白海染まれ   作:ねをんゆう

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89.war

「治療できる人数は限られてます!経験のない人も今直ぐこの場で応急処置を覚えて下さい!職員も冒険者も関係ありません!これから私が1から10まで常に説明しながら応急処置を行っていきます!一言一句違わず!3周目までには絶対に頭に叩き込むつもりで!お願いします!」

 

「「「は、はいっ!」」」

 

 

 

「先生!この方、身体に酷い火傷があって……!どうしたら!」

 

「っ、衣服を脱がさないで!誰か清潔な水と拭物を大量に持って来て下さい!それと私が作っていた薬品もお願いします!」

 

「は、はいぃっ!」

 

「それと仕切り板やカーテンもあれば出して下さい!見れない方は無理に見なくても構いません!見られる方は対処法を覚えて!」

 

「せ、先生……俺は……」

 

「心配しないで下さい。必ず私が治して見せますから、ほんの少しの辛抱です」

 

「で、でも、ヒーラーは殆ど居ないって、聞いて……」

 

「時間はかかりますが、これくらいなら魔法を使わなくても治せます。……大丈夫です、私がここに居ますから」

 

「あ、あぁ……女神様……」

 

 

 

 

「……今直ぐ腕を切断します!医療器具を回して下さい!」

 

「ま、待ってくれ女神様!お、俺は冒険者なんだ!こんな所で利き手を失う訳にはいかない……!」

 

「私が今この場で貴方に与えられる選択肢は、生きるか死ぬかの2つしかありません。命よりも腕の方が大切という事でしたら私も諦めますが、切ってもよろしいですね?」

 

「だ、だが……!」

 

「よろしいですね?」

 

「い、いや、でも……」

 

「よろしいですね?」

 

「う……あぁぁ……」

 

「……私の魔法を使えば痛みは一瞬で済みます、それだけは保証します。どうぞ恨んで下さい、貴方を救えない私を。救いの祈りを/ホーリー」

 

 

 

「ユキ!こっちを手伝って欲しいの!縫合の経験はある!?」

 

「あります!切開から補助まで出来ます!精神的な鎮静はスキルで可能ですが、昏睡系の魔法を使える方は居ますか!?」

 

「大丈夫、そこはもう見つけているもの!急いで!まだ助かるわ!」

 

「分かりました!指示をお願いします!」

 

 

 

「……どこがか弱い女の子やねん、ほ〜んまに」

 

自死を願った少女(男)がもう一度だけ立ち直ることを決めた数時間後、彼女はアストレアと共に怪我をした住人や冒険者達の対処に当たっていた。

今もオラリオの各地で闇派閥は活動している。

その為にリヴェリアも今はロキ・ファミリアに戻りフィンの指示を受けて動いているが、ユキはそちらの鎮静は行っていない。

 

『ユキたんはアストレアの所に居るのが一番ええ、今だけでも改宗もしとくべきや。規模の大きいウチに居ると何かと行動に制限もかかる上に、疑う人間も出てくるやろうしな。なるべく自由に動ける立場に居りぃ』

 

きっかけはロキのそんな言葉だった。

ロキの手によってステータスの更新が成され、直後に再びアストレアの眷属へと戻ったユキ。

懐かしいその感覚と共にユキが思い出したのは、アストレアとの旅の最中に何度も経験する事になった魔法を使わない純粋な治療行為の数々。

アストレアに基本を教わり、各地で行動を共にした医療技術者達から知識を学び、最初は手を震わせて涙目になりながら行っていたその行為も、今ではそれなりに形になっていた。

そしてユキは思ったのだ。

戦う者と、癒す者。

足りないのは間違いなく後者の方だが、どちらも足りないのが間違いのない本音だ。

ならばユキが癒せばいい。

ユキが癒して、皆を守ればいい。

治療所に必ず配備されなければならない警備の役割を、ユキが兼任すればいい。

そんな思い付きから、ユキはアストレアと共に行動をしていたのだ。

 

