題名をシンプルにしました。『冴えないXmasの過し方』
旧題は『X'masに恵がウォーミングアップを開始したようです』です。
前編と後編に別れいますが、基本的に短編になります。
本編?の負け犬シリーズとは関係が特にはありません。

付き合い始めた倫也と恵のクリスマスを描きます。
受験、ゲーム制作と忙しい中、恋人として過ごしたい恵と
冬コミに向けてがんばっている倫也。

ちょっとエッチな話になっていますが、R指定はつけません。


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クリぼっちの皆さまこんばんは(偏見)
恋人がいる方には爆ぜていただいて(切実)
ではどうぞ。



冴えないXmasの過し方 

【プロローグ】

 

「サン、ニ、イチ、キュー」

 

「・・・だから、倫也くんはどうしてそこでわたしを1人にするかなぁ?」

「おい、恵、はじまってるぞ(小声)」

「えっ?」

 

 大きくうなずく出海ちゃん

 

「もう少し大きな声でね、出海ちゃん?」

「倫也先輩と話し込んでたのは恵さんじゃないでしょうか・・・」

「なによー」

「あの、二人とも落ち着いて、もうはじまってるから!」

 

コホンッ

 

「メリークリスマス。皆様こんばんは。同人版加藤恵です。本編の『負け犬ヒロインの育て方』では悪役?のような扱いで不本意ですが、どうしてそんなことになっちゃってるのかなぁ?倫也くん?」

「・・・」

「そういうわけで、こちらではまったく関係ない時空間での短編になります、皆様に少しでも笑顔を届けられたらと思います」

「OKです」

 

「・・・ふぅ。こんなんでいいのかなぁ?」

「良かったですよ、恵さん!」

「ありがとう、出海ちゃん」

「あれ、いつもの二人は?」

「詩羽先輩と英梨々は、『どうせ当て馬扱いなんだから、二人で勝手にラブラブしててちょうだい』って伝言あったよ」

「そう」

「そこは否定しないんですね・・・」

「なんか付き合うことになったのに、ぜんぜん恋人らしいことできてないしねー?」

「・・・」

「倫也くんはマスターアップ終わっても新しい仕事作るほうがいいんだもんねー?」

「ごめん加藤・・・じゃない恵」

「わたしたち付き合ってるって言えるのかな?前とあんまり変わらない気がするのだけど?」

「いや、十分ですよ恵さん・・・?」

「出海ちゃんからはそうみえるの?」

「トモー。なんかあたしは出番ないみたいだから、帰るねー」

「じゃあな」

「冷たっ!」

 

「ほら、倫理くん。やっぱり私がいないと話がスムーズに進まないじゃない?」

「もういいから、さっさと進めるわよ・・・バカ倫也」

「やっぱり出るんだ・・・」

【前編】

 

 加藤恵は電車を適当に乗り継いで見知らぬ街に一人いた。

 

(なんでわたしがこういうことに気をつかうかな・・・)

 

 マスターアップも終わった12月24日。恋人たちのクリスマスに恵は一人で買い物をして、それからまた電車を乗り継いて倫也の家へ向かう。

 

(ふたりで過ごそうとか思わないのかなー)

 

 サークル活動は続き、出海も美智留も今日は倫也の家にきて作業をしている。

 

(まぁそこが倫也くんらしいと言えば倫也くんらしいのだけど)

 

 少しニヤける自分の顔をフラットに戻す。

 

※ ※ ※

 

「恵さん、七面鳥が届いてますよ!?」

「ありがとう。じゃあ、さっそくしたくしようか。出海ちゃんは作業の状況はどう?」

「わたしは看板製作に取り掛かろうかと思っているんですけど、でも手伝えますよ?」

「じゃあ、お願い。これ・・・作業工程とレシピだから読んでおいてくれる」

「はい!・・・って何枚あるんですか・・・」

 

 階段あがって、倫也の部屋

 

