白海染まれ   作:ねをんゆう

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36.火壺底での戦い

50階層から先へと進む者達が思い思いの夜を過ごしていれば、いつの間にかその時はやってくる。

51階層への突入。

それまでとは一線を画す地獄への入り口。

ここから先に気を抜ける場所など一切無い。

 

「レフィーヤ、呼吸が浅い。力を抜け」

 

「は、はいっ!」

 

「ラウル、お主ももっとどっしり構えんか」

 

「は、はいっす!」

 

「ユキは……いつも通りだね。そんなに緊張していないのかい?」

 

「へ?……う〜ん。だってほら、フィンさん達が居ますから。これが私1人での突入だったならともかく、頼りになって信頼できる人達が一緒なんですから、何も怖がることなんてありませんよ」

 

「……だそうだ。レフィーヤとラウルもこれくらい僕達のことを信用してくれても良いと思うんだけどね?」

 

「「ユキさんと一緒にしないでくださいよ(欲しいッス)!!」」

 

「え、2人ともなんでそんな酷いこと言うんですか……?」

 

2人の肩をほぐすためにもそんな会話をしていたが、冗談を言えるのはここまでだ。

51層へ繋がる階段……ここから先では無駄口をしている余裕など誰にも無くなる。

 

「……さて。総員、戦闘準備」

 

奥底から吹く風の音だけが響くこの空間で、フィンが発したその言葉が妙に耳に残る。

階段の底から徐々に近付いてくる威圧感。

その正体が見えた時こそが……

 

「行け!ベート、ティオナ!」

 

開戦の合図だ。

 

「予定通り正規のルートで行く!新種の接近には警戒を払え!」

 

走る、走る、全速力で突破する。

先を走るベートとティオナが強引に道を切り開き、それにティオネとアイズが道を広げていく。

横からサポーターや魔道士を攻撃する輩を椿とユキが叩き落とし、殿をガレスが務める。

 

凄まじい速度での攻防だ。

だからこそ、初見であるにも関わらずこれだけのスピードで動く環境の中でも顔色一つ変えずに自分の役割をこなせているユキの姿に、レフィーヤは驚きを隠せない。

一体どのような人生を歩めば、ダンジョンに入り始めて数ヶ月程度の人間がここまで冷静に立ち回れるのか。

そんな風にユキを見つめていれば、彼はその視線に気付いて笑顔でピースしてくるのだから反応に困る。

いや別にそういったことを求めていたわけでは無い。

 

「……来た、新種だ!隊列変更、ティオナ下がれ!ユキ!ベート!アイズ!」

 

「寄越せアイズ!」

 

「目覚めよ『テンペスト』!」

 

「ラウルさん、剣を!救いの祈りを『ホーリー』!」

 

ユキはラウルから消耗品の剣を受け取り、それを狭い空間でこちらへ迫ってくる大量の緑色のモンスターに向けて投げ付ける。

そしてその直後、アイズとベートが揃って飛び出し、2人は強大な風を纏いながらその剣ごと集団を貫いた。

 

『……我が名はアールヴ!』

 

「全員退避!」

 

『ウィン・フィンブルヴェトル!』

 

そして全てを氷へと変えるリヴェリアの魔法が、まるで時を止めたかのように新種達を氷像へと変えていく。

先手必勝、初手ブッ放し。

そこまでやって、ようやくこの階層の終わりが見えてきた。

 

逆に言うのであれば、ここまで全力で走ってきて、ようやく一段下りることができた。

その重過ぎる事実が経験の浅い団員達の胸にのしかかってくる。

 

「52階層、ここからが本番だ。ここから先は補給は一切出来ないと考えてくれ」

 

「そんな……」

 

これまで以上の脅威が待っているという52階層から先の世界。

表情が硬いのは何もレフィーヤだけではない。

ベートだって、フィンでさえもそうだ。

彼等はここから先を知っているからこそ警戒しているのだ。

知っていてもどうにもならないことがあるということを、よく知っている。

 

「行くぞ!」

 

隊列をそのままに走り出す。周囲には蜘蛛のようなモンスターが多く居るが、それに構っていられる暇も無いとばかりに、とにかく走る。

 

「モンスターは弾き返すだけでいい!とにかく、けして狙撃されるな!」

 

