不世出の考察班たちによる語らい 作:アル・パッキャ
58:シックスロード
速報速報~、アンデッドのエクゾーディナリー見つかってたらしい
59:秀舞
まぁやっぱりいるよね。どれ?
60:ドラタン
アンデッド系列、狩りたい人が少ないから中々見つからないんですよね。死者なせいで外乱を受けにくいってのもあるかもですが
61:シックスロード
エクゾーディナリーモンスター
62:ノーローン
あー、前にどこかで話してた通りだったな。前世由来じゃないと変化起きにくくないかって。
63:ドラタン
けど前世がないアンデッドだって大量にいる、というか大半はバックボーン0ですよね?
64:シックスロード
ちなみにガル之瀬が倒したらしいんだけど(エクゾスキル参考動画)、他にも倒してるらしいから後で聞きに行きな。俺はぱやガルCHのチームメイト知ってたからそっち行った。どうも奥の手にしてたらしいわ
65:秀舞
一応謝礼は出してるけど初見殺しの札ってトップ層ほど隠したがるからなぁ
66:たぶんきる
我らがスポンサー様とガル之瀬の一騎討ち、めちゃくちゃ面白いよね。切り札のめくり合いとか大好きだよ
67:ノーローン
フリーダムフォールとやらは大体アタリつけてるから今度行ってくるわ
68:たぶんきる
ところで>>63これどう思います?
69:シックスロード
アンデッドの変化ってそんなないもんな
70:ドラタン
死こそ常態、生はいとしき蜃気楼って言いますしねぇ。生きてる方がよっぽど変化は多いでしょう
71:秀舞
前世由来の特殊性は出たから他の要因かぁ
72:幌宵
お、雁首揃えて苦しんでそう
73:たぶんきる
メタ的な読みだけど、同じような不世出個体は作らないよなシャンフロ……
74:ノーローン
これ「生まれた時からわかる異常性」って考えに縛られすぎてる気がするな
75:幌宵
けど人為的に特異を作ることはできないし、既に変化は止まった死体だよ?
76:ノーローン
前も言ったけど、生まれた時に異常があって、それが後に表面化するケースもあるワケだろ
77:秀舞
五理くらいある
78:シックスロード
四理は自己補完しただろお前今
79:秀舞
>>75多分あってるけど違うよ。人為的に特異は作れないが、人の影響で特異は発生する。例えばハイドマッドはスローターに対するカウンターだし
80:ドラタン
もしかして特定種族をジェノサイドすれば新しいアンデッドが産まれて?
81:秀舞
新しいアンデッドじゃダメなんだよねぇ。スケルトンワイバーンみたいな枠が出るはず
82:ノーローン
だがジェノサイドも遠からず。人の行動で新しい怨念が……違うな、珍しい怨念を付与できればエクゾーディナリーになるんじゃないか?という話
83:たぶんきる
スケルトンで思い出したけど素体が異常ならどうなるんですかね
84:シックスロード
怨念が根本だから、素体の違い、例えば異常骨格も個体差で片付けられる範囲なんじゃないか? 彼らからすれば武器に斧を選ぶか剣を選ぶかくらいの違いしかないはず
85:ドラタン
>>82 怨念の上書きとか付与って可能なんですか?
86:ノーローン
少なくともヘイトの概念はあって、攻撃の誘導とかはできるから
87:ドラタン
なるほど
88:たぶんきる
そもそも記憶喪失さんの「縁故が切れた」ってなんですか……?
89:秀舞
知らないです…………
90:シックスロード
やっぱり魂とかその手の話は哲学なんだよな。俺らの触れる話じゃない。とにかくリポップ稼いで結果を見るのが早いんだよなぁ
91:幌宵
産まれてからずっとクリスチャンだけどその手の話さっぱりわからん
92:秀舞
クリスチャン名乗るなら節制しろ。ちなみに今何杯目?
93:幌宵
18!!!! この神の血美味しい!!!!!!
