幻想散々的   作:Lan9393

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八十九話:想鵐の決意

想鵐Sido

 

「・・・そういう、わけなんだ」

「僕は、人のために命を・・・そういうことだよね」

「ああ。間違いなく救える」

「わかった。瀬良、ありがとう」

 

僕は、瀬良に礼を言った。

内容は確かに絶望的かもしれない。

だって、彼は僕に死ねと言っているも同然なんだから。

しかし僕はそれを甘んじて受け入れなければならない。

 

「・・・僕の命はみんなのために使うんだ。だから、嬉しい」

「すまない・・・っ!」

「どうして、君が泣くの?どうして、なの?」

 

瀬良はうつむいて涙をこぼした。

どうして、どうして・・・。

僕には意味がわからなかった。

彼が泣くのか、その理由はなぜか・・・。

 

「本来なら俺が止める役目なんだ・・・!種にしなければならないッ!だけれどこの幻想郷には幻想樹が必要だッ!霊夢には天子を生贄にするのを止められたし、巫女を生贄とするわけにもいけない・・・。俺は、俺は・・・っ!」

「瀬良」

 

僕は短く瀬良を呼んで、その頭を撫でた。

 

「瀬良に、そこまで傷ついてほしくない。・・・そう思う人は、たくさんいるよ。早苗も、文も、椛も枯葉も。妖怪の山のみんなや霊夢だって」

「・・・」

「君は、君を信じて心配してくれる彼女らを助けるんでしょ?だったら、僕の命、使ってよ」

「・・・想鵐」

「僕は君にこの幻想郷を見届けて欲しい。天狗の長として」

「・・・わかった。決行は明日の朝。幻想樹の前で」

 

 

 

「・・・へぇ?やっぱあんた、死ぬのね」

 

瀬良が帰ったあと伝えた霊夢の言葉が、思いのほかズシンとくる。

僕は苦笑いで返した。

 

「やっぱ死ぬって・・・これまた直球だね。まあ、あながち間違いではない」

「妖夢には?」

「・・・まだ、だよ」

 

ぽかり、と頭が軽く殴られる。

ため息と共に、言われた言葉。

 

「明日でしょ?いいの?」

「見送らないで欲しいんだ。困るから」

「ふぅん・・・。私らはいいわけね」

「あ、あはは・・・、やっぱそこ言います?」

「言うに決まってるでしょうが」

 

呆れた様子で、霊夢は縁側に座った。

僕はその前に立つ。

 

「伝えたのは、君が始めてだ。知ってる人はいるけど、ね」

「ふぅん?」

「・・・この神社におかせてくれて、ありがとう」

 

深々と頭を下げて、僕は礼を述べた。

チラリとそちらを見れば、びっくりしたような霊夢の顔。

 

「君のおかげで、僕は死なずにすんだよ」

「・・・お金」

「はいはい、・・・どうぞ。一万円札」

「頂戴するわ」

 

霊夢が僕の手から一万円札を抜き取る。

 

「・・・あんた、もし帰ってくるのとしたら、どこに行くつもり?」

「さあ?どこだろう・・・・でも、やっぱり可能性は」

「白玉楼?」

「・・・そこらへんは、曖昧だけどね」

 

苦笑すれば、鼻で笑われる。

僕は変わらない霊夢の様子に、ただただ「感謝」するばかりだ。

ピシリ、と僕の眼前に大幣が突きつけられる。

 

「あんたがその境内から出たら他人。初対面の他人よ」

「うん、わかった」

「・・・ふんっ。ま、せいぜい頑張りなさい。あんたを慕う人は、あんたを希望にしてるのよ」

 

希望・・・。

僕が、か。なんて前髪をかきあげながら笑った。

グッと親指を立てれば、霊夢がそっぽを向いてそのまま頬杖をつく。

 

「・・・さっさといきなさいよ」

「うん。お世話になりました」

「・・・」

 

僕はもう一度礼をしてから境内から出る。

嗚咽が聞こえた気がしたが、僕はそれに足を止めず、神社をあとにした。

 

 

 

「バカ・・・っ!」

 

 

さぁ、と風が頬を撫でた。

ほんの少しの後悔を、持って行ってくれるように、胸が軽くなった。

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