鬼舞辻無惨レ〇プ!鬼狩りと化した先輩&淫夢ファミリー   作:ジョニー一等陸佐

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第8話 空手部連携の裏技

 先ほどとは一転して、緊迫した空気が漂っていた。

 野獣たちの目の前にいる、無数の手や腕に覆われた巨大な異形の鬼――仮にその特徴から手鬼と名付けるとして――は今まで見てきたり対峙してきた鬼とは見た目はもちろんまとう空気も違っていた。

 これは間違いなく、強い。やばい。

 ここにいる全員がそう認識していた。

 手鬼が再び口を開く。

 

 「ガキ共、今は明治何年だ?」

 

 「!?・・・今は大正時代だ」

 

 不意に年代を聞かれ戸惑いながらも炭治郎がそう答えた瞬間、手鬼の様子が一変した。

 

 「アァアアア!年号がァ!!年号が変わっている!!」

 

 巨大な体を大きく震わせながら叫ぶ手鬼。その声色には明らかな怒気が含まれていた。

 

 「まただ!俺がこんな所に閉じ込められている間に!許さん!許さああああん!!鱗滝め・・・鱗滝め、鱗滝めえええ!!」

 

 「どうして鱗滝さんの名前を・・・」

 

 何故か師匠の名を叫ぶ手鬼は炭治郎の疑問に答えるようにさらに叫んだ。

 

 「知っているさ!!俺を捕まえたのは鱗滝だからなァ。忘れもしない四十七年間・・・あいつがまだ鬼狩りをしていた頃だ!江戸時代・・・慶応の頃だった!!」

 

 手鬼のその言葉は彼がはるか昔に捕らえられ、この藤襲山に閉じ込められ何十年もの間生き永らえていた事実を示すものだった。

 その事実信じられないといった様子で善逸が叫ぶ。

 

 「そんな、嘘だろ!?そ、そんなに長く生きている鬼がこの山にいるはずがないだろぉ!!」

 

 「そうなのか善逸!?」

 

 野獣の言葉に今度は木村が答える。

 

 「はい、僕らの育手のおじいさんが言っていました!最終選別には人間を二、三人食べた鬼しか入れていない、その間選別で斬られるか共食いするかして長く生きることはないって・・・」

 

 「でも俺はずっと生き残ってる、この藤の花の牢獄で。五十人は喰ったなぁ、ガキ共を」

 

 食べた人数が五十人。

 その事実に野獣や炭治郎をはじめ、その場にいた全員が戦慄する。人数が尋常でないこともそうだがもう一つ、それはその手鬼がどれほど強いのかを示してもいるからだ。

 

 『覚えておけ、基本的に鬼の強さは人を喰った数だ。力は増し、肉体を変化させ妖しき術を使うものも出てくる。お前ももっと鼻が利くようになれば鬼が何人喰ったか分かるだろう』

 

 鱗滝の言った言葉を思い出す。鬼は人を喰った数が大きければ大きいほどその分強くなるのだ。

 

 「どれ狐の面をつけた奴は、一、二、・・・二人か。てことはお前たちで十五になるな」

 

 「!?何の話だ」

 

 鱗滝からもらった狐の面をつけた野獣と炭治郎を指差す手鬼。突然指を刺され、その言動に疑問を抱く野獣と炭治郎に手鬼は薄気味悪く笑いながら言った。

 

 「俺が喰った鱗滝の弟子の数だよ。あいつの弟子はみんな殺してやるって決めてるんだ・・・そうだなぁ、特に印象に残っているのは二人だな。あの二人・・・珍しい髪色のガキだったな。一番強かった。宍色の髪をしていて、口に傷があった。もう一人は花柄の着物で女のガキだった。小さいし力もなかったが、すばしこかった」

 

 花柄の着物の少女。野獣は覚えがあった。秋吉との最後の鍛錬、心が折れかかったとき不意に現れた真菰と名乗った少女。不思議な雰囲気をまとい、自分を励まし、時には丁寧に教え、支えてくれた少女。

 だが手鬼の言葉は真菰がこの手鬼に食い殺されたことを示すものだった。

 もしそれが事実なら、あの真菰という少女は何だったのだろうか?しかし自分は確かに彼女といた。

 手鬼は続ける。

 

 「目印なんだよ。その狐の面がな。鱗滝が彫った面の木目を俺は覚えている。あいつがつけてた天狗の面と同じ掘り方。厄除けの面とか言っていたが、それをつけてるせいで皆喰われた。鱗滝が殺したようなもんだ」

 

 そう言ってさらに嘲笑の色を強める手鬼。野獣と炭治郎の体が昂る。

 

