「ええと、リヴェリアさん……?」
「うん、なんだユキ」
「あの、色々と言いたい事があるんですけど……」
「そうか、少し待て。今灯りを消す」
「いえその、それは別に構わないのですが……」
「さて…………やるか」
「い、いったい何をする気なんですか!?ほ、ほんとに!?」
いつものリヴェリアの寝室。
夜も静まり団員達も睡眠の準備をし始めた頃。
何故か全体に防護魔法が張られたこの暗い部屋のベッドの中央で、ユキは黒い布で目隠しをされて拘束されていた。
それはアストレアとの話を終え、夕食と入浴を済ませた頃の事だった。
眠りに就く前に会って話をしたいと思いリヴェリアの部屋を訪れたユキだったのだが、どうやらそれは獲物が捕食者の領域に調味料を身体に振りかけながら入って来たも同然の行動だったらしい。
『リヴェリアさ〜ぁあっ!?』
ドアノブを少し押した瞬間に隙間から現れた手に腕を掴まれ、トラップに引っかかった様に中に引き込まれたユキは、そのままの流れで目隠しをされ、両腕を拘束され、ベッドの上に押し倒された。
この間僅か3秒。
ユキは頭の中に大量のクエスチョンマークを浮かべながらも、確かに近くに感じるリヴェリアの存在に安心感を抱いていた。
……まさかそれがこれから行われる捕食の為の用意だとは夢にも思わず。
「ふむ、久しぶりだからか忘れているのか?」
「えっと、久しぶり……?」
「ああ、実際の日数としては最後にしたのはそこまで昔の話では無いのだが、私とお前は奇妙な体験をしたからな。時間の流れが狂っていても仕方がない」
「……確かに、私は少なくともあちらの世界に2〜3週間は居ましたからね。日数の感覚はかなり狂っていると思います」
「私に関しては朧げな記憶を掻き集めるだけでも、少なくとも半年以上は御無沙汰だ。それ故に溜まっている物もあり、お前を見る度に情動が起きる程だったのだが……どうやらお前はそうではなかった様だ、ユキ」
「え……?あの、あれ?リヴェリアさん、何か怒ってます?」
「いいや、怒っていないとも。ああ、これっぽっちも。全く、怒ってなどいない。鈍感なお前に怒っていることなど少しもない」
「え、いやでも……こ、声がいつもより低くて……」
ギジリ、とベッドが鳴る。
リヴェリアがベッドの上に乗り、ユキの上に跨ったのが気配で分かる。
リヴェリアはわざとベッドの音を大きく鳴らす様に体重をかけながら動き、ユキに覆い被さる様にして顔を近づけた。そしてこの瞬間になって、ユキはようやく気付いたらしい。これから自分がリヴェリアによって何をされるかという事に。
「あ、あの……私、明日はリューさんの所に報告に行かなくちゃで……」
「ほう……こんな状況で他のエルフの女の事を話すとは、お前はそんなにも私を嫉妬させたいのか?」
「い、いえ、そんなつもりは……ただ、その、あんまり遅くなってしまうと心配を掛けてしまうかなって……」
「……私より、あのエルフを優先するというのか、ユキ」
「ゆ、優先とかじゃなくてですね!や、約束事の順番といいますか……ひうっ!?」
「…………寝られると思うなよ………明後日まで」
「明後日まで!?やっ、やぁんっ……!」
拘束したユキの身体を服の隙間から手を入れ、静かに弄り始めるリヴェリア。
手を動かす度にピクピクと身体をくねらせ、女性顔負けの色っぽい媚声をあげるユキに、リヴェリアの興奮はどんどん高まっていく。以前はユキの腕が痛まない様にと本当に結んだだけの拘束だったが、今日は違う。絶対に取れない様に丈夫な布を使いベッドに完全に括り付けている。
……とは言え、今のユキはレベル6だ。
近接戦闘を主にする彼に、今のリヴェリアでは力で勝つ事はできない。もしかすればこんな拘束くらいなら解いてしまう事も出来るだろう。
故に、彼女はこうした。
「むぐっ!?……んっ、んっ……っはぁ!」
「ちゃんと飲めたな、偉いぞ」
「けほっ、けほっ……あ、あの、私は一体何を飲まされて……」
「媚薬だ」
「え」
「体温と感度を上げ、興奮を高め、しかし筋肉の動きを多少制限する特製の媚薬……市場に出回れば性犯罪に使われかねない代物だな」
「な、なんでそんな物を……」
「アミッドに作らせた」
「アミッドさんになんて物を作らせてるんですか!?」
