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追記
アンケートの結果に伴い、最初の方の話の形を整えました。
ご協力ありがとうございました。
「皆!分かってるなあ!?」
「おお!!」
いつもの如く学校が終わり、部室に全員集まっている。
守を中心に部室はかつてないほどの熱気に包まれている。それも当然。ようやくフットボールフロンティアが始まるのだ。
「相手は何処だ」と風丸が尋ねるも守は「知らない!」と声高らかに答える。全員ずっこける。よくもまあ堂々と言えたものだ。
「野生中ですよ。」
「野生中・・・確か、去年の地区大会の決勝で帝国と戦ってます。」
突如入ってきた冬海先生が次の対戦校を教えてくれる。それに反応して音無が野生中について話す。
嫌味のように先生が「大差で初戦敗退はしないように」と告げる。その先生仮にも顧問なんだからもう少しやる気出してくれても良いのでは?
「ああ、それから。」
「チーッス。俺、土門飛鳥。一応ディフェンス希望ね。」
外から高身で少し色黒の男が顔を出す。見ない顔だな・・・転校生か?
冬海先生がまた嫌味を言って去っていく。それに対して土門は指差しながら怪訝そうな表情を浮かべる。正しい反応だ。
その後、秋と土門がかねてよりの仲であることが分かり、守が土門に歓迎の意を表す。
「それにしても相手は野生中だろ?大丈夫かなあ。」
急に土門がそんなことを口にする。どうやら前のチームで戦ったことがあるらしく、どんなチームなのかを教えてくれる。
瞬発力、機動力共に大会屈指。特に高さ勝負にはめっぽう強いのが特徴だそうだ。
高さ、ねえ。こちらのシュート技はドラゴンクラッシュ、轟一閃、ファイアトルネード、そして尾刈斗中で編み出した豪炎寺と染岡のドラゴントルネード。
後半二つ何かは上から抑え込まれるかもしれないな。
「俺も戦ったことがあるが、空中戦だけなら帝国をも凌ぐ。」
どうやら俺の予想は当たっていたらしく、豪炎寺がそう口にする。
「・・・と、来たら。」
「新必殺技だ!」
思考を共有していたかのように守が俺が考えていたことを声に出す。
恐らくは、地上から放つドラゴンクラッシュ、轟一閃もその機動力によって蹴る前に奪われるかもしれない。
「なら、相手よりも高く、より高く飛び空中を制するしかないな。」
こうして、新必殺技の開拓が始まった。
「よーし行くぞ!」
外に出て、守が高いところからボールを投げ、それをひたすらに皆で蹴り始める。
空中を制するなんて提言した俺だが、一つ考えがあるのでそれを優先させてもらっている。一人でひたすらに練習しているんだが・・・中々上手くいかない。
途中、古株さんがやってきて皆が集まり何かを話していたが、俺はひたすらにボールと向き合う。
「あー・・・クソ。」
「加賀美先輩、お疲れ様です!」
「音無、ありがとう。」
行き詰まってしまい、半ば投げ出すように寝転がると音無がタオルとドリンクを持ってきてくれる。
「新必殺技の開発、なかなか大変そうですね。」
「そうなんだ。どんな技にしたいかっていう構想は練れてるんだけど、それをどう実現するかっていうのがイマイチ掴めないんだ。」
「なるほどなるほど・・・」
古株さんを中心に何やら盛り上がっている守達を横目に溜息をつく。
しばらくそうしていると、音無が口を開く。
「少し考えすぎなんじゃないですかね?ほら、加賀美先輩だってこの前染岡先輩に言ってたじゃないですか。インスピレーション・・・でしたっけ?少し直感的になってみてもいいのかもしれませんよ。」
「直感的・・・か。」
どうやって轟一閃以上のエネルギーを込めるのか、どうやって轟一閃以上のパワーを引き出すのか・・・
「例えば、強いシュートを打ちたいなら片脚じゃなくて両脚で蹴る!とか・・・」
両脚。それだ!!
