雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第8話 晴らせ屈辱、イナビカリ修練場!

 フットボールフロンティア地区予選1回戦、野生中との試合に勝利し、ますます勢い付いてきた俺達雷門イレブン。

 次なる試合・・・対御影専農中に向けて今日も今日とて練習だ。

 はて、心做しかギャラリーがいつもより多いな。皆揃って「ファンが出来た」なんて言ってるが、絶対に違うだろうな。

 他校の制服を着ているし、カメラやらノートなんかを持ち出している。どう考えても他校の偵察だろうな。

 そんなことを考えていると、河川敷の傾斜から高級車がグラウンドに突入してくる。そんな馬鹿なことをする金持ち・・・何故だろう心当たりしかない。

 

 

「必殺技の練習を禁止します。」

 

 

 そう、雷門夏未である。

 先日、新たに俺達のマネージャーとなった夏未は、秋や音無のように毎回は顔を出さない。時折顔は出すのだが、それにしたってこんな登場してくるとは誰も思わないだろう。

 

 

「いきなり何を言い出すんだよ!必殺技無しで、どうやって勝ち抜くんだよ!」

「まあ落ち着け守。あれは俺達のファンなんかじゃない・・・他校の偵察隊だ。」

「て、偵察隊ィィ!?」

 

 

 先程まで彼らに向けていた喜びの目線が恐れの目線に変わる。忙しいヤツらめ。

 

 

「まあそんな訳だ。必殺技を研究されたら不利だろ?」

「それに必殺技だけがサッカーじゃない。パス回しやドリブル、シュート練習。やることは山ほどあるさ。」

「そういうことよ。」

 

 

 が、守はおかしなことを言い出す。「誰にも見られない練習場で必殺技の練習をしよう」・・・ねえ。そんな都合のいい練習場あるはずないだろうに。

 ほら見ろ、豪炎寺も夏未も頭抱えてるじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 日にちを跨いでも、他校の偵察は減ることは無かった。むしろ増えている。勘弁してくれよ・・・

 必殺技の練習をせずに、基礎的なものを固める練習をひたすらにしていると、2台の大型トラックが目に付いた。レーダーなんか備え付けちゃって、戦争でもするんだろうか。

 中から2人の男が出てくる。確かあれは・・・

 

 

「御影専農の奴らだな。」

「ええ、その通りです。キャプテンでありキーパーの杉森。エースストライカーの下鶴です!」

 

 

 ボソリと呟くと、横から音無が顔を出して集めた御影専農のデータを見せてくれる。知らぬ間にこんなものも準備してくれていたとは・・・本当に頭が下がる。

 

 

「徹底的に観察する気でいやがる・・・嫌な感じだぜ。」

「気にせず行こう・・・さあ、シュート練習だ!」

 

 

 豪炎寺の声掛けで全員が再び練習に意識を向ける。

 数十分程そうしていると、急に杉森と下鶴が降りてきてグラウンド内に入ってくる。

 練習中に入ってくるな、と憤慨する守に対し、何故必殺技を隠す、と質問してくる杉森。いや、むしろ何故見せてもらえると思っているんだ?

 

 

「君達では我々に100%勝てない。」

「勝負はやってみなくちゃ分からないだろう?」

「勝負?これは害虫駆除に過ぎない。」

 

 

 下鶴のその一言で全員キレた。雷門メンバーから二人に投げかけられるブーイングの嵐。ま、当然だろう。

 

 

「そうだそうだー、頭に電極なんかつけてんじゃねーぞー。」

「加賀美・・・それは関係無いんじゃないか?」

 

 

 誰にも聞こえないように言ったつもりだったが横から豪炎寺にツッコまれてしまった。不覚。

 追い出してやる、と2人に迫る染岡を守が制する。思いのほか冷静だなと思ったら、そんなこと無かった。

 何か守の周りにメラメラも炎が燃えているのは俺の幻覚だろうか・・・?

 

 実際のところはブチギレていた守が、御影専農の二人に勝負を挑む。形式はPK。互いに二本ずつ撃ち合うことになった。

 

 

 

 

 

「では始める。」

「よし来い!」

 

 

 秋が開始のホイッスルを鳴らすと同時に、下鶴はボールを踏み付ける。縦に回転を得たボールはそのまま上昇し・・・()()()()()()()()()

 ・・・おい待て、あれは──

 

 

「轟一閃!!」

「えええええええええ!?」

 

 

 ギャラリーから驚きの声が上がる。正真正銘、俺の轟一閃だ。マジかよ・・・!?