「理由は聞かれなかったが、一本だけという条件で受け入れて貰った。問題ない、あれは口が堅いからな」
「だから私帰り際にあんな可哀想な目で見られてたんですか!?もう明日からアミッドさんに顔を合わせられませんよ!?」
「問題ない、顔を合わせられるのは明後日以降になるのだからな」
「そういう問題!?というか明後日まで逃げられないのが確定してる!?……っ!?」
それまでリヴェリアの珍しい言動にツッコミを入れていたユキだったが、その瞬間なにか身体に変化を感じたのか突然顔を赤くし始める。どうやら早速、対異常の効果が貫通され始めたらしい。流石はアミッドが作った薬品という事か。
次第に全身から抜けていく力。
その反面、全身が熱っぽくなり、部屋の気温はそう高くないにも関わらず汗をかき始めるユキ。息も当然荒くなる。
そんなユキの変化を見て、リヴェリアはニヤリと笑みを浮かべて彼の拘束を解き始めた。別に今日の目的は拘束プレイではない、これは単にこの薬を飲ませるまでの処置だ。
ここ最近の出来事で忘れてしまったユキの身体に、リヴェリアはもう一度刻み付けなければならないのだ。交わりの快楽というものを。
「……なるほど、性機能が回復したというのはどうやら本当らしい」
「あ、あの……これは……!」
「いや、何も言わなくてもいい。私とてまだそこに至る勇気は持てていないし、それは正式に契りを結んでからにしたいとも思っている。……つまり、私がこれからする事は、これまでと同じ、変わらない」
「え、や、でも……」
馬乗りになったその体勢で感じられる未知の感覚、ユキの機能が戻ったからこそ感じられるその新鮮な感覚。
とは言え、リヴェリアの乗っているその下で感じられるそれに、今は触れるつもりはない。困惑と驚愕と共になにか妙な興奮も感じてしまっているが、そこはユキが知らないうちにアストレアと約束を交わしているのだ。
『正式に婚約を結ぶまでは、決してそこまでの行為には及ばない」と。
なんだか立場が逆の様な気がしないでもないが、恋人の母親からそう釘を刺されてしまっては仕方がない。あったとしても無いと仮定して以前と同様に責め立てよう。むしろリヴェリアにとってはその方が好都合だ。そもそもまだ直接見る勇気はないし、こうして尻の下に敷いているだけならばユキがどれだけ感じているのかを測る物差しにもなり得るのだから。
……というか、見て分かる通り、今日のリヴェリアはもうぶっ飛んでいた。飛んでいたという面で言えば、ユキを取り戻したあの日からリヴェリアは常にぶっ壊れていた。
リヴェリアのユキへの愛情は、今や重いだなんて言葉では形容出来ない程のものだ。たとえ事情が分かっていようとも、この大切な時間に他のエルフの女の名前を出されては、イライラもムラムラもそれはもう凄いことになる。
「ああ、本当に愛らしい身体をしているなお前は……感じているのか?うん?」
「あっ、やっ……ま、待って下さい……!そ、そんなに全身、弄らなくてもっ……んうっ」
「お前の全てが欲しい……私はお前の全てを貪りたい。こうしてお前の全身に触れられているというだけで、私はどうしようもない幸福と満足感、そしてドロドロとしたドス黒い欲を感じて狂いそうになる」
「な、なんだか変態さんみたいですよぅ……」
「嫌ならば抵抗してもいいのだぞ?まあ今いくら抵抗したところで、それは私を昂らせる為の要因にしかなりはしないのだがな」
「やっ、も、もう……!私だっていつまでもされるがままになんて……!」
「なってくれないのか……?」
「うっ」
「…………」
「…………」
「…………」
「も、もう、仕方ないですね。あんまり痛くしたら、やーですよ?」
「ふふ」
あまりにチョロいこの女……ではなく男に一瞬興奮も冷めて心配になったリヴェリアだが、それはともかく許可を貰ったのならば好きにやらせて貰う。
「っ」
しかしそう思い再びユキの首元に口をあてがおうとしたリヴェリアの頭に、一瞬の閃光が走った。
痛くしたら嫌だと言うユキ……しかし、ユキとてそれを求めている所は多少はあるはず。それは今日までの交わりがそういう物であったし、なんだかんだと言ってユキの頬が紅潮しているのは、きっと媚薬の効果だけでなく少しの期待もあってのもの。
だが、だがだ……毎度毎度同じ様な事をしていて良いのだろうか?
