白海染まれ   作:ねをんゆう

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51.スキル

久しぶりに感じる本物の太陽の光。

人に溢れる賑やかな街の光景。

モンスターが存在しない空気感。

 

ダンジョンで見つけた温泉を後にした一行は、その後なんのトラブルに見舞われる事もなく、こうして無事に地上へと帰ることができた。

 

それからはギルドへの報告やらなんやらに神ヘスティアと神ヘルメスが連れて行かれる事になったが、当然巻き込まれただけのユキは直ぐに解放され、帰ることが許された。

恐らく元凶となったヘスティア・ファミリアとヘルメス・ファミリアにはそれぞれ重めの罰金が下ることが予想されるが、2神もそれを多少覚悟していたようなので大丈夫だろう。

それこそ"現総資産の半分"などととんでもない事を言われない限りはヘルメスも笑って受け入れる筈だ。

 

ロキ・ファミリアには何の迷惑もかけて居ないし、それだけが本当にユキにとっては良かったというかなんというか。これで連帯責任だと言われてしまえば、本当に申し訳なくなってしまう。

まあ、そんなことは普通に有り得ないが。

 

「こんにちは〜、ただいま戻りました〜」

 

「お疲れ様です、ご無事で良かった」

 

ユキがそう言って門番に手を振ると、偶然にもあの紳士的な男性が今日の門番を務めており、爽やかな笑顔で出迎えてくれる。

ここに帰るのも本当に久しぶりだ。

初めての遠征生活はユキにとって本当に長かった。

こうして無事に帰れた事がなにより嬉しい。

 

「おお!ユキたん!おっかえりぃいー!」

 

「ロキ様!はい、ただいま戻りました!」

 

ユキの帰りにいち早く気が付いたのは、やはりこの城の主であるロキで。ロキは凄まじい勢いで階段を降りてくると、そのままの勢いでユキに抱きついて来る。

ユキは決してそれを殴り付けたり叩き落としたりすることなく、同じ様にして手を広げて受け止めた。これまで他の団員達からそんな反応をされた事が一度も無いロキは飛び込んだ姿勢のまま何故か焦り始め、そのままユキの胸に受け入れられる。

せめてそのまま避けるくらいのことはしてくると思ったのに、どころかそのまま受け入れられてしまうとは夢にも思わなかったのだ。

 

……いや、少し考えれば分かるのだが。

ユキがロキを雑に扱った事など一度もなく、ましてや殴ったり投げ捨てたりなど決してしないという事など。これが習慣の怖さというものか、ロキはそのままユキの胸の中で停止する。

 

「ふふ、遅くなってごめんなさい♪」

 

「お、おお……いや、ぶ、無事やったらそれでええねん。怪我も、うん、無さそうやしな」

 

「はい、この通り万全ですよ!」

 

「せ、せか……あ、リヴェリアが部屋に居るから行ってきたってや。あれが一番寂しがっとったからな」

 

「分かりました!それではロキ様、また後で黒いゴライアスの件とかの報告に伺いますので〜」

 

「お、おお…………ん?黒いゴライアス?え、なんやその話?まさかまた厄介ごとに巻き込まれとったんかユキたん!ってもう居らへん!早っ!」

 

色々聞きたいことはあるが、取り敢えずロキは後でユキを呼び出す事を決めた。

無傷で帰ってきたのがもう本当に奇跡の様に思えて来るのは、そろそろ笑ってられないのではないかとロキは思った。

 

 

 

その部屋は階段を上って少し歩いた辺りにある。

一見普通の部屋ではあるのだが、そこに入ろうとする者はそれこそ仕事以外では居らず、偶にアイズを含めた幹部達や他のエルフ達が入るくらいだろうか。そのエルフ達でさえも何処か緊張した表情で入っていくので、この部屋の主がどれだけ敬われているかということもよく分かる。

……だが、近頃そんな部屋に毎日の様に入り浸る様になった人物がいた。噂ではその部屋の主に襲われただのなんだのと言われているが、それでもその少女は相も変わらず毎日の様にこの部屋を訪ねている。

 

