雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第9話 データを超えろ、予測を上回れ

『さあ、フットボールフロンティア地区大会2回戦の開始です!!』

 

 

 実況のその一声に、会場全体が興奮の渦に包まれる。

 投げかけられる声援、フィールドに満ちる闘志。肌をひりつかせるようなこの感覚・・・やはり堪らないな。

 

 

『本日は雷門中と御影専農中の対戦!御影専農のその強さは帝国に匹敵するとも言われています!それに対し雷門中はどう戦うのか!?』

 

 

 集中、集中。

 あのイナビカリ修練場での特訓を乗り越えた今、「勝てる」という絶対の自信が俺、いや俺達全員に芽生えている。

 奴らの取ったデータ、予測。その全てを越えて行ってやるさ。

 

 

『審判によるキックオフのホイッスルが・・・鳴ったァァァ!!試合開始です!!』

 

 

「・・・染岡。」

「よし、行くぞ!」

 

 

 センターサークル内で豪炎寺から染岡、また豪炎寺にボールを回し、そのまま上がっていく。数人のMFを引き連れ、その後ろを追いかけるように俺も上がっていく。

 目の前に立ちはだかるのは先日、俺達をボロボロに打ち負かしてくれたエース下鶴。

 

 

「何ッ!?」

 

 

 染岡が驚きの声を漏らす。

 一瞬にしてボールを奪われただとか、そんなことではない。()()()()()()()のだ。

 出てくるだけ出てきてスルーされたら、それは驚くというもの。奴ら、俺達のシュートなんて止められるという確信があるんだろうがそうはいかない。

 

 

「ディフェンスフォーメーション、ガンマ3。発動!!」

 

 

 キャプテンでありキーパー、杉森がそう指示を出すと、全員が素早く動いて陣形を組む。その様はさながら機械のよう。

 映像でも見たが実際に見ると圧巻、とでも言おうか。サッカーサイボーグと呼ばれるのも納得の統率だ。

 パスを受け取った豪炎寺がゴールを目線をやると、目の前には徹底されたマークが。

 

 

「豪炎寺こっちだ!!」

 

 

 染岡が豪炎寺からのパスを受け、そのままシュート体勢をとる。特訓を経てパワーアップしたお前のシュート、見せつけてやれ!

 

 

「ドラゴォォォン・・・クラッァァシュ!!」

 

 

 蒼龍がボールと共に暴れ回る。向かう先はゴール。

 が、ゴール前には4人のDFが真ん中に道を開けるように待ち構える。その4人はボールとすれ違いざまにボールに蹴りを加える。DF達を抜ける頃にはシュートの威力は完全に殺され、杉森は苦労することなくボールをキャッチする。

 ・・・なるほどな。角度、力加減全て計算して脚に負担の掛からないシュートブロックをしたという訳か。

 結果としてキーパーの杉森の負担も軽くなる。

 

 

「何だ・・・今の守備は!?」

「当たり前だ。君達のサッカーなど、全て予測出来ている!」

「染岡!次の攻撃に備えろ!」

 

 

 恐らく、この煽りも染岡の冷静さを欠くために狙ってやっていることだろう。

 それが分かっているのだから黙ってやらせるはずがない。次へ備えることを呼びかけ、杉森から引き剥がす。

 杉森は顔色一つ変えることなくロングパス。相手は一気に前線へと上がる。

 こちらのゴールまで迫る御影専農FW陣。だが、こちらのDF陣がそれを見逃してはくれない。

 風丸が一瞬で接近、スライディングでボールを奪い取る。

 

 そのままボールを持って上がっていき、宍戸へパスを出す。

 

 

「うわッ!?」

 

 

 すぐさま御影専農がボールを奪い返す。速いな、計算だけじゃなくフィジカルも整っている。

 マックスと栗松が相手の進行を許してしまう。迫る10番は自分に任せ、下鶴のマークに着くように風丸達に指示を出す守。

 が、10番はサイドから走り込んできていた9番にパスを出す。完全にフリーだったようだ。

 そのままゴールを狙ったが、守が飛び付いてしっかりとキャッチ。反応速度が良くなっている。流石だ。

 

 すぐさま攻撃に転じるためボールを投げようとしたが、付近のDF、MF達は全員マークにつかれている。

 が、特訓したあいつらならすぐさま引き剥せるだろう。だがそれをしない。何故か?