 俺のそれと寸分違わぬ軌道でゴールへと向かっていく。

 反応が遅れ、尚且つ随一の速さを誇る轟一閃を前に守は為す術なくゴールを許す。開いた口が塞がらないの言った様子だ。

 1番驚いているのは俺だが。

 

 

「あれ、加賀美さんのシュートっスよね・・・?」

「・・・ああ。100%、完璧な轟一閃だ。認めたくないがな。」

「こちらの能力を解析したと言っていましたが・・・まさか必殺技までコピーしているとは。」

 

 

 目金がそう呟く。

 1本目は俺達の負け・・・次は俺だ。

 轟一閃よりも遥かに高い威力を誇るライトニングブラスターでいこうかと思ったが、あんなものを見せられてはこちらも轟一閃で勝負するしかないだろう。

 ライトニングブラスターを研究され、試合でも止められるなんてことは避けたいからな・・・もしかしたら既に手遅れかもしれないが。

 

 

「加賀美!お前の轟一閃を見せてやれ!」

「柊弥!頼むぞ!」

 

 

 仲間の期待を背に、フィールドに足を踏み入れる。ゴールで待ち構えるのは杉森。

 ・・・まさかとは思うが、ゴッドハントをコピーしていたりしないだろうな。

 

 ホイッスルが鳴る。

 深呼吸。集中しろ。

 必ず決めてやる。

 

 

「・・・轟一閃ッッ!!」

 

 

 敵を斬り裂く黄雷の閃がゴールに向けて放たれる。

 これが俺の轟一閃だ・・・!さあ、どう出る杉森。

 

 

「シュートポケット!!」

 

 

 両腕を広げ、半透明のバリアを展開する。そのバリアとシュートが触れた瞬間、激しく火花が散る。

 が、数秒の後にシュートは勢いを失い、ボールは杉森の手の中に収まる。

 ・・・マジか。

 

 

「そんな・・・加賀美のシュートが。」

「言っただろう。我々の計算は揺るがない・・・次だ。」

 

 

 戦慄が走る中、杉森は二週目への突入を促す。

 再び守と下鶴の対決。守は今度こそゴールを割らせないと意気込むも・・・

 

 

「ファイアトルネード!!」

「何ッ!?熱血パンチ───」

 

 

 今度は下鶴は豪炎寺のファイアトルネードを撃ってみせた。轟一閃同様、オリジナルと全く同じクオリティで。

 動揺を隠せなかったものの、今度こそ守は反応してみせる。が、その拳はボールを捉えることはなく、再びゴールネットは揺らされる。

 続いて豪炎寺が杉森にファイアトルネードを撃ち込むも、同じようにシュートポケットでセーブされる。

 俺達の完敗である。

 

 

「証明は終わった。」

 

 

 そう言って杉森と下鶴は去っていく。

 グラウンド内に残ったのは、ボールと歯軋りの音だけだった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 翌日、音無が撮影してくれた昨日の対決の映像を見ながら作戦会議を行う。

 

 

「恐らく、俺達のデータを全て把握しているというのは本当のことだ。」

「ああ・・・俺のファイアトルネードに加賀美の轟一閃だけではない。染岡のドラゴンクラッシュ、ドラゴントルネード。イナズマ落としにライトニングブラスター・・・全てが通用しないかもしれない。」

 

 

 部室内の空気は重い。次の試合に向けて意気込んでいたところに、こんな差を見せつけられたんだ。無理もない。

 何か作戦を考えなければ・・・と思慮に耽っている中、守が新必殺技の練習を提案する。

 

 

「それが出来ないから困っているんじゃないか。」

「河川敷や鉄塔広場で練習なんてしたら、あっという間に知れ渡っちまうぜ。」

 

 

 風丸と染岡の言うことは最もである。新しい必殺技と言えど、またそれを研究されたら何の意味もない。

 

 

「新必殺技よりも、基礎能力の向上に重点を置くべきだ。そうすれば、アイツらのデータを上回れるかもしれない。」

「だが、その様子も観察されたら結局同じじゃないか?」

 

 

 解決策は一向に見えてこない。

 御影専農との試合までは約一週間。一体どうすれば・・・

 

 部室の沈黙は突如として破られる。

 

 

「皆、夏未さんが呼んでるわよ。」

 

 

 秋が外から現れ、要件を伝える。

 夏未が・・・?なんの用だろうか。とにかく行ってみないことには始まらないか。

 

 

 

 

 秋の案内に従い、指定された場所へやってくる。

 校舎からは離れ、辺りには木々が生い茂っている。何ともまあ不気味な場所である。こんな場所があるとは知らなかったな。

 

 

「ここは・・・雷門中学七不思議の一つ、開かずの扉・・・!」

 

 

 突如、目金が妙な事を口ずさむ。それを聞いて全員顔を青くする。

 ・・・そんな七不思議なんて、うちの学校にあったんだな。

 

 と、その時!音を立てながら扉が開いた!

