白海染まれ   作:ねをんゆう

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103. competing

 

【ーーーーーーーー】

 

モンスターを産む亀裂音でも、異常事態の前触れの地震の様な物でもなく、それは正しく悲鳴と呼べる様な無機質な高音域。

その場に居合わせた者達全ての脳裏に警告の様に刻み付けられるダンジョンの痛哭。

遭遇した事のない事態にリヴェリアは困惑し、アイズも何かを察知したのか振り下ろそうとした風を自身の風へと移行させ、凄まじい勢いでアリーゼ達の元へと帰っていく。

ユキやアルフィアもまた突然の出来事に驚愕し動きを止めている中で、そんな彼等を見下ろしていたエレボスだけがたった一言呟いた。

驚く様に、そして呆れる様に。

他でもないユキの方をジッと見つめながら。

 

「……なるほど、そうなるのか」

 

ーーピシリ、と。

熱線によって刻み込まれた大きな傷跡の奥深くに走る広く長く深い亀裂。縦に走ったその亀裂から流れ出る気味の悪い紫色の泥液、その奥深くで強大な影がまるで自ら卵膜から這い出る様に大きく蠢く。

それを見ていたアリーゼの眼が液体の奥で光った深紅の眼光を捉えたその瞬間。

 

『剣光爆破/ソード・エクスプロージョン……!!」

 

アリーゼの立つ僅か手前で、突然凄まじい速度で飛来した輝く剣が何かに当たり、心臓を揺るがす程の強大な爆発を引き起こした。

 

「な、に……?」

 

爆風により後方へと吹き飛ばされたアリーゼが身体を起こしながら爆炎の中で動く巨大な影と紫紺の爪を視認する。この場に居る殆どの者が近く出来ず、上級冒険者のリヴェリアでさえも視認するのがやっとという程の尋常ならざる破爪の一撃。

ユキが割り込む様に放った爆発が無ければ、それは間違いなくアリーゼを両断していた。

 

ユキがアルフィアから完全に視線を離し、あのリヴェリアでさえも理解していない様な目の前の存在。視界が晴れるにつれて姿を現していく装甲を纏った竜の化石の様な恐ろしい姿。

18階層に突如として生まれ落ちた2つ目の災厄。

アリーゼは直感する。

ユキもまた思い至る。

そして事前に話を聞いていたリヴェリアも理解する。

本来ならばこの時点で生まれ落ちる事など決してあり得ない筈の、その災厄の正体に。

 

「「「ジャガーノート……!!」」」

 

ユキの居た世界の6年前、アストレア・ファミリアを壊滅させたその規格外の化け物が、今この瞬間にこの階層に顕現した。

 

 

「っ、救いの祈りを/ホーリー……!」

 

ユキが残りの18本全ての剣に魔法を通し、アリーゼ達とジャガーノートの間に割り込む様に滑り込ませる。

元の時代のリュー曰く、本当の意味での必殺の刃と言うようなその爪を、決して野放しにする事は出来はしない。

 

再びアリーゼを襲おうとする破爪に向けて浮遊する剣は、寿命を削りながらも盾となり、その直後に凄まじい爆発を引き起こして確実にその爪を退けようと動く様に仕向けるユキ。

そもそも、今この時点でジャガーノートのその速度に眼と腕が追い付けているのはユキしか居なかった。

アリーゼ達ではジャガーノートの一撃を視認出来ない、高速戦闘を主にするリューでさえも辛うじてというレベルだ。

1本、2本、3本とユキの剣が消費されていく。

だがこれではジリ貧であるのは誤魔化し様のない事実。

少なくともジャガーノートを相手に戦えるのはユキ以外にこの場には存在しない、それはリヴェリアも含めても。

 

「……福音/ゴスペル」

 

「っ!しまっ……うぁっ!?」

 

「ユキ!!」

 

そして、そうして遠距離からアリーゼ達を守っていたユキが、一度思考を巡らし気を取り戻したアルフィアの魔法によって吹き飛ばされる。

不意打ち故に、不意打ちだからか、魔法の威力は弱めていたものの、それは何よりアルフィアのこの場におけるスタンスを強く表している。

それ即ち、仮に尋常ならざる異常事態が起きたとしても、自身は都市の破壊としての役割を優先するという彼女の意志。

 