そして、そんな噂の少女がいま、遠征という長い期間を乗り越えて、ようやくこの部屋へと帰ってきた。

手慣れた仕草でノックを叩き、帰ってきた返事を聞いて中へと入る。

満面の笑みで。

そして、軽やかな足取りで。

 

「リヴェリアさん!ただいま戻りました!」

 

「なっ、ユキ!?戻っていたのか!」

 

ユキ・アイゼンハート、リヴェリアの部屋に帰還。

 

「もう、だから今戻ったんですよ?真っ先にこうしてリヴェリアさんの所に来たんですから♪」

 

「はぁぁ……昨日のうちに帰って来ないから心配していた。怪我は無いか?どこか痛めたりとかは」

 

「もう、皆さんそればっかりなんですから。私は本当に大丈夫です、リューさんとアスフィさんが守ってくれましたし」

 

「それならいいが……あぁ、全く、お前が帰って来ないから私は全く仕事が手につかなかったというのに」

 

「んっ……もう、そんなに強く抱き締めたら痛いですよ?」

 

「少しくらい我慢しろ、私を待たせたお前が悪い」

 

「ん〜、それなら仕方ないですね♪」

 

互いに互いの温もりを感じ合う様に、2人は互いを抱き合って目を閉じる。

まるで長い間、離れ離れになっていたかのように。

 

実はこの2人、なんとこうして顔を合わせるのが実に1日半振りなのである。

1日半、1日半もの間、彼等は互いの顔を見ていなかった。

そう、それはつまり……

 

そんなに大した事じゃ無い。

 

互いの温もりどうこう以前に、別にそう大して時間も経っていないし、『寝て起きて昼まで仕事してたら帰ってきてた』くらいの感覚だ。

確かに心配してたのはあるだろうが、ここまでする程の事では無い。

 

「よかった、何事も無かったのだな」

 

「はい……あ、黒いゴライアスが出たとかはあったんですけど、それも無事に倒せましたし。何も問題はありませんでしたよ」

 

「そうかそうか、黒いゴライアスを無事に倒せたのか。それはよかっ……ん?」

 

「?」

 

それまでのほっこりとした温かい空気が、突然ダンジョンの底まで吹き飛んでいった。

一瞬聞き逃しかけた話ではあったのだが、いくらリヴェリアと言えどそこまで色恋に呆けてはいない。

リヴェリアはユキの肩を掴み、しっかりと目線を合わせて話を聞く。

 

「……黒い、ゴライアスとは……なんだ?」

 

「さあ?」

 

「……ユキ?」

 

「ええと、18階層の天井から突然現れまして、私もビックリしましたよ。18階層に滞在していた冒険者総掛かりでも倒せなかったんです」

 

「いや…‥いや、待て、待て……!」

 

「ヘルメス様はヘスティア様が放った神威が引鉄で現れた、と仰っていましたが……あくまでそれはきっかけで、詳細は分からず終いだとか。不思議ですよね」

 

「そ、そういう問題では無い!」

 

「……?」

 

「神の神威で現れた?しかも黒く染まった身体に、あの階層の冒険者が総掛かりでも倒せないモンスターだと!?ユキそれは……!」

 

「リヴェリアさんは、何か知っているんですか?」

 

「…………」

 

「リヴェリアさん?」

 

リヴェリアとてすべてを知っているわけでは無い。

だが、過去の体験や話から想像する事は出来る。

黒い体色をしたモンスターについて、神の神威に反応して生まれるモンスターについて、そしてそれらによって生じた最悪の悲劇について。

 

「ああ、どうしてお前はそう厄介事に巻き込まれるのだ……ただ18階層から帰るだけだったろう」

 

「いえ、今回は私と言うよりはあの少年君に向けた厄介事だったように思いますよ?活躍したのも彼でしたし、倒したのも彼でしたし」

 

「……とりあえずロキとフィンの所へ行くぞ。これ以上この件について私では判断が出来ん」

 

「わ、分かりました」

 

