百話:物質に宿りしものに愛される青年
———現代でいえば、『彼』がいなくなって五年ほどが経っていた。
「・・・あーあ、暇だねぇ」
「そうだね」
一人の青年が寝そべって空中に向けてつぶやいた。
どことなくその青年のつぶやきに返事が帰ってくる。
青年から見れば、そこには猫耳のついたフードを被った少女がいるのだろう。
ただ、常人と違うのは———足が、半分ないこと。
半分から下は時計のようななにかに吸い込まれているように消えてしまっていた。
青年は腰に巻いていたカーディガンを肩にかけ、ケラケラと笑う。
「今日は何もないね。なら、あの『学校から消えた七人の謎!神隠しか』って謎を解くかな!妖怪とかの可能性もあるしさ!」
「ああ、あの問題児組だっていう?もう五年ほど前だよ?」
呆れた声でそう返される。
青年はただ笑ってから、静まったかと思えば勢いをつけて立ち上がり拳を握って声を上げる。
「だけども未だに解決されてないんだよ?学校七不思議に追加されるかって論議されてるんだからな!オカルト研究部でね」
「物好きだなぁ。・・・オカルト研究部なんて所属して」
「なにさ。悪いのかい?」
「別に、そうじゃないけど」
青年が不貞腐れた表情で少女を見上げた。
少女はそれに対し、くすり、と苦笑した。
「・・・でも、いいの?」
「なにが?」
「この世界の汚れた欲望のために、私たちを使って」
「いいのさ。俺がやりたいようにしてるだけ。・・・まあ、そろそろ飽きてきたけどさ」
首から下げていたペンダントを持ち上げて日にかざす。
少女がはぁ、とため息をつくと、手を伸ばしてペンダントに影を作る。
「・・・あーあ、なんかないのかぁ?暇ー暇すぎて死ぬー」
「縁起でもない。ほら、あなたは『精霊使い』でしょ」
「それはお前が勝手に呼んでるだけだろ?永久」
永久、と呼ばれた少女が再び苦笑し、言った。
「この世界には絶対的にアヤトはいない。ねえ、どこか別の場所にいかない?」
「そうだな・・・水の加護さえあれば溺れ死ぬこともないし」
ふと空を見上げれば、目から痛みが彼を蝕もうと手を伸ばす。
———誰か、誰かっ!——
「誰だ?!」
「どうしたの?」
目を抑えながら、青年はキョロキョロと当たりを見渡す。
永久は青年のその行動を見て、あっけに取られたように目を丸くした。
———お姉ちゃんが危ないの、誰かぁ、誰かぁ!——
「どこにいるんだよ!声を出せ!教えてくれぇッ!」
「く、くお・・・?!」
「・・・なら幻想郷にこないかしら?」
「そこにいけば声の主に会えるのか?!」
青年と永久の間で、くぱぁ、と空間が裂けた。そこから、「よいしょ」と金髪の女性が出てくる。
青年は声が聞こえた方に顔を向け、叫んだ。
女性はそれこそ愉快そうに応える。
「あら、積極的ね。そうよ・・・ほらほら、齋藤久遠。来ないの?」
「どこだかしらねーけど、助けたいからいくさ!」
青年——久遠は、方向を変えて新たに作られたらしい空間の裂け目に飛び込んだ。
永久は焦って「久遠?!」と声を上げるも届かず。
「・・・どうするつもりなの?」
「別に。意味はないわよ?」
「そう・・・ん?」
くいくいっと永久の服の裾をつかむ存在がいた。
一頭身の炎や水、土の塊。
「久遠に言っとけ!そっちでも世話になるってな!」
「ちょ、炎の精霊?!」
「坊っちゃまによろしくですわ!」
「あんたたち、聞いて・・・」
一頭身のものたちが集い、永久に何かを言っては消えて行った。
永久が怒りに身を震わせると、トンッと肩が叩かれる。
「・・・ん。あなたは久遠について行って」
「・・・・・・はぁああ」
大きくため息をついた永久は、久遠を追いかけるために空間の裂け目に飛び込む。
金髪の女性は、一頭身のものどもに笑いかけた。
「彼がお世話になるわ♪」
☆ ☆ ☆
久遠は着地したかと思いきやすぐに前へ走り出す。
一見すると洞窟の中に見えるかもしれないその中をただ走る。
その後ろから永久が駆けつける。
「もう、私に手伝わせてよね!」
「あーうるさいなぁ。頼んだよ、永久」
「任せなさいっ!」
永久が指を鳴らすと久遠の走るスピードが早くなる。
例えるなら、緩やかな川の隣に激流があるような。
例えるなら、ゆっくり走る車を追い越すスピード違反とも取れる車があるような。
周りはゆっくりと時が流れるのに、彼だけがその倍を走っているそれだ。
刹那、小さな、小さな悲鳴が上がる。
「アーディいるか?!」
「・・・ん。どうせ、声の主の居場所教えろっていうんでしょ?」
土の塊は気だるげに久遠の声に応えた。
久遠はそれにうなずく。
「・・・そうね。次を右に曲がれば整地された場所に出る。そこを右左まっすぐで進めばOKよ。きっと着くわ」
「さんきゅ!」
久遠が一層前に倒れるように低姿勢で走る。
ドンドンと早くなって行く彼に、土の塊と永久は笑い合う。
……再び、悲鳴が木霊した。
新主人公、齋藤久遠くんです!
久遠「よっ!久遠だ!」
想鵐とは違い、天真爛漫、明朗活発を心がけています。
もとは天真爛漫っていったら瀬良だったのに・・・。
久遠「んーと、俺は悪くないぞ?」
ええ、そうですね。
まあそれは置いてきて。
今回の章に出てくるオリキャラはほとんど友人C(と呼ぶことにします)が容姿・性格・能力を書いてくれたものたちです。
ざっと四人ほど。これから増える可能性はありますが、・・・ああ、考えるだけで頭痛い。
幻想招待録よりかはまだマシかもしれないけど・・・今回は精霊もいるからなぁ・・・。
久遠「えっ・・・と、お前確か今風邪っぴきだよな?いいのかよ?」
え、まあよくないですねはい。
久遠「お、おい・・・」
あ、あはは・・。
ちなみに久遠くんはチートキャラチートキャラ・・・という議論のもと生まれたキャラです。
チート臭くないですが・・・。
久遠「まあ、これから俺と永久が主人公(?)としてやっていくぞ!想鵐センパイも出るらしいけど、まあしばらくはな!というわけで、応援よろしく!」
はいはい、そういうわけで。
百話いったぞーいうへへーい。
では、また次回!