「アルフィア、さん……!」

 

「ダンジョンの防衛機能が2つ同時に発動する?ああ、確かに異常事態だ。我々が活動していた頃、それ以上に遡ったとしても前例のない極めて稀な事例だろう。……だが、それがどうした。それは決して私から目を離してもいい理由になどなり得はしない」

 

「……っ、剣光爆破/ソード・エクスプロージョン!」

 

「福音/ゴスペル!」

「母の心音/ゴスペル……!」

 

「「!」」

 

たとえジャガーノートが現れた所で、アルフィアの考える事とやる事は変わらない。

それすら乗り越えられないのならば滅べばいい、ただそれだけだ。

だがユキは違う。

ユキはそれの恐ろしさを元の時代のリューから教えられている。

そして遠隔操作ながらも剣を打ち付けたその瞬間から、その凄まじさを確かに実感した。

 

今のアストレア・ファミリアでは18階層という比較的浅い層で生まれた存在とは言え、ジャガーノートには敵わない。

あれを野放しにしておけば全滅する。

今はアリーゼが魔法反射などの敵の特徴を事細かに団員達に説明しながらユキの剣に動きを阻まれるジャガーノート相手に何とか突破口を見つけ出そうとしているが、今のステータスではそれすらも難しそうに見えた。

 

攻めてくるアルフィアの攻撃を防ぎながら、同時に剣を消費してジャガーノートを遠ざけるユキ。

しかしそんな物は長くは続かない。

先程まで優勢に保っていたアルフィアとの戦闘は見事に劣勢に追い込まれており、限りのある剣の本数も凄まじい速さで減っていく。

 

「リヴェリア!!」

 

「〜〜〜っ!すまないアイズ、行ってくれ!」

 

「大丈夫、任せて……!!」

 

ジャガーノートが爆発に晒される反対側では黒竜も活動を再開しており、どうしようもない現状を理解したアイズが再び黒色の風を纏い、たった一人で抑え込みに走る。

リヴェリアはそれを許すしかない。

それしか今は方法がない。

だがこのままではアイズもいずれ力尽きる。

ユキが倒されるのも時間の問題だ。

それこそアストレア・ファミリアに死者が出る事も。

 

「…………やはり、何をどうしてもこれ以外に方法がない。これを乗り切るには、ユキの決意を踏み躙る以外に方法がない」

 

リヴェリアは意思を固める。

もう時間がない。

今ここで動くしかない。

きっと1人でも犠牲が出ればそれで終わりだ。

その瞬間にユキは崩れ、全ての戦線が崩壊する。

たとえ非情であったとしても、それが約束を破る事になったとしても、これ以外の手段が今は全く存在しない。

 

「アストレア・ファミリア!ユキの代わりにアルフィアを討て!!」

 

「っ!」

 

「リヴェリア様!?しかしそれは……!」

 

「このままでは全滅する!アルフィアの言う通り、私達には力が無かった!だからこそ、この選択肢を取るしかない!分かるだろう!」

 

迷う暇などない。

リヴェリアは率先してユキの元へと走り始める。

皆がユキの願いを知っている。

その想いの強さを知っている。

けれどこの場に居たとしても自分達には何も出来ないということもまた、何よりも苦しく思っていた。

力が足りていない。

足を引っ張っている。

リヴェリアの言う通り、ジャガーノートをユキに、そしてアルフィアの相手を自分達がするのが何よりも現状の最善手だ。

だからこそ悔しく思う。

力がないあまりにユキの願いを踏み躙る事になってしまう自分達を。

 

「リヴェリアさん……」

 

「………すまない、ユキ」

 

「いえ……最初から私のただの我儘だったんですから、気にしないで下さい。むしろここまで付き合って貰った事に感謝したいくらいです」

 

「……本当にすまない、お前の願いを叶えてやれず」

 

「謝らないで下さい。理解は、していますから」

 