 

 

「柊弥!!」

「任せろ!」

 

 

 答えは俺が下がってきているから、だ。

 

 あのイナビカリ修練場での1週間に渡る特訓の中で、俺が特に磨いたのは脚力だ。素早い攻勢に耐えきれる、シュートを何本打っても疲れない脚を目指してひたすらに鍛えまくった。

 その成果が見事に現れ、前陣から後陣まですぐさま戻れるほどの敏捷を実現してみせた。

 元々俺の売りは雷の如き速さ。それを更に磨いたことで風丸にも匹敵する瞬足へと昇華した。

 

 

「上がれ!」

 

 

 前進の指示を出して誰よりも速く俺が上がる。

 後ろから豪炎寺達が追従してくるのを確認し、更にその速度を上げる。

 杉森と一対一。

 

 

「───轟一閃。」

 

 

 以前の比ではないエネルギーがボールに込められ、それを鍛え上げた脚で解き放つ。

 そう、新必殺技こそ生まれなかったものの、基礎能力の向上によって既存の必殺技の威力が底上げされたのだ。

 雷鳴が轟きながら更なる力を得たボールが杉森へと向かっていく。恐らく、この程度なら──

 

 

「シュートポケット・・・ぐッ!!」

 

 

 シュートがゴールを貫くことはなかった。

 が、予測より速く、力強いシュートだったのだろう。杉森はセーブしきれずボールを弾く。

 ボールが弾かれたその先にいるのは豪炎寺だ。

 

 

「行け!豪炎寺!!」

「おう!ファイア・・・トルネード!!」

 

 

 豪炎寺の想いに呼応するように勢いを増した火炎が脚に宿る。

 空高く上げられたボールに回転しながら迫り、同じ高さまで上昇すると同時に勢いを乗せて蹴りを叩き込む。

 打ち出されたボールは火炎を纏い、敵を打ち破らんとゴールへ迫る。

 

 

「シュートポケット!!」

 

 

 先程と同じく、腕を大きく開いて溜めた力をバリアとして展開する。

 が、またしても止めきることは叶わずボールは弾かれてしまう。

 それを再びキープするのは豪炎寺、背後から上がってきた染岡と共にゴールへ向かう。

 染岡が蒼い龍を使役し、豪炎寺が龍に炎を吹き込む。

 

 

「ドラゴォォン!!」

「トルネェェド!!」

 

 

 炎に染められた紅龍が容赦無く牙を剥く。

 杉森は再びシュートポケットを展開し迎え撃つ。苦悶の声を上げながら杉森は耐える。ひたすら耐える。

 それでもドラゴントルネードの勢いは殺しきれず、ボールは前に進もうとする。それを咄嗟に弾いて何とかやり過ごす杉森。

 

 だが。

 

 

「豪炎寺さん!!」

「──よし!!」

 

 

 後陣から上がってきた壁山が豪炎寺と合流すると同時に大きく飛ぶ。豪炎寺は壁山を踏み台にさらに高くまで跳躍。オーバーヘッドキックで放たれたボールは、稲妻の様に降り注ぐ。

 

 

「イナズマ落としィィ!!」

「ロケットこぶしッッ!!」

 

 

 杉森は今まで見せてこなかった技でイナズマ落としに抵抗する。守のゴッドハンドのように拳にエネルギーを集約させ、それをそのまま拳の形で打ち出した。

 打ち出された拳状のエネルギーは襲い来るイナズマ落としを真正面から弾き飛ばす。

 

 

「オフェンスフォーメーション、デルタ5!!」

 

 

 杉森がオフェンスの指示を出すと、御影専農は一気に攻撃的なプレイへと転向する。

 ボールの奪取を試みるも、あっさりと躱されてしまった。クソッ、ディフェンス練習を軽く見すぎたか!