リヴェリアはユキが帰ってくれば彼の過去についてなんとか聞き出そうと思っていたのが、もうそれどころの話では無かった。

こうして、またユキに話を聞ける機会を逃すのだ。

最早ここまでくればそういう運命だとしか言いようがない。

 

 

 

 

「あれ……ユキ、帰ってたの?」

 

「アイズさん!……はい、つい先ほど帰って来たんです。今しがたロキ様への報告を終えまして、荷物の整理をしていたところです」

 

「そう……お邪魔してもいい?」

 

「勿論です♪そんなにおもてなしは出来ませんが……」

 

「大丈夫、話したいだけだから」

 

「ふふ、そうですか」

 

ユキが頭を抱えて険しい顔をしたロキ達に報告を終えた後、荷物の整理の為に戻ってきた部屋に最初にやって来たのが彼女だった。

風呂にでも入っていたのか髪は濡れ気味だが、普段と変わらず、ぽーっとした表情のアイズ・ヴァレンシュタイン。

それが当然のことのようにユキの部屋のソファに彼女は腰掛けると、出されたお茶を啜ってユキにも座るように促す。

部屋の主人でも無いくせに。

 

「ね、ベルは元気だった?」

 

「ええ、それはとても。それに、前よりもずっと強くなっていましたよ?きっと直ぐにでもまた一つランクを上げることになるのではないかと」

 

「ほんと?……そっか、やっぱりすごいね。どうしたらそんなに早く強くなれるんだろう?」

 

「ふふ、そうですねぇ。少年君ならきっと直ぐにでも私のことなんか追い越して……あっ」

 

瞬間、ユキの脳裏をある一つの可能性が過ぎっていく。

そういえば、ユキは未だにダンジョンに潜り始めて数ヶ月という程度なのにも関わらず、何故かもう現在のところの最高到達点である59階層まで辿り着くという偉業を成し遂げた。

しかも58階層にてヴァルガング・ドラゴンを含めた強大なモンスター達の群れを突破し、59階層においては穢れた精霊と戦い、勝利した。

そしてその中でも問題なのが、穢れた精霊との戦いにおいて、何度も死線を潜り抜けてしまった事だ。

ユキのスキルにおける『死に近いほど効果上昇』という文章は、その名の通り死に近い程に成長速度が上昇するものだ。

"死に近い"というのは、単純にこれまでの通り大怪我をした等で死に掛ける事が対象となるのは当然だ。

だが、そもそも一般的な戦闘において怪我が元で死ぬという事は少ない。その大体は致命的な一撃による即死か、動けなくなった所へのトドメによって命を落とす。

つまり、致命的な攻撃を避けた瞬間もまた、"死に近い"と表すことが出来るのだ。

よってあの戦闘の最中、そしてそうでなくヴァルガング・ドラゴンの攻撃を避けたあの瞬間でさえも、ユキの能力は一瞬ではあるが働いていた。

そして穢れた精霊の攻撃を避けながらギリギリのラインで反撃を試み続けていたあの時は、最終的にはエリクサー必須の致命的な怪我を負わずに済んだとは言え、常に命の危機に晒されていたのは間違いないので、殆どずっとスキルが発動していたと言っても過言では無い。

つまり……

 

(モンスターの群れの突破、59階層の踏破、精霊の討伐、ゴライアスの討伐……ランクアップの条件は確実にクリアしている。ステータスの伸びも間違いなく十分。つまりこれは……)

 

「ユキ?」

 

(やばい、これ絶対またレベルが上がる……!ついこの間レベル4に上がったばかりなのに、また直ぐ上がったりしたら絶対目立つ!)

