雷門と帝国、互いが整列し試合前の挨拶を行う。
鬼道がコイントスをパスしたため、ボールは俺たち雷門からのスタート。強者の余裕って訳か・・・
そして知らぬ間に、ベンチには先日の新聞部の子がいた。確か・・・音無と言ったか。そしてもう一人、将棋部の角間。実況してくれるらしい。何で?
それぞれがポジションにつき、試合の開始を今か今かと待ち侘びる。
ちなみに、目金はベンチである。「エースであるボクが──」と喚いていたが、右から聞いて左から流す。
「さあ皆!頑張って行こうぜ!!」
帝国の圧力に気圧されているメンバーに守が発破をかける。
俺は別に何ともないが、今一度気を引き締める気つけになった。
『さあ!試合開始です!』
開始のホイッスルが鳴り響き、キックオフ。
隣の染岡にボールを渡し、俺は一気に駆け上がる。そして染岡もマックスにボールを下げ、前線へと上がる。
まずは1点取って、チームの士気を高める!
「染岡!」
マックスが今一度染岡にボールを戻す。帝国の佐久間と寺門によるダブルスライディングを飛んで躱す。
左から上がってきた風丸にボールが渡り、受け取って風丸はぐんぐん上がっていく。流石元陸上部、敏捷性はピカイチだ。多分俺より早い。
けどお前、DFだよな?まあいいや。
「加賀美!!」
「おう!」
相手DFに囲まれ、突破は困難と見たのであろう、風丸がこちらにボールを回す。
ボールを受け取りこそすれど、当然俺にもマークがついているわけで。
おかっぱ頭の万丈と巨体を誇る大野が俺の前に立ち塞がる。
必殺技を使うつもりは無さそうだ。
様子見なのか何なのかは知らないが、好都合。こいつらを抜いてまずは1点もぎ取らせてもらう。
「ジグザグスパーク!!」
ジグザグ状に移動し、刻んだジグザグから放電。二人をきっちりと抜いてみせる。
「何!?」
帝国のデータを集める際に、相手チームが使っていた技を幾つか参考にさせてもらった。言い方を変えればパクった。
俺は雷を主流にした技を多く使うのでね、ピッタリというわけだ。
さあ目の前にはゴールのみ。キングオブゴールキーパーと呼ばれる相手キーパー、源田が立ちはだかる。
「ふん、来いッ!!」
「それじゃ、遠慮なく。」
ボールが回りながら帯電していく。俺の気迫に答えるようにその勢いはどんどん増していく。
さあ、行くぞッッ!!
「轟一閃!!」
観客から歓声が上がる。照れるじゃないか。
一瞬で蹴り抜いたボールは真っ直ぐに相手ゴールへと襲い掛かる。
こんなシュートを打ってくるとは思っていなかったのだろう、源田は少し驚いた表情を浮かべている。他の帝国の面々も同じだ。
「──ッ、パワーシールド!!」
守のゴッドハンドのように拳にエネルギーを集中させ、それを逆立ちのような形で拳を地面に叩き付ける。するとゴールを守る盾のようにエネルギーが展開され、シュートとせめぎ合う。
「う、おおおおおおお!!」
手間取っているな。舐めてるからそうなるんだ。
が、次第に源田のエネルギーは高まっていき、俺のシュートは勢いを失っていく。
俺の轟一閃はスピードに重点を置いている分、イマイチパワーに欠ける。恐らくこれが源田や守以外ならばぶち抜けるのだろうが・・・俺の狙いは、ここからだ。
やがて、源田のパワーが勝って俺のシュートは空高く弾かれる。
ここだ!
「ふッ!」
「何ッ!?」
『何とフォワード加賀美!弾かれた自分のボールを空中で再び捉えたーッ!?』
「喰らえェェェェェ!!」
そのまま相手ゴールへボールを叩き込む。
源田のパワーシールドは、全国でも通じるような技だ。
だが、弱点はある。
エネルギーを展開するその方法故に、すぐさま体勢を立て直すことが出来ない。
そう、これが俺の狙いだ。あえてシュートの力を弱めることによって、あえて簡単に弾かせる。その弾いたボールを───
「ぐ───ッ!?」
『ゴ、ゴォォル!!何と加賀美、帝国から先制点をもぎ取ったァァ!!』
よし。見事に刺さってくれたな。
帝国の皆様方は呆気に取られていらっしゃる。
源田に鬼道が近づいて行く。
「すまない鬼道・・・!」
「構わん・・・あんな奴がいることを事前に見抜けなかった、俺の責任でもある。安心しろ、すぐに離すさ・・・帝国のサッカーで。」
背筋に悪寒が走る。
何か、嫌な予感がする・・・警戒しなければ。
センターサークルから試合再開、ボールは帝国。
佐久間が寺門にボールを渡すと、何と寺門はそこからシュートした。
誰も反応することが出来ず、そのシュートは守へと突き刺さる、が!
