雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第37話 衝突する紅と蒼

「ダイヤモンドダストの連中に分からせてやる……いくぞテメェら!!」

「分かっているなお前達……プロミネンスなど軽く捻り潰すぞ」

「盛り上がってるねえ」

 

 

 予定通り、グラウンドにプロミネンスとダイヤモンドダストの両チームのメンバー全員が姿を現した。

 言葉や態度で敵対することは多々あれど、実際に勝負をする場面は少ない、あるいは無いせいか、両者いきり立っている。

 それを傍らで眺め、他人事のようにどこか楽しそうな様子のグラン。それに対して何か言う訳でもなく沈黙を貫くネビュラ。

 

 

「ネビュラはどっちが勝つと思う?」

「……さあ」

「つれないなあ。もしかして君をダシにしたこと怒ってる?」

「……」

 

 

 付き合う必要無し、と判断したネビュラは適当に返事を返し、再び黙る。

 それを察知したのか、グランもネビュラに対してそれ以上言葉を投げかけることはなかった。

 

 

 実際、プロミネンスとダイヤモンドダストのどちらが勝つかは予測出来ていなかった。

 チームとしての持ち味は違えど、総合的な実力としてはほぼ拮抗にあるこの2チーム。位置づけで言えばガイアもそれに当てはまるが。

 競った試合になるだろうな、とは容易に予測できた。

 

 

「さ、そろそろ始めようか」

 

 

 グランが試合開始を指示すると、横に待機していたデザームがグラウンド内に入っていく。

 審判をやらされるためだけに呼び出されたのである。

 

 

「ただいまより───」

 

 

 そうして、紅き炎と蒼き氷の決戦は幕を開けた。

 

 

 

 

 

 コイントスにより、プロミネンスのキックオフから試合は始まる。

 バーンを中心とした前衛が意気揚々と攻め上がる。

 それを大人しく見逃すはずもなく、ダイヤモンドダストは総出で止めにかかる。

 ボールを持ったバーンは取り囲まれ、今にもボールを奪われそうなその時、一瞬の虚をついてネッパーがすれ違いざまにバーンからボールを受け取る。

 

 

 そのまま単独で駆け上がるネッパー。ゴッカやクララといったダイヤモンドダストDF陣がそれを阻止にかかる。

 それを受けたネッパーは、誰もいないゴール前へ高くセンタリング。

 それは"パス"だった。

 そう、ネッパーに意識を集中させ、裏をかいて前進してきたバーンへの。

 

 

「紅蓮の炎で焼き尽くしてやる……アトミックフレア!! 

 

 

 高所から降り注ぐようにして放たれた獄炎のシュート。

 ダイヤモンドダストKP、ベルガは必殺技"アイスブロック"を用いて応戦する。

 が、その氷は紅蓮の炎の前には無力だった。 触れた瞬間にボールごとベルガはゴールに押し込まれる。

 先制点はプロミネンスだ。

 

 

 

 

 1-0

 プロミネンスの先制を受けて、ダイヤモンドダストは特に焦る様子はない。

 むしろこの展開は想定内、とも言わんばかりの落ち着きようである。

 至って冷静なパス回しでみるみるうちに前線へとボールは運ばれ、ボールはガゼルへ。その周りを複数のDFが囲んでいるが、ガゼルの顔には余裕の笑みが浮かんでいる。

 1人、また1人と個人技で躱す。そしてそのままの勢いでシュート体勢に入った。

 

 

ノーザンインパクト! 

