その日、ユキはロキ・ファミリアを訪れていた。
今の時代も元の時代も変わらない、豪奢で立派な城の様な形をしたこのホーム。ただ、元の時代よりも少しだけ汚れている気がするのは、きっと気のせいでは無いだろう。
少なくとも外観まで綺麗にしておくほど、今の時代には余裕がない。
「やあユキ、数日ぶりだね。今日は突然呼び出してしまったけれど、来てくれて助かったよ」
「いえ、フィンさんの頼みですから。それに、もう直ぐ何か起きるんですよね?その前にもう一度ここを訪れておきたいと思っていましたから、丁度良かったです」
「……他の誰かに聞いた訳では、なさそうだね」
「ええ、まあ……ほとんど勘に近いです。でも、この時代のフィンさんが何の用もなく私を呼ぶとは思えませんから。……何か役割が与えられるんですよね、最後の決戦に際して」
「……ああ、理解が早くて助かるよ。話は中でしようか。ガレスは別件でギルドに居るけれど、リヴェリアは中に居るからね」
「は、はい!ありがとうございます!」
それまでの真剣な顔はどこへやら。
リヴェリアが居ると聞いた瞬間に表情を明るくする少女(の様に見える少年)の顔を見て、フィンは本当に久し振りにその表情を緩める。
フィンはユキという少女について、ロキやリヴェリアからある程度の事は聞いていた。
最初に見た時も色々と複雑な事情を抱えているという事も聞いたものだが、それでも実際に見れば本当に驚いたりもしている。
まさか話には聞いていたとは言え、ここまで少女にしか見えない少年が居るとは思いもしなかったからだ。
……神でさえも見抜けないその性別。
ロキとリヴェリアがここまで信用していなければ、フィンも多少は疑っていたに違いない。
こうして会話をしてみれば、それこそ疑うということなど本当に馬鹿らしく思えてしまう様な人間だというのに。
「む、来たか」
「リヴェリアさん!えへへ、こんにちはです」
「ああ、もうすっかり元気そうだな。アストレア・ファミリアとは上手くやっているか?」
「はい!……あ、でも何故かリューさんには少し避けられてます。私が話しかけようとすると顔を赤くして逃げていってしまって……」
「ああ……それは、災難だな、彼女も」
「……?」
ちなみに当然、リヴェリアは知っている。
ユキのステータスを自分自身の目で見たリヴェリアは、その背に刻まれたエルフに対する特効とも言える様なその魅了スキルを知っている。
そして、その魅了の効果は、他ならぬリヴェリア自身が一番よく分かっていた。
なぜなら、それは元々ユキがリヴェリアを想って生み出した代物だ。それがリヴェリアに効果がないと言う事など確実にあり得ないどころか、リヴェリアに対して最も有効的に働くと考えた方が自然なくらいだろう。時代が違えども同じ人間に効かないなどという事は有り得はしない。
「……?えへへ、どうしたんですか?」
「いや……すまない、少し撫でたくなった」
「♪」
幸い、リヴェリアは最初の出会いが出会いであり、アイズの保護者としての意識もあったため、リューほど深刻な状態にはなっていない。
だが何となくこう撫でたくなってしまったり、アイズが大人しくしており少しの安心感を抱いている現状では、やはり魅了の効果は効いて来ているのか、徐々に愛おしさが湧いて来ているのを実感しているという恐ろしさ。
いや、魅了と言いつつもこれでは女性的な魅了ではないのか……?
というツッコミはこの際置いておくとしても、これはやはりなかなか凄まじい物だ。
特にこちらに全く嫌悪感がないというのがマズい。
むしろ幸福感を抱き、ストレスが軽減されているのだから、この状況ではむしろ良いスキルなのだろうか?