アルフィアと最後の鍔迫り合いの末に弾け飛んで来たユキに対して、走り追いついたリヴェリアは何よりも先に酷く申し訳なさそうに小さく頭を下げる。

それはリヴェリアの後を追って走って来たアストレア・ファミリアの面々もまた同様だ。

彼等の誰1人でさえも、そこに笑顔は浮かべられない。

そんな様子をアルフィアは無表情で見つめ、ユキは少しの微笑みを以て迎えた。

本当はその事実をとても悲しく思っているにも関わらず、決してそれを表に出さない様にと自分を律しながら。

 

「黒竜とジャガーノートは私に任せて下さい。アイズさんも守って見せます。だから……」

 

「……分かっている。お前の代わりに必ず私達がアルフィアを倒し、必ずまたお前の元へと連れて行く。今度こそ、それを約束する」

 

「はい、お願いします」

 

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

最後に一瞬だけアルフィアと目を合わせたユキは、その迷いを断ち切る様に瞳を閉じて、こちらに狙いを向けて這って来ようとしたジャガーノート目掛けて走り始めた。

残り13本となった安剣と、2本の本命の剣を自身に追随させ、アルフィアとの戦闘でボロボロになった大剣を構えて正面から斬り込む。

 

そんなユキに対して一度も声をかけられなかったのはアストレア・ファミリアの者達だ。

あのアリーゼでさえも、何も気の利いた事を言えなかった。

そして何より腸が煮え繰り返っていたのは……

 

「……どこまで私を失望させれば気が済む、オラリオの冒険者共」

 

「アルフィア……」

 

「愛想が尽きるとはこの事か。エルフ、貴様は何年冒険者をやっている。あの様な若輩に頭を下げ、頼り切り、貴様自身に失望はしないのか」

 

明らかに、彼女は怒っていた。

それは結局ユキを頼らざるを得ないオラリオの冒険者達の弱さになのか、それとも自分達の戦いに水を差された事へなのか、もしくは顔見知りの後輩のその哀れな姿を見てなのか。

明らかに先程までユキと戦っていた時よりも怒りの感情を帯びた圧力を醸し出しており、何より握り締めた大剣の柄の部分がそのあまりの握力に悲鳴を上げていた。

よく見なくとも分かる。

彼女が今抱いている激情を。

 

「……自分の情けなさと愚かさなど、今日まで何度も思い知っている。失望など当然の様にしている。私があの子の為に出来た事など、遂には何一つ無かったと言ってもいい」

 

「っ、お前は……お前は今日まであの子に何もしていなかったと言うのか!あの場であの子の命を助けた、他ならぬお前が!!」

 

「ああ、そうだ。私はあの子よりアイズを優先して動き、あの子もそれを理解してくれた。私はあの子の優しさに甘え、アストレア・ファミリアに任せ切りにしていた」

 

「貴様……!」

 

「お前がそれを責められる立場か、アルフィア。あの子を最初に放り出したのはお前で、あの子を殺せなかったのもまたお前だろう」

 

「っ」

 

リヴェリアは冷徹にそんな言葉を浴びせ掛ける。

今この場だけを見てしまえば、悪者はリヴェリアの方に見えてしまう事だろう。

けれど今この時、リヴェリアはどうしてもアルフィアに伝えておかなければならない事があった。

たとえここで冷水をかけて、彼女を無理矢理に冷静にさせてでも。

 

「……お前は、ユキが何処から来たのか知っているのか?」

 

「ユキが何処から来たか、だと……?」

 

「ああ、そうだ。……例えば、あの子が今から7年後の未来から飛ばされて来た子供だと言う事をだ」

 

「「「「!?」」」」

 

リヴェリアのその言葉に、アルフィアだけでなくアストレア・ファミリアの団員達もまた驚愕する。

驚いていないのはライラとアリーゼくらい、リューもまたその事については知らなかった様で驚きの表情のままリヴェリアを見る。

 

「7年後の、未来……」

 

「ああ、そうだ。どんな経緯があってこちらへ来たのかは分からないが、その事実は私もロキも女神アストレアも確認している。……そしてそれがLv.5という力を持ちながらユキの存在が知られていなかった理由でもある」

 

「…………なるほど。巫山戯た話にも聞こえるが、それならばいくつか納得出来る事もある。つまりオラリオの外にはまだ10歳のユキも居るという事か」

 

