なんやかんやVtuberをやって1.5年もたっているのに同期との絡みが一切ないのは一期生のみんなはオーディションを受けているのに対して私はスカウトであることからの引け目を拗らせた結果合うタイミングを逃し事務所企画の打ち合わせで音声通話をすることこそあれど、一度も顔合わせと言うものをしていない。
事務所企画でも別室からの天の声参戦が殆どだったし。
今回に限ってはモーションキャプチャーを使う関係上顔合わせは回避不可能。
当日の配信を夕方ごろに設定して10時頃から事務所所有のスタジオで顔合わせの打ち合わせを行うこととなった。
事前の打ち合わせを一期生担当マネージャー2名を含め計5名で行うことになった。
「突然呼んだと思ったら、服を選んでほしいと」
以前妹との買い物からかなりの数の衣類を購入したのは良いが何分服装のセンスが怪しいので妹を召喚して選んでもらうことにした。
便宜上は服を買いに行く服がない。
最初はスーツにするつもりだったが仕立てに時間がかかるので却下と言うことになった。
…イラストはかわいい女に好き勝手着せらせるのでネットで見かけた好きな感じの服からキャラを連想させて描いている場合が多いのでそっちは困らないのだが、自分に服を合わせるとなるとイメージがどうしても浮かばなかった。
「シンプルでいいんじゃない?」
と、おしゃれ上級者らしい発言をしてさくっと服を選んでくれた。
薄手のセーターとシンプルなチノパンに薄手のコート。普段かけている眼鏡をコンタクトにされその上でちょっとこじゃれた大きめの薄型レンズの眼鏡を装備。
化粧に緩い三つ編みを施され……
「…なあ、これどことなく人妻感がすごいんだが」
「いつ私がおぎゃることを辞めたと錯覚していた?」
どことなくあふれる未亡人感を出した。
…妹はこういうやつだということをすっかり忘れていた。
「あ、これ私がサンプルでもらった時計、似合うと思う」
「SEI〇×声優とのコラボモデルだよな…発売来年じゃなかったっけ?」
「デザイン監修ってことでメーカーがくれた」
これは完全に未亡人フゥー↑と妹が“コーディネート代”と称して抱き着いてきたのであやしていたら「やっべ」と妹が言うので今日の収録現場を聞くと予定していたスタジオから一駅離れたところ。
「付き合わせたお礼に送ってく」
「ありがとー」
マンション近くの月極駐車場のある立駐まで歩いて行き、3週間ぶりに愛車のエンジンをかける。
年々法規制でマフラーの音が小さくなっていく中で多少エンジン音を楽しみたいと買った15年落ちのスポーツカーは完全に街乗りに使っている。
遠出する時に山超えたりする時があるから大きめの排気量とターボがあるモデルを選んだ。
色々弄ったけど最終的にはノーマルに近い状態が一番乗りやすい。
「この車結構乗ってるよね?」
「18で免許取ってずっと乗ってるから今年で6年かな」
「本当物持ちいいよねー」
「日々のメンテナンスとそんなに走行距離乗らないから。ま、行くよ」
そう言って妹を送りに行った。
〇
妹をスタジオ近くで下ろして自分も打ち合わせの時間が近いのでそのままスタジオ管理の駐車場に車を止める。
今度の週末仕事片付いたら山にドライブだな、とそう思いながら車から降りてぐっと背筋を伸ばす。
運転時にはぬいでたハイヒールを履き直すときちっとした感じに、女性大変すぎん?と思いながら事務所に向かおうとすると、隣に会社の使用車が止まった。
「……え、あれ、古平さん未亡人???????」
「あの、人の顔見る度思考停止しないでください」
ちょうど降りてきたのはマネジャーの松田。
有能なのに時々ポンになる。
「やっぱモデル…モデルやりませんか…」
「やりませんて」
「お前は落ち着け」
スッと運転席から降りた長身の男性が軽くチョップを入れる。
「はっ!?、私は何を…」
「やっぱお前の構成コードにどっかミスあんだろ」
「それは激しく同意したい」
長身の男性は鵜杉次郎 (うすぎ じろう)さん。
顔は厳つく、セルフでスキンヘッドをしているので一瞬ヤの方の人かと思ってしまうことも。とてもグラサンが似合う一期生マネージャーその2である。
「あーで、古平か。まー美人になりおって」
「まぁ、発症者の特徴ですから」
「俺も発症すればこの薄毛から解放ワンチャン…」
「25過ぎたらほぼほぼ確率無いですからね?」
「KU☆SO☆GA」
厳つい見た目の割にはギャグに方向性を振っている人なのでちょこちょこ自分の頭部をネタにしてくる。
なお、スキンヘッドの理由は薄毛よりいっそない方が未練がないからとのこと。
「んで、どうするんだ?」
「元男でしたーって言っても仕方ないですし普通に行きますよ?」
「いや、ドッキリサプラーイズな面だ」
「?」
「別にデビューから顔を合わせないなんてうちの事務所でも先輩後輩関係だとけっこうあるからな、そう珍しい話じゃない。ただ、1年半引っ張ったことになるネタだ。盛大に行きたくないか?」
「なんでそんなに芸人根性がすごいんですか」
「あいつらが動揺してどういうリアクションしたいか見たいだろ?」
「見たい」
すぐに同意し、当初の目的殴り捨てて唐突にドッキリが進むことになった。
〇
打ち合わせをするために集まった会場でさらにドッキリするための打ち合わせとかいう頭の悪い打ち合わせが始まった。