 

 そのまま一糸乱れぬ連携で御影専農は前へ前へと上がっていく。当然全員タックルなりスライディングなりを仕掛けるが全てやり過ごされる。

 一気にゴール前へ。

 

 

「ディフェンス囲め!!」

 

 

 風丸と土門が10番のマークに着く。が、先程同様サイドから走ってきていた9番にパスを出し、そのままキック。

 迫るボールに守が飛び付くが、ボールはその前で()()()

 狙いはゴールではなく、そのまた逆サイドから上がってきていた下鶴へのパスか!

 

 守が踏ん張って耐え、下鶴のシュートをパンチングする。が、そのボールにも回転がかけられており、拳に触れた瞬間9番の方向へと曲がっていく。

 そのまま9番がヘディングでボールを押し込んで──

 

 

『ゴール!!決まってしまった!!御影専農、これで1点先取だ!』

 

 

 守の健闘むなしく、無情にも失点を告げるホイッスルがなる。

 ヤツら、あんな所まで計算して狙っていたというのか・・・?

 

 

「クッソォォ・・・!!」

 

 

 守が地面に拳を叩き付けて悔しがる。

 だがまだ1点だ、大丈夫だ。まだ俺達FW陣が攻め立てれば取り返せる。

 まだまだ前半だ。

 

 

 が、その想いは虚しくも打ち砕かれることとなる。

 

 ホイッスルでこちらのキックオフから試合再開。すぐさま染岡から9番がボールを奪い取り、下鶴へ。下鶴は───ゴールの杉森まで。

 

 

「バックパスだと・・・!?」

 

 

 まさか、コイツらの狙いは・・・!

 不味い、それだけは何としてでも阻止しなければならない。

 

 

「皆!何としてでもボールを奪うんだ!!・・・ヤツら、このままキープしてやり過ごすつもりだ!!」

「何!?」

 

 

 ずっとキーパーがボールを持っている訳にも行かず、杉森は1番近いDFへパスを回す。

 そのパスコースを読んでいた俺は、そいつが次にパスを出しそうな選手のマークに着く。

 が、俺の予想と反して別の選手へとボールは渡る。皆が必死にそのボールを奪おうとするが、御影専農はボールをひたすらに回し、しまいにはボールを持っている選手を囲むようにして立ち、こちらの動きを阻害する。

 

 完全に逃げ切るつもりだ。

 

 

「お前ら・・・こんなサッカーで良いのかよ!?」

 

 

 半ば無駄だと分かっていても、そう呼び掛けずにはいられなかった。

 御影専農の選手達は、一切表情を変えることはない。無論、プレイスタイルも。

 無理やりあの陣形を崩しに行こうものならば、ファウルを取られ最悪の流れを自分で作ることになるかもしれない。

 

 何か、何か手はないのか───

 

 

『ここでホイッスル!!御影専農、1点リードのまま前半終了だァァ!!』

 

 

 そんなことはお構い無しに、ホイッスルは鳴る。

 

 

 

 


 

 

 

 

「あいつら・・・あんな汚いサッカーしやがって!!」

 

 

 ハーフタイム、控え室にて染岡が声を荒らげる。無理もない、あんなプレイされたら誰だって不快感を覚えるだろう。

 

 

「俺、アイツらのところに行ってくる。」

 

 

 守がそう言って控え室を出る。それに便乗して皆が御影専農の元へと向かう。

 万が一の時、止める役割がいないと試合の外で敗けるなんてことになる。それだけは防ぐために俺も後を追う。

 

 

「何で攻撃しないんだ!あれじゃ、サッカーにならないだろ!?」

 

