葉に背く行為。

簡単に頷けない訳である。

 

 

「沈黙は肯定と見なすが・・・構わねえな?」

「・・・」

「よし、じゃあ他のヤツらを呼んで──」

「待ちたまえ」

 

 

ネビュラでも、バーンのでも。はたまたデザームの声でもない声が響き渡る。

声の方向から姿を現したのは白い髪の何処と無く冷たい雰囲気を感じさせる男。

そう、マスターランクチームが一角、ダイヤモンドダストのキャプテン、ガゼルである。

 

 

「勝手がすぎるぞ、バーン」

「なんだよガゼル。邪魔すんじゃねえ」

「君の勝手にネビュラを付き合わせるな。ネビュラもだ。何か言ったらどうだ?例えば・・・プロミネンスなんかよりダイヤモンドダストの方が良い、とかね」

「あ?何寝言ほざいてんだ?」

「事実だろう」

 

 

徐々に2人の口喧嘩はヒートアップしていき、やがてネビュラは蚊帳の外となる。

2人の口から飛び出るのは罵詈雑言のみ。

その隙に助かった、という表情でイプシロンの面々がグラウンドを出ていった。

 

 

「面白いことになってるね」

「グラン」

 

 

残された最後のマスターランクチームのキャプテンも顔を出した。

今にも殴り合いに発展しそうなバーンとガゼルを面白そうにグランは眺めていたが、やがて2人のの間に口を挟む。

 

 

「そこまで言うなら試合をしたらどうかな?ここでは力を持つ者が全てだよ」

「・・・たまには真っ当なこと言うじゃねえかグラン」

「全くだ。構わないな?ネビュラ」

「・・・」

 

 

何が、とは敢えて聞かないネビュラ。

 

「決まりのようだね・・・明日、ここでプロミネンスとダイヤモンドダストの試合を行う。忘れないように」

「へっ、直前で逃げ出すんじゃねえぞ」

「精々強がっているといいさ」

 

 

そう捨て台詞を吐いて互いにその場を去る。大方メンバーに明日のことを伝えに行ったのだろう。

 

「さて、特訓の途中だったら付き合うよ。チームとしてじゃなく、俺個人としてね」

「・・・助かる」

 

 

ネビュラの狙いを見透かしたように笑みを浮かべながらボールを転がす。

その後間もなく、グラウンドからは砲撃のような音が何度も、何度も、鳴り響いたと言う。




【原作との相違点】
・プロミネンスとダイヤモンドダストの衝突


おそらく2チームの試合はダイジェストになるかと思います。
ネビュラが出るわけでも、大事な描写をするわけでもないので・・・


前話からアンケートを行っています、協力してやってくれると助かります!
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