「加藤ちゃん、こんちわー」

「こんにちは氷堂さん」

「よう、で、恵はどこに行ってたんだ?」

「たいした用じゃないよ」

「そうか、それならいいんだけど」

「あとね、倫也君、もう少し部屋片づけてもらえるかな?」

「ああ、ごめん。なんかいろいろ忙しくて」

「わたしもね、今日はちょっと部屋の掃除まで手が回らないかもしれない」

「わかった。片付けとく」

「それから掃除機もかけて、棚の水拭きと、あとカーテンも外して洗濯してね」

「大掃除!?いや、そんな時間は・・・?」

「してね?」

「はい」

「うわー加藤ちゃん気合はいってんなー」

「あと、氷堂さんにも手伝って欲しいのだけど?」

「いいよーなんでも手伝うよー。トモを縛ればいいのかな?」

「なんでだよ!」

「料理のほうを手伝ってもらいたいのだけど、氷堂さんって料理できるのかしら?」

「恵・・・こいつは東京都の調理部大会に参加して入賞してるぞ」

「なにそれ」

「無駄な才能だけはあるから、欲しいスキルあったら加えていっていいぞ」

「トモー、あたしの出番少ないからってそのいい加減な設定やめてー」

 

※ ※ ※

 

「まずは切り出しからかなー、下味つけて漬け込むものはわたしがするね」

「あいよー」

「恵さん、わたしは包丁使えないです」

「うんうん、出海ちゃんはケーキ作りね、あと盛り付けと」

「はい。盛り付けなら得意です」

「波島ちゃん、女の子なんだから包丁ぐらい使えなきゃ」

「ああ違うんです。手を怪我したら大変だからお兄ちゃんに禁止されているんです」

「なるほどー」

「じゃあ、わたしはケーキ制作やります。でもスポンジはもうできているんですね」

「うん、その上の棚にしまってある」

「前日から仕込んでいるんですか!」

「オーブン使うし、スポンジは前日の方がしっとりしていいんだよ」

「おおっ」

「あっ、ごめん、あのカステラみたいなやつ?さっきお腹すいて食べちゃったよ」

「・・・」

「ウソ・・・です。顔怖いよ加藤ちゃん」

「だから美智留先輩はいちいち地雷を踏みにいかないでください!」

 

※ ※ ※

 

 部屋で書類をジャンルごとに区分けして束ねる倫也。それから掃除機をかける。カーテンを眺めながら

「カーテンって洗うものなのか・・・」

と呟いている。

 冗談なのか本気なのかわからないところが恐ろしい。迷った結果、カーテンを外して掛け具を取ってから下へ持っていった。

 

「わーわー。ちょっと倫也くん、なんで降りてくるの?」

「なんでって、カーテン洗おうかと?」

「カーテン洗うの?」

「いや、恵、お前がいったんだろ・・・」

「あーもう、とにかくそれ置いて、すぐ上いって、降りてこないで!」

「あー、はいはい・・・」

 

 倫也は部屋に戻って、少しぼっーとして、あっバケツと雑巾取りにいかないといけないことに気が付く。部屋のドアを開けるとバケツに水、それと雑巾が置かれていた。恐ろしい。

 

※ ※ ※

 

「恵さーん、このアイシングクッキーのデザイン変えてもいいですかー?」

「いいよー任せるー」

「どれくらい時間かけて平気ですかね?」

「ぜんぜん大丈夫、18時をめどにケーキ完成させてくれれば」

「はーい」

「それにしても氷堂さんすごいねぇ」

「ほめてほめて」

「冷菜は終わったから、次スープお願いできるかな?」

「あいよー」

 

※ ※ ※

 

 部屋で水拭きも終わった倫也は、冬コミ作業に戻る気もせず、かといって受験勉強のことなど思いだしたくもなく、エアスプレーでノートPCのメンテナンスをしたあとは、デスクトップ型PCを開けて、内部の細かい掃除にいそしむのであった。

 

※ ※ ※

 

「ノエルはこんな感じいいですかー?」

「うわー上手」

「さすが波島ちゃんだねぇ・・・」

「いやぁ。でもこれどのお皿に乗せます?」

「それがいい手頃なお皿がなくって」

「ああ!それでか、ちょっと待っててください」

 

 出海が倫也の部屋に駆け上がっていく。

 

 倫也はフィギュアを並べて一体一体メンテナンスしていた。

 

「ちょっと、倫也先輩?何を・・・」

「何をって・・・掃除」

「あーそうですか、さすがにちょっとひいちゃいました。すみません」

 

 倫也は床に座りたくさんのフィギュアに囲まれてニヤニヤしていた。

 

「ひどい・・・で、下の様子はどう?」

「さぁ?」

「何か手伝えることあるかな?」

「ないんじゃないですかね?」

「出海ちゃん、冷たくない?」

「そうですかね?」

 