「……その割には、2人分どころか4人分くらい働いとる様な気もするけどなぁ」

 

時間があるからと2人について来たロキだが、まさかこの場所で一番声を出す人間があの泣いていた少女になるとは夢にも思わなかった。

怪我をしていない人間には簡単な応急処置の知識を与えながら、冷静な頭で指示と判断を出していく。

周囲に目を向けながらも重傷者の対処を行いつつ、果てにはアストレアの補助をしながら設備が医療系ファミリアほど整っていないこの場所で簡易的な手術まで行ってしまう。

これにはロキも感心した。

 

それになにより、彼女はアストレアとの息が本当にピッタリだった。

アストレアの方もまた彼女とは会った事もないというのに、どうしてか本当に母子の様に心を通じ合わせながら行動をしている。

それは話に聞いていた様に、ユキがアストレアと旅をしていて、彼女のことをもう1人の母親として親しみ、そして1人の女神として尊敬していたからこそ……むしろユキの方がアストレアが動き易い様に合わせているのかもしれない。

 

「ねぇ、あの子どこの子なのかしら……私あんな子見たことないわ」

 

「アストレア・ファミリアの新入りなんじゃないか?その割にはこう、貫禄が凄い気がするけどよ」

 

「……うーん、やっぱりアストレア様に似てるわよね。こうして見てると神威はないけど、まるで本当の娘さんみたい」

 

「ああ、間違えて女神様って言ってる奴も居るくらいだ。髪の色が違う所が逆にこう見目が良いっていうか」

 

(……ああ、それはなんとなく分かる気がするなぁ)

 

近くで話している軽傷者達の会話を盗み聞く。

確かにあの少女は妙にアストレアを彷彿とさせる容姿をしている。

(男なので当然)胸は無いし、髪の色は黒色だし、目元もアストレアより元気な印象を与えるが、彼等の言う様にだからこそアストレアと並んだ時にその姿が映える。

背中合わせで人々を救う為に奔走する2人の姿。

普段はアストレアを偽善者であると評していたロキも、今この時だけはその姿を素直に羨ましいと思った。

まあ実際、フィンと共に頭を捻らせているロキもまた、周囲の者達から見ればユキとアストレアの様に映えて見えるのだろうが。

 

「とは言え、そろそろ対処に当たる戦力も限界は近い。ユキたんをここに置いとけば怪我で死ぬ人間は格段に減るやろうけど、それはあくまで後処理や。言い方は悪くとも、守るべき子供が増えるほどフィン達の負担が増えてくんは事実」

 

そう、綺麗事だけで世界は回らない。

そんな夢のない話をしたくはないが、それは言い訳の出来ない話。

今は戦争の最中。

怪我人が多いほど身動きが取れなくなる。

特にアストレアやユキが行っている様な魔法を使わない治療法は、戦線への復帰がかなり難しくなってしまう。

確かに死人は出したくない。

だが恐らく医療の出来るユキがこの時代に来たことによって、そういった些細な変化も起きてしまっているのだろう。

まあそんなことを言ってしまえば彼女がアルフィアと関わった時点で、何もかもが変わってしまった訳だが。

本来の歴史とは変わった以上は勝利も確定しなくなった訳だが、そもそも勝利が確定しているかどうかなど分からなかった事なので、それは別にいいとして……

 

「ロキ様」

 

「ん?おお、ユキたん。お疲れやな、もうええんか?」

 

「取り敢えずはいち段落、という所でしょうか。とは言え、直ぐに第二陣、第三陣が来るかと思います。……早急に手を打たなければ潰れますね、全部」

 

「……気付いとったんか」

 

「戦争のコツは殺す事ではなく負傷者を増やす事、そしてどれだけ人道を無視して非道を尽くせるか。……正義という立場に立っている時点で、こちら側は圧倒的に不利ですから。長引く程に状況が悪化するのは当然の話です」

 

「……ユキたん、戦争経験した事あるんか?」

 

「戦争というほどではありませんが……小競り合い程度ならいつでも世界の何処かで起きていますから。旅をしている最中に何度か」

 