片脚での全力キックでも威力が足りないなら、両脚で全力キックすればいい!
「そうだ、それだよ音無・・・!見えた、俺の新必殺技!」
「ええ!?今ので良いんですか!?」
「ああ良いんだよ!早速やってみる、ありがとな!」
浮き立つ気持ちと同時に身体を起こし、早速ボールを抱えてゴール前に向かう。
これで、野生中に対抗出来る!
「秘伝書ォ?」
俺の新必殺技は八割程は仕上がった。後はもう一つの課題をクリアすれば完成だ。
皆の方はというと、なかなか行き詰っているらしい。新必殺技のしの字も見えてこないだとか。
そんな中、守が"秘伝書"とやらの存在を口にする。
「なんでそんなのがこの学校に?しかも理事長室。でもって、それをなんで雷々軒の響木さんが知ってるんだよ。」
「それは・・・知らん!とにかく、探してみようぜ!そのイナズマイレブンの秘伝書ってやつをさ!」
と言って皆理事長室へ向かってしまう。
「・・・豪炎寺、新必殺技の練習付き合ってくれない?」
「・・・ああ。」
見つかったらまずいだろ、と同じ考えを持っていたらしく豪炎寺は部室に残っていた。
同じストライカーの豪炎寺の意見があれば、俺の新必殺技は完成まで持っていけるかもしれないからな。
「さ、見せてくれ。お前の新必殺技。」
「おう!」
横で見ている豪炎寺に、未完成の必殺技を見せる。
未完成と言えど、そのパワーは既に轟一閃を凌駕している。これも音無のおかげだな。今度ジュースでも奢ろう。
「──すごい威力じゃないか。ドラゴントルネードにだって負けてない。だがこれで完成ではないと・・・何が足りないんだ?」
「それはだな───」
「そうか、じゃあ──」
豪炎寺の意見を仰いで何度も何度もボールを蹴ること数十分。守達がノートを片手に戻ってくる。
案外早かったんだな・・・
「あったのか、秘伝書。」
「ああ!今から見るから柊弥と豪炎寺も来いよ!」
全員の前でさあ秘伝書を御開帳・・・が、読めない。全く。
これ・・・大介さん、守のお爺さんの字だな。小さい頃から守が持っていたお爺さんのノートを何度か見せてもらったことがあるが、何を書いてあるのかサッパリだ。
暗号に見えるほど汚い字で書かれているからな・・・逆になぜ守は内容を理解できるのか。
「相手の高さに勝つにはこれだ──イナズマ落とし!」
「イナズマ落とし?」
「ああ!読むぞ・・・一人がビョーンと飛ぶ。もう一人がその上でバーンとなって、グルっとなってズバーン!これぞ、イナズマ落としの極意!」
・・・なるほど。とりあえず、皆言いたいことは同じだと思う。
せーので言うぞ?せーの───
「「分かるかァ!!」」
悪い冗談なのか?守以外には読めないような字でその内容はよく分からん内容だなんて。守ですらクエスチョンマーク浮かべてるぞ?
「でもさ、爺ちゃんは嘘はつかないよ。ここには本当にイナズマ落としの極意が書かれているんだ。あとは特訓さえすればいいんだよ!」
「ビョーンと飛んで・・・」
頭をフル回転させて考えるが、殆ど理解出来ない。
そうだ、こんな時こそ直感的に・・・
ビョーンと飛ぶ、もう一人がその上でバーン・・・まず、2人の連携技ということは分かるな。
そしてグルっとなってズバーン・・・回転と共に打ち込むという意味か?
あれ、意外と分解して考えると分かる・・・?
