想鵐くん変態。
想鵐Sido
未來による、妖夢誘拐から数日。
結局あれは妖夢を誘拐したかったのか、僕を殺したかったのかわからずじまいだった。
別によかったんだけどね。でも、妖夢が殺されるのは嫌だ。
・・・未来がいる。
未來がそういっていた。未来を殺すとも。
させない。
僕は決めたんだ。世界を枯らすのではなく、救うって。
妖夢を放っておけない。妖夢を守る。
霊夢たちも、絶対、守る。
『都合がよすぎますよ、先輩』
そんな声が聞こえた気がして。
僕は耳を塞いだ。
声が聞こえるはずない。
この場に未来がいるはずないからっ!!
『先輩、よく聞いてください』
「い、やだ・・・」
『あなたは、絶対にこの世界すら枯らし尽くしますよ』
「言う、な」
『わかってるのに、逃げるなんてずいぶんと卑怯者になっちゃったんですね』
「違う、違うんだ」
『なにが違うんです?違わないじゃないですか。妖夢さんを守る、世界を守る』
「ひ、・・・」
『そうやって言い訳つけてレミリアさんの言った言葉から逃げてる』
「殺されてもいいんだよぉ!!!」
『ならなぜ耳をふさぐのですか?聞きたくないからでしょう?』
「う・・・」
『だからズルいというのです』
「・・・・・・・誰だ、君は」
『未来ですよ』
「未来じゃない」
『?未来ですよ』
「・・・未来はもっと大らかだぞ」
僕はやっと思考をまとめられた。
未来らしいそいつの言葉は、未来らしからぬ追い詰めるような口ぶり。
『やだなぁ先輩イメチェンですよ、イメチェン!』
僕はその声を『枯らす』。
すると、『あ、がぁ・・』という声とともに、プツンと何かがきれた。
そしてついにその声を聞くことはなくなった。
「・・・未来はなにより自分のその性格を大切にしていたんだ」
そう言って、僕は居間に出た。
そこには霊夢と妖夢、魔理沙に輝夜、幽々子、アリスがそこにいた。
「あら」
「あ、おはようございます!」
「よーっす」
「痛い~」
「うふふ、目が覚めたのね~」
「ご飯はもうできてるわ」
霊夢がそっけなく煎餅を食べながら僕に声を掛け、妖夢は元気良く挨拶してくれ、魔理沙はボロボロなままで手を振ってくれる。輝夜は腕を抑え、涙目。幽々子は妖夢を抱きしめて、ご機嫌そう。
そこで、アリスが米とおかずを持ってきてくれる。
・・・うん、大所帯。
「なんでいるのさ、みんな」
「家主よ、私」
「あれ?昨日のこと覚えていらっしゃらないのですか?」
「霊夢は当然として、妖夢、魔理沙、輝夜はわかるけど、アリスと幽々子は」
霊夢には聞いてない。
僕はアリスと幽々子を見る。
すると、幽々子が返答してくれた。
「よーむのお迎え~」
「えっ?!わ、わざわざそこまでされなくても!」
「したいの~」
「は、はぁ・・・」
妖夢を抱きしめたまま、笑みを浮かべて幽々子は「えへへ」と照れた。
・・・幼児かっ!