 

 

 周囲一帯が冷気に包まれる。

 軽くボールを蹴りあげたガゼルは一瞬で姿を消し、一瞬で姿を現す。

 その一瞬の内に得た加速を全て脚に乗せ、ボールへと突き刺す。

 バーンのアトミックフレアが"パワー"だとしたら、ガゼルのノーザンインパクトは"スピード"である。

 ボールは一直線にゴールへと向かっていく。

 あまりの速さに、プロミネンスKPのグレントは反応出来ず、必殺技を出す間もなくゴールネットは揺らされた。

 流れるようにダイヤモンドダストが1点を取り返した。

 

 

 

 

 1-1

 プロミネンスのボールで試合再開。

 これまでとは打って代わり、試合は膠着状態へと陥る。

 ボールを片方が奪えば、もう片方が奪い返す。互いに攻められればDF陣がそれを阻止し、攻めれば阻止される。

 これが繰り返されて前半は終了かと思われたが、前半終了間際に状況は動いた。

 

 

「寄越せ!」

 

 

 ヒートが奪われたボールを強引にバーンが奪い返し、そのままゴールへと駆ける。

 ボールは高く蹴りあげられ、炎を纏う。

 

 

アトミックフレア!! 

 

 

 流れるようにバーンは必殺シュートを放つ。

 先程完膚なきまでに叩きのめされたベルガは、再び身構える。

 

 

アイスブロック!! 

 

 

 止められない、そう予測していたベルガは、シュートを真正面から受け止めるのではなく、逸らすことへと意識を集中させた。

 圧倒的な威力に身体が悲鳴を上げながらも、必死にベルガはシュートコースを上に逸らし、ゴールポストへとシュートをぶつけ無理やり守りきる。

 しかし、それは悪手だった。

 

 

「へっ、甘いんだよ! アトミック……フレア!! 

 

 

 ボールが弾かれ、飛んでいった先にいたのはバーンだった。

 そのまま連続してアトミックフレアを放つバーン。

 ベルガは三度アイスブロックで応戦するも 、やはり止めきるには至らない。

 ベルガを押しのけ、ボールはゴールへと吸い込まれていく……と思われたその時だった。

 

 

「させない!!」

 

 

 後退してきていたガゼルが間一髪でゴールを阻止する。

 ガゼルがボールを蹴り返したその瞬間にホイッスルが鳴り、1-1で前半は終了となった。

 

 

 

 

 

 

 

 ハーフタイム終了後。

 両チームがポジションに着くが、前半と明らかに変わった様子が見られる箇所がある。

 ダイヤモンドダストのゴールだ。 前半でゴールを守っていたのはベルガだった。

 だが、今ゴールの前にいるのはベルガではなく、先程DFだったクララである。

 

 

「へえ……ポジションチェンジか」

(……本当なら、ジェネシスの称号を賭けて戦う時の切り札だったんだけどな)

 

 

 グランがそれを興味深そうに眺め、ガゼルはそのグランに対して不快の視線を向ける。

 

 

(バーンのシュートはパワーだけで見たら私やグランよりも上……そんなヤツの全力のシュートを3回も正面から受けてはベルガが持たない。今後を考えると欠員を出すわけにはいかない……つまるところ、苦渋の選択だ)

 

 

 そう、前半のうちに3回もグランの必殺シュートを受けたベルガは既に潰れる寸前だった。

 ダイヤモンドダストには、というよりエイリア学園のチームには基本的に控えのメンバーはいない。

 ここで欠員を出すくらいなら……と、隠し球であるクララをGKとして投入してきたのである。

 

 

「頼んだ」

「ええ」

 

 

 ベルガとクララはそう短いやり取りを交わす。ベルガのポジションは先程までのクララのポジションだ。

 

 

 そうして、後半戦が始まる。 キックオフはダイヤモンドダストから。

 ガゼルを中心としたパスワークで深く切り込んでいく。

 やがてガゼルは徹底的にマークされ、もう片方のFWであるフロストが単身ゴール前まで駆け上がる。

 

 

イグナイトスティール!! 

 

 

 が、プロミネンスのDFの要であるボンバによってボールは容易く奪われた。

 ボンバのロングパスを受け取ったのはヒート。

 そしてヒートからネッパーへ、ネッパーからバーンへとボールが渡る。

 ゴッカやベルガがシュートを阻止せんとバーンに詰め寄るが、それより早くバーンはシュート体勢に入る。

 

 

(ポジション変えようが何だろうが、俺のシュート前には無意味だっての!)