そんな実益で考える事も違う気もするが、指摘すれば気にしてしまうだろうから、リヴェリアは直接的には何も言わない。
フィンはそんな複雑な関係の2人を、余計な思考をせずに微笑ましく見守る。
ここは別に自分が何かを懸念すべき関係ではないと考えているからだ。
今はリヴェリアもある程度は冷静だ。
もう信用してもいいだろう。
ユキもまた、信用している。
裏切る可能性など微塵も有り得ないのだから。
「さて、それじゃあ話に戻ろうか。ユキ、今日は君に頼みたいことがあって呼び出したんだ」
「は、はい。なんでしょう」
「……今、闇派閥がダンジョン内にて階層主級の大型モンスターを召喚し、地上に向けて押し出している」
「!」
「言うまでもなく、君の力を借りたい。今のオラリオの戦力ではたとえ上手く事を運んだ所で、どうしても多くの犠牲を覚悟しなければならないからだ」
「……フィンさんがそう考えているということは、高い確率でそうなるのでしょう。私に出来る事なら協力させて頂きます」
「ありがとう、そう言ってくれると助かる」
フィンの言葉に、ユキは少しも悩む事なく頷く。
だが、ここまではフィンとて想定内だ。
いくら自分にとって面識がなくとも、この少女の自分に対する信頼と知識は間違いないと知っているのだから。
「そこで聞きたい。アルフィア、ザルド、地上の群勢、そして巨大モンスター。仮に相手をするのならば、君はどれを選ぶ?」
「……!」
故に、話のキモはここだ。
ユキの戦闘のスキルは知っている。
だが、その精神状態まではフィンはまだ把握出来ていない。
どこで運用しても一定の成果を上げてくれるであろう事を考えれば、正直どこに行かせてもいいとフィンは考えている。
それこそ、彼の心が折れることのない範囲であれば。
だからこそ、直接聞いた。
何をするであろうとも、きっと彼が一番したいことをさせるのが最も効果を挙げると、彼がそういうタイプの人間であると、そう判断したから。
「……私は、アルフィアさんと戦いたいです」
「!」
「……いいのかい?聞いた話ではあるけれど、君は彼女の事を母と慕っていたんだろう?」
「はい。少なくとも私はそう思っていましたし、今でもそう思っています」
「それで戦えるのか、情が移って負けたりしないか、僕はそこを憂慮している」
「……戦えますよ。それに、負けるつもりだってこれっぽっちもありません。だって私は、アルフィアさんを闇派閥から奪い取って、もう一度またお話ししないといけないんですから」
「闇派閥から奪い取る……?」
ユキの目に偽りは無い。
フィンの目が細まるが、それすらユキは真正面から捉えて動じない。
その目的が、その目標が、決して受け入れられるものではないと、ユキは最初から分かっていたから。
だからこそ今ここでそう告げたのかもしれない。
少なくとも自分はこういった目的の為に動いていると、予めそれを伝えておく。それこそが今できる最大限の信頼の返し方だと、そう考えているかの様に。
「……闇派閥に加担した彼女を、誰も許しはしないだろう」
「ええ、家族でも許さないかもしれません。私もきっと許しませんが、我儘は言います」
「彼女に救いを与えれば、今度は君が責められる事になるだろう。もしかすれば闇派閥の仲間だと判断される可能性もある」
「それでも私はアルフィアさんとお話がしたいです。この機会を逃せば、もう一生アルフィアさんとお話なんか出来ません。たとえそうして石を投げられたとしても、生涯後悔し続けるよりはマシです」
「……君を保護したアストレア・ファミリアが責められる恐れもある」
「それなら、私は今日から私という存在をこのオラリオから消します。顔を隠して、名前を偽って、別の人物としてアルフィアさんを奪い取ります。今度はフィンさんに迷惑をかけるかもしれませんが……」
「意思は、堅い様だね」
「はい、そこはもう確定事項です。……私がこの世界に来て絶望していた時、最初に手を差し伸べてくれたのは他の誰でもなくアルフィアさんでした。たとえそこにどんな理由があったとしても、敵対したまま終わるなんて事はあり得ません」