フィンの指示はそれだけ、逆に言うのであればそれ以外に言いようがない。

そうしてフィンが言い終わると同時にだろうか、何処からともなく何かの呻き声の様な声が聞こえ始め、それを聞いたベートやアイズ達の顔付きが変わった。

 

「フィン!」

 

「ああ……捕捉された……!」

 

「走れ!走れぇ!!」

 

狙撃、捕捉、基本的にこれらの単語は遠距離から何かに狙われている使われるもの。

だが果たしてこの狭いダンジョンの中、常に壁に阻まれているこの空間の中で、一体誰が、どのようにして狙撃してくると言うのだろうか。

……その答えは、誰に教わらずとも嫌でも直ぐに分かる様になる。

 

「ベート!転進しろ!」

 

「チィッ!」

 

直後、凄まじい轟音と共に下方から巨大な火柱が階層を貫くようにして聳え立った。ベートが走っていた方向に、凄まじい威力と精度で、何者かがダンジョンの下の階層から熱線によって狙撃して来たのだ。

それも狙撃手が殆ど見えなくなる程に遥か下の階層から、ガレスほどに防御力に特化していなければ直撃した瞬間に死が見える程の驚異的な威力で。

 

「迂回する、西ルートだ!リヴェリア、防護魔法を急げ!アイズ、敵の数は!?」

 

「6、いや7以上……!」

 

「っ、相変わらず凄まじいな……!ユキ、カウンターを!予定通りに1発だけでいい!」

 

「分かりました……!」

 

最初の1発を皮切りに立て続けに出現する砲撃の柱を、フィンはルートを頭の中で常に再構築しながら最善の手を選んで避けていく。

だが、いつまでも一方的に狙撃できるものだと思って貰っては困る。

こちらは上方に居るのだ。

少なくとも単純な狙撃戦であるのならば……高度の高い場所に居る方が有利であるという事実は覆せない。

 

「距離が相当離れている以上、どれだけ微調整しても確実に当たる保証は無いですが……!」

 

それでも、敵の放つ熱線は放物線を描くことなく常に真っ直ぐにこちらを狙ってくる。それならば穴を覗くだけで豆粒程であったとしても敵の姿は間違いなく見える筈だ。

そして常に自分の身体を晒しているなど、狙撃手としてはあってはならぬ事。

 

「せぇぇやぁあ!!」

 

放つ、飛ぶ、そして穿つ。

たった1本の剣は先程まで確かな優位性を持っていた狙撃手の額を貫き、それまでの呻き声とは異なる一際大きな断末魔を響かせた。

これで敵の狙撃手達にも少しの緊張感を与えられるだろう。

……しかし誰もがそうして気を緩めた瞬間を、ダンジョンは絶対に逃さない。

 

「ラウルさんっ!」

 

「え」

 

跳ね飛ばされたラウルの身体。

そしてそれとは正反対の方向へと吹き飛んでいくレフィーヤ。

蜘蛛型のモンスターは常に彼等が隙を見せるのを待っていた。

そして捕まってしまった。

その粘度の高い糸によって、格好の獲物として。

 

「レフィーヤ!……っ!?」

 

恐怖に怯えるレフィーヤに更に追い討ちを掛けるように、蜘蛛型のモンスターを焼き尽くすように、またもや下方から熱線が放たれる。

それでも熱線の穿った場所は丁度蜘蛛型が処理される位置だから運が良かった……などと誰が言えるだろうか。

数百メートル下の58階層から52階層へと向けられた砲撃による大穴への落下、飛行手段を持たないレフィーヤが無防備な状態で竜の壺へと落ちていく。

止まれない、どころか更に追撃する様に彼女に向けて2発目の熱線が放たれる。

 

「チィッ!!」

 

「ああもう!」

 

「私も行くね!」

 

ティオネ、ティオナ、ベートの前線組が弾かれた様にして大穴へと飛び込み、各々の方法で彼女を助けるために走り出す。リヴェリアは落ちゆく彼女に防護魔法を与え、その間にティオナが力技で強引に砲撃を弾き飛ばした。

小さな飛竜をベートが叩き落とし、ティオネがレフィーヤを回収すると、そこから凄まじい高度を落下しながらも皆確実に生を掴み取る為に必死で壁を蹴り、飛龍を潰し駆け下る。

