挿絵は れあれもねーど 様(https://www.pixiv.net/users/17143972)に描いていただきました。
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某日・某所
「今後とも我々の活動へのご理解、ご協力をよろしくお願いいたします」
深々と礼をしながら挨拶をする艦娘と、真白い軍服を着た男性が立っている。
「すまないな鳳翔、こんな暑い中付き合ってもらって」
「この程度へっちゃらです。それにお仕事ですから気になさらないでください、提督」
「慣れない山間部で、勝手が違うのでないかと思ってな」
「あら、海上の方がよっぽど暑いし大変ですよ?」
鳳翔と呼ばれた艦娘が、少しいたずらっぽく微笑み返す。
「『艦娘の運用と活動に関する広報』……初めてのことですが、良い経験になっています」
沿岸部と異なり、内陸部では艦娘への誤解が生まれやすい。無用な非難を減らしたいというお上の考えから、このような活動は定期的に行われている。今回は山奥の町で開かれているちょっとした夏祭りの場を借りていた。
「暑い中ずっと喋りっぱなしで喉も渇いただろう」
鳳翔に五〇〇ミリリットルの茶が入ったペットボトルが手渡される。
「まぁ、ありがとうございます。頂きますね」
ペットボトルから茶を飲む所作にすら、気品が感じられた。
「ふぅ……美味しいですね」
そうこうするうちに再び人の波が来て、鳳翔の周囲に人が集まり始めた。訪れた人々に艦娘のこと、普段の活動について丁寧に説明していった。
「ふぅ……」
「長時間ご苦労様。流石に疲れただろう」
「少し……でも、新鮮な経験でしたよ」
絶え間なく人が訪れていたため、盛況であったといえるだろう。老若男女問わず人を惹きつける魅力が彼女にはある。
「帰りが遅くなるといけない、撤収の準備をしよう」
残ってたノベルティやパンフレットを二人がかりで箱に詰め、車に載せていく。撤収作業が終わりかけた頃。
「提督、少し失礼しますね」
汚れた手を洗うのと、用を足すためにその場を離れる。今は催してはいないが念のためだ。
(お手洗いは……)
普段は運動場として使われているであろうこの広場には、今回の祭りにのために仮設トイレをいくつか設置されていたが。
(あら……)
仮設トイレに、特に女性用に列が伸びており、進みも悪そうであった。
(仕方ありませんね……)
広場にある蛇口で文字通り"手洗い"だけを済ませて戻る事にした。
「お待たせいたしました」
「もう出発して大丈夫か?」
「はい……あの、途中どこかで休憩をさせてもらえませんか?」
列に並ぶより、途中パーキングエリアに寄った方が無駄が無いと考えた。並んでいるところを見られたくないという思いもあった。そう考えての決断だったが、これが苦難の始まりになるとは思っていなかった。
ハンドルを握る提督、助手席に行儀よく座る鳳翔。彼が自ら運転するのは、お上の"経費節減"という素晴らしい方針によるものだった。二人と荷物を載せた車は程なくして高速道路に入る。
(少し……行きたくなってきてしまったかしら)
時間が経ったからだろうか、冷房のせいだろうか。
「提督……その……」
休憩所に寄って欲しいと言いかけたが、はしたないと思われないだろうか。そんな無用の心配が浮かび閉口する。近くまできたらお願いすればいい、それで問題ないのだから。
「今日はお疲れ様でした」
違う話題で誤魔化す。
「ありがとう。長時間喋りっぱなしで疲れただろう」
「いえそんな……皆さん良い方ばかりで」
他愛のない会話をしていると。
「……あ」
提督が少し間の抜けた声を上げ、ハザードランプを焚いた。みるみる車速が落ちていき……。
「え……」
車は緩やかに停止する。
「───ああ、渋滞が酷くてな……頼む……」
停車した車内から、提督が携帯電話で話している。帰りが遅くなることを秘書艦に伝えているのだろう。
(早く進んでくれないかしら……)
少しずつ下腹部の違和感が強くなっていく。一度自覚してしまっては、その感覚は無視できない。
(渋滞、どれくらいで抜けられるかしら……さっきから全然動いていないような……)
まだ余裕はあるがきっと長丁場になる。どうしても考えたくない"万が一"が脳裏にチラつく。
「ふぅ……」
できるだけ腹部に負担を掛けないような姿勢を取る。
「大丈夫か?気分が優れないか?」
「いえ、少し時間がかかりそうだと思って」
「そうだな……どれくらい掛かるか見当もつかない」
打ち明ける気は無かった。この閉鎖空間ではどうすることもできない上に、恥ずかしい思いをするだけだ。できるだけ意識しないよう必死で尿意を意識の隅へ追いやる。鳳翔の孤独な戦いが始まった。
~一時間後~
「ふぅ……ふぅ……」
更に時間が経ち、車は牛歩のように進んでいた。それでも次の休憩所までの看板も、渋滞の終わりも見えない。
(うう……辛い……早く…………)
下腹部には先ほどよりも多くの水分が溜まっていた。何度も居ずまいを正して尿意を抑えようとする。そうしてこの不快感から少しでも逃れようとするが、水の逃げ場も、鳳翔の逃げ場もどこにもない。
「はぁ…………はぁ…………」
内側から張り詰めるような不快感。