「……なるほど、説得は無意味か」
ユキの瞳を覗き見て、フィンは小さなため息を吐きながら頭を掻く。
きっとその前提を覆す事は元の時代のリヴェリアでも不可能だ。
ならばそれが難しいことであったとしても、ユキを味方として置いておきたいのならば飲むしか無いだろう。
幸いにも、ユキのその目的は少し細工をすれば可能な物だ。
たとえアルフィアがどうなったとしても、ユキと話す時間くらい取ることは可能だろう。
それこそ、フィンがそれなりのお膳立てをすればの話だが。
「……了解した、君にはアルフィアの相手を任せよう。君の目的にも、多少の力は貸す。だからどうか、僕達の戦いに協力して欲しい」
「あ、ありがとうございます!」
「いや、構わない。君が本当にアルフィアを攻略してくれるというのなら、オッタルがザルドを押さえ込めば敵の最大戦力の1/2は削れる事になる。後のモンスターと群勢くらいは僕達で引き受けるさ。……もちろん、最小限の犠牲で済む様に可能な限りの努力をしてね」
それに、フィン達もまた知らなければならない。
何故かつて英雄とも呼ばれたアルフィアとザルドが敵に回ったのかを。どうしてこの街を守っていたはずの彼等が、今やこうして街を襲う側になってしまったのかを。
……ザルドとアルフィアは、言うのであれば未来の自分達だ。
この街のトップを走り、世界を相手に行動し、街を守る為に最前線に立つ者達。
ザルドもアルフィアも賢く、意志があり、魂の芯が存在する強い人間達だった。
そんな彼等がここまでしなければならないという事は、そこには確実に自分達の存在が関係しているだろうし、自分達が将来彼等の様になってしまわないとも言い切る事は出来ない。
故にフィンは知らなければならない。
未来のある時点で、自分達もまたこの街を攻め落とす様な事にならない様に、そうならざるを得なくなる様な、その並々ならない理由を。
「アルフィアには勝てるのかい」
「最終決戦ともなれば、守る対象が街全体になるので、否が応でも片方のスキルは全開で発動します。もう片方のスキルは私の心次第ですが、全開で発動できる様に調整するつもりです」
「そうまでしても、ステータス的に互角にも至らないと僕は推察している」
「はい、ですから以前の戦いでザルドさんの剣撃を6割ほど模倣しました。……それに運が良いことに、その後のステータス更新で魔法が一つ芽生えました。手札はあります」
「……それでも、まだ足りないだろう。アルフィアはかつて最大級の魔法の一撃でリヴァイアサンを沈めている。それがある限り、確実に逆転の一手は存在する」
「……確かに、今の私には最大火力が不足しています。絶対的な防御手段というものも持ち合わせてはいません」
ユキの弱点はそこ。
規格外の攻撃力に対して対応できない。
以前はザルドの魔法と打ち合ったが、本気の出力でない魔法の一撃にすらも勝てなかった。
そしてそれは今でも変わらない。
芽生えた魔法には火力が無かった。
たとえ一瞬時間を稼げたとしても、魔法が本職のアルフィアをそう容易く止める事は出来まい。
アルフィアをユキが一人で押さえ込むには、あと一手が足りていない。
「それなら、その最後のピースは僕が埋めよう。……いや、僕というより、狡鼠と万能者が埋めてくれるのだけれどね」
「ライラさんと、アスフィさんがですか……?」
「ああ、だからアルフィアの隠し持つリヴァイアサンを葬ったという最後の魔法については気にしなくても良い。君は君の持つ全力で彼女を討て」
「わかりました。必ずやその役割、果たして見せます」
それが何かまでは教えてくれなくとも、それを仕組んだのがライラとアスフィであり、フィンが承認しているというのならばもう何も言うことはない。ただ信じるだけで良い。
きっとそれはユキでなくてもそうする。
それくらいに彼等3人は信じても良い信頼できる冒険者達なのだから。
「最後に、一つだけ聞いてもいいですか?フィンさん」