レフィーヤの防御力では確実に即死していた、彼等の判断は正しかった。咄嗟の対応は無茶と機転、そして少しの強引さによって彼女は救われたのだ。

 

……そして、そうこうしている内に誰よりも早く58階層の底へとユキが着地している。

 

「ユキ、頼んだ」

 

遥か上空から聞こえるはずのないリヴェリアのそんな呟きに、ユキは笑って答えて。

 

「任されました♪」

 

砲撃の為に口元に熱を溜め込んでいた筈のヴォルフガングドラゴンの動きが止まった。一瞬の煌めきの後、ズレるようにして滑り落ちた竜の首が、地に落ちると共にため込んだ熱によって爆散した。

突然起きた仲間の死に、隣に居た同類は困惑し、周囲を見渡す。

しかし下手人の姿は何処にも見つからない。

ただ周囲からは奇妙な鎖の音が聞こえてくるだけ。

見つかる筈が無い。

見つかる訳が無い。

何故なら……その竜の瞳は既に大きな切り傷と共に潰されているのだから。

 

「これで3匹目です……!」

 

「馬鹿言うんじゃねぇ!そいつァ俺の獲物だ!」

 

完全に死角を取り、背後からユキが斬り付けようとしたその瞬間、同様に上空から跳ね飛んできたベートによって竜の頭が吹き飛ぶ。

その凄まじい威力は恐らく魔剣を使ったのだろう。

レフィーヤが並行詠唱を習得したのを知ってなのか、彼もまた今やる気に満ち溢れていた。昂る、滾る、溜まりに溜まったあの日の屈辱が心の底から熱を噴く。

 

「テメェがここに居るってこたぁ、もう上から降ってくる奴は居なさそうだな」

 

「あれ?もしかして私のこと、少しだけ認めてくれてますか?」

 

「ハッ、一撃で全身吹き飛びそうなモヤシ女が何言ってやがる。ここは俺だけで十分ってことだ、テメェは飛竜でも狩ってろ」

 

「……そういう言葉の節々から優しさが滲み出てるところ、私は好きですよ?」

 

「しばき倒すぞテメェ」

 

最早お決まりの様になって来てしまった2人のそんな会話だが、今日のベートはそれでも笑みを消し去らない。

感化されているのだから。

あの兎に、そしてエルフに。

 

「戻ってきてやったぞ……クソッタレども」

 

ここがロキファミリアの最高到達階層である58階。

最高ということはつまり、以前にここで撤退した経験があるということ。

その時は砲撃に晒され、それはもう酷い状態になって彼等は逃げ延びた。それはベートもまた同様で、あの時の借りを返す為に、彼は今日ここに立っている。

 

「やってやろうじゃねぇか……!」

 

気分が高まるのも当然の話。

 

『ヒュゼレイド・ファラーリカ!!』

 

上空からレフィーヤの魔法が降り注ぐ。

その凄まじい攻撃範囲に飛竜達は落とされ、芋虫型の新種の大群は焼かれ、ドラゴン達も身を打たれる。

だが、やはりそれだけで勝てる程甘い相手では無い。5体の巨竜と未だ多く残っている数多の飛竜と芋虫共をどう攻略するか……一度全てを倒したとしても、次に湧いてこないという保証もない。

 

「し、死ぬかと思いました!」

 

「あんな魔法撃っといてよく言うわよ……」

 

「ユキはっや!?いつの間に降りてたの!?」

 

「ふふ、空中戦なら負けませんよ?」

 

「おいテメェ等、さっさと構えろ」

 

57階層の通路から新種が溢れ出す。

飛竜達は5人を囲む様に飛び回る。

巨竜達もまた来訪者達に狙いを定める。

……けれど、それでも、巨竜さえどうにかすれば後はなんとでもなる。

 

「1人1体倒せば終わり、単純な計算だ」

 

ベートは笑う。

この絶望的な状況すらも楽しむ様に。

今度こそはここを切り抜けるという確固たる意志が彼の心の内に激しく燃え上がっているからこそ。

だからこそ……!