アトミック……フレアッッッ!! 

 

 

 4度目。

 獄炎のシュートがダイヤモンドダストのゴールへと襲い掛かる。

 それを正面に見据えたクララは、重心低めに腰を捻り、力を溜め、やがて拳が氷に包まれる。

 それはベルガの必殺技と全く同じ、アイスブロックの構えだった。

 

 

(へっ、同じ技かよ……もらった!!)

アイスブロック……! 

 

 

 迫る獄炎に対して、クララは真っ直ぐに拳を突き出す。

 ボールと拳が触れた瞬間、火花が散り、水蒸気が巻き起こる。 それらがゴールを包み込んで姿を隠してしまった。

 

 

「ふん、追加点は頂きだぜ」

「……それはどうかな?」

 

 

 バーンが不敵な笑みを浮かべる。

 それと同時に、ガゼルも同じような笑みを浮かべる。

 やがて水蒸気が晴れ、その中身が姿を現す。

 

 

「なッ……!?」

 

 

 バーンは驚愕する。

 そう、そこにあったのは、シュートを完全に受け止めたクララの姿だった。

 声にならない驚きを浮かべ、バーンは固まったまま。

 他のプロミネンスのメンバーも、自分達のキャプテンのシュートが止められるなどとは思っていなかったらしく、各々が驚きよ表情を浮かべている。

 

 

「ガゼル様!!」

「……教えてあげるよ、凍てつく闇の冷たさを」

「ッ、止めろォォォォ!!!」

 

 

 クララからのパスを受け取り、ガゼルが単身で攻め込む。

 我に返ったバーンが声を荒らげるも、動揺が晴れないプロミネンスは思うように動けず、ガゼルを止めることは出来ない。

 

 

ノーザン……インパクト!! 

 

 

 最後の最後までガゼルの独走を止められる者はいなかった。

 呆気に取られたグレントごとボールはゴールに叩き込まれる。

 後半はダイヤモンドダストの先制、1-1のイーブンを自分達の優位へと押し上げた。

 

 

「ネッパー……ホイッスルが鳴ったらすぐボールを寄越せ」

「……了解」

 

 

 見るからに不機嫌なバーンの気に触れぬよう、ネッパーは一つ返事で了承する。

 もはや命令の域である言葉通り、ホイッスル直後にボールはバーンに。

 そしてバーンは、先程ガゼルがやったように独走状態へと陥る。

 

 

「どけェェェ!!」

「くっ……まるで暴走機関車だな……」

 

 

 力任せの突撃。

 ガゼルでさえもバーンのそのプレイを止めることは出来ない。

 誰に遮られることもなく、バーンはゴール前へと一瞬で駆け上がり、高く飛ぶ。

 

 

アトミックゥゥ……フレアァァァァ!! 

 

 

 その必殺技の宣言はもはや咆哮。

 力任せにボールは蹴り出される。

 

 

(俺が、俺が最強なんだ!!)

(……問題ないな)

 

 

 ガゼルはそう判断し、ゴールに佇むクララへと視線を向ける。

 クララは先程と同じ構えをとっている。

 

 

アイスブロック!! 

 

 

 この試合の中で最も希薄に満ちていたであろうバーンのシュート。

 が、それとは裏腹に、そのシュートはこの試合の中で最も簡単に止められた。先程のような拮抗もなくである。

 

 

「……限界か」

「そのようだね……バーンは既にこの試合で全力のシュートを4回。それに加えてあの力任せな前進。そんな状態で万全のシュートを撃てるかって聞かれたら……そうじゃないよね」

 

 

 バーンは肩で息をしながらその光景を目の当たりにしていた。

 自身の全力が何度もこうも簡単に止められ、バーンの中では焦りが大きくなり始めていた。

 

 

「クッ、ソがァァァァァァァァァ!!」

 

 

 バーンを待つことなどなく運ばれ始めたボールをバーンは必死に、食らいつくように追いかけた。

 ゴールから少々離れた距離で、フロストがシュート体勢に入る。

 

 

フリーズショット!! 