すると、アリスも口を開いてくる。
「ただのおせっかい」
「おせっかいか」
少し落胆。
アリスは、「まあ」と続けてくれる。
「今怪我人とあまり動かない人しかいなかったし。動けそうなあなたも寝てたようだったから」
「あ・・・うん、ゴメン」
「いいのよ。好きでやってるわけだし」
「助かったよ、本当いでででっ!?ま、魔理沙っ!ギブ、ギブ!急に耳引っ張らないで!」
「・・・なに怪我人に負けてんのよ」
「霊夢、不意打ちだぞ!?ってなんで霊夢も足踏んでるの?!」
アリスと話してたら急に魔理沙に耳引っ張られ、霊夢には足をかかとでグリグリされる始末。
それを見て、妖夢とアリス、輝夜は笑っていた。
幽々子はすでに飽きたように妖夢をいじっていた。やめなさい。
こんな、日常を守りたい。
そこで僕はケータイを取り出す。
来てからずっと見てなかったけど、電波は届くらしい。
届かなくっても、写真くらいは見れるだろう。
写真一覧を開いて、霊夢たちに見せる。
見せた写真は、未来のもの。
・・・ものすごいとびっきりの笑顔の。
「・・・・変質者さんですか?」
「ち、ちがうっ!たまたま撮ってって言われたからーーー」
「嘘くせーなー」
「待って、魔理沙、痛いーー霊夢も体重かけないでっ!」
「それって重いって言ってるのかしら」
「言ってない!言ってないからっ!」
「おー、可愛い~」
「そうね~。そーむも隅に置けないわね~」
妖夢には引かれ、魔理沙と霊夢からの体罰は酷なほど威力が倍増。
輝夜、幽々子は全然的外れな方に解釈する。誰も自慢してないっ!
冷静なアリスが察してくれる。
「これが未来?」
「あ、うん。それで、もし未来を見つけたら守ってあげて欲しい」
「「「「・・・・」」」」
なぜかむすっとした霊夢、魔理沙、輝夜、アリスに武器を構えられる。
「いや、ちが、未来が未來に狙われてるんだよ!」
「みらいがみらいに・・・ああ、女が男に」
「そう、そういうこと!殺されるんだ。だから、もしこの子を見つけたなら助けてあげて欲しいんだ」
「・・・・なんか、難しそうね。どこにいるのかわからないのに」
「無理を承知でお願いする。不安で仕方ないんだ・・・」
僕は理解したアリスの肩を掴んで、揺すった。
「僕のせいで、こんなことになって!!二回も殺されるなんて!!!!」
「・・・想鵐?」
「・・・あれ。僕、みんなに言ったっけ」
「なにを、よ」
「僕は人殺しだって」
拳を握りしめ、ケータイを閉じる。
何も言われない。
責めもしない、怒りもしない。
「僕の能力は、全てを枯らす能力。だから、レミリアの言ったとおりーーー能力を暴走させれば、うっかり幻想郷を枯らしてしまった。なんてことになるんだ」
「・・・バッカみたい」
「そうだな!」
「はい。本当にくだらないです」
「妖夢がそんなに言うとは意外ね」
「私だってそう思うことくらいありますよ」
「でもまぁ、そんなので嫌いになんてなんないし~」
彼女らは、ただ笑ってそう言ってくれた。
気遣いがーー否。本心であると伺える。
それが嬉しくてーーー涙があふれる。
「・・・・」
みんなの目が優しい。
なんだよ。なんなんだよ。
「と、とりあえず、よろしくっ!!・・・・・・・ありがとう」
「おう!どんと任せろ!」
「まあ仮にも賽銭入れてくれる居候だしね」
「はいっ!お気になさらずっ」
「はいはい。わかってるわ。・・・気にしないで」
「いえー!じゃあ頑張るっ!」
すると、輝夜の背後に銀色の髪をもったーーー永琳さん。
「姫様・・・?」
「あ・・・、え、えーりん・・・」
「おはようございます、姫様」
「あ、うん、おはよー」
「さて・・・帰りますよ」
「いーやー!!」
永琳さんは輝夜の襟首を掴んで、飛んで帰って行った。
すると、妖夢も幽々子に連れられていった。
「じゃあそろそろ、だな」
「あんたはさっさと帰りなさい」
「ひどいぜっ!これでも怪我人なんだぜっ」
「はいはい。あ、アリスは手伝って」
「・・・わかったわよ」
魔理沙はよろよろと立ち上がり、箒に跨って神社を後にした。
アリスが立ち上がると、霊夢も立ち上がり、二人は台所へと向かって行った。
「・・・・はぁ」
そんな、引かないものなのか?