久しぶりのユキとの夜、溜まりに溜まった欲望を全力でぶつけて滅茶苦茶のぐちゃぐちゃにしてやりたいという願望は確かにある。それでもこれではいずれマンネリと化してしまう可能性もあるし、少なくとも今の反応から自分もユキもこの状況に少しずつ慣れて来ている雰囲気があった。いくら激しくしても、反応が変わらないのならいずれは確実に物足りなくなる。以前の様な快楽を得る為には少しの時間を置くべきだろうし、また違う道を開拓する必要もあるだろう。
……そう、開拓だ。
ユキを快楽の底へ引き込む為の新たな道の開拓。
「リヴェリアさん……?あ、あの……」
そう言えば、以前の行為の際にユキは苦しい中で甘える様な仕草を見せてきた。そうでなくとも一度そういう雰囲気になればべったりと甘えてくるユキ……もし一度本当にドロドロになるまで甘やかしてやったら、この子は一体どうなってしまうのだろうか?
この少しの沈黙だけでも不安そうに、そして寂しそうに首を傾げるユキを見て、リヴェリアは一度生唾を飲む。
……ああ、本当に飽きない。
この子は何をしてもさせても本当に自分を飽きさせない。きっと自分のこんな情動を引き起こせるのは世界中探し回ってもユキだけだと思えてしまうくらいに。
「ユキ、動くなよ?」
「あの、何を……んむっ、んぅ……」
その綺麗な顔を両手で優しく包み込み、ゆっくりと唇を合わせて舌を入れていく。
他には何もしない、ただキスをするだけ。
激しくもなく、蹂躙する様な動きでもなく、時間をかけて、そして丁寧に、その口の中を堪能する。
「んっ……うっ……」
「えぁっ、やぁぅ……り、りうぇり、えぅ……」
唾液を混ぜる、飲む、流し込む。
歯の1本1本を舐めとるように、歯茎と歯の形を舌の感覚だけで把握する様に。そして舌の裏側や、口内の天井、頬の裏側、喉に近い部分……その何処を刺激すればこの子が感じてくれるのかを知る為に、リヴェリアは数多の方法を試していく。
5分、10分、20分…………水音と荒い息遣い、そして軋むベッドと小さな喘ぎ声だけが聞こえるその部屋で、リヴェリアは気付けば1時間あまりそうしてユキの口の中を味わっていた。
時間はある、体力もある。
とは言え、まさかキスをしているだけでこれ程の時間が消費出来るものかと、リヴェリアは口を拭いながら時計を見上げる。
一方でされるがままにされていたユキの方は、いくらレベル6の身体と言えど酸欠状態になっていたのか、唇を離された今でも唾液でぐちゃぐちゃになった口をそのままにグッタリと息を乱していた。目隠しをしているが、きっとその下も色々と大変な事になっているのだろう。
とは言え、見えないからこその背徳感という物もあり、リヴェリアは自身の臀部の下から感じている主張の強い感覚により身体をゾクゾクと震わせて舌舐めずりをする。
何度も言うが、リヴェリアは壊れている。
あの時あの瞬間、最愛の恋人が壊れた瞬間を見てしまったあの時から、リヴェリアの中の価値観が変わった。
エルフの誇り、王族としての理想、幹部に相応しい在方……そんな物を至極大切にしていても、いざと言う時に恋人を救えなかった。
自分の本当に大切な物、そして自分が本当に欲しい物が明確となった今、彼女は今更この衝動に抗おうとは思わない。
ユキを性的な目で見ている、それの何が悪い。
いずれはユキの子供を産みたい、隠すつもりもない。