(どうしましょう……お腹……苦しい……早く……早く……)
普段ならとっくに手洗いに立つレベルの尿意。その上で終わりの見えない我慢を強要されている。
(あと、どれくらいかしら……お手洗い……)
最小限に留めた仕草で耐えるが、じっとしている時間は徐々に短くなっている。自分の身体が制御下から外れようとしていた。
「……鳳翔、大丈夫か?酔ったか?」
「いえ!大丈夫、です」
落ち着きのない様子を見て提督が声をかけた。
「疲れたなら、気にせず寝ていても良いぞ」
「お、お気遣いありがとうございます」
そう言われても、無視して寝ることができないレベルまで尿意は高まっていた。なんとしても抑え込む以外選択肢は無い。
~さらに数十分後~
(どうしましょう……どうしましょう……)
経過した時間の割には車は進んでいなかった。そんなことはお構い無しに貯水量はどんどん増していた。
(お腹……痛い……それにもう、本当に……)
張り詰めた下腹部がチクチクと痛む。あんなにお茶を飲まなければ、あの時並んでおけば。後悔の言葉ばかりが浮かぶ。
「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」
腿の外や内をさりげなく手でさすって気を紛らわせる。
「鳳翔、大丈夫か?」
落ち着かない様子を見て提督は心配になった。
「はい、大丈夫、です……」
脚をさすったり、姿勢を正す動きをしたり、腕をさすったり、視線を変えたり……そうして懸命に、いじらしく耐えていた。鳳翔の孤独な戦いは続く。
~さらにさらに数十分後~
「はぁ……はぁ……んっ……」
少しずつ車は流れ始めていたが、まだ渋滞を抜けられていない。
(お、お腹が痛い……それにもう、気を抜いたら……)
心の中で『我慢できないかも』という言葉を押しつぶす。例え心の中でも、言ったらダメだと思っていた。
(でも、本当にもう、路肩に停めてもらって……いえ、絶対に我慢してみせます!)
頭をよぎる最終手段を即あり得ないと棄却するが、いよいよ限界が見え始め、表情も体も強張り、落ち着きもなく、不規則に身体を震わせるように動く。そんな様子を提督が訝しく思い声をかけた。
「鳳翔……もしかしてトイレか?」
これだけソワソワしていたのだから気付かれるのも無理はないと思った。それでも気付いてほしくなかった。
「えっと、その……はい……実は……」
観念し、俯きながら答える。顔から火が出そうな程恥ずかしかった。
「まあ、これだけ長時間閉じ込められているしな、その、大丈夫か?」
この『大丈夫か』という言葉は『我慢できるか』を問われている。鳳翔は何も答えたくなくて言葉に詰まってしまった。
「かなり、辛いのか?」
できるだけ気を遣った問いかけに、俯きながら首を縦に振った。
「そうか……これだけ流れも遅いから、いつでも"路肩"に停めることはできるが」
即座に首を横に振った。彼女らしからぬ子供のような意思表示である。
「そうだな……助手席の物入れに、いざという時の備えがある」
入れ物のフタを開けてみると、そこには『大容量』と書かれた携帯トイレが入っていた。
「っ!!こ、これは……!」
「まぁ、どうしようもないことは誰にでもあるから、そういった場合の備えだな、うん」
「で、できません!そんな……!大丈夫です!」
つい反射的に否定してしまったが、彼女の羞恥心などお構いなしに身体は限界に近づいていた。
~さらにさらにさらに数十分後~
「うぅ……ふぅ……んぅ……」
先程より更に尿意が強くなっていた。この感覚には上限が無いのかと思う程であった。
(早く早く……おトイレ……おトイレに……!!)
両脚を押し付けるようにギュウギュウと閉じて"出口"を堰き止める。持てる力を股座に集中させる。
「ふー……ふー……」
吐息も声も、身体の動きも、抑えられない。
(あとどれくらいで、渋滞が終わるのかしら、おトイレに行けるのかしら……)
頭はトイレに行きたいという欲求でいっぱいだった。もう限界は目前……それでも我慢することしかできない。
「……なぁ、鳳翔」
「なん、でしょうか……」
見かねた提督が、再び声をかけた。
「この渋滞は誰にも予想できなかった。こんな状況もだ。だから今日この場で起こったこと、これから起こることは全て仕方がないことだと考えている。そして何かあっても私の責任だから、気にしないでほしい」
鳳翔の鈍った頭が一瞬遅れて理解した。要は『失敗しても黙っていてあげる』ということだ。心の底から恥ずかしかったが何も言えなかった。このまま最後まで耐えるか、耐えられるのか、耐えられなかったらどうなるか。そこまで考えた時だった。
「んっ!!」
一際強い大波が押し寄せた。『最悪の結果』を僅かにでも想像してしまったためだろうか。
「んぅ……んんっ!」
この時、今まで決してしなかった"前押さえ"をしてしまった。こんな仕草を人前でするのは初めてだった。恥ずかしくて恥ずかしくて堪らなかったが、それ以上に今にも溢れ出そうな水分を堰き止めるのが最重要だった。
「ほ、鳳翔……」
提督もなんと声をかけて良いか分からなかった。もう限界なのは明らかだった。ならばできるだけ見ないようにするのがせめてもの気遣いと考え、何も言わず真正面を向いた。
(いや……いや!……ダメ……ダメぇ!!)