「なるほどなぁ、道理で慣れとる訳や。ほんま頭が痛いわ、完全に闇派閥にペース持ってかれとる」

 

先手を打った方が有利だと言うのは当然の話。

だがそうは言っても相手に分があり過ぎる。

現状では相手の出方を待つしかないのが事実だ。

そしてそんなことをしていれば、いずれはこちらが力尽きる。

相手の居場所も掴めず、全体の戦力すらも未確定な事を考えると、下手に行動を起こせないどころか起こすという選択肢すらも無い。

 

「……いえ、敵の居場所の目星は付いていたんでしたね」

 

「ああ、ユキたんの言うとった未来のウチ等が発見した地下への扉って奴やな。今も探しとるけど、その入口が全く見つからん。ユキたんが教えてくれた所にも行ったんやけどなぁ」

 

「いえ、私が前にその場所に行った時にはそんな扉はありませんでしたから。恐らくは意図的に隠す事が出来るのかと」

 

「信徒をわざと逃して尾行したりもしたのに、これっぽっちも尻尾が掴めへん。……やっぱ相手が動くのを待つしかないか」

 

地下を掘り進むにしても限度がある。

そしてそんな事をし始めれば必ず相手にもバレてしまう。

そうでなくとも未来のロキ・ファミリアでも苦戦した様な迷宮だ、今の状態でそんな敵の懐へ入り込むのはあまりにも危険過ぎる。最低でも扉の開閉がどういう条件でされているのかを解明しない限りは、無闇に中へとは入れない。

 

「……ロキ様、もしかして私に気を遣ってくださっていますか?」

 

「……なんのことや?」

 

「本当は私にも、前線に出てほしいと。それが一番今の状況で有効的だと、そう思っているんですよね」

 

「それ、は……」

 

「勘違いなさらないでください、ロキ様。私が今ここでこうして医療活動に励んでいるのは、それが一番命を救う事が出来ると思ったからです。その判断がもし間違っていて、私が前に出た方が人々を救う事が出来ると言うのなら……私は迷わず前に出ます」

 

「……ほんまに、ええんか?」

 

「はい、勿論です」

 

ロキは頭を回す。

ユキの言った通り、本当にユキを表に出して戦わせる事が何よりも犠牲を減らす事になるのかを。

確かにユキは強い。

ステータスを上げた今、もしかすれば万全の状態にすればザルドに届き得る可能性もあるかもしれない。

だが、そうだとしたらどうなる。

一気に形勢が変わり、むしろ敵は効率も何もかもを無視して、なりふり構わず暴れ始めるかもしれない。

そうなってしまえば勝利は見えても、むしろ犠牲は増えるだろう。

それでは違う。間違っている。

この問いの答えにはなりはしない。

いくらリヴェリアの信頼とユキのスキルのおかげで心が立ち直ったとしても、すぐ様にそれを無意味に破壊してしまう事になるだけだ。

 

「……ユキたん。手加減して戦闘する事とか、可能やったりせえへんかな」

 

「そう、ですね……私の魔法は武器に依存していますので、質の悪い武器を使えば実力は誤魔化せるかと。戦い方も変えざるを得ませんし」

 

「そんなら、この時代に来てから使っとらん戦い方とかはあったりせえへん?」

 

「それこそ、その質の悪い武器しか持っていない時の戦い方ですね。近距離ではなく中・遠距離戦が主体のものです。同じ光系付与魔法にはなりますが、体術も滅多に使いませんので高確率で誤魔化せるかと」

 

「……必要な物はなんかあるか?」

 

「大量の武器、それだけです。最悪何でも構いませんが、剣は必ず何本か欲しいです。他の武器ですと伝導率が壊滅的に悪いので」

 

「よし、決まりや。ちょっとアストレアにも相談しに行こか」

 

ユキは間違いなくイレギュラー。

だからこそ、表立って動けば相手も警戒する。

だが、そこで新たなるイレギュラーが出て来れば……?