 出海はごそごそと荷物から、一枚のプラ板をとりだす。

 

「何それ?」

「今日、お兄ちゃんにもっていけって持たされたんですよ」

「なんで?」

「それが今わかったから来たんです。でも倫也先輩には秘密です」

「あっそ・・・」

「あと、倫也先輩、部屋だいぶ綺麗になりましたね」

「うん」

「だいぶ、綺麗になりましたね。だいぶですけど」

「二度いう?」

 

 出海はため息をつきながらベッドを眺める。そこだけそのままだった。この先輩もしかしてアホなんじゃないだろうかと思いながら・・・

 

※ ※ ※

 

「ほら、ぴったりですよ!」

 

 出海は冷蔵庫の上から二段目にプラ板をあてる。

 

「おおっ、さすが波島兄ちゃん」

「なんで、波島くんわかったんだろう?」

「恵さんの今日の作業工程表って、サークルの共有フォルダに保存してませんでしたか?」

「したけど、隠したつもりだったんだけど」

「・・・PC上のものをお兄ちゃんから隠すのは不可能ですよ・・・」

「そうなんだ・・・」

「でもさー、いくら波島兄ちゃんでもあの作業工程表だけでこんなものが必要だってわかるのかなー」

「ほら、お兄ちゃんは作者のご都合主義を体現する役割の人ですから」

「ああ・・・」

 

※ ※ ※

 

「で、そのご都合主義を体現する人は何をやっているのかなぁ?」

「クリスマスイブですから、今日は3マタで忙しいらしいですよ」

「波島兄ちゃん・・・さすがだなぁ・・・」

「あーそうですか。19時にサークルクリスマスパーティースタートって知らせてくれるかな?」

「恵さん、もう18時なんですけど」

「ほら、別にいなければいないでいいし・・・」

「かといってサークルメンバーからはずすようなマネはできないっと?」

「一応ね」

「返信きましたよ」

「なんて?」

「三人目の彼女をつれていくことになるけど、いいか? だそうです・・・」

「知らない」

「ほっとこ」

「はい」

 

※ ※ ※

 

「あら、私たちも呼ばれちゃっていいのかしらね?」

「うわぁーすごい!なにこれ、恵がつくったの?」

「わたしだけじゃないよー、出海ちゃんと氷堂さんと」

「ケーキはわたしです」

「あたしは自分が何やってたかよくわからなかった。忙しかったけど」

「恵の企画遂行の力がこういうところでも発揮されるのね・・・」

「さっ、みんな座って」

「あれ、倫理くんは?」

「あー、忘れてた。呼んでくるねー」

「・・・あれ、本当に忘れてたんじゃないかしらね?」

 

 恵は階段をトントンと上がって、途中で止まってまた降りてきた。

洗濯機から脱水が終わったまま放置されていたカーテンを取り出して、また上にあがっていく。

 

「なんで恵がカーテン抱えているの?」

「さぁ、大掃除らしいですよ。倫也先輩フィギュアまでメンテナンスしてましたし・・・」

「まるで巣作りね」

「センパイそれってどういうこと?」

「そのまんまじゃない?氷堂さん」

「? そういうのわっかんないなー」

「でもでも、倫也先輩はあれだけ掃除してるのに、ベッドそのままなんですよー」

「倫也はリア充になっても倫也だもの。ほっとけば恵がなんとかするんでしょ」

「で、あんたらさっきからなんの話しているのかな。あたしもまぜてよー」

「そうね、氷堂さん、あなたが倫理君のベッドで寝たりするから、加藤さんの仕事が一つ増えたわねって話よ」

「あたしのせい!?」

 

※ ※ ※

 

コンコンッ

 

「倫也くん、はいるよー」

「ああ」

「みんなきたよ」

「みんな?」

「もう降りて大丈夫だから、みんなの相手してきて」

「あっ、でもカーテンの賭け具つけるの手伝ってもらおうかな」

「おう。カーテンって洗うんだな・・・」

「たまにはね」

 

 二人でカーテン掛け具をつけはじめる。

 