「させるかッ!!」
「馬鹿なッ!?」
守はしっかりと反応して受け止める。
まずはこの一本を取るつもりだったのだろう。だが残念だったな。うちの守は・・・強いぞ。
「よーしみんな、もう一本!!」
守がボールを投げ飛ばす。受け取ったのは半田、辺りの様子を伺い、どこから攻めるべきかを分析する。
が、そんな半田に暴力的なプレイが襲い掛かる。
「キラースライド!!」
連続蹴りを伴うスライディングで寺門がボールを奪い取る。
そこから、暴力の嵐が吹き荒れる。
ラフプレーすれすれのタックルやスライディングを仕掛けたり、明らかに故意で雷門にボールを蹴り飛ばしたり。
「させるかァ!!」
風丸がその餌食になろうとしている直前に割り込み、ボールを奪う。
幸いにして、先程から何本も打ち込まれているが守はまだゴールを破られていない。
俺がボールをキープし続けてやり過ごせば・・・!
「15番からボールを奪え!!」
15番、俺のことである。
鬼道の指示を受けて、次々と帝国メンバーが襲いかかってくる・・・4人か。そう簡単にはやらせないがな。
雷を帯びたボールを蹴って相手との距離を詰めていく。ある程度出力が高まったところで、相手の頭上を狙ってボールを蹴り上げ、回転しながら俺も跳躍する。
回転は風を纏い、外界から俺とボール、対象を遮るように渦を巻く。
竜巻のように暴れるその風に雷を乗せ、敵を殲滅する!
「スパークウィンド!!」
「──4人同時に抜いただとッ!?」
鬼道が驚きの声を上げ、再び歓声が沸く。
そのまま駆け上がると、鬼道が単身俺の前に立ちはだかる。
「予想外だ、お前のような選手がこんなチームにいるとはな!」
「お褒めに預かり光栄です、とでも言っておこうか!」
『激しいボールの奪い合い!互いに一歩も譲らないぞォ!!』
こいつ、全然隙がない・・・しかもパスコースも全て潰されている。
「貰った!!」
「──しまった!!」
鬼道をどう抜くか考えていたら、背後から佐久間にボールを奪われてしまった。
そのまま駆け上がる佐久間。誰もそれに追い付けず、ゴールを見据え守と一対一。
「させるかァァァ!!」
風丸がスライディングを仕掛けるも、読んでいたかのような跳躍で躱されてしまう。そしてそのままシュート。
「ふッ!」
が、守はしっかりとボールを止める。かなりの力を込めたのだろう。グローブと擦れた際に焦げ、黒煙が上がっている。
と、ここで前半終了のホイッスル。1-0の1点リードだ。
「これが、帝国学園・・・」
そう誰かが呟く。
不味いな・・・全員潰れかかっている。そこまでダメージが深くないのは俺と守だけか。
「1点リードッスけど・・・後半も何とかなるんスかねえ・・・」
「・・・帝国はまだ、余力を残しているぞ。」
そう、奴らは未だに源田と寺門以外必殺技を使っていない。
源田に使わせたのは俺のシュートだが、一本決めてからはまるでゴールを狙えなかった。恐らく、今の帝国に切り込んでいけるのは俺一人・・・不味いな。
「安心しろよ、俺と加賀美で点を取って、円堂が守れば良いだけだ!」
そう意気込む染岡の顔色はどこか優れていない。
・・・まさか!