「今日のメインイベントはこれだ!!」
と言って染岡がぐるぐる巻きにした毛布を穴に詰めたタイヤを見せびらかす。
相手の技を受ける特訓・・・らしいが。これ考えたの絶対守だろ。
「円堂、加賀美。ちょっといいか?さっきの必殺技のことだが・・・」
「ん?」
豪炎寺が土に絵を描きながらこういうことじゃないか、と説明する。その内容は俺がさっきの考えていたものとほぼほぼ同じだった。こいつと俺はもしかしたら思考が似てるのかもしれない。
「俺も同じ考えだ。」
「──柊弥、豪炎寺。お前らすごいな!」
「・・・お前は分からなかったのかよ。」
特訓してる奴らの悲鳴をBGMに、俺達3人は必殺技の話を進める。
「そんな不安定な足場でオーバーヘッドキックが出来るのはお前ら2人しかいない!」
「あー、俺は自分の新必殺技があるから豪炎寺頼めないか?さすがに2つ掛け持ちはキツイ。」
「そうだな、加賀美は自分のを仕上げてくれ。俺の踏み台になれるやつは・・・壁山か?」
屈強な身体を持つ壁山で間違いないだろうな。だが、問題は壁山がそんな高いところまで飛べるかだが。人一倍ビビりな壁山のことだ、震え上がるに決まっている。
まあ、後のことは後で考えればいいか。
日が暮れるまで練習は続いた。
壁山は守と一緒にタイヤを二つ身につけ、ジャンプ力を鍛える特訓。豪炎寺は染岡、風丸を踏み台に空中でオーバーヘッドキックの特訓。そして俺はひたすらに打ち込む特訓。全員、既にボロボロだった。
「う、オオオオオオオオオ!!!」
咆哮と共にボールにエネルギー込める。すると、先程よりも一際強くボールが光を放ちながら帯電する。だがまだ足りない。この程度では・・・!
もどかしさをボールにぶつけるように両脚を叩き込む。が、俺の集中力が切れてしまったのか、接触の際にボールに込められたエネルギーが激しく波打つように放出され、俺は吹き飛ばされてしまう。
痛え・・・受け身ミスった。
「加賀美先輩!もう今日はやめておきましょうよ!ボロボロじゃないですか!」
「そうはいかないさ、壁山も豪炎寺も、ほかの皆も頑張ってるんだ。俺だって──!!」
音無の心配はありがたいが、立ち止まる訳にはいかないんだ。
俺1人逃げ出すなんてこと、絶対にしたくない!
「でも、そんな義務感を感じながらやったって何にもなりませんよ!焦るばかりじゃ、何も掴めないんですから!」
「──義務感?」
そうだ、俺は焦りすぎていたんじゃないか?
様々な試練を乗り越え、ようやくフットボールフロンティアに出れる。そこでまた点を取らなければ、勝たなければという固定観念に縛られていた。
サッカーは楽しむものじゃないか、こんな苦しい思いでやったところで───
「また、助けてもらったな。」
「・・・え?」
「音無の言う通りだ。焦るばかりで楽しむ気持ちを忘れていたよ。大好きなサッカーを。」
やってて苦しいなんて、そんなのサッカーじゃない。楽しんで勝ってこそ、本当のサッカーだ。
一流のプレイヤーは、誰よりも強い選手なんかじゃない。誰よりも楽しんで強くなれる選手だ!
「──よし。」
「加賀美先輩!」
ボロボロになりながらもまだ続けようとする俺を音無が引き止めようとする。
もう大丈夫だ、心配ない。
込めろ、サッカーへの想いを。強くイメージしろ、俺のサッカーを!
「はァァァァァ!!」
ボールに込めた想いがエネルギーとなって辺りに迸る。先程までの危なっかしい雷よりも、さらに強く、もっと強く。
あまりの力強さに自分ですらボールに近付くのが難しい。それでも、やってみせる。
エネルギーに包まれたボールは打ち出されるのを今か今かと待ち侘びているように感じる。
「いっけぇぇえええええ!!」
跳躍と共に両脚をボールに突き刺す。力を全てボールに流し終えると同時に、宙で一回転して着地する。
ボールが打ち出される瞬間、雷のような轟音が辺りに響いた。
打ち出されたボールは閃光を伴いながらゴールへ突き刺さり、暫くの間ネットを揺らし続ける。
「──出来た、出来たぞ!!」
思わずその場でガッツポーズを取る。ようやく完成した、俺の新必殺シュート!