「恐らくな。この戦いを終わらせた暁には、私は彼女を迎えに行くつもりだ」

 

「……………幼いユキ、か」

 

妙な魔力を持っているその言葉。

2人の話を聞いていただけのアストレア・ファミリアも何人かがイメージして妙な顔をしている。

しかしアルフィアは一瞬そちらに思考を向けただけで直ぐに顔を上げて変わらず剣を向けて来るのだから、その決意は相当な物なのか。それとも単にこの世界のユキには興味がないとでも言うのか。

未来から来たという話にも、あまり動揺していないらしい。

 

「たとえそうだとしても、私はユキの母親になどなれない。ならばもう、そんな事はどうでもいい」

 

「……その言い方では、なれるのならなりたいと、そう言っている様にも聞こえるのだがな」

 

「……お前達もまた、もう関わるべきではないのだ、あの子に」

 

「っ」

 

大剣を振り上げ、切りかかって来るアルフィアの攻撃をリヴェリアに届く前にアストレア・ファミリアが食い止める。

たった一太刀でさえもユキならば一人で対処できていたにも関わらず、レベルが足りないというだけで3〜5人は必要になってしまう。

せめて輝夜が居てくれればマシになるのだろうが、彼女は今もまだ入り口付近で闇派閥の幹部であるヴィトーと言い争いをしながら切り合っている。

リューもアリーゼもスキルと魔法をフル活用して止めようと食い縛るが、アルフィアの勢いは止まらない。

 

「あれは、ユキは、もう2度と戦場に出すべきではない……!戦場に立つ冒険者が触れていい人間ではない!ましてやオラリオに連れて来るなど!」

 

「だがお前がオラリオを破壊すれば、いずれはモンスターの被害に晒され、ユキは戦う事になるだろう。そうなる事は容易く想像出来る筈だ」

 

「っ」

 

「恐怖と絶望から生まれる奪われた者の力……なるほど確かにそれは凄まじい物だろう。アイズを見てもよく分かる。だがお前はそれをユキにも強制するのか?世界の終末を乗り越える為ならば、お前は最愛の娘すらもこの世界に差し出せるのか?」

 

「………黙れ……黙れっ!!」

 

『福音/ゴスペル!!』

 

そんな事が出来ない事など分かっている。

昔のことは知らない。

かつて彼女が何を思っていたのかは分からない。

だが少なくともこの今、アルフィアの中でユキの存在はあまりにも大きくなってしまっている。それこそ世界という大きな価値に対して、危うく天秤で釣り合ってしまう程に強く。

 

荒れ狂う様に空間を貪る音の塊がリヴェリア達を襲う。

念の為にと持って来ていた対策の装備によって大分威力は軽減されているが、それでもかなりの負担となってその身に染みてくるのは間違いない。

リヴェリアの防護魔法を纏った上でこれだというのだから、彼女の魔法は相当な威力を持っているのだろう。……それこそ、そうまでなる程に彼女が動揺しているとも取れるが。

 

「諦めろアルフィア!お前はもう都市の破壊者になどなれやしない!一度でも母親になってしまえば、私達はもう引き返せないんだ!」

 

「五月蝿い!黙れ!!私は成さなければならない、もう引き返す事は出来ない!これ以上の高みを望めない私達は、こうする事でしか絶望を解き放てない!」

 

「ああ、そうだろう!お前達をそうしたのは私達だ!私達の弱さが今お前達を立ち塞がらせてしまった!……だが、もういい!もう十分だ!私達はお前を見た!そしてユキを見た!これ以上お前達2人が涙を流さなくとも、私達は自らの足で歩く事が出来る!」

 

「ならば証明して見せろ!口だけではなく、力で見せつけてみせろ!私達が必要無いという根拠を、お前達が強く在れるという証明を!ユキに頼り切りの無様なその姿を!少しは変えて見せろ!!」

 

「当然だ!」

 

黒竜の熱線を防ぎ、魔力も体力も尽きかけているボロボロのリヴェリアが、アルフィアより放たれる砲弾を走り避けながら詠唱を始める。

攻撃の魔法は通じない。

出来る事は陽動とアストレア・ファミリアの支援のみ。

けれどそれで十分だ。

アストレア・ファミリアもまた強い少女の集まりなのだから。

 

