人を愛せぬ人から生まれた人でなしが人でなしを愛する、ただそれだけの物語の。

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妲己の夫 帝辛

 帝辛、或いは紂王。暴君の代名詞としても知られる、酒池肉林で有名な中華の皇帝の一人。己を天王と名乗る不遜なる王。

 美貌を持ち、弁舌に優れ、力も並外れた完璧超人。故に彼は人を見下していた。頭は己に劣り、力は遥かに劣る文官、力は己を下回り、頭の出来が悪い武官。何方もそこそこ出来るがそこそこなだけの半端者達。

 己に差し迫るもの何一つ持たぬ人間達を見ても、猿が喚いているようにしか見えない。

 人は人を獣よりも優れた神に近き生き物だと囀る。ならば己は神の紛い物なのだろう。

 いいや、そもそも人が信じる神とは幻想に過ぎぬのかもしれない。独りでは何も出来ぬ故に縋るものを求め、己を上に置きたいゆえに人に縋れず、縋るために生み出した幻想こそが神であり、居もしない神の代替として求めるのが人の縋れる範囲に留まる王なのだろう。そう考えればなるほど、己が神の紛い物であると言うのは強ち間違いとも言えぬかもしれない。

 そんな風に人を見下し、人を愛せず、人を愛する方法を探してみた。人は自分より弱い動物や従順な動物を可愛がる。獣が人より下ならば己にとって丁度いいのは人だろう。

 餌をいつでも取れるようにしてやり、交尾が楽しめるように服を脱がせ、人が己の欲求を開放した時に使う言い訳の材料たる酒を池の如く用意してやって。その行為は愛を育む為のものなどと宣う者もいたから真似をしてみたが良く解らなかった。

 忠言してくる臣下も居たが、慈しみなど解らぬ。好き勝手暮らさせてやるこれが慈悲でないなら何が慈悲というのか。

 人を愛せぬ人でなし、故にだろう、その女が、帝辛の心を惹いてやまぬのは。

 

「有蘇氏の娘、妲己と申します……」

 

 美しい女だった。人間離れして、神々しいまでの美しさ。この女を前に、漸く帝辛は神の存在を信じた。

 

 

 

 

 

「何故紂王様は、人を人と思わず、人をあの様に扱うのですか?」

 

 彼女の口から、そんな言葉が出たのは、割と直ぐだ。臣下の誰ぞにでも言われたか、そいつを切り刻んで蛇の餌であるネズミにでも喰わせようかと思ったが、その目は純粋な疑問に満ちていた。

 非難の意志はない。そもそも()()は、その辺りをまだ理解していない。していたら、とっくに興味も失せている。

 

「妲己、我が愛しき妻よ。なにゆえそのような事を余に尋ねる?」

「それは、紂王様が愛する民と仰る人々は、とても愛されているように見えませんでした」

「好きな時に肉を喰らい、酒を呑み、番を定めず雌雄でまぐわう事を赦した。あの者達は幸福を存分に味わっている。それを与えた余が、彼等を愛しておらぬ、そう申すか、お前は」

「…………いえ、それは………あれ? あ、いえしかし、それではまるで家畜ではありませんか。人が人を愛するやり方とはとても………」

「人でもないお前が、余に人らしく人を愛せと言うのか?」

 

 その言葉に、妲己が目を見開き固まる。そんな様も愛らしく、帝辛は妲己の頬に手を添える。

 

「そう驚くな。余はお主が人ではないから愛したのだぞ?」

 

 帝辛は結局人を愛せなかった。

 彼が愛した妲己は人ではない。人に化けた獣。人より遥かに優れた何か。

 

「愛とは対等な存在か、格上に対する崇拝を誤認した時からしか生まれぬ。故に余はお前を愛した。何かの側面故に弱体化し、しかし余と並ぶお前こそ、嗚呼余が縋るべき神だ………だから、望みを叶えよう。汎ゆる願いを叶えよう。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 目の前の人外が人らしく人を愛するのなど到底受け入れられない。そんなふうに人を理解するなど認められない。

 

「人を愛したいと、お前が願うならば余は妻の願いを尊重しよう。だが人を人らしく愛したいという妻の想うのなら、それは否定する。人を愛したいなら見下せ、玩び、弄び、壊れたら哀れみしかし直ぐに捨て別のに変える、その程度に人を愛せ」

 

 そうでなければお前を愛せない、そう言い切る帝辛は、恐ろしく、理解出来ない。理解できぬ者を恐れるのは、一種の本能。だが………

 

「む? ここは………誰だ、お前? 違うな、余が愛しているのはお前ではない。戻せ」

 

 生物には、その全容すら理解できぬ上位の存在に対しても、帝辛は恐れを抱かず畏れもしない。元の場所に、妻の下に戻るとその頭を優しく撫でてやる。

 

「さて我が妻よ。人と違う人の愛し方を知らぬと言うなら、余が教えよう。人で遊んで、人を愛せ。余がお前に求めるのは、それだけなのだ」




紂王
クラス・ルーラー
保有スキル
暴政暗君
己より下の者を強制的に支配するスキル。百貌のハサンなどは分身したままだと一瞬で全て支配される。聖杯戦争に出たら厄介期周りないスキル。神明裁決と組み合わせたスキルでもある。格下相手には無限に使え格上にも2回は使える

殷周革命
暴君でありながら死に方は暗殺ではないという逸話を逆説的に捉えるスキル。気配遮断すら無効化して暗殺、奸計を失敗に終わらせる。気配遮断(EX)は流石に無理

怪力【C】
本来は魔物、魔獣のみが持つとされる攻撃特性だが、猛獣を殺すほど強かったという逸話が反映されている。自身の攻撃力UP

怪物作成
人を知ろうとしたアマテラスの御霊を汚したスキル。味方全体に悪属性付与。

酒池肉林
無限に食料を生み出し酒を沸かすスキル。その場において人を獣に落とした。幻惑を見せ精神を汚染させる効果がある。
敵全体に確率で魅了&悪属性の味方の攻撃力UP

神性・神成
人の座ではなく神になろうとした結果得たスキル。
本人曰く色々してみた

皇帝特権A
美貌を持ち、弁舌に優れ、頭の回転が速く、力は猛獣を殺すほど強かったという完璧超人の伝承が混じったスキル。本来持ち合わせぬスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できる。かなりの高性能で

宝具 獣性発露(じゅうせいはくつろ)怨器(えんき)

対軍宝具。
獣の素体を生んだ事実と神格を得る為に取り込んだ人間達の怨念の合わせ技。数多の魂を取り込んだ己を冥府そのものに見立て、一つの世界として生み出した莫大なエネルギーの一部を怨念を暴走させた怨霊に持たせ自爆させる。
敵全体に強力な攻撃、呪い付与

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対界宝具
数多の魂を取り込んだ己自身を冥府に見立て、しかし存在しない神話という在り方から別世界の系統として確立させた宝具。固有結界に似ているが結界内というくくりはなく世界そのものを変質させる。



未だ妲己を心の底から愛している。妲己とは眼鏡をかけた夫と水着を着た妻ほど両思いだがタマモシリーズからは超嫌われている。本人も彼女達を人に堕ちたとあまり好ましく思っていない。

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