幻想散々的   作:Lan9393

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九十六話:永遠亭にご挨拶・1

  フランをなだめるのに時間がかかってしまった。

僕は急いで永遠亭に向かう。

永遠亭の上空に砂暗をとめ、そこから飛び降りた。

着地点を少々枯らし砂にして、膝を曲げて衝撃を和らげる。

・・・ここで加減ができないと周りまで被害が及ぶから良かった、うまく行って。

そのまま永遠亭の戸を叩く。

すると、鈴仙が出てきた。鈴仙は僕を見るや肩まで外に投げ出していたのを、やや戸を閉めることで目だけ見えるようにした。

確か人見知りなんだっけか・・・。フランとは仲良さげにしていたけれど・・・人じゃないから?

 

「なにか御用でしょうか」

「無かったら来ないよ・・・輝夜は?」

「お部屋にいらっしゃいます・・・。ご案内しましょうか?」

「いいや、大丈夫。覚えてるから」

「はぁ・・・」

 

僕は鈴仙にいれてもらって、「お邪魔します」とつぶやく。

鈴仙がそれを聞いたのか、頬をほころばせた。

・・・聞かれちゃったか。

 

☆  ☆  ☆

 

「・・・輝夜、想鵐だ」

「想鵐?!どうしてこんな時間に?」

 

輝夜は扉を開けて僕を出迎える。

中には客人がいたようで、その人物が立ち上がる。

その人を見て、僕は目を見開いた。

 

「・・・み、らい?!」

「・・・永遠亭の前で待ってます」

 

未来は会釈をして去って行ってしまった。

輝夜がそれを見届けると、僕の腕をつかんで引き寄せた。

僕はそれに笑うと、先ほど未来が座っていた場所に座る。

 

「どうも、いらっしゃい」

「うん。今回はちょっと言いたいことがあったから来たんだ」

「幻想樹のことかい?」

「・・・そう、だよ」

 

輝夜はそれをピシャリと言い当てた。

僕は目を丸くしてから、苦笑した。

 

「贄になるんだっけー?」

「ど、どこかで知ってるんだい・・・?」

 

やや顔を引きつらせながら聞くと、輝夜は笑みを浮かべて言った。

 

「瀬良からすべて聞いたよ。そして、私が知ってることを教えた。私が見て聞いて覚えた、『幻想樹の治めかた』」

「・・・治める?」

「ああ。あれはほんの少しの衝動にすぎない。それを治める方法だ。言葉や必要なものも含まれる」

「・・・その中に、贄があると」

「そうだよ。それに、君が選ばれてしまったのは、本当に残念だけどね」

 

輝夜は残念そうに肩を落とす。

僕はそれを見て、顔をうつむかせた。

 

「・・・まあ、過ぎたことになってしまうからいつまでも引きずっていても仕方ない。それに忘れないとあとが怖いから・・・」

「・・・」

 

僕を見据えながら、申し訳なさげに言った。

それに、僕は首を横に振った。

 

「君なら戻ってきてくれると信じてる。が、・・・時間はかかるだろうね。その間に八雲紫は他の外来人を連れてくるだろう」

「あなたはその人をサポートしてあげてください。僕の代わりに・・・」

「・・・もちろん。私はそのつもりだったから。ただ、それは妹紅のほうが適任というかなんというか」

 

ごにょごにょと輝夜は唇を尖らせて言った。

僕は何となくそれが面白くて笑ってしまう。

 

「妹紅にも言っておいてくれないかな。輝夜とも仲良くしてほしいからね」

「次の外来人こそ、人里に送るべきだろうに・・・」

「それは、君たちが決めることだよ。その外来人を見た人が引き取る、とか」

 

『誰かもわからない』外来人について、僕と輝夜は話し合った。

どうでもいい話かと打ち切りにした話は続かない。

 

「・・・未来が待っているよ?」

「なんで未来がここに?」

「ん~?ああ、ちょっと野暮用があったみたいだね。私とちょっと話して帰るって言ってたよ~」

「そっか・・・」

 

思えば未だ未來は未来を捕まえようとしているのだろうか・・・。

そうだとしたら、まだ未来は危ないということになる。

 

「大丈夫だ。未来は私が守るわ」

「輝夜・・・」

「さて、行った行った!」

 

立ち上がった輝夜に釣られて僕も立ち上がる。

輝夜は僕を長めのすそでぺちぺち叩く。

 

「うん。それはわかった。輝夜はいいの?」

「なにが?」

「さっきから口調が違うから、何か隠してるんじゃないかと思って」

「はははっ、それまでの行動にそんな仕草があったかい?」

「・・・ううん、なんとなくそう思ったから」

 

根拠も何もない。ただ、そう思っただけだ。

輝夜は笑顔を浮かべて首を振った。

 

「なにもないさ。ただ・・・妹紅の名前を出してしまった屈辱が・・・っ!」

「そういうことですか」

 

笑って扉に手をかける。

指を軽く噛んだ輝夜は上目遣いでこちらを見上げた。

心配そうな顔である。

 

「僕は大丈夫。じゃあね」

「・・・うん」

 

輝夜の部屋の扉を後ろ手で閉め、出口に向けて歩いた。

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