 「フフフ・・・これを言ったとき、女のガキは泣いて怒ってたなぁ。フヒヒヒ、そのあとすぐに動きがガタガタになったから、手足を引きちぎってそれから――」

 

 瞬間、野獣と炭治郎は同時に手鬼に向かって突撃していた。二人は怒りに支配されていた。恩人を、弄ぶように喰い殺されたことへの怒りが二人を昂らせ、突発的な行動に移らせた。

 無数の腕が野獣と炭治郎に迫る。

 それらを次々とぶつ切りにしていく。

 だが迫る腕の数と再生の速さがそれを上回る。

 横合いから腕が勢い良く迫り、二人をそれぞれ殴り飛ばす。

 吹っ飛んだ二人はそれぞれ木にぶつかり炭治郎は失神し、野獣も意識が遠のきかける。

 

 「ウーン、アーイキソ・・・」

 

 まずはお前からとばかりに手鬼の腕が勢い良く野獣に迫る。

 

 「先輩!」

 

 「野獣!」

 

 「うわぁ!」

 

 仲間の危機に木村や三浦、善逸がそれぞれ動き出したり悲鳴を上げたその時――

 

 「猪突猛進!猪突猛進!!」

 

 不意に誰のものでも、もちろん手鬼のものでもない声がどこからか響いてきた。

 善逸が耳を抑える。

 

 「また音が!今度は何だよぉ!?」

 

 ガサガサガサッ!!と草木を乱暴にかき分け音がしたと思った次の瞬間。草木の間から何者かの姿が勢いよく飛び出してきた。

 それは何とも奇妙な姿をしていた。

 猪の被り物をした、上半身裸の人間。その肉体は鍛え上げられ、両手に日輪刀を携えている。

 突然の出来事に手鬼の動きが一瞬鈍る。

 その隙を突くかのように猪男は突っ込み、野獣に迫っていた腕を切り落とした。

 猪男が叫ぶ。

 

 「さあ、化け物!!屍を晒して、俺がより強くなるための、より高みに行くための踏み台となれぇ!!」

 

 「なんだこの猪男!?」

 

 寸前で手鬼の腕から逃れた野獣が立ち上がりながら叫んだ。この奇妙ないでたちの闖入者は誰だ?

 その姿を見た善逸と三浦があっ、と思わず漏らした。その顔には驚きと、既視感がある。二人はこの猪男のことを知っているようだった。

 

 「そう、あいつだよ!俺たちが集まる前に誰よりも早く入山してきたせっかち男だ!」

 

 「伊之助、そんなところにいたのか!探してたんだゾ!勝手にいなくなるなんてひどいんだゾ!」

 

 「知ってるんですか、あの猪男のこと!?・・・そういえば知り合いだとか言ってましたね」

 

 三浦の言葉に驚く木村だったが、三浦がこの世界にタイムスリップした時、伊之助という少年と知り合いになったと言っていたことを思い出す。

 三浦の声に猪男もとい伊之助も反応しこちらを向く。

 

 「あ、兄弟!そんなところにいたのか!すまねぇ、でもこいつ面白いぜ!手がウジャウジャしてやがる!面白いぜぇ!」

 

 そういうと伊之助は再び手鬼に向かって突進する。

 

 「あ、そのまま突撃したらまずいんだゾ!!」

 

 三浦も手鬼に向かって駆け出す。

 伊之助は四方八方から迫る腕を切り落としていくがやはり野獣と炭治郎の時と同じように、横合いから殴り飛ばされ、伊之助を庇おうとした三浦も同様に殴り飛ばされる。投げ飛ばされた三浦は短時間宙を舞いそのまま近くの鬼に頭をぶつけた。

 

 「このクソガキどもめ、まずは見るからに池沼のお前からだ!」

 

 うつ伏せに倒れ込む三浦に手鬼の腕が迫る。

 手鬼の腕が三浦を握りつぶそうとしたその瞬間――その手がちぎれ落ちた。

 

 「は?」

 

 突然の出来事に間抜けたような声を出す手鬼。

 ちぎれた手がぼとりと地面に落ちる。その腕の断面は刃物で切られたようなものではなく、何か別のものでちぎり取られたように荒々しかった。

 

 「・・・蹴り落とされた?」

 

 「そうだよ」

 

 手鬼が眼前を向くと、目の前には先ほど自分が掴もうとした三浦が立っていた。掴まれる直前、勢いよく体を回して起こし、その手を蹴り飛ばしたのだ。

 眼前に立つ三浦は、しかし先程とは全く違う様子を身にまとっていた。

 

