幻想散々的   作:Lan9393

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九十八話:博麗神社で最後を

  幻想樹の前。僕はふと幻想樹を仰ぎ見た。

大きいなぁ、やっぱり。人を喰らうほどの力を秘めてるんだから、小さくてもダメか。なんて考えながら、その幹に触れる。

鼓動を打っているかのように音が聞こえる。

・・・今まで喰らわれた人の鼓動だろうか・・・。

この人たちのように、もう僕は彼女らのために寝なければならない。

瀬良の巻いた種が『幻想樹』と呼ばれる大樹に成長し、人の命を吸って生きる樹なら・・・僕がその身を捧げよう。

瀬良にその世話を任せたい。僕らではきっと、勝手がわからないだろうから。

そろそろ、僕は大樹にすべてを委ねる時だ。

・・・そんな時、僕の目の前に妖夢が立っていた。

嘘だ、こんなの、嘘に決まってるよね。

何にも伝えてないはずなのに。

妖夢が口を開く。

 

「本当に、眠られるんですか?」

「それが、みんなのためだから。君も止める?」

「いいえ・・・。あなたがやりたいこと、ですから」

 

そっと、妖夢の手が僕の手に添えられた。

持ち上げられた僕の手のひらは、妖夢の頬に触れる。

笑みを浮かべた妖夢は、複雑そうな瞳を僕に向ける。

 

「・・・帰ってきて第一声が「バカ!」になってもしりませんよ?」

「うん・・・痛いのは嫌だよ~」

 

「どうでしょうね」と笑う妖夢の頬は水が乾いたような跡があって。

 

「・・・泣いた?」

「泣きますよ、それは」

「そっかぁ・・・じゃあ、妖夢。ちょっと最後にやらせてよ」

「さ、最後なんてっ!縁起でもないことを言わないでください!」

「ははっ、怒られちゃった・・・・目、つむって」

 

つぶやくように彼女に告げる。

妖夢は戸惑ったように眉を下げたあと、静かに目を閉じた。

僕は迷いなくその唇に口付けた。

ピクリ、と妖夢の肩が跳ね上がったのを見て、なんとなく嬉しく思いながら、彼女から離れた。

 

「じゃあね、妖夢。みんなによろしく」

「そう、む・・・さん?」

「・・・本当は、言いたかったけれど、さ。名残惜しくなっちゃうから」

「想鵐さんッ!!」

 

妖夢の手が伸びる。僕の服を掴むことなく、それはその場で止まった。

瀬良が止めたのだ。

 

「・・・アニキ、食われないで」

「うん。頑張る」

 

笑ってみせれば、瀬良は諦めたようにため息をついた。

霊夢たちにも見送られ、妖夢にも見送られ・・・僕は、幸せ者だなぁ。

ふと、悲しそうに笑った妖夢が見えた。

 

「・・・さよなら」

「・・・うん」

 

たった一言交わす。

次の瞬間、瀬良のつぶやきが聞こえた。

・・・彼の口が閉じた瞬間、僕の目の前は真っ暗になった。

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