「ベッドシーツはたまに洗うんだけどな」

「ベッドシーツはたまにじゃなくて、けっこうこまめに洗うものだと思うけど」

「まぁ昨日洗ったばかりだし、大丈夫だろ」

「昨日?どうして?」

「ひさびさに晴天で洗濯日和とかTVでやってたから、まとめていろいろ洗ったんだよ。カーテンは気が付かなかったけど」

「まー、そんな理由だよねー」

「そういうわけで、かなり部屋綺麗になったろ?」

「そうだね。でも、今日、氷堂さん倫也くんのベッドに座ってたよね?」

「あいつの指定場所みたいなもんだからなー」

 

 カーテンを窓にかける。それから、ベッドのシーツを外す恵。

 

「昨日洗ったよ?」

「そう」

「恵?」

「何?」

「布団カバー洗うの?」

「うん。一応ね」

「そうなんだ」

「ねぇ倫也くん、布団乾燥機あったよね?」

「ああ、廊下の物入にはいってるぞ」

「じゃあ、これもっていって洗濯機回して乾燥までしておいて」

「ああ、うん・・・」

 

 倫也がシーツとカバーを抱えて降りる

 

「うわー、センパイビンゴだー」

「やるわね、霞ヶ丘詩羽」

「加藤さんの考えそうなことじゃない」

「そうかな。恵ってけっこう寛容だと思ったけれど」

「澤村さんまだまだわかってないわね、あの女の独占欲の強さを」

「あたし、女子力低いのかな。さっきからみんな何を話しているの?」

「まったくその通りね、女子力が低いというか、ないというか、なのにどうしてあんなポエムな歌詞が書けるのかしらね?」

「それほめてんのー、けなしてんのー」

「どっちでもいいわね」

「あー、だから今日は倫也先輩は部屋に軟禁だったんですねー」

「どういうこと波島ちゃん」

「いやー、どうせなら一緒に準備を手伝ってもらえばいいじゃないですかー」

 

「って、お前ら何を話しているのぉ?」

「あら、倫理君、いたの。お邪魔しにきたわ」

「倫也―。リア充もたいがいにしろー」

「詩羽先輩、英梨々。・・・とりあえず洗濯してくるから・・・」

 

 ピッピッ 洗濯機を操作する倫也。

そこに英梨々がやってくる。

 

「で、倫也はどうするつもりなの?」

「どうするって何をだよ?」

「だから、今夜のことよ」

「パーティーか、するぞ?冬コミまでまだ時間・・・」

「そうじゃないわよ」

「?」

「恵・・・や・・・や・・・やる気が・・・!?バカ倫也!」

「なんだよ!」

 

 再びリビング

「澤村さん、あんた何自分で地雷仕掛けて、自分で踏んでいるのよ」

「ふえぇーん」

「そうかぁ、ついに倫也先輩も大人の階段上るんですねぇ・・・」

「えっー!そういう話だったの?」

「氷堂さん、あなたバカなの?」

「そうですよー、美智留先輩、今日は最初からずっと下ネタじゃないですか?」

「気が付かなかった・・・orz」

「あのー、ちょっといいですかー。わたしのいる前でわたしの噂話やめてくれるかな?」

「うわー、恵いたの!?」

「いいのかしらね?加藤さん」

「あーお気になさらずー。たくさんいた方が楽しいし」

「恵、あんたこんな日ぐらい倫也と二人で過ごしたかったんじゃないの」

「んー、それはもう間がもたないというか、後でっていうかー」

「そうね、昼間からずっと子作りなんて良くないわよね」

「霞ヶ丘先輩、もうあまりからかわないでください」

「・・・こ・・・子作り・・・聞くとやっぱり破壊力あるワードね」

「英梨々もほどほどにね・・・」

 

「なにトモそんなとこで固まったんのさー」

「いや、目の前でそんな赤裸々なガールズトークされても」

「いいじゃない倫理君、わたしはどうせ蚊帳の外だし」

「はいはい、そろったことだし、そろそろはじめましょう」

「あっ、恵さんすみません。お兄ちゃんが駅に着いたけれど、彼女同伴でいいのかどうか、再度確認してきてますよ?返信しないと来ちゃうんじゃないかな」

「だめ」

「・・・はい」

「もう、思ったよりも文字数多いし、まだ前編だよ?」

「了解だそうです。伝言ありますが、読みますか?」

「いらない」

「なになに、『はっはっはっ、R18で書いてない時点でオチなんてわかりそうなものじゃないか』ですって」

「氷堂さん、読まなくていいから」

 

※ ※ ※

 

「いやーごちそうさまー」

「くったくった」

「おいしかったです」

 

