本当は昨日投稿したかったけど間に合いませんでした
クリスマスの夜に、恋人と部屋で二人きりという場合。このような状況下において、あなたはどう過ごすだろうか。
恋人とラブラブイチャイチャ過ごして、おまけに
またはギクシャクしたまんま、結局プラトニックな関係を引きずることになる、という可能性も十分すぎるほどある。と言うか、今のオレ達がまさにそんなパターン。ベッドに隣り合って座ったまま完全フリーズ。
この日のためにさんざんシミュレーションしてきたのだが、それも全て本番の緊張の前に水の泡と化した。
そっと隣の彼女の方を見ると、彼女も彼女で顔をうつむかせたまま動かない。クソ、こんなんなるなら日頃からもっとスキンシップを取っときゃ良かった!
× × ×
「へー。じゃあ今日は日菜仕事なんだ。紗夜寂しくないの?」
「少しはね。でも昨日一緒に過ごせたから、私もあの子も後腐れはないわ」
そんな言葉の交換で、オレ達のデートは始まった。え?今からデートするやつらの第一声が、妹についてで良いのかって?そりゃ確かに恋人の前で、それもデート前に他の女の子の名前を出すのはご法度なのはもちろん了承してる。だがしかし、オレの彼女の場合は少々複雑な事情があるのだ。
オレの恋人、氷川紗夜は、まあいろいろあって姉妹仲が非常に
その後オレの家が紗夜の家の真下にあることが判明したり(ちなみにオレ達はマンション住みだ)、ひょんなことから知り合った妹の日菜のお願いで、二人の仲を取り持ったりしてたんだ。関係を取り持ち始めてから、確か九ヶ月後だったかな。なんとか二人を仲直りさせることに成功したんだけど、その過程でオレと紗夜は付き合うことになった。それで……え?ノロケはもう良いって?マジかよ、まだ三時間は話し足りないのに。
まあ良いや。二人は仲直りした反動なのかめっちゃシスコンになりましたとさ、ってこと。だからどんな状況であれ、紗夜の前で日菜の名を呼ぶことは決して問題ではないのだ。
「ちょっと、ぼーっとしてるけど大丈夫?熱でもあるの?」
「ああごめんごめん。大丈夫だよ。それに、バカは風邪を引かないって言うしな」
「またそんなこと言って……。それで、どこに行くかとか決めてるの?」
「決めてる決めてる。ショッピングモールにある映画でも見に行こうぜ」
どう?と視線を投げ掛けると、肯定でも否定でもなく驚愕の表情が返ってきた。
「な、何?オレ何かした?」
「いや、あなたのことだから忘れているものだとばかり……」
「お前の中でのオレはどんなふうに写ってんだよ……」
まあこう言われても仕方ないんですけどね。なんたってオレ、初デートで財布忘れてったんだもん。
「まあでも、今日くらいはオレだってちゃんとするさ。今じゃロゼリアの練習とかで、お前フリーの日めっちゃ少ないじゃん。だから、その……紗夜と二人っきり過ごせる日なんて、そうないし……」
最後の方は恥ずかしさから尻すぼみになってしまったが、紗夜の耳にはしっかりと届いていたらしい。向こうも赤くなった顔を隠すためかぷいっとそっぽを向くとオレの手をさっと取る。
「じょ、冗談言ってからかわないで。ほら、行きましょ!」
「ちょっ引っ張んなって!あとさっきのは本心だって!!」
いつもも紗夜に似合わず強い力で引っ張られて歩きだす。多分向こうを向いてる顔はさっき以上に赤いんだろうな。まあ、こういう照れ屋なとこも好きなんだけど。
× × ×
「さんざんかっこいいこと言っておいて、見る映画はコレ?」
現在、オレ達は映画館に来ている。元々行く予定だったので先に前売り券を買っておいたんだが……
「おかしいかなあ、『地獄の夏~最後の47日間~』」
「少なくともデートでこの映画を選ぶ人はいないでしょうね」
「マジかあ……」
おかしいなあ、予告はめっちゃ面白そうだったんだけどなあ。てか紗夜が初の彼女なので、どうするのが正解なのかがあんま分からない。
オレが密かにしょげていると、突然紗夜が笑みをこぼす。
「もう、しょげてないで。らしくないわよ」
「でも……」
「でもも何もなしよ。それに……」
私、あなたのそういう変なところ好きよ。そう言われて、思わず頬が熱くなる。
「さあ、行きましょ。それに、あなたとだったらどこへ行っても退屈しない自信があるわ」
「じょ、冗談言ってからかうなよ」
「本心よ」
紗夜がしてやったり、と小悪魔のように笑う。おそらくは先ほどの異種返しのつもりなんだろう。これは一本とられたな。
あ、あとついでなんだけど、あのホラー映画選んで正解だったわ。だって上映中に怖がる紗夜が手握ってくれたんだもん。もちろん内容は全部頭から吹っ飛びました。
× × ×
それから色々なところを巡り最後に訪れたのは……
「江戸川楽器店……」