「ああ、構わないよ」
「……私自身、今はこれについてあまり考えない様にはしています。リヴェリアさん達に教えて貰った事でもありますから」
「……」
「ですが、フィンさんならこの可能性も捨て切ってはいないと思います。ロキ様からは聞いていますよね?私がもしかすれば災厄を引き寄せているのでは無いかという話を」
「……ああ、聞いているよ」
「それについては、どうお考えでしょうか。私をこの作戦に参加させる事自体を取り止める事は、考えなかったのでしょうか?」
最後の質問だと、ユキはフィンにそう尋ねる。
決して試す様な口調では無い。
どころか心配そうな顔をしているのはユキの方だ。
ユキはある意味、フィンに言葉を求めている。
なぜフィンが自分を参加させるのか。
その理由が知りたいと欲している。
……ただ、その問いに対するフィンの答えは既に決まっていた。否、議論するまでもないと、彼は既にそう結論付けていた。
「その議論に意味は無いと判断した」
「!」
「仮に君がここに居る事で災厄を招いていたとして、それを証明する術が無い。ロキや他の神にも分からない災厄を呼ぶ体質とやら……現時点ではあまりにも胡散臭い。むしろ君の方がその災厄に飛び込んでいると言った方が納得が行く」
「で、でも、実際に私は……」
「君の出会った災厄、そのどれが偶然で、どれが必然なのか、分ける事は可能かい?」
「そ、れは……」
「そうだ、不可能だ。それに理不尽な災厄に巻き込まれた回数だけで言えば、僕達だって負けていない。君のその体質とやらは、どうやっても立証は不可能な話だ。神々でさえも感じ取れないというのなら……こういう仮説もあり得る」
「仮説……?」
「それ即ち、その体質の話自体が君という最大戦力を削り取る為の作り話だという仮説だ」
「!」
フィンは指を立ててユキの目を見る。
彼女の強さはよく分かる。
リヴェリアやガレス、そしてオッタルが手も足も出せなかったアルフィアとザルドに、手加減をされていたとは言え喰らい付いていたその強さ。
たとえ7年後の話であったとしても、強力な力を有していると判断されるのは当然の話だ。
敵対する者からすれば、それを削り取りたいと思うのもまた当然の話で。
「タナトス様は、嘘をついていたと……?」
「むしろ、どうして君は敵対する勢力の神の言葉をそこまで鵜呑みにしているのか、僕には不思議で仕方ない。彼等が君を邪魔に思うのは当然の話だろう。心を折って戦力を減らそうとするのもまた、当然の話だ」
「……私の、心を」
「恐らく神タナトスは君に目をつけた時点で、君の弱みを探っていたんだろう。そして、君が神々の話を何の疑いようもなく正面から聞いてしまうほどに純粋で、多くの災厄に直面した事を知った。そんな君を排除するにはどうしたらいいか?……簡単だ、その全ての災厄を君が原因で起きた事だと伝えれば良い」
「あ……」
「それに加えて、事前にいくつかの事件をあたかも君のせいで悪化した様に見せ掛けておけば効果は更に強くなる。事実、君にはよく効いた言葉だったろう?その場で聞いていたロキすらも、言葉に真実が混じっていた事でそれが作り話であるとは断言出来なかった」
「そんな、そんな事が……」
「僕達の世界で今日まで起きた全ての事柄もそうだ。確かに酷いこともあったが、思い返せば全ては敵の計画通りだ。その中に異常事態などただの一つも存在しない。つまり、現時点では君は完全な無害であると僕は考えている。……むしろ、君のおかげで命がいくつも救われているくらいだ。だからこそ、僕は君を信じることにした」
工場への襲撃は何度か行われていたが、最大規模の襲撃は事前にユキによって防がれていた。
闇派閥の幹部であるヴァレッタはユキとの戦闘以降姿を見せてはおらず、本当に死んだのではないかと思われている。
そして何より、ユキが自爆を図ろうとする子供を切り捨てた事で、ガネーシャ・ファミリアのシャクティの妹が今でも生き残っている。
ザルドとアルフィアの事もそうだ。