 

 守が杉森及び御影専農イレブンを見付け、どこか悲痛さを孕んだ声で杉森に訴える。

 それに対し杉森、「監督命令だ。」と答える。

 

 

「10点差でも1点差でも同じことだ。リスクを侵さずタイムアップを待つ。」

「・・・何もかも計算通りに行くと思っているのかよ!」

 

 

 俺達のデータは全て把握している。故に杉森からはゴールは奪えない。俺達は既に負けている。そう淡々と語る杉森。

 もう、黙って聞いてなんていられない。

 

 

「本当にそうかな。俺達は、まだお前達に明かしていない手の内があるぞ。」

「・・・何?そんなはずはない。それなら何故先程の前半でそれを出して来なかった?」

「ふん、計算でしか物事を捉えられないお前達には理解出来ないさ。」

 

 

 そう吐き捨てる。

 

 

「見てろ、俺達がお前らに本当のサッカーを見せてやる。」

「本当の、サッカー・・・」

 

 

 杉森が何か呟いたが、お構い無しに控え室へ皆を連れて戻る。

 部屋に入った瞬間、皆が俺を囲んで訊ねてくる。

 

 

「加賀美、明かしてない手の内って何だよ?新必殺技もないし、そんなもの特訓した覚えがないぞ?」

「そうでやんス。俺達がやったのはあの地獄の特訓だけでやんスよ!」

 

 

 次々と声を上げる。

 ・・・皆、まるで気付いていないな。

 

 

「栗松、今なんて言った?」

「え・・・地獄の特訓って・・・」

「そうだよ、俺達はあの特訓を乗り越えたんだ。その結果、得られたものは何だ?もう一度振り返ってみろよ、前半の自分達を!」

 

 

 そう返してやると、皆黙り込む。

 キリがないし時間もないので口早に問い掛ける。

 

 

「風丸、前までのお前はあんなに離れた相手に追い付けたか?」

「・・・いや、無理だな。」

「そうだろう?じゃあ豪炎寺、お前の、俺のシュートは前杉森と対決した時と同じだったか?」

「・・・違う。前は簡単に取られた。だが今回は、かなり惜しいところまでいった。」

 

 

 徐々に皆の表情から疑問の色が消える。分かってきたようだな。

 

 

「その通りだ・・・分かるか?俺達はあの特訓を乗り越え、飛躍的に身体能力が、基礎能力が上昇したんだよ!このまま冷静さを欠くようなら、それを活かし切れずに終わるぞ!」

「基礎能力の、向上・・・」

「ああそうだ。皆、切り替えようぜ?得たものを存分に活かして、相手の予測を上回れば絶対に勝てる。それに・・・秘策もあるしな。」

 

 

 思いついてしまった。手っ取り早く、相手の予想斜め上を行き、ペースを崩す良い策をな。

 

 

 

 


 

 

 

 

『あーっと!後半早々、御影専農は全員下がってのディフェンス!これでは雷門中守りを崩せない!!』

 

 

 やはりと言うべきか、御影専農はボールを下げ、前半の最後同様守りに徹するつもりだ。

 が、何やら司令塔である杉森の表情には曇りが見える。何故かは知らないが・・・こちらにとっては好都合だ!!

 

 

「上がれ!!・・・・・・守!!」

「おう!!」

 

 

 ヤツらの予測を超える俺の秘策。

 それは守を前線に押し出すこと。

 守は普段からGKだからな、フィールドプレイヤーとしてのデータはお前らも取ってないだろう。

 まして、攻めてこないのなら別にキーパーが攻撃に参加しても問題は無い!

 

 

『何とキーパー円堂が上がっていくぞ!?これはどういうことだ!?』

「何だと!?」

 

 

 守がボールを奪い取る。

 予想通りだ。ヤツらはデータにない事例、いわばイレギュラーへの対応力は目に見えて落ちる!

