第三者Sido
今、魔法の森。僕はお世話になった人、一人ずつ挨拶をして回っていた。
砂暗に乗って、魔理沙の家の前へつく。
コンコン、とノックすれば、出てきたのはボロボロの魔理沙。
「や」
「おう!想鵐か!どうかしたのかー?」
どこかその目は虚ろである。
僕を視界に入れれば、より暗く、鈍くなるその目。
僕はそれを特に意識せず、言葉を紡ぐ。
「明日、僕は死にます」
「・・・やっぱり、瀬良はお前を選んだのか。言ってたけどさ」
「彼が天狗の長になるって話も聞いた。追い詰められてるんだろうね」
責任感を持たされて、担ぎ上げられて・・・。彼は、とうに疲弊しているだろうに。
なんで僕にわざわざ伝えたのだろう。
「・・・両者・・・入れる者と入れられる者の了承がなければ、幻想樹は強引に取り込むらしいんだ。きっと、瀬良はそれを見たくなかったんだろうなぁ・・・」
「・・・そっか。そう、なんだ」
「ああ。ま、お前は気にしなくていいさっ」
「そうだね。ありがとう、魔理沙」
僕が魔理沙に笑いかけて言うと、魔理沙はちょっと悲しそうに笑った。
ふとした表情に、つい僕は首をかしげてしまう。
「・・・ごめん、想鵐」
「え?」
魔理沙の口からこぼれ出るような声。
か細く、小さな声は謝罪を口にしていた。
「・・・私な、香霖に言われたり、霊夢を悲しませてたっていう理由で、想鵐に死んでほしい、想鵐を殺したいって・・・思ってたんだ」
「・・・そうだろうね」
「私は———って、は?!」
魔理沙がつぶやくように告げた内容を、僕は肯定した。
「な、ななな・・・お、おま、自分を殺そうなんて思ってたなんてセリフに、なんでそういう・・・」
「だって、事実だよね。紫にもそうやって思われていた・・・つまりは、他にも思っている人がいるかもしれないってね。理由は違えど、いるんじゃないかとは思っていたから」
僕はあえて笑みを崩さず、極めて冷静に努める。
魔理沙は明らかに戸惑っているかのように眉を寄せて僕を見た。
何も出ませんよー。
「・・・そう、か」
「僕のこと、嫌いですか?」
「いいや、好きだ。・・・友情じゃない意味で、な」
「えっ・・・?」
僕は魔理沙が顔を赤らめているのに気づく。
うつむいた魔理沙はふぅと息を吐くと笑みを浮かべてこちらを見上げた。
「わりーわりー、変なこと言っちまったな!なんでもないから、他のやつのとこいけよ!な!」
「・・・魔理沙」
「な、なんだよ?」
魔理沙は驚いて肩を揺らす。
そんな怖がらなくてもいいのに・・・僕は彼女を抱きしめた。
「僕を好いてくれてありがとう・・・。気持ちには応えられないけど、すごく嬉しい」
「へ、へへっ・・・んだよ!お前、そういう断り方されちゃあ諦められないぜ!」
「そ、そうかな・・・?」
「おう!ま、応えられなくても私はずっと好きでいてやるのぜ!」
「はは、嬉しいや。魔理沙、ありがとう。僕も好きだよ——」
僕はそれだけいうと、さっさとその場から立ち去った。
今の流れでは、明らかに『友情』の意味だとはわかるだろう。
(・・・諦めさせた方が良かったかな)
どうせ、帰ってこないのだし・・・。
そう思ってやめた。
瀬良や霊夢、魔理沙はきっと戻ってきて欲しいと思ってるに決まってる。
(・・・魔法の森・・・アリスの家だな。次は紅魔館だね)
まだまだ日が落ちるには早い。
歩くスピードを落として、アリス宅を目指した。