「染岡、脚を見せてみろ。」
「え?何──」
「いいから。」
半ば無理やり染岡のソックスを剥ぎ取る。
その脚は、見るからに痛々しく腫れていた。
帝国のボールを脚で無理やり受けた時だろう・・・この様子で後半も戦わせる訳には行かない。
「・・・目金、染岡と交代だ。」
「あぁ!?俺はまだやれるぞ!!」
「いや、ダメだ。そんな状態でさらに激しくなる帝国の球を脚で受けても見ろ・・・サッカーが出来なくなってもおかしくは無いんだぞ。」
無理やりに染岡を納得させる。
「ふふ、このエースの出番がようやく来たようですね・・・」
「目金、震えてんぞ?」
半田がそう指摘すると、目金は一層振るえ上がる。
「武者震い」と強がるも、ビビっているのがバレバレだ。染岡の圧もあり、目金の震えは止まることを知らない。
それでも、やってもらう他ないが。
しかし不味いな、染岡が欠けたら俺の他に点を取れそうなやつは・・・いや、源田が本気を出したら染岡でも厳しいか。
さて・・・どうしたものか。
「・・・ん?」
ふと、辺りに視線を巡らせる。
数多の観客の中から、木の影に隠れてこちらを見ている者を見つける。
・・・豪炎寺。あいつが力を貸してくれれば・・・!
が、目線が会った瞬間に完全に姿を隠してしまう。
ダメ、か。
「どうした?柊弥。」
「・・・いや、何でもない。さあ後半だ・・・気張って行くぞ!」
ハーフタイムが終わり、再びピッチ内に戻る。
こちら側の士気はイマイチ優れない。
この状態で後半を乗り切れるだろうか・・・
『さあ、後半開始です!雷門が1点リード、ここからどう試合が展開していくのでしょうか!』
帝国からキックオフ。
ボールは鬼道へと渡る。
「行くぞ・・・デスゾーン、開始。」
デスゾーン・・・?
あの技か!!あの技を使うつもりだ!!
だが、今の守ならば・・・
鬼道が鋭いパスを前線に送る。それを受け取った佐久間、寺門、洞面が空高く回転しながら飛ぶ。
紫の禍々しいエネルギーを纏いながら、ボールを中心に三角形を作り出す。
紫に包まれた破壊力を、三人同時にドロップキックのような形で送り出す。
「「「デスゾーン!!」」」
死、という名を冠するそのシュートは、凄まじいパワーを秘めていた。触れるもの全てを破壊する、そんな畏怖すら感じさせる。
が、俺たちのゴールを守るのは神の手。奴なら・・・守なら!!
「うおおおお!」
迫るボールに対し、守は右手に力を集中させる。デスゾーンとは真反対の、光のエネルギーが集約する。
そして守が掌を上に向けると同時に、巨大な神の手は顕現する。
「ゴッドハンド!!」
突き出された神の手は、死のボールと競り合う。
守は咆哮と共に、込める力をより強くする。
激しい力のぶつかり合いは火花を散らす。
「───ふぅ。」
──守の勝ちだ。
その手の中では先程まで暴れ狂っていたボールが大人しくなっていた。
『と、止めたァァァ!!雷門中キャプテン、円堂が止めました!神々しいその手で、帝国のスーパーシュートを止めたァァァ!!』
「キャプテン!!」
「円堂!!」
「いっけえええええ!!」
守がボールを投げる。それを受け取ったのは風丸。風の如く駆け上がっていく・・・が。
「サイクロン!!」
「ぐぁぁ!?」
万丈が脚を振るうと、風が渦を巻きながら風丸に襲い掛かる。
風に巻かれた風丸は、空高く打ち上げられて地に叩きつけられる。
そのままボールは寺門へ。
「百烈ショット!!」
ボールに何度も何度も蹴りを叩き込み、力を増幅させたボールを放つ・・・ゴールではなく、選手に。
「うわあああ!!」
帝国のターンは続く。どんどんボロボロになっていく雷門。
それを阻止すべく駆け出そうとしたが・・・
「おっと、お前は行かせないぞ。」
「ぐッ────!」
鬼道と大野に徹底マークされ、その場を動けない。技巧派の鬼道の口添えのせいで、身体がデカい大野の壁がより高く感じる・・・クソッ、このままじゃ──
「百烈ショットォ!」
「ゴッドハンドォ!」
打つ寺門、止める守。
守はしっかり止めるも、そのボールを受け取れる者はいない。
「円・・・堂ォ!」
風丸がフラフラと立ち上がる。
が、佐久間のタックルにより弾き飛ばされ、再びその場に踞る。
そのままボールは何度も何度も守に打ち込まれる。守のキャッチ力は凄まじいものだが、体力は無限ではない。
あんなに打ち込まれたら、いずれ限界が・・・!