結果的にユキの立ち回りによって二人の行動は最低限に抑えられ、それによる被害もかなり減っている事は間違いないだろう。
ユキとアストレアの指導によって応急処置の技術も広まり始め、確実に効果は生まれ始めている。
ユキは間違いなく、この戦いに貢献出来ている。
「それに、仮に君が本当に災厄を運んで来たとしても、君はきっとそれを止めようと努力するだろう?」
「は、はい。それは当然……」
「それなら別に構わないんだよ。君という強力な駒が、最後まで決して諦める事なく盤面に立ち続けていてくれるのであれば、それだけで」
信用されている。
まだ出会ってそう経ってもいない相手に、こんなにも。
ユキにとって果たしてそれがどれだけ心強い言葉だったろうか。
この胸に宿った火の暖かさは、きっと他の誰にも分かりはしない。
たとえそれがフィンによるユキを完全に味方に付ける為の策の一つだとしても、切り捨てられる彼が心根では切り捨てる事に罪悪感を感じている様な優しい人間だと知っているからこそ、強く動く。
「……それと、これは雑談の一つなのだけれど、僕からも君に聞いてもいいかい?」
「は、はい、なんなりと」
「君の未来ではアストレア・ファミリアは壊滅していると聞いた。……生き残りは、本当に疾風だけなのかな」
「……はい、それは間違いありません。アリーゼさんも、輝夜さんも、それに……ライラさんも。7年後には居ませんでした」
「……そうか」
その言葉の意味が分からないほどユキも子供では無い。
その表情の意味が分からないほどユキも処女では無い。
だから余計な言葉を付け足す。
それが余計な言葉だと知りながらも。
「……未来のフィンさんは、まだ独身でしたよ。小人族以外の女性に想いを寄せられながらも受け流し、同族の15歳の少女に求婚するつもりでは無いかとリヴェリアさんが言っていました」
「7年後の15歳……つまり今の時点では8歳の少女か」
「は、ははは……我ながらなかなかに心に来るなぁ。実際そうなれば本当に求婚しそうなのが恐ろしくも感じるけれど」
「けど、その子にも想いを寄せる方が居ましたから。振られてしまうのではないかと、私は予想しています」
「……他に候補になっている女性は居るのかな」
「どうでしょう、少なくとも私は聞いた事がありません。ただフィンさんが自分はそういった縁があまりない人間なのだと嘆いていた事と、最近は積極的な行動を起こす余裕が無かったという事だけは聞いています。……私個人としては、そのとある小人族ではない方の直向きな恋が叶えばいいなと思っているのですが」
「なるほど……状況は中々に深刻な様だね、未来の僕は」
珍しい彼の苦笑い。
けれど何処か納得している様なその顔。
果たして今の彼は何を考えているのだろうか。
ユキが干渉するのは、ここまでだ。
これ以上は本当に、肩入れしてしまうから。
「ありがとう、良い話を聞けた。……なあリヴェリア、僕は尻に敷かれるタイプだと思うかい?」
「……むしろ恋愛という面では多少強引な相手の方がいいだろう。お前が相手の手を引けばハリボテの様な面白味のない物になりそうだ」
「ああ、それはそうかもしれない。……時には嫌な予感に全力で突っ込むという事も必要なのかもしれないね。あと7年待ってその8歳の子を狙ってみてもいいけれど」
「ユキ、私は自分の団長をガネーシャ・ファミリアに突き出した方がいいのだろうか……」
「まあまあ、当人達がいいのなら歳の差なんて些細なものですし。それも自由恋愛ですよ」
「……まあ、歳の差の恋愛についてはリヴェリアも人の事は言えないか。ユキが生まれた時にリヴェリアは既に今と変わらない容姿だったろうし」
「うっ」
「この世界の10歳の私を攫ってくれてもいいんですよ?リヴェリアさん♪」
「ううっ」
流れ弾が当たったリヴェリアに追い討ちを掛ける純粋なユキの笑顔。狼狽えるリヴェリアの姿に、フィンも意地悪な笑みを送る。
……そしてやっぱり、ユキはロキ・ファミリアの一員だった。
それは時を超えても、変わらず。
こうして3人で笑い合える程度には。