そのうち絶対に目の前のこの恋人をブチ犯す、それはもう確定事項だ。
だから……
「ユキ」
「へぁ……?」
「お前をこれから、私の体で溶かすからな」
「?」
リヴェリアは今着ている寝巻きの下から肌着だけを綺麗に抜き取り、支えを失ったその柔らかな双房をユキの顔に押し付ける。
布一枚しか隔てていないこの感触、顔を赤くさせたユキがそれまた愛おしくて愛おしくて、リヴェリアはそのまま彼の頭を抱き、唇を耳元へと当てた。
自分の鼓動が伝わっているのが分かる。
自分の身体の形が理解されているのが分かる。
そして、自分の息遣いが全て聞かれてしまっているのが分かる。
「好きだ、ユキ」
「!」
「好きだ、好きだ、好きだ、大好きだ。愛している、愛している、愛している、愛している、愛している……」
「ぁ、うぁ……やっ、耳元、だめぇ……」
「んぅっ……すきだ、ユキ。ちゃんとやわらかいか、私の身体は。ちゃんとドキドキしているか、私の身体に」
「し、してます……してますからぁ……!だから耳元で、そんな、甘い声だしたら……!」
「ふふ、私もすこし高まってきたかもしれないな……どうだユキ、わかるか?」
「うぅ……」
分かっているに決まっている。
むしろ分かっていたに決まっている。
なって来たなどと、そんなの嘘だ。
最初からそうなっていた。
押し付けられた瞬間から気付いていたし、だからこそユキは戸惑っていた。どうすればいいのかと本当に慌てていた。
偶然にもリヴェリアと目が合う。
今まで見た事のないトロンとした彼女の瞳。
そしてそれは同時に捕食者の目。
きっとこれからユキは、ドロドロになるまで時間をかけて、じっくりと溶かされ飲まれるのだろう。何時間もかけて好きと言われ、何時間もかけて好きを自覚させられ、互いの身体の事をしっかりと理解できる様になるまで這い回るのだ。
「ユキ、私の指を舐めてくれ。……ゆっくりと、丁寧に、ちゃんと私が良いと言うまで綺麗にするんだ」
「は、はい……」
「その代わりに、私もお前を綺麗にしてやる。私の鼻息や唾を粘る音だけでピクピクと震える、この可愛らしい耳を」
「ん、んぅうっ……ぇあ……」
粘性の高い媚薬を垂らし、糸を引く様に目の前で広げられたその綺麗な指を、ユキは朦朧とした意識の中で一生懸命に口だけを使って綺麗にしていく。
弄ぶ様に息を吹きかけたり、舌を入れてみたり、甘噛みしてみたり、甘い声を出してみたりと耳で遊ばれる度に全身を震わしながらも、それでもリヴェリアの指を根元まで咥え込み、吸い取る様に頬を凹ませながらゆっくりと頭を使うユキの姿。
ああ、なんといやらしい姿か。
最早理性が殆ど飛んでしまっているユキは、一度指を引き離してやると悲しげな顔をしてこちらに視線を向けてくるし、近付けてやると口を開けながら自分から迎えに行こうとする。
すっかり綺麗にされてしまったリヴェリアの指からは確かに媚薬は消えているが、その代わりに別の物が糸を引き、テラテラと月の明かりに照らされて滴り落ちていく。
行為を始めて既に数時間、それでも興奮は治まらない。むしろ高まってくる。これなら1日くらいなら本当に行けるなと、リヴェリアは本気でそう思ってしまった。
「ちゃんと言われた通りに綺麗に出来たな。えらいぞ、ユキ」
「うゅ」
「良い子には褒美をやらないとな。ほら、力を抜け。口を開けて舌を出すんだ。……そうだ、もっと突き出せ。私に全部差し出せ」
