・・・進みが遅い(愕然
久遠Side
俺が手を延ばせば、途端その手が掴まれる。
神成だった。
うつむいたまま、ただ俺の腕を引っ張る。
「どうした?」と問う前に、神成の口が開く。
「・・・嫌な、予感がする」
「大丈夫だ。なんなら、お前もみるか?」
その問いに、神成は答えなかった。
まあ見たいなんてそうそう言わないか。
俺は神成を見やってから、再び大樹を見た。
さて、前回からどう変わったか・・・わからない。
けれど、対して変わってない気もする。
「・・・待って!」
一歩前へ踏み出す、と神成から呼び止められる。
な、なんなんだよ。早く見させてくれよ。
「危ない感じがするのに、どうして見るの?」
「決まってるだろ?見たいから」
ヘラッと笑って見せ、俺は大樹を見上げた。
あの先輩がこの中で生きてるのを確認したいだけだ。
それだけだ。
「大丈夫だ、見たらすぐ離れるから」
「・・・私も見る」
「はい?」
「私も、見るよ。何を見たいのか、知りたい」
「・・・そう、か。わかった。小さいの、こっち来い」
「!」
俺は捕まえていた木の精霊を神成の頭に乗せると、小さいのを招く。
小さいのを手に乗せ、大樹の幹に手を当てる。
・・・と、俺は不安に神成を見やる。
神成は木の精霊を見上げながら、どうすればいいのかとあたふたしていた。
「・・・なにかあったら俺が引き剥がす。手を幹に当てろ」
「う、うん」
ピトッと手のひらを幹に押し当てた神成は、緊張気味にうなずいた。
俺はその肩を掴む。
ポウッと淡く緑のオーラっぽいものが神成を包む。
ずぷりっと手のひらが沈み込んだ。
・・・途端、根が轟いた。
「!!」
「・・・・っ!!!ひぃっ」
「お、おい神成?!」
「———っ」
神成が怯えたように声を上げる。
それと同時に、メキ、メキメキと木の幹が変化する。
それは、神成の手を覆うように変化していく。
俺は松明を取り出して、その部分を焼いた。
「木の精霊、解けっ」
「うーむ!」
パシンッ。
緑のオーラっぽいものが弾け飛び、神成が後ろへ倒れこむ。
それを抱きとめて、松明を地面に深くさし、固定する。
ちくしょう、今水持ってないんだけど。
幻想樹は燃え広がることはなかった。
ただ、神成の手の甲に火傷のあとがついてしまう。
「う、うう・・・久遠、くん・・・?」
「・・・うあっちゃー、嫁入り前の娘になにしちゃったのさ、俺」
手のひらで顔面を覆い、俺は後悔する。
精霊にここを任せて、俺は瓶を取り出す。
(この瓶は旧都に落ちていたゴミ)
流石に貧乏といえども水はあった。
その水を少しばかり頂戴する。
すると、精霊が浮かび上がった。
「やっと呼んでくれましたのね、坊っちゃん」
「早速だが仕事だ。いいな?」
「もちろんですとも」
水の精霊だ。
雫に手が生えたような、一頭身。
俺はすぐさま神成の元へ戻り、その手を冷やそうとする。
「げっ」
声が聞こえた方向に俺と水の精霊は向いた。
炎の精霊だった。
「堅物液体が、もうすでにいるだと?!」
「あら、野蛮な火の粉さんこそ、もうそこにいらしたの?」
バチッと火花が散る。
・・・まあ、何かと仲が悪いんだよな。
とりあえず、水の精霊の力を借りて、氷を作り出す。
水を圧縮して固めるだけ。うん、簡単。
(それなりに、水の温度は低いが)
それを手の甲に当ててやる。
「つめたっ」
「我慢しろー。一応、幹と一体化しそうだったんだし、うん」
それにしても、あの根の動きよう・・・。
特異な力による負荷でもあったんだろうか?
おお?今俺それっぽいこと言ったんじゃね?じゃね?
まあそれはいいとしてだ。
「・・・神成、無事か?」
「平気。えっと、あれって・・・」
「あれが、あの樹の中にいる人」
「・・・そう、なんだ。あんな、白に近い髪・・・」
「!?」
色素が抜けてる?!
なんのために?何故?
「・・・」
「久遠、くん?」
「ああいや、何でもない。立てるか?」
「うん、大丈夫」
「そか。じゃあ。ちょっと付き合ってくれ」
「・・・?」
神成が立ち上がる。
樹を見上げてから、俺はその場を立ち去る。
精霊たちはそれぞれの居場所に。神成は俺についてきた。
(情けない話だが、まずは住む場所が欲しい・・・)
俺はチラリと神成を見やる。
首をかしげた神成に、俺は気づかれないようにため息をついた。
ミレイさん困らせたかったです。それだけ。
でも、ただ火傷しただけという。
・・・・あるぇ?
ミレイ「困る困る」
久遠「ダメ絶対」
大丈夫、次回からは丁重に扱います。
久遠「聞いていい?」
はい?
久遠「想鵐先輩どうしたの」
まあそれはおいおい。
・・・私が忘れないことを祈っててください。
久遠「えっ」
ではでは、また次回!
二人「・・・で、では・・・」