 「・・・兄弟が、本気になりやがった」

 

 その様子を見てぽつりとつぶやく伊之助。

 ついさっきまでの三浦は天然で、どこか抜けたような顔と雰囲気だった。

 だが、今の三浦の顔は凛とした顔つきで、その目には闘志と怒りが宿っている。姿勢はまっすぐで全く隙がない。

 その場にいる全員が悟った。これは、戦士の姿だと。

 

 「み、三浦さん・・・これは・・・?匂いがさっきと全く違う・・・まるで別人だ・・・」

 

 失神から起き上がった炭治郎が三浦を見て呟く。善逸も失神していなければ、音が別人だ、といったことだろう。

 

 「み、MUR閣下だ・・・」

 

 炭治郎を起こしながら野獣が呟く。

 

 「知っているんですか?」

 

 「ああ、さっきも言ったけど三浦は俺達迫真空手部の先輩なんだ。普段はさっきみたいに抜けてて天然で、ひどいときには池沼扱いされることもあるけど・・・」

 

 野獣の言葉を木村が継ぐ。

 

 「一度何かきかっけがあったら、あんなふうに別人みたいに豹変するんです。覚醒といった方が良いかもしれない。まるで歴戦の格闘家、戦士のように・・・それを僕らは『MUR閣下』って呼んでるんです。あの状態になったら恐ろしく強くて、敵わない。僕達一度も・・・あの状態の三浦先輩に勝ったことはありません」

 

 今までと全く違う、彼がまとうその空気に、手鬼が一瞬たじろぐ。

 三浦が口を開いた。

 

 「・・・今までの話を聞くに、貴様、何の罪もない少年少女を何十人も喰い殺したようだな。それも散々弄んだうえで。・・・許せん、俺が喝を、入れてやる。俺が直々に・・・正義の鉄槌を下す」

 

 ゆっくりと構えをとる。

 

 「・・・迫真空手の強さ、見たけりゃ見せてやるよ」

 

 直後、三浦が飛んだ。

 跳躍した三浦に手鬼が再び無数の腕を向ける。だが――

 

 便乗の呼吸、弐ノ型、双打『陽』――

 

 その目に捉えられない速さで次々と拳を打ち出す。乱打しているようで、その一つ一つは非常に正確で強烈だった。正確に向かってくる腕や手を捉え、拳で打ち返し、時には大きく損傷させる。

 三浦の動きをかいくぐり、再生したのも含めさらに手鬼の腕が迫る。だが――

 

 便乗の呼吸、参の型、双打『夜』――

 

 手鬼の腕が三浦を捉えるより遥かに素早く三浦の脚が動き、次々と打ち返す。

 三浦の動きは先程までのそれより遥かに速く、正確で華麗だった。

 素早く、一斉に相手の複雑な動きを把握し、正確に、そして相手の動きに便乗するように流れに乗り、手鬼の攻撃を次々とその拳と脚で打ち返していく。

 飛んできた腕の一本を両手でがしっと掴み、手鬼を睨む。

 

 「調子に乗りやがって・・・貴様死にてえのか!いったいどれだけの罪を犯したか分かるか?人間の屑がこの野郎・・・」

 

 「お、俺は鬼で」

 

 「この畜生目がァ!」

 

 「グアァァッ!?」

 

 一気に捻り、三浦が手鬼の腕を引きちぎる。

 三浦の攻撃がさらに苛烈なものになる。だがまだ完全な決定打にはなっていない。

 戦いの様子を見ながら木村が言った。

 

 「先輩・・・これはチャンスです!僕たちが奴の目を潰します!先輩はその隙に奴の首を!」

 

 「分かった、頼んだぞ木村!」

 

 「オッス、お願いしまーす!」

 

 頷き駆け出す野獣と木村。

 木村は傍らの善逸に向き直る。恐怖と混乱と責任感で彼は失神寸前だった。

 

 「善逸君・・・ごめん!」

 

 「え?ファッ!?ウーン・・・」

 

 素早く善逸の胸を突き気絶させる木村。

 意識を失った善逸はそのまま地面に崩れ落ちる・・・ことはなかった。

 次の瞬間、善逸は刀に手をかけ、その鯉口を切り、居合の構えをとっていた。シィッとその口から呼吸音が漏れる。

 気絶しているはずの善逸の明らかな臨戦態勢を見て木村が頷く。

 

 「よし・・・奴の目を狙い撃ちにしましょう!僕が右目をやるから善逸君は左目をお願いします!」

 

 コクリと頷く善逸。木村も日輪刀を構え、突きの体勢をとる。

 それぞれの口から呼吸音が漏れる。

 