「って、いただきますの前におわった!?」

「うん、出海ちゃん、短編をさくっと書くつもりだったから」

「そんな都合で、わたしのこの力作ケーキの描写が割愛されちゃうんですか?」

「登場そのものを削られた人よりはましじゃないかしらね?」

「このアイシングクッキーなんて各キャラ別に仕上げたのに!?」

「はいはい」

 

 テキパキと片付けを始める恵。洗い物をする出海。

 

「まさか、パーティー本番がこんなにざっくり削られるとはねぇ」

「澤村さんそろそろおいとましましょうか」

「そうねぇ。もうチャチャ入れる気もしないわ・・・」

「お幸せにね加藤さん」

「霞ヶ丘先輩・・・」

「今度は例え同人でもR18で書いてもらいなさい」

「・・・」

 

「センパイ、あたしも一緒に帰るー。さすがに居場所ないよー」

「そうね。もうここで駄々こねてもむなしいだけですものね」

 

「すみません」

 

 出海が申し訳なさそうに手をあげる

 

「お兄ちゃんが家に誰もいないのをいいことに彼女を連れ込んだようで、帰ってくるなっていってます」

「やるな、波島兄ちゃん」

 

「だからですね。倫也先輩、今日は泊まっていいですか?」

 

 ガシャーン!

 

「あっ、ごめんなさい、コップ落としちゃって」

「大丈夫か恵?」

「うん、怪我ないみたい」

 

「・・・波島ちゃんも何気に地雷踏むの楽しんでない!?」

「そんなことないですよー」

「はいはい、お開き」

「そうね、場所を変えて二次会が妥当よね。なんだか一人になったら藁人形とかつくりたうなりそうだし」

「詩羽先輩!?」

 

※ ※ ※

 

 玄関 みんなを見送った二人。

 

 扉の鍵をかけたあと、さらにチェーンもかける恵

 

【後編】

 

というわけで、倫也の家の玄関でみんなを送ったところからです。

 

「・・・ねぇ倫也くん・・・今日何日だっけ?」

「12月24日だな」

「これの前編書き始めたのっていつだっけ?」

「12月24日だな」

「これ、後編書き始めたのって何日だっけ?」

「12月31日だな」

「わたしがこんなことをいうのもなんだけどさー、短編ぐらい完成させてから投稿しようよ」

「ごめん」

「まさか、一週間も玄関で待たされるなんて思わなかったよ!」

「ごめん」

「だいたいさ、こんなに無計画ならさー、最初からやらないほうがよかったんじゃないかな」

「ごめんな恵」

「わたしだってね、いろんな計画を練ってたんだよ?プロットすらない短編でも倫也くんと楽しい時間を過ごせたらいいなって」

「俺も」

「もうさー、これじゃクリスマスの気分になんてなれないよ」

「ごめん・・・」

「さっきから謝ってばかりでさーぜんぜん誠意がこもってないんだよね。倫也くんの謝罪はさー」

「ごめん」

「んもぉー・・・はぁ(ため息)」

「なぁ、恵。とりあえずリビングに行かないか?玄関寒いし」

「一週間立ってたけどねー」

「もう、ほんとごめんさない」

 

場面移って、リビング

 

「それで、これからどうするの?」

「そこは恵の魅力で、待たせた読者にサービスしてもらってだな」

「脱ぐの?」

「R指定ついてません、加藤さん」

「じゃあ、ミニスカサンタ衣装着るかな?」

「恵は着たそうだけど、もうどちらかという正月衣装です」

「別に着たくないしー」

「それにさ、リアルな時間は関係ないだろ?」

「そうだね。真冬に煮込みうどん食べながら、冷やし中華の話書いてたものね」

「・・・」

「確かにリアルは関係ないよ。倫也くんの言う通りだよ。わたしたちにコロナも関係ないから濃厚接触だって問題ないよ。でもさ、だからって一週間も放置なんてされてさー、それでも元の話に戻せって言われてもさー」

「そうだな・・・」

「なんか泣けてきた」

 

場面変わって倫也の部屋

 

「部屋綺麗だな」

「一週間放置されても時間は止まったままなんだねー」

「もう、その話題はいいだろ・・・」

「よくないよ!倫也くん、大事なことだよ」

「ごめん、俺どうしたらしい?」

 

「・・・殺されれば?」

 

ジト目の恵

 