轟一閃を習得したのは小学生の頃だから、この雷門中でサッカーを初めてから初の新シュートだ。
「加賀美先輩!!やりましたね!!」
「ああ!ってあれ・・・」
急に足元が覚束なくなり、顔から転んでしまう。
音無が駆け寄ってきて身体を起こしてくれる。
「もう、さっきから心配させないでくださいよ!」
「悪い悪い・・・けど、このシュートが完成したのは音無のおかげだよ。本当にありがとう。」
そう音無に感謝を述べると、急に黙り込んでしまう。・・・俺、なんか変なこと言っただろうか。
するとそこに守や豪炎寺達もやってくる。
「柊弥!さっきのすっげー音は何だよ!?」
「完成したんだ、俺の新必殺シュートがな!」
「そうか・・・結構離れていた俺達のところまでパワーが伝わってきたぞ。これは期待出来るな。」
このシュートと、豪炎寺達のシュートでまずは目の前の野生中に勝つ。そしてその次もそのまた次も勝って目指せフットボールフロンティア優勝だ!
『さあ!間もなくフットボールフロンティア地区大会1回戦、雷門中対野生中の試合が始まります!』
そうして迎えた試合当日。
あれから俺の予想通り、壁山は飛んだ際に下を見てしまい、恐怖でそれどころではなくなってしまい遂にイナズマ落としが完成しないまま試合を迎えてしまった。
いざとなれば俺のシュートもあるが・・・
「頑張れー!兄ちゃーん!!」
会場は野生中であるため、俺達の応援はほぼほぼいない。
が、その中でも壁山の弟とその友達が応援に来てくれている。
「良いところ見せないとな?壁山。」
「は、はいっス!!」
さて、どうなる事やら。
『雷門中からキックオフです!』
スタメン、フォーメーションは前回の尾刈斗中と同じ。今回はセンターは俺と豪炎寺だ。
一旦ボールを半田まで下げ、俺達FWはすぐさま前線へと駆け上がる。
「他山先生がこの試合に勝ったらおやつ食べ放題だってよ!皆!やるコケ!!」
鶏頭のキャプテンがメンバーにそう呼びかけてボールを奪いに来る。そんな動機で良いのかよ!?
ボールをキープしていた風丸に、相手の7番が襲いかかる。風丸は素早くロングパスを出し、染岡へ回す。
「野生中の実力、見せてもらおうか・・・豪炎寺!!」
染岡が空高くパス。豪炎寺は追いかけるように上昇し、ファイアトルネードの構え。さあ、どう来る・・・?
「はぁぁ!!」
「コケーー!!」
『野生中キャプテン、鶏井も飛んだ!高い!なんというジャンプ力だー!』
なんと豪炎寺より高く飛んでみせ、ボールを奪ってしまう。
話に聞いていた通りのジャンプ力だ。まさか本当にファイアトルネードを抑えられるとはな。
こうなれば、やはりイナズマ落としと俺の新必殺技で対抗するしかないだろう。
相手キャプテンはロングパスで一気にボールを回す。受け取ったのはチーターのような見た目の11番。
あっという間にマークに着いた半田を引き剥がす。早い。風丸すら抜かれるとは・・・
11番は先程の染岡のように高いパスを出す。ファイアトルネードにも引けを取らないその高さまで相手7番は跳躍、そのまま頭からボールに突き刺さる。
「コンドルダァイブ!!」
「ターザンキック!!」
シュートチェインか!
7番のシュートに9番が勢いを乗せる。シュートコースも急に変わったが、守はすぐさま体勢を立て直し──
「熱血パンチ!!」
──見事弾いてみせる。だがかなりギリギリだ。
『雷門中円堂防いだ!だが恐るべし野生中の個人技!雷門中誰1人ついていけない!!』
全くもってその通りだ。新必殺技だけでなく、基礎能力の向上もしっかり取り組んだがそれでもこの差だ。
ボールは守から風丸へ。取られないように細心の注意をはらいながらパスを回し、豪炎寺へ。
しかし、豪炎寺の周りには3人のマークが。
「染岡!!」
フリーだった染岡へパスを出す。
・・・待て、あいつあのまま打つ気だ!