「好きだろ?ここ」
「……ホント、よくわかってるわ」
紗夜とはこうして楽器店に来ることが多い。と言うのも、実はオレもギターを弾いているのだ。まあブランクとかもあって紗夜には全然敵わないんだけどね。
「あ、オレ新しいピック買おうかな」
「なら私もおそろいのものを……」
こうやってギターだとかピックだとかについて話してる時間が一番楽しい。オレ自信ギターが好きってのもあるけど、大好きなギターの話をしている幸せそうな紗夜が好きってのも大きい。
「あっ、そうだ。帰ったらピックにお互いのイニシャル彫らない?おそろいのやつ買ってさ」
「……あなたもたまにキザな事言うわよね」
そう言いながらもおそろいのピック取っちゃう紗夜ちゃんホントすこ。そんなことを思いながらニヤニヤしてたらそっぽを向かれてしまった。かなしい。
× × ×
江戸川楽器店を出ると夜7時を回っていた。もうそろそろお開きでも良い頃である。まあ、オレも紗夜も同じマンションに住んでるから、帰るときも一緒なんだけどね。
「あ……雪」
紗夜の呟きを受けて空を見上げると、同時に顔面に雪の粒が降りかかる。
「冷たっ」
袖で顔の水をぬぐう。つーかホワイトクリスマスなんて久しぶりだな。最近は全然雪なんて降らないからなあ。
「雪はきれいだけど……少し寒いわ」
「な。手つなぐ?」
「……つなぐ」
ボソッと言って、するりと指を絡めてくる。指が触れあった辺りからじわじわと互いの熱が伝わってゆく。
ここからオレ達のマンションまでは15分近くかかるはずなのだが、なぜだか今日は短く感じた。
× × ×
紗夜とはいつも氷川家のドア前で別れているのだが、今日に限ってはなかなか別れなかった。というのも本当だったら、今日はオレの家に招待するつもりだったのだ。それがグズグズしてたらいつの間にか紗夜の家に着いていた。
我ながら情けない。だけど、ここでみすみすと引いても良いのか?答えはNOだ。
「「あ、あの!」」
勇気を出して声をかけようと思ったら紗夜と声が被る。
「あ、そ、そっちからどうぞ」
「いえ、先にどうぞ……」
再びの沈黙。どうしよう、この状況。
「そ、その!一度しか言わないからよく聞いて!!」
「は、はい!」
紗夜は大分モジモジとしていたが、意を決したように息を吸うと、
「わ、私の家に来ませんか!?今日家族いないので!!」
× × ×
と、まあそんなこんなで冒頭に戻る。
つーかオレ情けねえ……。そういうのは男から誘うモンだろ……。
「「あー……」」
苦し紛れに絞り出したうなり声すらも被ってしまい、二人同時に吹き出す。
「さっきから被ってばっかだな」
「もう、あなたが真似してるんじゃないの?」
一度声を出してしまえば、ずっしりと重い雰囲気は払拭されて、いつも通りの感じに戻る。
「なあ紗夜。オレ、お前と会えてホント良かった。一緒にギターいじるのも楽しいし、デート行ってめちゃめちゃな状況になって、笑いあうのとかもすごい楽しい」
「私もよ。あなたと会えなかったら、未だに日菜と喧嘩してた気がするわ」
「お前の場合は大丈夫だよ。なんだかんだで最後は優しいじゃん」
また、二人で笑みをこぼしあう。と、ここでいつの間にか互いの肩が非常に接近してることに気づく。どうやら砕けて話しているうちに、いつも通りの間合いになっていたらしい。
紗夜の燃えるようで、それでいて切なげな瞳から眼を反らすことができない。そっと愛する彼女の肩に両手を置く。両手にぴくん、と肩が跳ねる感覚が走るが、それで反応は終わった。
「紗夜……」
吸い込まれるように彼女の唇に吸い寄せられーーー紗夜の唇を塞いだ。
何秒たっただろうか、どちらからともなく唇を離す。互いの口の間を銀の架け橋が走り、消えた。
ここまでスイッチが入ってしまったら、もはや後戻りはできない。オレは紗夜を
ベッドに押し倒す。
「愛してるわ……」
「オレもだ……」
そうして、二人の唇が触れあうその瞬間ーーー
ガチャリ!という鍵が解錠する音と、バタン!というドアの開閉音、そしてドタドタと走る騒がしい音。この足音は間違いなくーーー
「おっ姉ちゃーん!!帰ってた…ん……だ」
部屋の扉が開いた瞬間、部屋の中は
その後は気分転換に三人で飯を食ったりしてると、自然といつも通りの雰囲気に戻ってきた。あのまま行ったらどうなったのか、とかにももちろん興味はあるが、あの局面まで行ってまで失敗したんだから、オレ達にはまだ早いということだろう。オレ達の戦いはこれからだ!!
まあ、でも、とりあえず。
今はこの日常を、思いっきり楽しんでやろう。
これクリスマスの夜に書いたんですよ
それも友達とも遊ばずに家のなかで一人で
ホント何やってんでしょうね。だが、後悔はしていない