 誰も守を止められないまま、唖然としている。守はお構い無しに上がっていきゴール前。

 

 

「行くぞ!!うおおおおおお!!」

「君のシュートは・・・データにない!!」

 

 

 悲鳴に近い叫び声を上げながら杉森は守のシュートをキャッチする。

 守は心の底から悔しがる。

 

 

「なぜお前が攻撃に参加する。」

「点を取るために決まってるだろ!それがサッカーだ!」

 

 

 守が堂々と告げる。

 僅かに杉森の表情が揺らいだのを俺は見逃さなかった。・・・よし。

 

 

「守!十分だ!」

「おう!久々のシュート、楽しかったぜ!」

 

 

 と言って満足気にゴールへ戻っていく。

 さあ、キッカケは与えた。

 監督の駒としてサッカーをするか、自分達の意思でサッカーをするか・・・それを決めるのはお前らだ、杉森。

 

 

「オフェンスフォーメーション、シルバー1だ!」

「ま、待て!命令違反だぞ!」

 

 

 杉森は「オフェンス」を指示した。ベンチの監督は「命令違反」と声を荒らげた。

 それがお前の答えだな、杉森!

 

 

「おい加賀美・・・何笑ってんだよ?」

「悪い悪い・・・嬉しくってな。」

 

 

 隣にいた染岡にそう指摘される。

 知らない間に口元が緩んでしまっていたようだ。

 だって、こんなの喜ばずにはいられないだろう?自分の手で、本当のサッカーの何たるかを教えることが出来たんだ。

 

 

「変な奴だな・・・相手が攻めてくる、俺達も点を取るぞ!」

「おうよ!」

 

 

 杉森が蹴ったボールを追いかける。

 ここからは、楽しいサッカーの時間だな。

 

 ボールを持った相手の前には壁山。すると、突然壁山は倒れ込む。倒れ際に頭でボールをマックスにパスしてみせる。

 

 

「松野さん!」

「へえ、やるじゃん壁山!」

 

 

 すぐさまボールを奪いに来るが、マックスは華麗なターンで躱してみせる。

 良い、しっかりと活かしているな。

 

 豪炎寺にパスを回そうとした瞬間、下鶴のスライディングでボールを零してしまう。

 こちらのディフェンス網を掻い潜り、下鶴はゴール目前まで迫る。

 待機していた風丸と土門がボールを奪いにかかるが──

 

 

「パトリオットシュート!!」

 

 

 突如下鶴は高くボールを蹴りあげる。ファイアトルネードか、と警戒したが下鶴自身は跳躍する素振りを見せない。

 その時だった。ボールは突如煙を吐きながら急降下。その様子はさながらパトリオットミサイルの様。

 

 

「熱血パンチ!!」

 

 

 拳でボールを弾く守。弾かれたボールはラインの外へ。

 相手のコーナーキックだ。

 

 蹴られたボールは再び下鶴へ。空高く蹴り上げ、再びパトリオットシュートを放つ。

 

 

「豪炎寺!!このままシュートだ!!」

「何!?」

 

 

 突然の提案に豪炎寺も戸惑う。だがもうシュートは目前までせまっている。

 半ば強制的に豪炎寺は守と共にボールを迎え撃つ。

 

 

「「うおおおおおお!!」」

 

 

 2人のキックがボールに触れた瞬間、雷が辺りに迸る。

 あれは・・・新必殺技!?

 

 2人のカウンターキックで打ち出されたボールは、そのまま真っ直ぐ相手ゴールへと稲妻と共に進んでいく。

 

 

「有り得ない・・・有り得るかァァァァ!!!」

 

 

 これも予測していなかったのだろう。杉森が雄叫びと共に腕を前へ突き出す。

 稲妻は守護神の守りを突き破り、 ゴールネットを揺らす。

 

 

『遂に、雷門中のゴォォォル!!!』

 

 

 あいつら・・・この土壇場でやりやがった!