 雷の呼吸、壱ノ型、霹靂一閃――

 痴呆の呼吸、壱ノ型、夜瞳照昏世(やめてくれよ)――

 

 瞬間、木村と善逸は手鬼めがけてまっすぐ、突っ込んでいた。その速度はまさに神速。目にも留まらぬどころか、音速を超えているのではと思うほどの速さ。二人が突っ込むのとほぼ同時に、二人の刀が手鬼の両眼をそれぞれ捉える。

 善逸の刀が左目を切り裂き、木村の刀先が右目を突き刺し、破壊する。

 

 「ギャッ!」

 

 思わず悲鳴を上げる手鬼。

 野獣が叫ぶ。

 

 「三浦、奴の腕を潰してください!」

 

 「おっ、そうだな!おい伊之助ぇ!お前も見てないでこっち来て、お前も腕を斬ってみろよ」

 

 「あいよ、兄弟!」

 

 「伊之助早くしろ―」

 

 伊之助も駆け出し手鬼に突撃する。

 

 獣ノ呼吸、伍ノ型、狂い裂き――

 

 二刀流の刀を巧みに動かし、三浦とともに手鬼の腕を切り落としていく。

 木村と善逸が目を潰し、三浦と伊之助が腕を次々と切り落とし或いは打ち返す中、野獣が炭治郎に叫んだ。

 

 「炭治郎、今がチャンスだ!一緒に奴の首を斬るぞ!」

 

 「はい!仇をとりましょう!」

 

 同時に跳躍し、手鬼の首めがけて刀を構える。

 

 「ヒュゥゥゥゥゥ」

 「ヌゥン、へッ、へッ、へッハッ、ヌ゛ッ!」

 

 以前よりもはるかに力強い呼吸が響く。

 大量の酸素が、血が、体中を駆け巡り、体中が大きく躍動し力が入るのを感じる。

 

 水の呼吸、壱ノ型、水面切り――

 野獣の呼吸、壱ノ型、淫夢之一太刀――

 

 一斉に抜刀し横に一閃、刀を振る。

 手鬼の首に二つの日輪刀が一斉に、的確な部位に凄まじい勢いで食い込む。

 普通の鬼より遥かに硬い肉と骨がそれを阻もうとするが、力もその向きもその手鬼の肉体の部位や弱点、流れを的確に掴んでおり、更に切り刻もうとする。そこへ更に新たな力が加わった。

 

 便乗の呼吸、肆ノ型、砲茶魔――

 

 「よし!じゃあぶち込んでやるぜ!!」

 

 手鬼の首めがけて三浦が強烈な飛び蹴りを食らわせた。

 その蹴りは単に手鬼の肉体をダメージを与えるだけでなく、野獣と炭治郎の刀にまっすぐ乗るように撃ち込まれ、二人の刀を振る勢いにさらに力を与える。

 そして。

 

 メキッ!ザンッ!ブッチッパ!

 

 首の肉が裂け、切れ、そして次の瞬間完全に胴体から離れた。

 切断された手鬼の首が宙を舞い、やがてどしゃりと地面に落ちる。

 そのまま切断された首も、そし手頸をなくした巨大な胴体も、あっと言う間にボロボロになり、塵のように崩れ去っていく。

 数えもしないうちに、その巨大な体躯は嘘のように完全に消え去り、後には虚空だけが残された。

 炭治郎が目を閉じ、手を合わせて彼に殺された者たちと、彼自身の冥福を祈る。

 野獣も静かに目を閉じる。

 

 「真菰・・・みんな・・・仇はとったぜ」

 

 手鬼は死んだのだ。野獣と炭治郎たちは、勝ったのだ。

 東の空を見れば、日の光でオレンジ色に染まり始めている。

 野獣と炭治郎たちの勝利を表し、彼らの前途を祝福しているかのようだった。

 

 

 

 

 




大正イキスギィ!イクイクイク・・・アッ・・・ンアッー!(≧Д≦)話

三浦大先輩のご先祖様は日本陸軍の将校だったらしいゾ。空手家で、凄まじい実力の持ち主だったけど、日中戦争の最中、中国でとある中国武術家と激闘を繰り広げた末に後遺症を負って池沼になってしまったらしいゾ。三浦が天然、池沼扱いなのはご先祖様の影響が微レ存・・・?
詳しく知りたい人は窓際行って・・・「MUR閣下」でググれ。





いずれは番外編で、おばみつによる四章再現や猗窩座と童磨による糞尿レストランを書いてみたい、書きます(揺るがぬ意志、ただしR18になる恐れが微レ存)。

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