「──クソォォォ!!」
「何ッ!?」
がむしゃらにマークを振り切り、自陣へ駆け出す。
が、相手DFである五条のタックルに弾き飛ばされる。
「ぐッ・・・まだまだァ!」
今度は左右から同時にチャージされる。また倒れる。そしてまた立ち上がる。
こんな所で、止まってられないんだ。
「加賀美・・・!」
半田が苦しそうな顔をしながら立ち上がろうとするも、上手く立ち上がれない。脚をやられているんだろう。
「柊弥ァ!」
守がこちらに声をかけてくるも、次々と帝国のシュートが打ち込まれている。
反応速度が段々と鈍くなっていき、かなりギリギリのセーブとなっていく。
「そろそろか・・・佐久間!!」
「おう!」
佐久間に声をかけて鬼道が上がっていく。
パスを受けた鬼道は、ボールを上へ。
すると、鬼道の真上に飛んでいた佐久間がヘディングで軌道にボールを戻す。
勢いを得たボールを、鬼道はゴールへ叩き込む。
「「ツインブースト!!」」
二人の力が込められたボールが守に襲い掛かる。
「──させるかァァァァ!!ゴッドハンドォォォ!!」
しかし、また反応が遅れた守。
十分に力が篭っていないことと、疲労が重なり合い、十分なエネルギーを放出できない。
光がいつもより弱いゴッドハンドは、ツインブーストに触れた瞬間に砕け散り───
『ゴール!!帝国、1点奪い返したァァ!!雷門は満身創痍!このまま帝国がペースを握るのかァ!?』
センターサークルから再び試合再開。
怯える目金からの弱々しいパスを受け取り、単身相手陣地へ切り込んでいく。
「サイクロン!!」
「喰らうかァ!!」
こちらに向けられた暴風を掻い潜りながらゴールへと迫る。
1点取られたなら、また取り返せばいいだけ!
ここで決められなければ士気はまた崩れる、そうしたらこの試合は負けだと思え──!!
DF陣が寄って集って襲いかかってくる。
「良い!打たせろ!」
源田がそう指示する。
恐るるに足らないってか・・・その余裕、後悔させてやる!!
「轟・・・一閃ッッ!!!」
持てる力の全てをボールに注ぎ込む。
空気を切り裂きながらゴールへ迫るそのシュートは、間違いなく俺が出せる最大出力。
これなら───
「ふん・・・フルパワーシールドォ!!」
そんな隠し球を持っていたのかよ・・・!
パワーシールドの何倍もの力を秘めるであろうそれは、俺の全力の轟一閃を簡単に弾いて見せた。
「ふッ、この技を出させたのはお前が久しぶりだ・・・」
帝国のキーパーに全力を出させた、と考えれば上出来かもしれないが、生憎そうはいかない。
「そんな・・・加賀美さんのシュートが・・・」
「もう終わりでやんス・・・」
更なる士気の低下、恐れていたことが起こってしまった。
加えて──
「───がッッ!!」
脚に激痛が走る。
元々かなりの負担が掛かっていた脚に無理をさせ、全力でシュートをしたのが祟ってしまった。
動けこそするが、あまり激しいプレーは期待できそうにない。
「も、もう嫌だァァァァァ!!」
目金がユニフォームを脱ぎ捨て走り去っていく。
クソッ・・・本当に不味い。
「ほぉらよッ!!」
「うわッ!!」
『ゴール!帝国2点目だ!キーパー円堂、もう必殺技を出す余裕もないか─!?』
もう、ダメなのか・・・?
全員ボロボロだ、これ以上の被害を避けるためには、棄権も視野に──
「おい、あんなやつうちのチームにいたか?」
「誰だあいつ・・・」
一筋の光が刺す。
声の方向を見ると、目金が脱ぎ捨てた10番のユニフォームを身につけてフィールドに脚を踏み入れる一人の男。
その男は、誰よりも静かに、熱く燃えていた。
「───豪炎寺!」
「待ちなさい!君はうちのサッカー部では・・・」
「俺達は構いませんよ。」
笑みを浮かべながら豪炎寺の参戦を認める鬼道。
そういう事か・・・今分かった。帝国が雷門に試合を申し込んだ理由。
豪炎寺の偵察だ。必要以上に俺達を傷付けたのも、豪炎寺を炙り出す為。
目金と豪炎寺が選手交代し、1-2から試合は再開。
後ろの宍戸にボールを渡した瞬間、帝国が宍戸からボールを奪い去る。
「デスゾーン・・・開始!」
不味い、またデスゾーンか・・・!