いくら好意を寄せられていても、殺人犯なんてーー怖いだろう。
「常識が通用しないのな・・・」
心の中で、そう笑った。
霊夢Sido
「霊夢、あんた・・・」
「言わないで」
私は、アリスを睨む。
「・・・なんで震えてるのよ」
「だって、私・・・」
「あいつが好きなんでしょう?」
「・・・」
「なら、殺さないって信じてやりなさいよ」
アリスはふっと微笑む。
そうね、と漏らして私は台所の椅子に腰掛ける。
アリスが食材を確認してから、料理を作ろうと悩んでいた。
・・・思ったより、私・・・心労が溜まっている。
それは、想鵐にも、魔理沙にも言えること。
私は、どうしても自分を犠牲に助けるなんてことができなくなっていた。
「・・・・嫌な奴」
はぁとため息まじりに、私はつぶやく。
アリスは訝しげに私を見て、また笑う。
「・・・あなたの性格は、想鵐よりかは知ってると自負してるわ」
「短い付き合いなのに?」
「似てるから」
「はぁ?」
「あなたは、私に」
「・・・そう」
私はアリスから視線を背ける。
なぜか、普段の妖夢や魔理沙並に輝いて見えたから。
それにーーー想鵐への想いを、理解し難く思ってしまった、から。
想鵐Sido
「なんでこういう時にこないのかなぁ・・・」
僕は、未來へ愚痴る。
今、ほとんどが出払っていて、暇な状態だ。
「・・・まあ、気まぐれ・・・なのかな」
たはは、と笑って、空を見る。
体は異様に重く、立ち上がるのがきつい。
悲鳴をあげるように、ギシリと軋む。
「・・・・・・未来」
ケータイを出し、思い出の写真を漁る。
見れば見るほど、どこか妖夢と似ている。
笑みの浮かべ方も、照れて隠す時の仕草も。
緑系の服が多かったなぁ。剣道をかっこいいと言って習ってたし。
たまに毒を吐くっていうとこも、ね。
そうやって考えると、妖夢をよく見ているんだと感じる。
未来よりも、じぃっと。
いや、でもーーー未来のことを忘れられるはずがないんだ。
未来との思い出は、切っても切れない大切なものであり。
自分の中の何かを培ってきた、心の一部なんだから。
第三者Sido
紫は、紅魔館の一室で、レミリアと対話していた。
そのレミリアの表情は暗い。
「・・・・あなた、やっぱり」
「言うな。それに、あんたが想鵐を殺そうとするのはーーー」
「・・・・・・・悪い?死者の復活なんて」
紫は醜さを醸し出すような笑みを浮かべた。
「別の幻想郷の賢者が好意を寄せた・・・異変の主を復活させるなんて」
「ーーー希新。または、希翆。影を操る、スキマ妖怪の相棒・・・」
くすり、と紫は笑む。
レミリアは気味悪げにそれを見て、ため息をつく。
「はぁ・・・あり得ない」
「あの時は危惧されていたようだけど・・記憶も戻り完全な形で復活させればいい」
「・・・幻想郷のためじゃなく、男のためなんてね」
「ふふ。情報屋からもらった情報だったのよ。もっとも・・・」
ぺらり、と二枚写真を指でつまむ。
それには、未来と、少年が写っていた。
「・・・彼は、きっと敵対するだろうけど」
紫はスキマを展開し、その中にポイと写真を捨てる。
レミリアがそれを見て、咲夜が淹れた紅茶の飲み干す。
「これから始まるのは、たくさんの些細な異変、そしてーーそれを束ね、強大な式を作る異変よ」
手伝ってくれるわね?と殺気立った目でレミリアに問う。
元がガラスのハートのレミリアには、それを拒否するのは、とても勇気が要った。
だからーー手を差し伸べる。
紫はそれを取り、レミリアの心に、ピシリとヒビが入った。
次、萃夢想っす!
後、新オリキャラが出ます!はい!では~!