 

「あ、新種が巨竜を襲い始めましたね……あれ利用すれば楽に勝てるんじゃないでしょうか?」

 

そんなユキがポツリと溢した何気ない言葉がその気分を台無しにしてしまって。

 

「テメェは!このっ!オラァ!ちったぁ空気を読みやがれクソッタレがァ!」

 

「痛い、痛いです!なんで蹴るんですか!あ、ちょ、膝はダメです膝は!」

 

「ウルセェェエ!!」

 

結局そんな感じで、数多の竜との戦いは緊張感が殆どない状態で始まってしまったのだった。

 

 

「まずは巨竜の数を確実に減らしましょう!共喰いをしてくれる芋虫型は無視で!レフィーヤさんは飛竜をお願いします!」

 

「わ、分かりました!」

 

「レフィーヤのことは私に任せなさい!」

 

「お願いします!ベートさんとティオナさんはとにかく正面から叩いて下さい!隙さえあれば私が目なり首なり斬りますから!」

 

「テメェが指図すんじゃねェ!」

 

「よっしゃ〜!いっくぞ〜!」

 

ユキの言葉にそれぞれが行動を始める。

飛竜を減らす為に魔法を唱え始めるレフィーヤと、そのレフィーヤを抱えながらとにかく距離を取るティオネ。

文句を言いながらも早速手近なヴォルフガングドラゴンを相手に正面突破するベートと、よそ見をしていた巨竜にかかと落としを叩き込むティオナ。

彼等はその役割を熟せる能力が十分にある、そして信用してもいる。それを指示した人間を。

一方でその張本人はと言えば……

 

「そこは隙です!」

 

「えっ、隙だったのそれー!?」

 

「これも隙のような気がします!」

 

「うぉお!?テメェどっからカッ飛んで来やがった!?隙の前にこっち驚かせんじゃねェよ!!」

 

この女、いや男、実はこういったゴチャゴチャとした乱戦が大の得意分野である。

反対に人型の新種や巨大花との時の様な1対1の正面からの斬り合いが苦手であったりするのだが、それはまあ今は置いておくとして……

障害物たくさん、標的もたくさん、空間も広く、天井や壁や床が十分にある。こんな環境で戦えるというのなら、どんな敵だって翻弄できる自信がユキにはあった。

特に体格が大きく、その癖に感覚器官があまり発達していない敵など大の好物だ。

ヴォルフガングドラゴンはあくまで狙撃が得意なだけであり、近距離の周辺の索敵力は優れていない。そして同時にその防御力はいくら他より硬くとも、ユキの一撃に耐えられる程のものではない。

つまり……

 

「ティオナさーん!ベートさーん!行きますよー!」

 

「よーしこーい!合わせるよー!」

 

「うるせェェえ!!」

 

「「せーの!!」

 

悍しい音とともに、上下から挟まれる様な一撃を受けた竜の頭が破裂する。

狙撃というアドバンテージを失った竜の最期は、それは悲惨なものであった。

芋虫型の新種に1匹が食われ、ベートの魔剣を使った蹴りで1匹が叩き潰され、ティオナの振り下ろす様な一撃で1匹が真っ二つにされ、そんな2人が陽動している隙にユキが2匹の首を引き裂き、最後の1匹は3人が同時に放った合わせ技で哀れにも爆発四散した。

それを見ていたレフィーヤとティオネはもうドン引きするしかない。

こんなのはもう、あまりにも竜の方が可哀想である。8匹もいた竜はもう2度と彼等の前に出て来たくなくなる様な死様で、特に最後の1匹など絶対にモンスターから見ても恐怖を抱く様な最期だったろう。

これでもう、この場所で主役を張っていた巨竜達が居なくなってしまった。

……そして次の標的は勿論、飛竜と芋虫型になる。

 

「ベートさん、ベートさん」

 

「……なんだ」

 

「ベートさんって、偶にアイズさんの付与魔法を貰ってるじゃないですか?あれ、私も試してみたいです」

 

「………………よこせ」

 

「是非!」

 

魔力に釣られてレフィーヤとティオネを追いかける芋虫型を、ユキとベートが更に追う。

ユキが提案したのは、度々ベートがアイズに『寄越せ!』などと言って風を借り受けることがあるあれのことだ。

あの2人のコンビネーションをユキもよく見ていて、一度でいいからやってみたいと密かに思っていたのだ。

そんな提案に一方でベートはと言えば、数秒微妙な顔をして考え込んだものの、『まあ一度だけなら……』という譲歩のような返事を返したのだった。

ユキはそんな譲歩ですらも嬉しかったようだが。

 

