想鵐Sido
紅魔館の門前に立った。
傾き始めた日は、紅い館をまるでより赤くするように照らす。
その門の前に、美鈴はいた。
「こんにちは、想鵐さん」
「こんにちは。・・・美鈴、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
「はい、なんでしょうか?」
美鈴は笑って僕の話を聞いてくれる。
紅魔館に行き、寝ていなければ少し談笑するくらいの仲の良さではあったものの、美鈴との距離感はなかなかに居心地のいいものであった。
彼女自身がマイペースかつ呑気なこともあるからといえばそれで終わりだが、他の子達のように空気を読んでくれたりするのでなかなかに話しやすい。
「・・・咲夜にも言うんだけどさ。フランをどうかよろしく頼む」
「後生に別れでもないんですから、そんな改まることありませんよ、想鵐さ・・・」
「・・・・」
「もしかして、本当なんですか?」
僕は黙ってうなずいた。
美鈴はため息をついたかと思うと、僕の頭を撫でてくれた。
「そう言う時は、まず事情から説明するものですよ。私は一介の門番ですし、説明する必要はございませんが・・・あとで聞きましょう」
ただ、美鈴は優しく言ってくれた。
僕はそれについ言葉を挟みそうになったが、何とか飲み込んだ。
「・・・・お願いは、聞いてくれるかい?」
「はい、喜んで。そもそもが私の仕事は紅魔館の皆様をお守りすることですよ!当たり前じゃないですか!」
ドン、と胸を叩いた美鈴に、僕はただ苦笑した。
「それもそうだね」、と。
「・・・戻ってきてくださいよ?」
「え?」
「これからお嬢様方に会われると思いますが、お二人とも、あなたを大変慕っていらっしゃいます。・・・その後期待に背かぬよう、お願いします」
「あ・・・・・・そう、だね。できる限り、頑張るよ」
「はい!私も待ってますので!」
「うわあ、プレッシャーっていうかなんていうか・・・」
僕は頬を掻いて笑った。
美鈴も笑う。
「・・・いってきてください。これから私は眠るので」
「真剣に言ってるけど、その居眠りは咲夜に言うからね」
「ひぇえ!勘弁してくださいよ!ナイフはこりごりです!」
美鈴が怯えたように言ったのに、僕もびっくりしてしまう。
そのあと、ちょっと無理に作って笑う。
「ははは、寝なければいいだけなんだよ?美鈴・・・?」
「うぅ・・・想鵐さん、地味に意地悪です」
「それが僕だからね」
笑みが崩れたかもしれない。でも、美鈴は何も言わない。
「・・・じゃあね、美鈴。任せたよ」
「はい、勿論です」
笑って見送ってくれた美鈴に、僕はひどく安堵する。
「自分で守れ」と喝をいれられるかと思ったが、そうでもなく安心した。
「———本当なら、殴ってやりたいところですが、それは想鵐さんが妹様を泣かしたら、ですね♪」