 1-1、スコアはこれでイーブンだ!

 

 

「やったぜ!守備と攻撃が同時なら、ヤツらも対応出来ないんだ!」

「ああ!あんな技が決められるなんてな。」

「ほんとだ。何か身体が軽いとは思ったんだけど。」

 

 

 それも特訓の成果だろうな。

 守のキック力が豪炎寺にグッと近づき、あの連携シュートを可能にしたんだ。

 命名は・・・目金に任せるか。

 

 

「まだ同点だ!もう一点取ってくぞ!!」

 

 

 相手のキックオフ。染岡がすぐさまボールを奪ってみせる。

 そのまま一緒に上がっていき、俺はサイドに逸れる。

 

 

「加賀美!!」

「おう!」

 

 

 俺の前にDF陣が群がってくる。が、無駄だ!

 ボールを前に蹴ると、それにDF達は飛びかかる。

 その瞬間、ボールの内側からエネルギーが溢れ出し、雷と共に辺りを支配する。

 それにDF達は吹き飛ばされ、ボールの近くには俺一人。それと向かい合う杉森。

 

 

「噛み締めろよ杉森、これが今の俺の全力だ・・・ライトニング、ブラスタァァァァ!!!」

 

 

 両脚で力一杯ボールを送り出す。野生中の時より遥かに強い轟雷を従えてボールは杉森へと襲い掛かる。

 これこそが、お前が知る俺を超えた、俺の全身全霊の必殺シュートだ!!

 

 

「ロケットこぶし!!ぐ、オオオオオオオオ!!!??」

 

 

 獣のような咆哮を発しているのは、目の前の男だと誰が想像出来ただろう。

 先程までは機械そのものと形容すらできた杉森が、人間らしさを剥き出しにボールに拳のエネルギーを叩き付ける。

 が、ボールに触れた瞬間、雷に呑まれその拳は霧散する。

 まだだ、諦めるわけにはいかないといった表情で杉森は両腕でボールに触れる。

 踏ん張った脚が地面を抉りながら杉森の身体は後退していく。

 

 やがて、杉森の限界を上回ったシュートは杉森諸共ゴールへ突き刺さる。

 

 

『ゴォォォル!!!雷門中2点目!加賀美の全力シュートで逆転だァァァ!!』

 

 

「よっしゃァァァ!!」

 

 

 本日初の得点、喜びに打ち震える。

 空高く拳を突き上げ、天を仰ぐ。

 全力と全力のぶつかり合い。嗚呼、これ程楽しい瞬間があるだろうか。

 

 

「さあ皆!!残りも油断せずにガンガン行くぞ!」

「おぉ!!」

 

 

 後ろからの守の声を受けて、全員が今一度気を引き締め直す。闘志に充ちた雷門側とは対象に、御影専農側は何やら絶望しきった表情。

 力無いキックオフ。すぐさま染岡がボールを奪い全速前進。

 御影専農は誰一人として動かない。

 否、一人。今だその瞳に闘志を宿し続けている者がいた。

 

 

「来いッッ!!」

「うおおおお!!ドラゴォォン・・・クラッァァシュ!!!」

 

 

 染岡全身全霊のドラゴンクラッシュ。試合序盤で繰り出したそれよりも明らかに強力だ。

 

 

「シュートポケットオォォォォォ!!!」

 

 

 再び守護神は吠える。

 展開したバリアが打ち砕かれようと、決して諦めずに腕を突き出す。

 暴れる蒼い龍を抑え込み、守護神はボールをその手に収める。

 

 

「キャプテン・・・!」

「皆!俺は負けたくない・・・皆も同じなんじゃないか!?最後まで・・・戦うんだ!!」

 

 

 杉森が頭に着けていた電極を剥がす。

 恐らく、あれでデータの管理、情報の共有を行っていたのだろう。

 それを見て、フィールドプレイヤー達も全員電極を剥がす。

 その眼には、俺達と同じ闘志が満ちていた。

 

