エイリア学園、ジェネシスのメンバー"ネビュラ'として雷門と戦っている最中に正体がバレる場面です。
「円堂君、好きだよ……君のその目!」
「円堂ォ!!」
もう何度目か分からない円堂とグランの対峙。ここに至るまで円堂はグランの通常シュートですら止めることはできていない。イプシロンと引き分けることが出来た矢先のこの展開、中には既に心が折れかけている者もいた。
だがそれでもキャプテン、円堂 守は立ち上がる。ここで自分が逃げては全てが終わってしまう。ここで立ち向かうことが己の責務であると信じて。
グランは高くボールを蹴り上げる。緩やかな回転と共に自身も空へと飛び上がり、そのままボールを蹴り付ける。星の如く煌めくボールはそのシュートの威力がどれほどか物語っている。見ている者達は第六感で感じ取ってしまった、"これをまともに受けては円堂が潰れる"と。
だからこそだろうか、吹雪が一心不乱にゴールへと走った。……正確には自身の在り方が分からなくなり、血迷った末での行動だが。
「流星ブレードッ!!」
「うわァァァァァァァァァァッッッッッ!!!」
放たれたシュートは落ちてくる隕石……いや、星。正しく流星のようだった。もはや恐ろしさすら感じる領域のシュート。それをキーパーでもないのに受け止めようと吹雪は射線上に躍り出た。
傍から見れば無謀でしかない。打たれ強い円堂ならまだしも、それ以外の誰かが受ければ間違いなく大怪我だ。それにも関わらず吹雪はシュートに身体でぶつかりに行く。
しかしいつまで経っても吹雪が弾き飛ばされることはなかった。
「……」
「なッ!?」
シュートと吹雪の間に立ったのはジェネシスであるネビュラ。敵のはずのネビュラが吹雪を守るような行動に出たことに雷門イレブンは勿論、ジェネシスの誰もが衝撃を受けた。
真正面からシュートに対して蹴り込むネビュラ。深紅のエネルギーがボールに対して徐々に注がれていくと、元々シュートに込められたエネルギーと反発しあってやがて爆発を起こす。
爆風によって巻き上げられた砂塵に誰もが視界を隠す。それが晴れる頃にはボールを足蹴にするネビュラの姿があった。
「ネビュラ……なぜ邪魔をしたんだい?」
「お前、吹雪を……俺達を守ってくれたのか!?」
グランが、円堂がネビュラに問い掛ける。
しかし返ってきたのは返答ではなく、苦悶の声。
「が、がァァッ!?」
頭を抑えながらのたうち回るネビュラ。その異様としか呼べない光景に誰もが言葉を失う。
(なぜ私はこんなことをした!?なぜ敵であるコイツらを守らねばと思って動いた!?なぜ私は──)
直後、ネビュラの脳裏に過ぎったのは雷門イレブンとのまるで仲間として一緒にいたかのような記憶。
『柊弥!サッカーやろうぜ!』
『行くぞ!柊弥ァァァ!!!』
『加賀美先輩!いつも頼りにしてるっス!!』
『私は、柊弥先輩のことが好きです』
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッッッ!!??」
その時、ネビュラの目元に取り付けられた機械がバチバチと音を鳴らし、煙を上げる。顔を襲う灼熱感。それに耐えきれずネビュラは外れないはずのその機械を力ずくで剥ぎ取る。
ガシャりと重い音が辺りに木霊する。
そして、とうとうその内側に隠されていた全てが晒される。
「───柊、弥?」
「おい……嘘だろ?」
「……マズイな、これは」
頭を抑えていたネビュラ……いや、雷門中副キャプテン加賀美 柊弥は、やがて立ち上がって周囲を見渡す。
頭の中に残る最後の記憶は奈良の公園でのこと。止まった時間が動き出した柊弥は今のこの状況を呑み込めない。
「ここは……何処だ?何で俺はこんなユニフォームを着て……?」
「───柊弥先輩ッッ!!」
誰よりも早く動き出したのは音無だった。ベンチから飛び出すようにしてフィールド内に入り込み、柊弥の元へと走り出す。
しかし突如として巻き起こった突風によりその途中で動きを止める。
「予想外の事態だ……ここで撤退する」
「がッ……誰だお前、離せッ……!」
その正体はグラン。手早く後ろに回り込んで身動きを制限したグランはすぐさま他のメンバーを集め、エイリア学園の黒いボールを起動する。
再び柊弥の元へ走り出そうとした音無だったが、鬼道によって止められる。
「離してお兄ちゃん!」
「ダメだッ!!危険すきる!!」
「それじゃあね円堂君、またそのうち」
「守、鬼道、皆ッ!!」
このままでは皆と離れ離れになる。そう理解した柊弥は手を伸ばして助けを求める。力の限り抵抗するが、グランの拘束は振り解けない。
やがて辺りを光が包み込む。
「春──」
柊弥が春奈の名を呼ぼうとしたその瞬間、一際強く発行して柊弥が、ジェネシス達がその場から姿を消す。
「嫌、嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
身を裂くような慟哭だけが、その場に残された。