「待て染岡!気をつけ──」
「ドラゴンクラッシュ!!」
呼びかけ虚しく、染岡はドラゴンクラッシュの構えに入る。
が、相手DFのアルマジロのようなタックルでボールごと染岡は吹き飛ばされる。
「染岡ァ!!」
「ぐゥ・・・!!」
すぐさま染岡の元へ駆け寄る。
マネージャーの治療を受けるが、足を捻っていて試合の続行は不可能と判断された。選手交代だ。
染岡に代わって土門、そして壁山はFWに。イナズマ落としを狙いに行く。
「すまねえ、加賀美・・・!」
「良い、気にするな。俺達で何とかするから見ていてくれ。」
相手のスローインから試合再開。
駆け上がる相手6番に、新しく入った土門が立ち塞がる。お手並み拝見と行こうか。
「いっちょやりますか・・・キラースライド!!」
連続蹴りのスライディングでボールを奪い取る。あれは・・・帝国のDF技。あいつ、帝国出身なのか・・・?
そのまま上がっていく土門。ある程度上がったところでボールを高く上げる。それに対して壁山と豪炎寺、相手キャプテンが飛び上がる。
「ヒィィ!!」
案の定、壁山が恐怖に耐えきれず体勢を崩してしまう。それにより豪炎寺が飛べず、相手にボールを取られてしまう。
そこからは明らかなこちらの劣勢。守にシュートの嵐が降り注ぎ、何とかそれを防いで前線に回しても壁山のミスで点は取れずまた相手ボール。それの繰り返しだ。
「豪炎寺、俺が・・・」
「いやまだだ!イナズマ落としが成功しない限り、お前の新必殺技は打つな!」
「・・・分かった。だが、このまま決まらないようなら最後の最後で俺がやる!いいな!?」
恐らく豪炎寺はこの先を見越し、壁山の成長を狙っているのだろう。
俺という後ろ盾を完全に封じた状態でなければ、壁山はきっとイナズマ落としを成功させることが出来ない。
逆に恐怖に打ち勝ちここでイナズマ落としを成功させることが出来れば、この先壁山はDFでもさらに活躍出来るだろう。
「ターザンキック!!」
「モンキーターン!!」
「スネークショット!!」
打たれ、抜かれ、また打たれ。されどもこちらは打てず。もう守の消耗も厳しくなってきた──
『ここで前半終了!!両チーム無得点、だが試合を支配しているのは野生中だ!!』
ナイスタイミング、と言ったところか。このまま打たれ続けたら守が持たなかったからな。
ベンチに戻り、水分補給をする。さて、壁山をどうしたものか。
「後半も俺は必ずゴールを守る!二人のイナズマ落としと加賀美のシュートで、勝ちに行くぞ!!」
「キャプテン・・・俺をDFに戻してくださいっス。」
壁山がぽつりぽつりと懇願する。戻すのがダメなら、交代してくれと。
だが守はそれを拒む。壁山に一皮剥けて欲しいと思っているのは豪炎寺だけではない。無論、俺もだが。
「加賀美さん、あんな凄いシュートを作ったじゃないっスか!じゃあ俺じゃなくても、加賀美さんが決めれば──」
「断る。自分から逃げる奴の頼みなんて俺は聞かないぞ。」
「加賀美さん!?」
少林や栗松から驚きの声が上がるも、気にとめない。事実だからな。
「まだまだ地区大会の1回戦だ。こんな所で逃げ出そうとする奴が、この先勝てるはずがないんだ。」
「そんなこと言わなくたって──」
「何度失敗したっていい、ただ諦めるな。俺は、全員で勝ちに行きたいんだよ。」
思っていることをそのまま壁山にぶつける。
俺の言葉を受けて、壁山の目には僅かに光が点る。もう一押しだな。