「ちょっとそれしゃれにならないから!」

「まぁ、別の物語でだけどね」

「・・・」

 

恵が自分の鞄をがさごそする。

 

「これ見てよ」

「ちょっと、恵っ!これはまずいよ・・・」

「なんでよー。0.02ミリのMサイズの輪ゴムだよ?」

「そんな輪ゴムあるの!?」

「輪ゴムだよね?輪ゴムじゃないとまずいよね?」

「ああ、輪ゴムだな。ただの輪ゴムだ。うん」

「・・・これを買いにいってたんだよ・・・」

「なんで?」

「いや、その応答はおかしいでしょ?」

「えっと・・・」

「もう、これにツッこまなくていいの」

「いや、ツッこむためのものでしょ?」

「・・・倫也くん?」

「いや・・・ごめん・・・」

「でね、こんな伏線を初めにおいてさー、枕の下かなんかに隠してオロオロするような描写などをしつつね・・・」

「ちょっと・・・」

「倫也くんがお風呂はいっているうちに、アロマたいたり、音楽を選んだりして、細かい演出を考えるはずだったんだよ」

「・・・ぶっちゃけすぎだろ」

「だってさー、もう全然、これっぽっちもやる気起きないんだもん・・・」

「なんのだよ・・・?」

「聞きたいの?言わせたいの?また死ぬの?」

「・・・お前、ほんと怖いから・・・」

「そういうこといちゃうんだー。一週間も放置してそういうこと言うんだー」

「・・・ごめん。ほんと、許して」

「許さないんじゃなくて、許せないんだよ。本編で悪役やっているからって、こっちで・・」

「もうわかったから・・・」

 

「・・・わたしだってね、こんなにクドクド言いたくなかったよ」

「・・・とりあえず、伏線をまともに回収する気がなくなったのはわかった」

「でね。PCで音楽選んでいる時に、波島くんがスカイプしてきてさ」

「という予定だったって話だよね!?」

「そうだよー」

「もう、そこまで話すなら、俺、風呂はいってたほうがよかったんじゃ・・・」

「だから、安芸くんは安芸くんなだよなー」

「ちょっと、安芸くんに戻ってるんですけどー」

「それで波島くんっていろいろ見ぬくでしょ」

「あいつはそういうところあるよな」

「で、こういいうわけ『しっかりものの女性が輪ゴムまで用意するケースがあったけれど、そういうのは男が引くからやめた方がいいよ』って」

「あー、あるある体験談だな」

「あるの?」

「ないです!俺はないです!」

「で、安芸くんはどう思う?」

「んー。それって女が下心ありありなのはよくないみたいな考えってことだよな」

「そうなのかなー」

「いいんじゃね?」

「そうなの?」

「だって、男よりも女のほうが心配だろ?そういうことって」

「えっ、安芸くんだよね?なんか大人だね・・・」

「ああ、ぶっちゃけ、検索しまくったからな」

「何を・・・」

「加藤ぅ!お前はわかってない!」

「ナニヨ。アト カトウジャナイヨ」

 

倫也が机の引き出しの鍵を開ける。そこから個別の輪ゴムを一つとりだす。

 

「俺の香りつきの輪ゴムなんだけど」

「わー、輪ゴムだー。もう輪ゴム銃でも作ろうかー」

「キャラ壊れてるぞー」

 

恵がしどろもどろになる。

 

「確かに俺はしっかりしていない」

「・・・」

「でも、お前を傷つけたくないって思ってる」

「・・・」

「それにな、なかったらなかったでいいと思う」

「ないと輪ゴム銃はただの割りばしの束だよー」

「・・・断ったら断ったでいいと思う」

「・・・我慢できるのかな?」

「お前、ときどきほんとに何もわかってねぇな・・・」

「何が・・・かな?」

 

「そんなの初めてお前がきた日からずぅーと我慢しているに決まってるだろ!」

 

「・・・ちょっと倫也くん落ち着いて」

 

「我慢しているけど、それでいいんだよ・・・」

「大事なことだから二度いいました?」

「・・・コホン」

「臆病なだけってことはないの?」

「それは、言うな恵」

 

「まっ、正直いうと、俺はぜんぜん気が付かなかった」

「何を」

「これ、霞ヶ丘先輩からもらった」

 

バシーンッ

恵が倫也をひっぱたく。

 