全身全霊で抑え込む。
「ふぅー……ふぅー……!」
荒い深呼吸をしながら、誤って栓が開かないように両手でギュウギュウと押さえつけ、両脚を必死で擦り合わせる。その甲斐あってギリギリのところで踏みとどまれたが、次も耐えられる保証は無い。
(お願い……トイレ……おトイレ……!)
縋るようにして休憩所が近づいていないかを確認する。すると次のパーキングエリアの案内が書かれた緑の看板が目に入った。
[次のPAまで 25km]
この時、最後まで我慢するのは不可能だと察した。そう認めざるを得なかった。
(いや……漏らしてしまうのだけは……ダメ……!)
それでもお漏らしは、それだけは回避せねばと考える。もしシートにぶちまけてしまったら……そんなことは絶対に避けたい。様々なことを考えて考えて考えて、ついに決心んした。
「……提督……申し訳ありませんが、どうか、どうか、こちらを見ないでください……このようなはしたない艦を、どうかお許し下さい…………」
耳まで赤くして俯きながら懇願する。彼女は携帯トイレにすることを選んだ。路肩でする姿を不特定の誰かに見られる事の方が恐ろしいと判断した。提督は無言で顔を若干右側へ傾け、運転中にできる最大限の配慮をする。
(早く!早く!)
もう猶予はない。慣れない手つきで携帯トイレを袋から取り出して使える状態にする。口に漏斗のようなものが付いた水色の袋を見て、鳳翔は固まってしまう。
(ほ、本当に、本当にこんなものに、するの……?)
寸前になって怖気づいてしまった。人一倍羞恥心の強い彼女には無理からぬことかもしれない。それでも悠長なことは言ってられず。
「あっ……んんっ!」
これが最後通牒だと言わんばかりの強烈な尿意の大波。対抗するために右手で思い切り股座を鷲掴みにする。
(もう……限界っ!)
一度携帯トイレを置き、意を決してスカートに左手を突っ込み下着に手をかける。そして波が僅かに引く瞬間を見計らい、膝上の辺りまで下着をずり下げる。緊張と羞恥で胸が早鐘を打っていたが、素早く携帯トイレを秘所にあてがった。
(こ、これで良いのよね、提督から見えてないわよね、大丈夫よね……)
秘所はスカートに覆われて見えないはず。下着はすぐに穿きなおせる状態。不安げに提督の方を見ると、視線は僅かに右を向いておりこちらは見ていなかった。そうこうしているうちに……。
プシュッ
(あっ!も、もうダメ、もう……我慢できない……出ちゃう……!)
プジュオオオオオオオ
「あっ!やっ……!んっ!!」
遂に放水が始まった。聞きなれない水音を立てながら、みるみると鳳翔の膀胱に溜まっていた水分が携帯トイレに移されていく。
「あ、ああぁ……!」
(私……提督の前で……!)
どれだけ恥ずかしくてももう止められない。鳳翔の我慢に我慢に我慢を重ねた努力は少し違う形で実を結び、最悪の結果は避けられた。それでもトイレまで我慢できなかった。
ジュウウウウウウ……
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
謝罪の言葉をうわ言のように何度もつぶやく。情けなさで涙目になりながらも、身体は放尿の快感に打ち震えていた。そして強い快感と羞恥心がない交ぜになって、何も考えられなくなっていた。
「んっ……はぁ……」
ジョボボボボボ……
(早く……早く終わって……!)
情けない声と音を立てながら放尿が続く。腹部が軽くなっていくのを感じるがなかなか終わらない。この時間が何十秒にも、何十分にも感じられた。
チョロロロロロ……ピチョン
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ようやく長い長い放水が終わった。解放された余韻で気をやってしまいそうになるが、手元から発せられたチャプチャプという水音で現実に引き戻される。
(……!私、こんなにたくさん……)
大容量と書かれた袋が、自分が出したものでいっぱいになっていた。パンパンの袋と手に感じる重みがどうしようもなく恥ずかしかった。そして、まだ拭いてもいなければ下着も下したままであることに気づき、一層恥ずかしさが増した。
「て、提督、その、何か、拭くものは……」
「え、あ、ああ、確か後ろ」
後部座席から、中身を零さないよう気を付けながらティッシュを数枚手に取った。
「その……た、大変お見苦しい、はしたない真似をして、申し訳ございません……」
見られないように気を使いながら湿った秘所とその周辺を拭き、下着を穿きなおした。この時は今すぐ消えてしまいたいほど恥ずかしかった。鳳翔の人生の中でも特に長い一日となった。