「燃え盛れ/アルガ!燃え盛れ/アルガ!燃え盛れ/アルガ!!全開炎力/アルヴァーナァァア!!」

 

「っ、私の一太刀を受け止めた程度で調子に乗るな!」

 

「分かってる!分かっているわ!でも貴女にこうして近付いて、一つだけ言っておきたい事があったもの!」

 

「黙れ!これ以上の口を動かすつもりなど私には……!!」

 

「娘さんを私に下さい!!」

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

「と、突然何を言っているのですかアリーゼ!?こ、こんな時に……!」

 

「待てぃアリーゼ!私もだ!私にも寄越せ!あの娘を!」

 

「輝夜!?今までどこに!?」

 

「貴様等……!何を言い出したかと思えば揃いも揃って!」

 

「あ、わ、私も!私にも!ユキを下さい!」

 

「貴様もか!この馬鹿娘共がぁあ!!」

 

アストレア・ファミリア内で近接戦闘の上位三本指に入る者達がアルフィアのたった一振りに薙ぎ払われる。

炎の付与魔法を全開にしながら突然訳の分からない事を言い始めたアリーゼ、そんな彼女に続く様にヴィトーを打ち倒し加勢に加わった上に同様の事を宣った輝夜、そんな2人に連れられて思わず内心に秘めていた言葉を口走ってしまったリュー。

ただでさえ混乱しているというのに、アルフィアの目はもう完全に開けられてしまった。余裕など何処にも無いという事が嫌でも知られてしまった。そんな事はその目を見なくとも容易く分かることではあるのだが。

 

「リオンは分かっていたが、お前もかアリーゼ!密かに狙っていたのだな!?」

 

「別に恋人じゃなくてもいいの!あんなに可愛い子、絶対側に置いておきたいじゃない!アストレア様と一緒に側に置いてウハウハしたいのだもの!!」

 

「は、破廉恥過ぎますアリーゼ!いくらなんでもその様な事が許される筈がない!」

 

「それはお前もだ馬鹿エルフ!話に誘うだけでオドオドと扉の前で迷い彷徨った挙句に逃げ帰る様な小便臭いヘタレ娘は黙っていろ!」

 

「げ、下品だ!あまりにも下品過ぎます!そ、それより貴女はどういうつもりなのですか輝夜!?貴女とユキはそう接点も無かった筈!」

 

「あれと婚約出来るのならば最早この時代のだろうと未来のだろうとどちらでもいい!だが母親が生き残るのならば好印象を与えておくのは当然の話だ!どちらでも良いがどちらかは必ず私が頂く!」

 

「全員不合格だこの雌餓鬼共がぁあ!!どちらのユキも貴様等などに渡すものかぁあ!!」

 

「「「がっ!?」」」

 

最早加減を忘れユキと打ち合っていた時並みの攻撃力で3人を吹き飛ばすアルフィア。

リューはともかく、アリーゼと輝夜があまりに酷過ぎた。

それはもう本当に、頭の中を駆け巡っていた様々な考えが一度に吹き飛ばされてしまった時くらいに。

こんなのはそれこそゼウスによってセクハラされた時以来では無いだろうか。今のアルフィアにとっては、3人のユキへの求婚というのはそれ程に心を揺さぶられる事であった。

 

「そもそも!リヴェリア様だけ卑怯だもの!ユキったら本当にリヴェリア様のことばっかり!気持ちは分かるけれど、もう少し美少女の私を見てくれてもいいじゃない!」

 

「なに……?おい小娘、どういう事だ。お前は何の話をしている」

 

「アリーゼ?それは一体どういう……」

 

「ま、待てアリーゼ・ローヴェル!その話を今語るのは確実にマズっ……!」

 

 

 

『いくら元の時代でリヴェリア様と恋人関係だったからって!男の子だって言うなら少しくらい私の身体に興味を示してくれてもいいじゃない!』

 

 

 

 

 

「………は?」

 

「え……?」

 

その瞬間、その場の空気が完全に凍りついた。

これだけ炎が盛んに色めいているにも関わらず。


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