 

「……?」

 

レベルが上がるのに喜ばない人間というのもそうは居ないだろうが、目立つというのは確実だ。

レベル2に最速でベルが到達した際にもあれだけの事になったというのに、一体どうしたらレベル5への最速到達が騒がれずに済むというのか。

かと言ってランクアップを先延ばしにするのは……またいつか大変な事が起きた時に後悔する事になるかもしれない。実力は持っておく事に越した事はないと言う事は、ユキ自身その身を持ってよく分かっている。

 

「アイズさん……あの、これからロキ様の部屋に行こうと思うのですが、元気付けて貰えないでしょうか?」

 

「元気付ける?」

 

「私に勇気を下さい……絶対また大変なことになると思うので」

 

「……ユキはいつも大変そう」

 

「うぅ、好きで大変そうになっている訳じゃないんですよぅ」

 

「うん……よく分からないけど、頑張って」

 

「はいぃ……」

 

そうしてその後、ロキの部屋から再び叫び声が聞こえて来た。

その瞬間、本拠地に居た誰もが口に含んでいた飲料を吹き出した事は間違いないし、保護魔法だけをかけて部屋に戻っていたリヴェリアは机に頭を打ち付けて思わず破壊してしまった。

一方でその雄叫びを上げたロキはと言えば、もうどうにでもなぁれ!とヤケクソになって笑っていた。

そしてそれは当然ユキも同じで、最早完全に満面の笑みで泣いていた。

 

「もういやや、ユキたん……そんなにウチの胃を痛めて楽しいんか……」

 

「違うんです、本当に違うんですロキ様。私だって出来るのでしたら、もっと平穏で幸せなニュースをお伝えしたかったんです」

 

それは本当に、本当に。

ユキはロキに迷惑をかけたくは無いのに。

どうしても、どうしても、こうなってしまう。

悲しいことに。

 

「ゴライアス討伐はまだしも、レベル5て……ああもう、今やったらおチビの気持ちがよう分かるわ。成長促進スキルっちゅうんはここまでバカげとるんか、アイズたんが聞いたら泣くで?」

 

「あ、あはは……いや、でもこれ、他の人には絶対バレますよね。私と少年君に何かしらの共通点があるってこと」

 

「せやろなぁ……少なくとも、おチビは絶対気付く筈や。興味を持ってまう神も絶対増えるし、少なからずちょっかい掛けてくる奴も出て来る筈や」

 

「ご迷惑をおかけします……」

 

「まあそれも今更やしなぁ……少なくとも、次の神会までは大丈夫な筈や。うちの子達から徐々に広がってく噂話で慣らしていけば、衝撃はまだマシになるやろ」

 

「遠征って怖いんですね……」

 

「ユキたんは特別な」

 

遠征一回行けばレベルが1つ上がるなんて簡単な話なのならば、ロキ・ファミリアの面々はとっくにレベル2桁まで行っているだろう。

間違いなくおかしいのはユキの方だ。

大体全部ユキが悪い。

 

「………とりあえず、アビリティの上昇はともかく、スキルが一つ増えとったで。これまでのに比べるとまだまともなスキルやないやろか、ウチ的にはやけど」

 

「ほんとですか?どれどれ……」

 

 

ユキ・アイゼンハート

 Lv.5

 力 :i0

 耐久:i0

 器用:i0

 敏捷:i0

 魔力:i0

発展アビリティ : 剣士G、耐異常G、精癒G

 《魔法》

【フォスフォロス】

・付与魔法(エンチャント)

・光属性

・詠唱式「救いの祈りを(ホーリー)」

 《スキル》

【緑白心森(ミルキー・フォレスト)】NEW!!

・自身の精神に超耐性の効果。

・対象の精神に改善の効果。

・エルフに対する微魅了の効果。

【愛想守護(ラストガーディアン)】

・守る対象が多いほど全能力に超高補正。

・死に近いほど効果上昇。

・上記の条件下において早熟する。

【闍ア髮?「ォ鬘俶悍】

・謔ェ諤ァ繧呈戟縺、閠?→縺ョ謌ヲ髣倥↓縺翫¢繧九?∝?閭ス蜉帙?雜?ォ倩」懈ュ」

・ 遘√′驕?縺悶°繧

 

「は」

 

ユキは思わず凍り付いた。

追加された一つのスキルを見て、固まる。

そうして油の切れたロボットのように頭を動かし、ロキの方へと顔を向ける。

 

「……あの、ロキ様。このスキルって」

 

「まあ、その、なんや……リヴェリアには隠しといたるから」

 

「言えないですよこんなこと!?というかこれ、範囲広過ぎませんか!?私こんなのもう外に出歩けませんよ!?」

 