「おやじにだってぶたれたことないのにー」

「はいはい」

「って、話は最後まできけよー」

「さすがに今のは倫也くんが悪いと思うのだけど」

「・・・でだ、こっちのチョコ味のが英梨々からだ」

「・・・」

「さらに、この飴ちゃんの中に輪ゴムがはいっているのが美智留からだな」

「・・・なんか、普通にいろいろ考えるもんだなーって感心した」

「まぁ、出海ちゃんは輪ゴムでなくって、このトロリとしたスライムのおもちゃなんだけね」

「うわー懐かしい」

「・・・」

「でも、それってさ、本人たちが使う予定だったりしないかなー」

「恵、もう少し友達を信じろよ・・・」

「そんなこと言われてもさー」

「これ、さっき、こっそり渡されたクリスマスプレゼントだよ」

「そんなにみんな輪ゴム銃で遊びたかったんだね・・・」

「なぁ、恵。今度はR指定つけような」

「いやだよー」

「・・・」

 

倫也が正座する

 

「で、恵はどの輪ゴムがいいと思う?」

「んー。残念だけど倫也くん。わたし帰る」

「なんでぇ!?」

「だってさ・・・」

 

恵が立ち上がる

 

「一週間もほうちされてずらされたらさー」

「まだ根にもってのかよ・・・」

「そうじゃなくて」

「?」

 

恵がコートを着て鞄を持つ

 

「きちゃったから」

 

倫也が正座したまま恵を見上げるが、さすがにその表情は描写できない。

 

「だから、帰るね」

 

「・・・別に帰らなくてもいいんじゃないか。いつも通りで」

「そうかもしれないけど、やっぱり帰るよ」

「そういうもん?」

「うん」

 

恵が玄関で靴を履く。

 

「暗いし駅まで送っていくよ」

「そうだね、本来はそうやって帰り道も話をする予定だったのだけど」

「一週間前でも帰るんじゃん!」

「で、見えない東京の星空の話でもしようと思ったのだけど」

「・・・」

「もう、けっこうな文字数になったし、いいかなって」

「そういう理由ですかー、そうですかー」

 

「じゃあ、またね倫也くん。なんだかんだで楽しかったよ」

「ああ、ありがとう恵。メリークリスマス」

「んー。よいお年を・・・かなぁ」

 

玄関のドアが閉まる。

 

(はぁ、どうして帰るのをもっと止めないかなー。駅まで一人で歩かせるかなー)

ため息をつきながら、恵は駅へと向かった。

(完)

 

※ ※ ※

 

【エピローグ】

 

「恵せんぱーい。こっちです」

「出海ちゃん!?」

「二次会会場でみんな待ってますよ・・・」

 

 お店にはいると、詩羽と英梨々と美智留もいた。

「加藤さん、こっちよ」

「恵~今年もお疲れぇ」

「よっ、加藤ちゃん」

 

「なんかみんな酔っぱらってない?」

「そんな堅いこと言わないでください」

「でもぉ・・・」

 

「あんな倫理君みたいなチキンに期待するほうが間違ってるのよ」

「そだぞー」

「恵もまずは一杯」

 

 ジョッキにはいった渡された飲物をぐいっと飲む恵。

 

「いいのみっぷり」

 

しばらく、5人でやんややんやと騒ぐ。

そこに倫也が登場

 

「おまえら、なんで飲んでんだよ」

「ほら、倫理くんもまずは一杯」

 

 ジョッキを渡される倫也

 

「まだ、18歳になってないから!」

「お酒は二十歳からだぞー、トモー」

「・・・」

 

「倫也くん、なんでここにいるのかな?かな?」

「その話しかたやめて恵・・・」

「でもさ、倫也くんはわたしと過ごすより、みんなと過ごしたいんだよねぇ?」

「ほら、まだもう一つだけ仕事あるから」

「ええっー」

 

 不服そうな恵をなだめる倫也。

 

「はいはい。じゃあ、みんなそろったところで」

倫也が強引に音頭を取る。

「プロローグとるぞー」

 

出海がバタバタと準備をする。

「OKです。いきますよー」

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

「サン、ニ、イチ、キュー」

 

「・・・だから、倫也くんはどうしてそこでわたしを1人にするかなぁ?」

「おい、恵、はじまってるぞ(小声)」

「えっ?」

 

(おしまい)

 

 

 




負け犬シリーズの2と3の間ぐらいで読むとちょうどいいです。

それでは、よいお年を~

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