 

 

「開かずの扉、開いてるけど?」

「ヒィィィィィィィィ!?」

 

 

 全員俺の後ろに隠れてしまう。

 なあ、十数人が一人の背中に隠れたところで、身を守れるのか?

 

 中から一人の生徒が顔を出す。

 

 

「皆揃ったわね?」

「夏未。」

 

 

 夏未に中に入るよう促され、薄暗い階段を下に降りて行く。どこまで続いているんだろうか。

 金属製の扉に着いているセンサーが俺達に反応し、音を立てて開くと明かりが灯る。

 

 

「ここは?」

「伝説のイナズマイレブンの秘密特訓場・・・イナビカリ修練場よ。」

 

 

 そんなものがあったのも驚きだが、何より学校の地下にこんな場所があったのが驚きだ。今日は驚きの連続だな。

 何故こんな場所を見つけられたのか、と夏未に尋ねると「見つけたの。」としか返してくれなかった。

 ・・・まあ何にせよ、今の俺らには好都合だ。ここなら誰にも見られることなく練習が出来る。

 

 夏未曰く、必殺技の練習場としてリフォームしたらしいが、この様子なら必殺技の練習だけでなく、単純なトレーニングにも使えそうだ。

 

 

 早速練習開始だ。

 マネージャー達は外に出て、扉を閉める。どうやらタイムロック式らしく、一定の時間練習をこなさない限りは開かないらしい。なるほど、逃げ道はないと。

 それぞれが持ち場につき、機会が作動する。

 

 さあ、やるぞ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・もう無理死ぬ。」

 

 

 自分の口からそんな言葉が零れるとは思いもしなかった。他の皆もボロボロで倒れ伏しており、その様子は正に死屍累々と言ったところだろう。

 扉が開かれた時、マネージャー達は悲鳴を上げて俺達を迎えていたからな。

 

 サッカーボールを次々発射するガトリングガン。少しでも止まったら後ろの人にぶつかる巨大ルーレット。走らなければ後ろの車に轢かれる動く床。避けたら存在を消されそうなレーザー銃。他にも人を殺す為に作ったんじゃないかとする思える設備が選り取りみどりだ。

 

 

「元気出せ・・・あのイナズマイレブンと同じ特訓を乗り越えたんだ。」

「その通りだ・・・この特訓は無駄にはならない。」

「試合まで1週間・・・毎日続けるぞ・・・!」

 

 

 自分でそう言ったものの、なんか死ぬ気がしてきた。

 だがこれを乗り越えれば確実なレベルアップが見込めるだろう。だったら苦しくてもやるしかない。

 楽して強くなれるはずがないからな。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 そうして1週間が過ぎた。お母様、お父様、私は生きています。

 試合当日を迎え、俺達は会場の御影専農中へやってきた。グラウンドにはアンテナが何本も立っており、異様な光景を醸し出している。

 

 

「アンテナがあろうがなかろうが、サッカーには関係ないさ!行くぞ!」

「おう!」

 

 

 

 

 控え室でユニフォームに着替え、ベンチで最後の作戦会議だ。

 今日は珍しく冬海先生も来ている。正直、いたところでという話だが。

 

 

「この前の対決は俺達の負けだった。けど試合は、チーム同士の戦いだ!」

「力を合わせれば絶対にチャンスはある・・・ガンガン攻めていくぞ!!」

 

 

 グラウンドに力強い声が響く。

 あの特訓を乗り越えた俺達には、確かな自信がある。御影専農を相手にしても勝てるという自信が。

 この試合を乗り越えれば次は3回戦・・・準決勝だ。その次に待ち構えるのは決勝戦。間違いなく帝国との戦いになるだろう。

 帝国に今度こそ勝つ為にも、こんな所では負けられない。

 

 

「気張って行くぞ!!」

 

 

 グラウンド内に足を踏み入れた、勝利への誓いと共に。

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