「さあ!どんな風になるのか想像もつきませんが、いっきますよー!」

 

「オイ待てェ!どんな攻撃になるのか分かんねぇのかコレ!?」

 

「物は試しですよ!せーのー!」

 

「待て待て待て待てざっけんなオラァ!!」

 

瞬間、ベートの脚部からあまりにも攻撃範囲の広い斬撃が放たれた。

まるで蹴りの一瞬だけベートの足から規模の大きい光の剣が現れたかのような、ヴォルフガングドラゴンの体すらも真っ二つに出来てしまう程に大きく鋭い一瞬の煌めき。

それを実際に行ったベート自身でも何が起きたのか理解できない。

ただ目の前の芋虫型の大群の一部が大きく剔れる様にして魔石と溶解液に変わったという事実だけがそこにある。

単純な威力と前方向への突破力だけならアイズの風の方が何倍も強い、だが殺傷力と横方向の殲滅力で言えばこちらの方が優れている。

ベートは一瞬だけそれを見て考えてしまった。

 

これから先、自分はどちらを選んで使っていけばいいのだろう……と。

 

「やっぱりベートさん、私の魔法と相性いいですよね♪でも流石の私もこんなに凄い攻撃になるなんて想像もしていませんでしたよ!」

 

「……ふ、ふっざけんなァ!お、俺はアイズ一筋だって決めてんだ!この魔法はもう2度と使わねぇ!この連携は今日限りで終いだ!」

 

「え、えー!?なんでそんな酷いこというんですか!?また一緒にやりましょうよー!ほら、アイズさんにも見せたいですし!」

 

「そんなことできるかァァ!!こんなもんアイズには見せられるわけねェだろうがァ!俺は浮気なんて絶対やらねェ!この技はもう金輪際使わねェ!」

 

「うぅ、ベートさんは酷いです……そうやって一回やって満足したら私のこと捨てるんですね。私がこんなにも求めていることを知っている癖に……」

 

「誤解される様なこと言ってんじゃねェェ!!!」

 

そんな漫才の様なやり取りをしながらも、2人は着実に芋虫型を処理していく。

レフィーヤの魔法も着実に飛竜を削っているし、戦況は間違いなくこちらが優勢だ。

 

……ただそれでも、あと一押しが足りない。

新たな飛竜がダンジョンから湧き出してくる、芋虫型の新種はどこからともなく現れて59階層へ下りる階段に向けて大量に移動している。

キリがない、どころかこのままではまたヴォルフガングドラゴンが湧き出て来てしまうのも時間の問題だ。

そうなってしまえば不利になるのはこちら側になってしまう。

 

「ああもう!本当に鬱陶しい!どんだけ湧いてくるのよこいつら!」

 

「うわ!ヴォルフガングドラゴンの補充も来ちゃった!こんなのほんとに追いつかないよぉ!」

 

「こうなったら仕方ありません!ベートさん!あれもっかいやりましょう!あの連携技でならこのくらいの数の敵でもへっちゃらですよ!」

 

「やらねぇつってんだろ!何ちょっと気に入ってんだテメェ!」

 

「だって、初めての経験だったんですもん……(他の人に自分の魔法を使って貰うの)」

 

「だから紛らわしい言い方してんじゃねェェ!」

 

「そこ!いい加減にしなさい!」

 

1体、2体と新たな巨竜が目覚め始める。

飛竜の数も着実に増えて来ている。

芋虫型については今がピークと言えるほどの数だ。

これ以上は本当に不味い、本当にあの連携技を使うしかないのか、そんな思考がベートの頭を過ったその時、

 

『ウィン・フィンブルヴェトル!』

 

援軍は、届いた。

 

「みんなよくやった!ここから一気に殲滅する!」

 

「やっとかよ……遅ェぞフィン!」

 

「ワシ等が居なくともよう耐えた!あとは任せい!」

 

「ガレス〜!私もう疲れた〜!」

 

「よくやってくれた!ユキ、私の周囲を頼む!レフィーヤ、お前もこちらに来い!」

 

「は、はい!分かりました!」

 

「任せて下さい、リヴェリアさん!」

 

ヴォルフガングドラゴン達もまだ思うまい。

まさかこれまで戦っていた集団よりも、後に加わった集団の者達の方がよっぽど化け物揃いだということなど。

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