 

「最後の1秒まで・・・諦めるなァァァ!!」

 

 

 杉森の豪快なスロー。ボールは高く、遠くへ飛んでいく。

 それを追いかけていく御影専農イレブン。

 彼らは今この瞬間、自分達の意志に従ってボールを追っていた。

 

 

「「面白くなって来た!!」」

 

 

 不意に、後ろにいる守と声が重なった気がした。遠すぎて実際のことは分からないが。

 そこから全身全霊全力のぶつかり合い。

 攻めて守って、また攻めて。

 先程までとは別のような空間へと変貌を遂げる。

 観客達の声も、次第に熱が籠っていった。

 

 

「行け!豪炎寺!!」

 

 

 誰かが豪炎寺へ高いパスをだす。

 誰が出したのかは分からない。味方と敵が入り乱れてごちゃごちゃになっているから。

 それでも豪炎寺は飛ぶ。仲間の想いを確かに繋ぐため。

 

 

「ファイアトルネード!!」

「うおおお!!ファイアトルネード!!」

 

 

 全く同じタイミングだった。

 下鶴が同時にファイアトルネードをボールに叩き込む。

 行き場を失った力は、近くにいた豪炎寺と下鶴へ襲い掛かる。

 体勢を崩した2人はそのまま転落、身体を痛めたのか顔を歪めている。

 

 

(あらた)ァァァァァァ!!」

 

 

 杉森が下鶴の名前を呼ぶ。

 それに答えるように、下鶴は頭でボールを杉森に。

 

 

「───オォォォォォォォォォ!!!」

 

 

 杉森は咆哮と共に駆け出す。

 守護神が、護るべき場所から飛び出した。

 そう来たか・・・!

 

 

 杉森はどんどん上がっていく。キーパーにも関わらず、雷門のディフェンスを潜り抜けて。

 

 

「行くぞ!!円堂ォォォォォォォォ!!」

 

 

 放たれたシュート。

 空気を斬り裂きながらゴールへと迫る。

 

 

「ゴッドハンドォォォ!!!」

 

 

 杉森の全力に、守も全力を持って答える。

 この試合で初めて顕現した神の手。

 好敵手の全力を、真正面から受け止める。

 

 砂煙が晴れた時、そこにあったのはボールを受け止めた守の姿だった。

 

 

『試合終了ォォォ!!準決勝進出を果たしたのは、雷門中だァァァァ!!』

 

「よっしゃァァァァァァァァ!!」

 

 

 全員が歓喜に叫ぶ。

 準決勝進出、全国大会へまた近付いたんだ。

 辺りには拍手喝采が飛び交う。

 

 

 

 

「杉森!」

 

 

 守が自陣へ戻った杉森を追いかけ、声を掛ける。

 

 

「またサッカーしような、サッカー!」

「・・・ああ、また!」

 

 

 2人のは握手を交わす。そこでまた拍手喝采の勢いは強くなる。

 紛うことなきサッカー選手が、そこにはいた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「・・・はい、はい。必ずそれは何としても──んなっ!?」

 

 

 人知れず、誰かと電話でやり取りを交わしている者がいた。

 雷門中サッカー部顧問、冬海である。

 そしてそのやり取りを遮った男・・・刑事、鬼瓦。

 携帯の画面には「影山」の文字が。

 

 

「何をするんです!?誰ですか、貴方は!?」

「俺は・・・サッカーを汚したお前達を許さない・・・!」

 

 

 鬼瓦の脳裏に浮かぶのは、先程の試合。

 それだけでは無い。今まで見てきた数々の雷門中の試合。

 

 何を恐れたのか、冬海はその場を足早に去る。

 

 その場に佇む鬼瓦の眼は、深い闇を見据えていた。




後半に少しシリアス要素を入れましたが・・・まあ大半の人は知っている展開ですよね。
基本こういった場面は三人称視点で書いていければな、と思います。
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