恐らくこちらも混乱する。

だがそれ以上に相手は混乱するのだろう。

そしてそれは、敵の策を打ち崩す突破口にもなり得る。

敵の思考を錯乱させる。

敵を騙す為に、味方から騙す。

やって見せよう。

悪巧みなら、ロキの得意分野だ。

 

 

 

 

 

 

屋根の上を、路地の隙間を、黒い一つの人影が走り抜けていく。

それはまるで都市の創設神の右腕を名乗る賢者の様に真っ黒な布を身体に羽織った、そんな如何にも怪しい見た目をした男性……ではなく、女性……でもなく、やっぱり彼女は男性だ。

背中に抱えた籠には大量の武器が入っており、ガチャガチャと音を立てているのが少しだけ見目が悪いかもしれないが、それでも彼はこの都市のために走っている。

 

「とにかく目立たないと…………けど、不自然になってはいけない。言葉は最小限、干渉し過ぎず、思惑も正体も匂わせない」

 

それこそが、ロキに願われた自分の役割。

治療するよりも、戦うよりも、最終的には人を救ってみせるとロキが昨日約束したユキにしか出来ない最大の仕事。

 

「まずはアストレア・ファミリアの方々を探さないとですね。ロキ様の推理では、敵の主神はリューさんに付き纏っていたそうですし、最悪リューさんを尾行していれば良いとの事ですから」

 

加えてロキに手渡された、この声変えの魔道具と気配誤魔化しのローブ。

元々は悪戯や本拠地から抜け出して酒場に行くために万能者から買ってきたらしいそれが、まさかこんな所で役に立つとはロキでさえも思わなかっただろう。

マスクの様なそれを口元に取り付け、ユキはとにかく周囲の情報を集める。

 

「……っ、剣撃音?」

 

路地裏の少し奥の方。

あまり人気の少ないそんな場所から、特段大きな叫び声も聞こえる事なく、ただ凄まじく早い高速戦闘音だけがユキの耳元へと響いてきた。

この音感覚からして、レベルは3〜4程度。

戦闘を行なっているのは3人、1対2。

それでも単純な戦闘力だけで言えば1の方が上手だろうか。

恐らく数人の冒険者が、闇派閥の幹部と戦闘を行なっている可能性が高い。

 

「ふふ、これもロキ様の考えの一つだったのでしょうか。まさか指示されたルートを走って10分程で標的と出会してしまうなんて、流石はロキ様です」

 

それは普通に偶然だ。

ロキもまさかそんな短時間で手掛かりが見つかるとは夢にも思っていなかったし、むしろそうなるのなら本命の武器を持たせておくべきだと、今ここに彼女が居れば思っただろう。

それがまたユキの巻き込まれ体質故なのか、ユキが災厄を引き寄せているかは分からないが……とにかく、今のユキの心には確かに失われた筈の熱が少しであっても戻っていた。緑色の木々に支えられながら。

 

 

『渡しておきたい物がある』

 

『渡しておきたい物、ですか……?』

 

それは今日の朝。

治療所で仮眠から目を覚ました際に、出掛ける前に一目見ようと訪ねてきたリヴェリアにユキが掛けられた一言だった。

 

『あの、これは……?』

 

『私の予備の服と、首飾りだ」

 

『い、いいんですか?』

 

『ああ、お前の着ていた服はもうボロボロだろう。だから持って来た。その首飾りは……まあ、お守りの様な物だと思えば良い。ああは言ったものの、やはり私はなかなかお前の側には居てやれないからな』

 

『リヴェリアさん……!』

 

ユキが出会った時に着ていた、未来のリヴェリアが好んでいた様な緑の衣服。そして中央部に美しい緑色の宝石が埋め込まれた、不思議な輝きを放つ小さな銀製の首飾り。

別にユキは個人的な服装としてこの様な物が好きな訳でも無いし、前に着ていたのも偶然買った物がそれだったというだけだった。

……だが、それが彼女からの贈り物となれば、話は変わる。

こんな物を手渡されてしまえば、どれだけ疲れていようとも元気にならない訳が無い。

 