「お前は1人じゃない・・・俺達全員が付いてる。何度でも挑戦してみろ、頑張ったその先にあるものはきっと何にも変え難い物だ。」
そう言って俺はグラウンドに戻る。
後ろから小走りで豪炎寺も付いてくる。
「言うじゃないか。」
「・・・あいつに成長して欲しいと思っているのは、俺もだからな。」
やがて全員がポジションにつき、間もなく後半開始だ。
大きく息を吸い、声を上げる。
「まだまだここからだ!!全員、気張って行くぞ!!」
「「おう!!!」」
こういうのは普段守の役回りなんだけどな。
仮にも副キャプテンだし・・・たまには、な。
『エンドチェンジして、野生中のキックオフで後半開始!ボールは水前寺にパスされ、高速ドリブルだ!!』
チーターみたいな奴がボールを持ってどんどん上がっていく。俺達がやるべきは後ろの仲間を信じ、いつでも攻撃に転じられる準備をしておくことだ。
果敢に守るも、誰もボールを奪えずに相手の10番へ。
「スネークショット!!」
蛇のように曲がるシュートが守に襲い掛かる。守は熱血パンチで上に弾くが、やはり消耗は回復しきっていないし腕へのダメージもあるのだろう。顔を歪める。
「痛くなんか・・・ねえぞぉ!!」
守が前線にパス。それを見て豪炎寺と壁山が上がるも──
「やっぱり、俺には無理っス・・・」
「くッ・・・!」
壁山はその場から動かず。一人豪炎寺はボールを受け取るべく飛ぶも、やはり相手キャプテンには叶わない。
再びボールは相手の前線へ。守が待つゴールへ何度も何度もシュートを叩き込む。
やがて腕の限界が訪れ、守は顔面でボールを弾く。
「ゴールは・・・割らせない!!」
守だけに頼る訳には行かない、とDF陣が士気を高める。一人では抑えきれない相手も2人で、2人でもダメなら3人でと複数でプレスをかけ始めた。
有効ではあるが・・・相手よりも動くせいでどんどん消耗してしまう。
・・・どの道、俺は今ゴールを決める訳には行かない。なら、アイツらがイナズマ落としを成功させるまで俺も下がるとしよう。前半はシュートチャンスもなかったしそこまで消耗していないからな。
「壁山。目を開けてよく見ておけよ・・・!」
「へ・・・?」
下がり際、壁山に一声かける。豪炎寺、あとは任せたぞ。
段々と動きが鈍くなってきた皆に混ざって俺も相手に立ち塞がる。守の負担を少しでも減らしてみせる。
「おおおおお!!」
ゾーンプレスによって相手11番が下げたボールが相手に渡る前に割り込み、ボールを奪い取る。そのままキープを試みるがすぐ奪われる。が、また奪い返してパスを回す。それが取られてもまた奪う。
「まだまだァァァァ!!」
野生中一の瞬足である11番に必死に追いつき、ボールを奪う。驚いている11番をよそに前線を見据える、が10番にスライディングでボールを奪われる。その拍子に転んでしまう。
ボールは9番へ。シュートの構えだ。
「守ッッ!!頼むッッ!!」
縋り付くような思いで声を荒らげる。
既に限界を超えた守は、それでも迫るボールに対して立ち向かう。
「ゴッドハンド!!はぁッッ!!」
苦痛に顔を歪めながらも守は守りきる。そしてそのボールは──
「壁山ァァ!!」
──壁山へ。
壁山は臆することなく、ボールを追いかける。それに追従して豪炎寺も上がる。よし、これなら!
再び壁山と豪炎寺、相手キャプテンは跳ぶ。一瞬躊躇う壁山・・・だが!
「これが俺の、イナズマ落としィィ!!」
壁山は地に背を向け、上を見据える。そして豪炎寺は壁山の腹を踏み台にさらに高く。
そうか、下を見なければ──!