94:ノーローン
道理でコメ流れてこねえと思ったよ
95:雑踏鯨
けっきやくおんねんにはかわれわね
96:ドラタン
何これ
97:幌宵
あっ潰れた
「まだかなぁ」
かれこれ数ヶ月単位で久しぶりの、サードレマ以前の辺鄙な低レベルマップにて。ペンシルゴンはあくび交じりに聖槍を振るう。方々には大量のドロップアイテムが散らばるが、どれも二束三文。これらは手段であって目的は別にある。
かつて廃人殺しとまで呼ばれた彼女は山のような死を侍らせていた。かつて1クラン相手にエリア全土を巻き込んだ大規模MPKを敢行した時、彼女と会った。
木陰から瘴気が立ち上る。黒い影が死神としか形容できない風貌を作る。身の丈を越える大鎌を携えて、ゆらゆらと。
「あ、来たね。こんなレディを待たせるなんて大罪だよ?」
ペンシルゴンは聖槍を仕舞い、両手に安価な回復薬を取り出す。体力を回復させるが代わりにデバフも乗る粗悪品だが、自分で使うわけではない。
「昔ならただのペナルティで倒すのは無理なタイプだと思ってたけど、サンラクくんが討伐方法見つけてくれちゃったからね」
状態異常も効かず、デバフも乗らず、ダメージも通らず。およそ初見殺しな性能を誇る黒死の天霊だが、既に攻略法は見つかっている。
すべての
「マイナスになってるHPを0まで戻せば死ぬんでしょ?」
伸びる影の手を避けて、ポーション瓶を投げ続ける。癒して、殺しなおす。それが攻略法だった。弱点の割れたギミックボスなど初心者狩りよりも容易く、ペンシルゴンの復讐はすぐに終わるだろう。
ところで。アンデッドとは怨念の塊である。自分を殺した奴を呪いたい、生者が憎いから殺す……そういった感情で
「シケてるなぁ。あの鎌は要らないけど服の方が良かったな。ま、リベンジ完了!」
例外が存在する。
もし溺れるほどに回復アイテムを投与されるなら、それは「あなたには生きていてほしい」という意思表明になるのではないか? そんな他者からの願いを受けて怨念が変質するとは、考えられないだろうか。
『モンスター
『討伐対象:
『エクゾーディナリーモンスターとの戦闘が開始されます』
「ハハッ、ツイてる。不世出まで会えるなんて!」
「私を生かしてくれるの?」と。
ペンシルゴンの背後に一回り大きいだけの黒影の死神が立つ。その手に救いを絶つ大鎌はなく、無手。まるで受け入れるように両腕を穏やかに広げている。
「へぇ、武装放棄してくれるなんて親切な遺体じゃん。墓荒らしにも配慮してるなんて懐が深いなぁ」
(何が特異? 死の宣告もないし……影! 掴みは健在。けど随分と攻撃手段が貧相になってるね)
影の指先がうねり伸びて、ペンシルゴンに避けられる。代わりにリポップした別のモンスターが捕まり、引き寄せられ、そして軽く撫でられると死んだ。
「即死は変わらずか。まさか弱点まで克服してないよね?」
ポーションを頭から被らせる。通常の黒死の天霊なら怯むか避けるかするはずだが、ノーリアクション。まさか弱点が消えた? ギミックボスがギミックを消したらただのクソボスでしょと、脳内の鳥頭がのたうち回る。
その一瞬の驚きが油断となった。気がつけば目の前に
「触らないでくれる!?」
腕を咄嗟に払う。HPゲージが幻聴の聞こえる勢いで削れたが──
(即死じゃない! 接触時間でダメージ系?)
「何あのモンスター、怖……」
「誰か既に戦ってない?」
別にペンシルゴンは即興のアドリブが得意なプレイヤーではない。事前に必殺の策を用意し、分岐のシナリオを適宜アレンジして転がしているだけだ。不世出個体の登場に、更に他人の登場など予想外すぎる。回避の分は確保しつつ、戦闘に使う脳のリソースを思考に回す。
(他プレイヤー2人、肉盾にして情報収集に使おっか)
「はーい、どちら様? こっちはなんかレアモンスみたいなんだけ、ど……」
「えっ?」
この場で
ポーション瓶を取り出しながら笑顔で協力を呼び掛けようとして、次の瞬間には新参二人とも死神の手の中に落ちていた。ポリゴンを掻き分けて死神はペンシルゴンに近寄り、そして唱える。
今の二人分の命が、最後の一押しだったらしい。
「──
黒衣がほどけて厚みのあるオーロラのように展開、その中から同じく黒い、しかし光沢のある鎧が現れる。無かった二足はちゃんと地を踏み、手には黒長剣を構える。
「ヴィんセンと……」
「wikiでかるーく読んだよ。ヨハンナちゃん、っと。無視ね、了解」
女騎士の剣から距離を取り、聖槍を取り出す。今までのは第一形態、きっとここからが本番。
そして対人戦闘はむしろペンシルゴンの十八番だ。剣よりも槍の方がリーチの分だけ有利。胴を狙って突き、更にそのうらで爆薬を用意している。突きを避けるかいなすか、どちらにせよ中間を爆破すれば距離を離してダメージも入る。おそらく今の段階なら通常のダメージで殺せるはず。
「ヨハンナちゃん思い切り良すぎでしょ……」
最短で槍に腹を抉られながら、騎士は進む。これが他の槍なら抵抗に引っ掛かっていたかもしれない。しかし聖槍はすべての装甲を流れるように貫通してしまう。それは人肉であっても。
人のような余計な思考を持たず、モンスターのような不合理を持たない。そして何より既に死んでいる。得意なように見えた相手は、その実もっとも苦手とすべきタイプだった。
至近の爆薬にも怯まない。顔面をポリゴンで爛れさせながら邁進する。槍を抜こうとする。捕まれる。そして空いた手の黒長剣でペンシルゴンの心臓を刺し殺した。
「あ~はいはいドレイン。それにしても哀れだねぇ。セッちゃんは恋人と駆け落ちできたってのに」
自身のじくじくとした腹部と対照的に、ペンシルゴンは
「私ハ、生キて──」
「いいや、次はちゃんと殺してあげるよ」
自分は殺す、だから殺されて当たり前。そんな死生観でPKを続けたペンシルゴンだからこそ、最期まで好き勝手を言ってから死ねる。
無双の墓守と違い、一度殺しても彼女は甦ってまた別れを知る。だとしても、一時の休息すら与えられないのはあまりに哀れすぎる。自分とは似ていないが自分の友人と似ていた、それだけの慈悲で再挑戦を決意できる。プレイヤーの命とは斯くも軽いから。
彼女の影が縦に伸びて、剣ごと全身を飲み込んだ。残されたのは無手の死神一柱。それは救いを求めて未だ彷徨い続ける。
第一形態「
第二形態「
エクゾスキル「