『……大丈夫です、リヴェリアさん。これがあれば私は、深層にだって1人で行けちゃいます』

 

『それは考え直して欲しいものだがな……お前を助けた責任を取れなくてすまない。だがやはり私はロキ・ファミリアの幹部であり、アイズの保護者でもあるんだ。だから……』

 

『分かってますよ、リヴェリアさん。分かってますから、私より辛そうな顔をしないで下さい。大丈夫です、本当に。……たとえこれから向かう場所にアルフィアさんが居て、次こそ本当に戦わなくてはならなくなったとしても、それでも』

 

ユキはリヴェリアの顔を見つめる。

7年前でも変わらないその整った容姿。

けれどそのたった7年の内に、内面は大きく変わっているのだろう。

それでも、変わっていたとしても、やはりユキはリヴェリアのことが大好きだ。

たとえ目の前の人が自分と愛を囁き合った彼女ではなくとも、彼女の本質までは変わっていなかったのだから。

だから……

 

『リヴェリアさんのこと、もう一度私に惚れさせちゃいますから♪』

 

『!……ああ、期待している。というか未来の私は、私の方から惚れたのだな』

 

『夜に月を見てたら後ろから襲われまして、その時に好きだって言われました。思いの外めちゃくちゃにされてしまって、意識も記憶もかなり朧げなのですが……』

 

『……ま、待て。いや、それは流石に冗談、だろう?いや、そうだと言ってくれユキ。お前がそんな冗談を言うとは思わなかったが、今ならそれも笑い話で済ませられる』

 

『いっぱいいっぱい耳を噛まれて、首にもたくさんチュッてして貰っちゃいました……えへへ』

 

『待て、待て……!本当に、本当に何をしているんだ未来の私は!こんな年端もいかない少女に!』

 

『17歳の男の子ですよ?』

 

『それはそれで問題だろう!アイズとそう年の変わらない男子に手を出したのか私は!?』

 

とまあ色々と飛び火した事もあったが、それでも今のユキの心はきっとロキやリヴェリア達が考えているよりも少しだけ強い。

いや、というより、リヴェリアの影響はユキに対してそれ程までに大きかった。

リヴェリアがユキを見放さない限り、ユキの心は強くあり続ける。

逆に言えばユキをリヴェリアが見放したり、リヴェリアと心が離れてしまえば、途端にその心は脆くなってしまうのだ。

……それはそれでユキがこのスキルを会得していなければ完全に精神崩壊していたという事実を表す事になるのだが、それは愛の力としておこう。

 

アルフィアには出来ない。

アストレアにも出来ない。

きっと最初の母でもそれは出来ない。

ユキの心を本当の意味で寄り添い支える事が出来るのは、あくまで母ではなく恋人のリヴェリアだけなのだ。その役割を持っているのは彼女だけなのだ。

 

故に、ユキは前を向ける。

ロキとアストレアに生きてもいい理由を貰った。

リヴェリアには生きるための力を貰った。

ならばもう、そう簡単には崩れない。

ユキの心は強くない。

けれどそれでも、心が屈しそうになったとしても、本当に屈しない限りは前へと進める身体がある。

それならばもう、弱気になって泣きじゃくるだけの自分に戻ることは無い。

 

 

 

『騒がしい……決して途絶える事のない雑音め』

 

 

 

「……本当に流石です、ロキ様。私はやっぱり貴女の事を尊敬せずにはいられません」

 

聞こえたその声にユキは路地裏から飛び出した。

ああ、本当にロキは凄い。

彼女の言った通りに動いたら、こうしてアストレア・ファミリアの2人を見つけ、闇派閥の幹部を見つけ、そして主神を見つけ、その上……

 

『そこまでにして貰おうか』

 

「……なんだ、貴様は」

 

本当の本当の本当に。

ここでこうして、もう一度だけでもその顔を見ておかなければならないと思った、アルフィアに会うことが出来たのだから。

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