高さを得た豪炎寺はそのままオーバーヘッドキック。打ち出されたボールは紫電を纏いながら一直線に相手ゴールへ降り注ぐ。
『ゴール!ついに野生中のゴールをこじ開けた!!豪炎寺と壁山の新しい必殺技だ!!雷門中、一点先制!!』
「──よっしゃァ!」
遂に決めてくれた。やったな、壁山──!!
全員が沸き立つ。疲労も痛みも忘れて、喜び舞い上がる。
そして相手キックオフから試合再開、残り時間はあと僅か。
「はああ!!」
引き続き前陣からスタートの壁山が、相手のボールを奪い取る。
勢いに乗っているせいか、ディフェンスのキレも増している、いい傾向だ。
「加賀美さん!!」
「おう!」
壁山のパスを受け取り、相手ゴールへ切り込んでいく。容赦のないディフェンスが待ち構えるが、全て躱して更に前へ上がる。
アイツらが魅せたんだ・・・俺だって!
「行くぞ・・・!」
スパークウィンドの要領で何度かボールを蹴りながら雷を帯びさせる。そして俺のサッカーへの熱意を、想いをボールに乗せ前へ蹴り飛ばす。
蹴り出されたボールは並々ならぬエネルギーを放出し、迸る雷で相手を誰一人して寄せ付けない。
そう、これが俺が考えた野生中対策・・・ボールを奪われるなら、近付かせないほどのエネルギーをボールに込める。
「ライトニング・・・ブラスタァァ!!」
俺の全力を両脚で叩き込む。
雷鳴のような轟音と共に、雷と閃光を従えたボールが相手ゴールへと放たれる。相手キーパーは止めようと腕を前に突き出すが、抵抗虚しくボールと共にゴールへ突き刺さる。
『ゴール!!雷門中2点目!!加賀美の自然の怒りを体現したかのような新必殺技が、野生へと襲いかかったァァァ!!と、ここで試合終了だァァァァ!!』
「加賀美さん!ナイスシュートっス!!」
「おう!ナイスパスサンキューな、壁山!」
礼を言うべきは壁山だけじゃない。
このシュートを完成させるのに何度も助言してくれた音無にもだ。その場でベンチの方を見て、音無に手を振る。すると音無も手を振り返してくれる。
『2-0で雷門中の勝利!!2回戦へと駒を進めましたァァ!!』
ベンチに戻り、守とハイタッチすると守は小さな悲鳴を上げる。グローブを外させると、守の手は真っ赤に腫れていた。
それもそうだろう、あんなに何度も打たれては守ってを繰り返したんだからな。
冷やすものを準備しようとしたら、誰かが守の手に氷袋を押し付ける。誰か、と思ったらまさかの夏未お嬢様だった。あ、お嬢様呼び辞めたんだった。
「サッカーなんかにそこまで熱くなるなんて・・・バカね。」
「バカってなんだよ!おい!?」
そのままその場を去る夏未。素直じゃないねぇ・・・
「昨日の試合は凄かったな!けどまだ次がある、また練習頑張るぞ!!」
「おう!」
野生中との試合を終えた次の日の放課後。俺達はいつものように部室へやってきた。
守が扉を開くと、そこには!
「・・・何でお前がここに?」
「私、雷門夏未は今日からサッカー部マネージャーになりましたので、よろしく。」
「・・・マジ?」
1番有り得なさそうな人が来たなオイ。
あれだけサッカー部を卑下していたお嬢様がマネージャーとは・・・俺達の熱意が届いたのかね。
ま、何にせよ次は2回戦だ。気合い入れていこうかね。
特訓風景から試合まで一気に描ききってしまった・・・本当は見やすさ重視で分けるはずだったのに。
今回は柊弥と音無の絡みをが採り入れてみました。
恋愛描写まで持っていくかは分かりませんが、仮にヒロインを決めるなら音無になると思います。
そして柊弥の新必殺技。
今後は轟一閃のような漢字ネーム。今回のライトニングブラスターのようなカタカナネームがどちらも出てくるかと思います。
作者の気分次第ですがね(殴