「大丈夫、大丈夫やって。ほら見てみ?『微魅了』書いたるやろ?言うてそんなに強い力やないから平気や、多分」

 

「うぅ、ほんとですか?ほんとなんですよね?他のエルフの方に妙な思いをさせたりしないんですよね?」

 

「大丈夫大丈夫、へーきへーき」

 

「なんか少し適当じゃないですか!?」

 

ユキはかつてリューに言われた事がある。

お前はエルフが好きやすい性質を持っているから、決して自らの性別を明かしたエルフに近付くなと。

恐らくリューの言っていた事は的を射ていたし、きっとその辺りがこのスキルが生じるきっかけの一つになっているのは間違いない。

そしてこんなスキルが加わってしまった日には……

 

「よし、今日はもう寝ます。もう何も考えたくありません!」

 

「その意気やユキたん!明日考えればええ事は明日考えればええんや!寝よ寝よ!ウチももう寝るわ!」

 

「はい!おやすみなさいです!ロキ様!」

 

「おう!おやすみな!ユキたん!」

 

そう言ってユキはロキの部屋を後にした。

明日のリヴェリアの反応を見て、それでもうどうしようも無いくらいやばいものならリヴェリアに相談すればいい!

そう考えたのだ。

 

そうしてそんかユキを見送ったロキは、もう一度だけそのスキルに目を通す。

スキル名【緑白心森(ミルキー・フォレスト)】

恐らくユキの精神性から来ていると思わしきそのスキルは、自身の精神の維持に加えて、他者の精神をも改善するという効果を持つものだった。

 

そしてロキは思い出す。

以前の神会においてユキに名付けられた二つ名である【白海の輝姫(ミルキー・レイ)】を。

 

「そう考えると、悔しいけどやっぱあの色ボケ女神はユキたんのことを理解しとったんやろな。殆どニアミスや」

 

……けれど、

 

「流石のフレイヤも、ここまでユキたんの心がリヴェリアに染められとるのは気付かへんかったんやろなぁ。"緑"に"森"に"エルフ"と来たら、流石にその関連は確実や」

 

恐らく、本来ならばここにそれらの単語は綴られ無い筈だったのだ。

それこそフレイヤの言った通りに【輝白心海(ミルキー・レイ)】のようなスキル名になっていて、そこにエルフに対する魅了効果など付与されて居なかったと想像出来る。

リヴェリアがユキに対して並々ならぬ強い想いを抱いているのはロキ・ファミリアでは周知の事実だったが、ユキもまたスキルに現れてしまう程に強い想いを抱いていたということだ。

 

これを聞けばフレイヤは一体どんな顔をするだろう?

そして、リヴェリアもどんな反応をするだろうか?

 

そうしてロキは思い出す。

そう言えば緑のエルフと言えばリヴェリア以外にも、もう1人思い浮かぶ人物が居たということを。

そしてそんな彼女もまた、リヴェリアとは違った形でユキと強い関係で結ばれていた。

 

「ま、ユキたんが浮気するなんてあり得へんし。そっちはそっちで大丈夫やろ。問題は……レフィーヤか」

 

最近はアイズと同じ様に1人の女性としてユキへの尊敬の思いを抱きつつあるレフィーヤ。

ユキのその魅了の効果を受けて混乱するエルフを候補に挙げていくとなると、間違いなく最初に被害を受けるのはレフィーヤだ。

リュー・リオンはユキの危険性を分かっていて行動しているし、リヴェリアは魅了された所で夜が余計に激しくなる程度の話。

何も知らずに餌食になるレフィーヤがあまりにも可哀想過ぎる。

それも強烈な魅了ならまだしも、無意識のうちに語りかけてくる程度の微量な魅了など、余計に性質が悪い。

 

「ほんま可哀想な子や、レフィーヤ……そういう所がまたかわええんやけど」

 

今頃部屋の中でユキのレベルアップを知って色々と考えに耽っているであろうレフィーヤを思い浮かべて、ロキはユキのステータスの写しを燃やそうとして……机の中に仕舞い込んだ。


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