「ぁ、はっ、えぁ……」
「ふふ、いいぞ。お前は本当に素直な子だな。素直で、純粋で、可愛くて、綺麗で……その全てを私色で滅茶苦茶に塗り潰してやりたくなるっ……!」
「んぁっ、ん、へぅ……!?んんぅぅぅ……!!」
馬乗りになり両手でユキの顔を固定しながら、その必死に突き出された舌ごと口の中を蹂躙していく。唾液が溢れる、小さな悲鳴の様なものが漏れ出す、必死に空気を求めて呼吸をする度に淫らな音が部屋に響き渡り、それによって捕食者の興奮はより高まっていく。
時間なら十分あるからと、互いの口内が白く泡立った液体でいっぱいになる程の長時間に渡るその行為は、リヴェリアが満足して口を離す頃には外の世界が白み始めており、光を嫌ったリヴェリアはカーテンを閉めて再び強引に暗闇を作り出す。
「………ぁ…………ぅ………」
「ああ……お前の汚れている姿はどうしてこうも魅惑的なのだろうな。こうして上から見下ろしていると、お前を自分の物に出来たと実感出来て身体がゾクゾクとしてしまう」
段々と部屋の外から一部の朝の早い団員達が起き始めた音が聞こえて来るが、そんな事は知った事ではない。リヴェリアは今度はユキをうつ伏せに寝かせ、その綺麗な顔を枕の上に乗せた。リヴェリア自身もユキの横に体を横たわらせ、半身だけをユキの身体の上に乗せる様に密着し、抱く。
自身の口が丁度ユキの耳に当たり、肩を手で抱き、足で腰を固定する。
今もまだ余韻でふるふると震えているユキは、しかしこうして添い寝の様な形になっている事で少しばかりリラックス出来ている様だ。
だからといって、これで終わりという訳もないのだが。
「この体勢はお前の耳が舐めやすくていいな」
「んっ、んぅぅ……」
「えぅ、っちゅ……んふふ、本当にこの体勢は良いな。私も楽で、足でしっかりしがみつけて、何より片方の腕が自由に使える。これで抱き締めてもいいし、頭を撫でても良いし……こうして、もう片方の空いている耳を虐めてやってもいい。んぁ……」
「んひぅっ!?」
リヴェリアの細くて冷たい小指が、舌を入れられて舐められている耳とは逆側の耳の中へと侵入して来る。
耳穴の深い所まで入り込み、ひんやりとした指の腹の部分を押し付けたり、撫で回したり、軽く爪で叩いたり……両耳から齎されるその感覚にユキは必死になって目を瞑って耐えるが、逆にそれが耳の感覚を強いものにしてしまい、息を荒げる。
「……ふふ、意地悪をするのもこれくらいにしておくか。そろそろ苦しくなって来ただろう?ほら、こちらに来い」
「ぁ……」
仮にも病み上がり、そして治療の為に一度はマインドダウン状態になっているユキの身体。本当ならばもう少しだけ遊びたくはあったものの、流石にリヴェリアも自重した。
リヴェリアとて、ああは言ったものの、ユキの今日の約束とやらを自分の勝手で潰す気は無かった。今から睡眠を取ったとしても、昼頃には目が覚める。勿論、寝過ごしたりしない限りは、であるが。
「今日はこのまま私の腕の中で眠るといい。私もお前を抱いたまま眠っていたい」
「………」
ユキを正面から抱き込み、自身の胸の中で安堵感から静かに寝息を立て始めた事を確認すると、リヴェリアもゆっくりと眼を瞑る。
まあ、最低限の欲は満たせた。
まだ足りなくはあるが、時間ならある。
残りの物は、また後日という事で。