想鵐Sido
(・・・魔理沙の時は気楽にノックできたんだけどなぁ)
ドアをノックすることに気が引けてどうする!
僕はドアを叩こうとする。そしたら後ろから、
「・・・想鵐?」
「うひゃああい!?」
急に声が響いた。
驚き飛び上がってそちらを見やる。
そこにいたのはアリスだった。
「ご、ごめんなさい・・・」
「う、ううん、こちらこそごめん・・・」
なんだか申し訳なさそうに謝ってきたアリスに、僕も謝る。
ううーん、予想していた展開と違うぞー。
「・・・中はいる?」
「あ、・・・ううん。すぐ終わるから、このままで」
「わかったわ。それで、用って?」
「・・・僕は、死ぬよ」
刹那、僕の頬が思い切り叩かれた。
アリスがこちらを睨みつける。
「・・・なんで、そういうのよ?」
「アリスの反応が正しいんだろうなぁ」
バカにしているのか、と一層睨みが強くなる。
首を横に振りながら僕は説明を始めた。
瀬良に言われたことをそのまま。
「・・・博麗神社に生えた大樹を止めるためにあなたが・・・?植えたのは瀬良でしょう?なら」
「彼しか止めることはできない。命をしてたら天狗界的にも、それ以前に救えないかもしれない・・・そうやって考えたんだろうね」
「・・・そう、それで私にどうしてそれを伝えたのかしら?」
どうしてだろう?僕はそれを聞かれたときに首をかしげた。
確か、お世話になった人たちに挨拶周りをしているんだっけか?
アリスには、人生相談っぽいのしちゃったしな・・・。
迷惑もかけたってことで、って感じだった気がする。
「うーん・・・照れ隠し的に言うなら『そこを通りかかったから』でいいんだけどなぁ・・・」
「真面目に答えなさいよ」
「ですよね。まあ、お世話になったから」
アリスが目を丸くする。
そんな意外な理由だったかな・・・?
「・・・なんだ、普通な理由じゃない」
「君は僕をなんだと思ってるんだ」
「別に。どうせはぐらかすんじゃないかと思っただけ。なんだ、心配して損したわ」
苦笑しながらアリスが僕に向けて言った。
僕もそれにつられて笑う。
「・・・状況は把握できたわ。でも、どうしてあなたが?」
「うーん。そこは教えてもらえなかったんだけど・・・。僕がモノを枯らすとしたら、幻想樹はモノを実らす、潤すんだよ。相反する能力だから、なのかなって」
「・・・そこは短絡的に、純粋にあなたを殺したかったから・・・ではなくて?」
「っ・・・せ・・・瀬良がそれを思うなんてあり得ないな。あはは」
アリスの言葉を聞いて、一瞬でもそうじゃないかと思ってしまった。
いけない、僕が信じないとダメじゃないか!
「・・・明日の朝、ね」
「うん」
「はい、これ」
「!」
アリスに手渡されたのは人形だった。
誰の、ではない。ただ人形だった。
人であらず妖怪であらず。
神でもなければ幽霊でもない。
首に首輪をつけて、そこから紐で吊り下げられた人形。
どことなくホラーな表情をしているのが見てわかる。
「・・・それ、持ってればいいことあるわよ」
「ははっ、ありがとう、アリス・・・それで、これなに?」
「どっかの呪術だったかなんだったか・・・」
「?!」
「ま、いい効果が得られることには変わらないわ。あなたに降りかかる災難を振り払うための力を与えてくれるわ」
「・・・そ、そっか」
呪術って、大丈夫なのだろうか・・・。
僕は『もしこれで悪いことが起きたら』を考えて、やめた。
最悪の事態になりかねない。
「さっきは叩いてごめんなさい。あなたが帰ってくるのを心待ちにしてるわ」
「・・・死ぬって言ったのに」
笑えば、コツっと額が軽く叩かれる。
アリスは笑顔だったから、それを信じていないらしい。
とても、心強いというかなんというか・・・。
「ありがとう、アリス。じゃあ、・・・会えたら」
「会うわよ。その人形があれば、ね!」
「あ、あはは・・・まあ頑張る」
信用できないんだが・・・まあこの際どうでもいいとしておく。
アリスに手を振り、砂暗に乗る。
目指すは紅魔館。
———聞きたいことも、伝えたいこともあるから。