「あいつは必ず止める。ボールを俺に回してくれ。」
「・・・分かった!」
豪炎寺がすれ違いざまにそう囁く。
あいつは守が止めると信じているんだ。そして、そのボールを俺が回すことも。
その期待に答えるのが筋ってものだな・・・守、頼むぞ!
「「「デスゾーン!!」」」
『おーっと!?豪炎寺、円堂を全くフォローせず上がっていく!反対に加賀美はデスゾーンを追いかけるように後退していくぞーッ!?』
放たれるデスゾーン。圧倒的暴力が再び守に迫る。
が、守は決して諦めたなどいない。寧ろ、豪炎寺の参戦によってその闘志は先程以上に燃え上がっている!
「絶対に止める・・・・・・ゴッド、ハンドォォォ!!」
最初のゴッドハンドよりも、今までのゴッドハンドよりも一際強く輝く。神々しくも力強くもあるその手は、真っ直ぐに迫るボールへと向けられる。
再びぶつかり合う神の手と死のボール。が、神の手が放つ輝きの前に、死のボールはその力を失う。
「何ッッ!?」
『何と円堂!満身創痍ながらも帝国のデスゾーンを止めたァァァ!』
「柊弥ァ!!」
「おォ!」
守からのボールを受け止める。
このボール、無駄にはしない!!
「行かせるか!!」
鬼道を中心として、ボールを奪わんと俺に雪崩込んでくる。
ならば、全員纏めて薙ぎ払う!
「スパークウィンドォ!!」
雷を纏った暴風が全員吹き飛ばす。
俺の前に立ちはだかるものは誰一人していなくなり、俺のパスを待ち構える豪炎寺の姿が見える。
ボールを踏みつけ、力を込める。
脚がやられているせいで十分な威力は出ない。だが構わない。
ゴールを決めるのは俺じゃない。アイツだ!!
「轟一閃ッッ!!豪炎寺ィ!!」
本来直線を描きながらゴールに突き刺さる轟一閃を、ゴールではなく空へと斜めに打ち上げる。
そう、これはパスだ。
我らが炎のストライカー、豪炎寺修也への!!
「ファイアトルネード!!!」
炎を纏いながら豪炎寺が空へ舞う。
雷を帯びたボールを、回転と共に打ち出す。
雷に加え炎を纏ったそのシュートは、帝国ゴールへ凄まじい速さで迫る。
「な──ッ!!」
『ゴール!!炎のストライカー豪炎寺修也!!鉄壁のゴールキーパー円堂守と雷のストライカー加賀美柊弥の想いを受け取り!そのシュートで1点もぎとったァァ!!』
歓声が沸きあがる。観客からも、俺達からも。
やってくれたな・・・豪炎寺!!
「・・・ここで終わりだ。スーパーストライカー、豪炎寺のシュートは全く錆び付いてはいない・・・そして円堂守、加賀美柊弥・・・ククッ、面白い事になりそうだ。」
離れたところでそれを見ていた影山は嗤う。
本来の目的を果たした上、面白い物が見れて非常に満足している。
「・・・はい、分かりました。」
鬼道が審判の方へ歩み寄り、何かを告げる。
すると審判はホイッスルを鳴らし、声を上げる。
「ただいま帝国学園から試合放棄の申し出があったため、試合終了!!」
『何とここで帝国学園試合を放棄!!点数は引き分けですが、これは実質的に雷門イレブンの勝利でしょう!!』
「円堂守に加賀美柊弥、思わぬ収穫だったな。」
そう呟いて鬼道は大型車に姿を消す。
「よく来てくれたな、豪炎寺!これで新生雷門イレブンの──」
「今回限りだ。」
そう言って豪炎寺はユニフォームを円堂に渡す。
「──豪炎寺、助かった。ありがとう。」
柊弥が去りゆく背中にそう伝える。
壁山が止めないのか、と聞くが円堂は良いんだ、と答える。
「さあ皆!ここからが始まりだ!!俺達、雷門イレブンの!!」
雷門イレブンは声を上げる。
喜ぶ彼らを、誰が敗者と呼ぼうか。
フィールド内に残った戦士達は、確かに勝っていた。
帝国戦終了です。
明らかに強くなっている柊弥と円堂の影響で、大敗どころか引き分けまで持ち込んでしまいました。
さて、アンケートにご協力頂きありがとうございます。
読者の皆様の意見は執筆にあたり大きな力となります。感謝してもしきれません。
感想・評価もお待ちしております。ではまた。