 

 

 ノーザンインパクトと同じような初動から、辺り一面が凍り付く。

 そのままボールは凍り付いた地を滑るように蹴り出される。

 滑るように加速するそのシュートはやがて地を離れ、ゴールへと向かっていく。

 

 

「させるかよォ!!」

 

 

 ゴール前にバーンが立ちはだかった。

 GKのグレントがこのシュートを止められないと判断しての行動ではない。

 今バーンを突き動かしているのは"意地"。

 シュートを2度も止められたことによりガタついている自尊心を取り繕う為の無我夢中である。

 

 

「なッ!?」

 

 

 バーンは何度目かの驚愕の表情をそこで浮かべた。

 何故なら……

 

 

「ふっ……ノーザンインパクト!! 

 

 

 ガゼルがシュートチェインの体勢に入っていたからだ。

 フロストのシュートにガゼルのシュートが上乗せされ、この試合の中で最も威力が高いシュートへと変貌する。

 それから逃げることなく、バーンは胸で受け止める。

 が、抵抗虚しくそのままボールと共にゴールに吹き飛ばされ、グレントごとゴールネットを揺らした。

 

 

 と、ここでホイッスルが鳴り響く。

 試合終了。

 1-3、2点の差をつけてダイヤモンドダストは勝利した。

 

 

 

 

 

 

「さて、これで証明されたね。私達ダイヤモンドダストの方が君達プロミネンスよりも優れていると」

「……チッ」

 

 

 ここで噛み付いては余計に煽られるだけであると、珍しく冷静に判断したバーンは舌打ちだけに留める。

 それを意に介さず、ガゼルはネビュラの元へと歩み寄る。

 

 

「さあ行こうかネビュラ、ようこそダイヤモンドダストへ」

「……お前は何か勘違いをしているようだな」

 

 

 その言葉を聞いてガゼルは眉をしかめる。

 ネビュラの言葉の意味が理解できなかったからだ。

 

 

「お前達は私の所有権を巡って争っていたようだが……そもそも私は勝った方のチームに着くなどと一言も言っていない」

「……待て」

「ネビュラの言う通りだね。第一、俺達ガイアが除け者じゃないか。つまり君達はただただ試合をしただけだよ。……まあ、互いの優劣を付ける位は出来たんじゃない?」

「……」

 

 

 そう言われてガゼルは黙り込む。

 確かに、自分達が勝ったらネビュラを引き入れるなどとハッキリ名言していないことに気づいてしまったからだ。

 

 

「ふん……まあいい。やがてネビュラを手に入れ、ザ・ジェネシスを名乗るのは私達ダイヤモンドダストであることに変わりはない」

 

 

 そう言ってガゼルはその場を去っていった。 必死の抵抗にも似た強がりを吐き捨てて。

 その様子を見て少し気を取り直したバーンも続いて去っていく。

 

 

「……まあ、ネビュラもそろそろちゃんと考えてみなよ……どのチームに所属するのか、ね」

 

 

 そう言い残してグランもその場から姿を消した。

 

 

「私は……」

 

 

 1人残されたネビュラが何を思うか。

 それを察するものは誰もいなかった。




【原作との相違点】
・この試合自体がこの小説オリジナル展開



投稿が遅れてしまい本当に申し訳ありません。
本来なら昨日投稿したつもりだったのですが、何かの手違いで投稿出来ておらず、挙句の果てにはデータが飛ぶという最悪の事態に見舞われてしまいました。
本来ならダイジェストではなく、前半後半を1話で描ききった約1万5000文字程のボリュームだったのですが、とにかく投稿しなければと思いやむなくダイジェストでまとめました。
そのせいか、少々内容が薄くなってしまいました、申し訳ないです。


今回の投稿は空いてしまいましたが、感想などで応援してくださる方々の期待を決して裏切ることなく、しっかりと完結させますのでどうか応援よろしくお願いします。
ではまた近いうちに・・・
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