久遠Side
俺らは地上へ出る。
山登りさせる・・・わけでもなく、二人は空を飛んでいた。
(当然、永久も浮かんでるわけだが)
さとりは怖がるようにキョロキョロして、その後顔をうつむかせた。
連れてくるのはダメだったかな、なんて少し後悔しながら、俺は呆然と飛ぶ二人を見る。
ああいや、この角度ならさとりのスカートに中身がとか思ってないからな!?
「ほら、久遠も飛ぶんすよ」
「どうやって」
「えぇー・・・。霊力とか云々」
「わかんねーよ!」
長い説明が始まらぬうちに切る。
そういうことは嫌いなんだ。
「えっと、久遠さん、掴まります?」
「・・・うん、じゃあそれでいいや。後で習おう」
さとりが降下してきたので、その手を握る。
ふと見やったさとりの顔は少し赤く染まっていた気がした。
なんとなく、それにつられたのか、俺も気恥ずかしくなる。
・・・どこからか、舌打ちが聞こえる。
瀬良からだった。先ほどまでの笑顔はない。
「おい」と声をかけようとした時、パッと表情が切り替わった。
なんなんだ、こいつ。
「はいオッケー?じゃあいこうか」
「は、はい」
「おう」
白い羽が羽ばたかれる。
巨木の上を通り、俺たちは進んだ。・・・のだが。
「・・・?!木の精霊!」
「おーう、おーう。兄ちゃんじゃないかー。どうしたのー?」
巨木の葉に、見覚えのある一頭身が引っかかっていた。
木の精霊は、ポトン、と俺の頭に落ちてくる。
永久が不思議そうに首をかしげた。
「・・・さとり、悪い、手離してくれ。木の精霊とちょっと話してついていく」
「え、ええ」
さとりと瀬良が飛んで行くのを見守ると、俺は着地して巨木に触れる。
「この中にね、人がいるの」
「人?」
「そなの。この樹には僕以外の木の精霊がいないのは、わかる?」
「・・・まあ、一応」
話によると、木の精霊は木の葉に宿るらしい。
ふと上を見やれば、それらしい影はない。
木の精霊がしゃべりだす。
「・・・中の人がそれを食べちゃってるらしいんだ」
「精霊食ってるやつがいるのかよ?」
「うん。ずっと見てたんだけど・・・この樹が種を植え付けて、中にずっと閉じ込めてる人がね、空腹のあまり腕をツタみたいに使って食べてるんだ」
「・・・ツタ?」
「うん。多分、植え付けられた種のせいだと——」
バキッ、ゴキュ。
樹の中から嫌な音が響く。
木の精霊を掴み、必死に念じる。
“樹の内部が見たい”
幹に手を当てた。当てている手は次第に幹と一体化する。
・・・暗闇の中に、薄緑の明かりが灯っている。
薄緑の明かりは、おそらく木の精霊だろう。
また、バキッと音がする。
明かりがだんだん消えて行く・・・。
そこで見たものは、人は。
薄い水色のジャージを脱ぎ捨てた少年が、頬にまで絡みついた枝をもろともせず、大きく口を開けて精霊を食った。
左肩から生えた枝はその少年の左腕に巻きつき、右腕だと思っていたものは、幾重にも巻きついた枝だった。その手の甲と思わしき部位には黄色の目玉がある。
前髪も、後ろ髪も伸び切っている。ただ、黒い髪であることはわかった。
その様がなんだか見ていて吐き気を催すものだった。
ぼとり、と落ちたものは、精霊の破片。
そう、破片・・・腕とか、そこらへんのものだろうと推測。
それを拾って、またその少年は口に含んだ。
バキュ、ゴキ。
嫌な音は続く。
嫌だ、嫌すぎる。
ふとその少年がこちらを向いたような気がする。
その口が動いた。
「君は、誰かな」
ベリィッと幹から手を剥がして、緊張の糸がきれる。
荒い呼吸のあとで、ズルズルと幹に寄りかかって息を吐く。
膝に、ちょこんと木の精霊が座った。
「・・・いかなくていいの?」
「仲間のところ、か。じゃあちょっと、永久・・・お願い」
「はいはい、わかりました。水の精霊がいればジェットできるのに」
「ははは、それは確かにな」
俺は永久と笑いあい、木の精霊を抱え上げ、たちあがる。
永久の手を掴み、浮かんだ時には、嫌な音は止んでいた。
さあ、あれは誰でしょーか!
理桜「わかるひとにはわかるねw」
久遠「・・・だな」
さとり「早く合流お願いします」
あ、はい。
では、また次回!