「では、構成作家でいいんじゃないですか?」
「んースーツがあれば新マネで通せるんですが…」
「松田のサイズじゃ合わねえよな…」
「鵜杉さんそれセクハラ」
「誰が壁じゃい!」
秋特有の若干冷え込む空気のなか駐車場で話し込む怪しい集団。
「あ、5期生のスカウト枠でやってきた方でちょっと早めの職場見学言うのはどうでしょう。3期生の時やりましたし」
「それだ!」
「職権的にアウトでしょ」
「職権は使えるときに使うもんだぞ」
こうして5期生(嘘)としてまた一つ謎の肩書が増えるのであった。
「こうなったらロールプレイはしますけど…どうしましょう?」
「今の風貌完全に未亡人ですもんね…」
「『亡き夫の借金返済のため夜のお店で働く事になったが借金取りに追われるためヴァーチャルに逃げた債務者系未亡人』で行こう」
「それあんたの性癖だろ!?」
〇
「うっす、てめーらそろってっかー」
「おはようございます…って、ジロちゃんそれマネージャー的にアウトじゃね」
「そんなこと言ったら俺の見た目でアウトだろうが」
「1out抱えてるのに更にアウト抱えるのやめようぜ?リアルチェンジになっちまうぞ…」
本日は一期生の貸し切りのためスタジオには5名しか来る予定はない。
そんな中すでに一期生の3名は来ており各々が慣れた様子で着席していた。
「清水に佐田と浦野は来てるな。古平まだ来てねぇのか」
「意外ですね、一番真面目と言うか絶対遅刻しそうにないんですが…」
ものすごく白々しく私をこの場に居ないものとして扱っているのだが……動揺のなさがすごいな。
「禿と松田さん、おはようございます」
「え、あのおはようございます。その、そちらの方は…?」
「ん、ああ。こちらに居るのは事務所の方で推薦枠で採用になったから一足先に現場見学に来た小原さんだ」
「この度、大月プロダクションKVSの5期生に内定を頂きました小原涼子と申します。本日は無理を言って一期生の皆様に挨拶をさせていただきたく参りました。どうぞよろしくお願いいたします」
スッと紹介をされたので少し前に進みやや深めのお辞儀をする。
…本当に動揺しないなこの禿とポン。
「あー、そんなに畏まんないでもらえると。えーと俺は一期生のゲーマー担当の野村武光です、本名はジロちゃん…鵜杉さんが言ってた通り清水敬です、よろしく」
「では次は私、一期生の霞宇良よ。ここでは浦野五月(うらの めい)って呼んでちょうだい。禿にセクハラされたら言うのよ?」
「あ、わたしも同じく、室町佳乃っていいます、本名は佐田芳(さた よしの)です。よ、よろしくお願いします」
「つー訳でこれがうちの一期生。大体配信のキャラだろ?」
「ええ。皆さん誠実な方みたいですね。少し安心しました」
「一期生はありのままの自分、二期生が自分の隠れてた面、三期生がRestart、四期生が新しい挑戦ってテーマだからな。つう訳で3期生の時もあったが職場見学ってことで今日は一日お前らの仕事っぷりを見られるから気合入れて行けよ」
わー、生一期生!。
ボイスにノイズが入ってない!(現実なので当たり前)
ノムは確か26歳の特徴のない顔、と言えば聞こえは悪いが清潔感もあり気が付いたら誰かと結婚してそうな雰囲気のあるゲーマーそんな感じの顔している。マンスリーボイスはなんか隣にいるのに違和感がないと、女性のガチ恋勢もそこそこいる現在チャンネル登録者数32.4万人。
ゆららんは声がドSで定評のあるロリキャラなんだが現実との乖離ッ!顔がイイ!でかい!(どことは言わない)現在21歳の大学3年生。
結構な寂しがり屋やだが理性がえげつない仲間大好き美少女。
入ってくるまで足を組んでたのに、初見の人がいるとスッと足を戻すTPOのわきまえる系である。
ファンの総称ダメ男製造機。
現在チャンネル登録者数62.2万人
かのんちゃんは庇護せねば、と気が付けばファンネームは親衛隊。最近こそちょっと改善しているがコミュ障だが、1期生の中で一番頑固で行動力のあるある意味問題児。
最近20歳になり酒を覚え、飲むと言葉にキレが出てきて歌唱力がすごいことになる飲兵衛。
記憶は一切消えず次の配信は謝罪から始まる。
現実でも小動物観がすごい。かっわいい。一家に一台抱き枕でほしい。
現在チャンネル登録者数58.7万人。
現実の姿を見ると、うん、Vでのキャラ個性がやっぱすごく表れてるんだなって本当に思う。
一期生ありのままの自分に偽りなし(若干名除く)
はー、空気がうめぇ。
表情には出さないけど。
「あ、小原さんゲームは得意だったりする?」
「ええ。主にFPSはよく行います」
「わ、なんか意外…と言うかなんかしっくりくるというか…」
「掃除、得意なんです」
そう言ってハンドガンをコッキングするジェスチャーをしながら笑みを浮かべてみる。
「え、何、ヤ?ヤのモノ?未亡人感と言うかなんというか幸薄げなのにすっごい生命力ある感じがする」
「極妻、今までいなかったジャンルね」
「いえ、現在の予定では『亡き夫の借金返済のため夜のお店で働く事になったが借金取りに追われるためヴァーチャルに逃げた債務者系未亡人』となっております。戦いは得意ではないのですが」
「いや絶対肉弾戦行ける感じだよこれ、逃げてるのが周囲を血だまりにしないために自らの力必死に抑えてる系じゃん!?小原さんに拳銃持たせて大丈夫?大月プロ崩壊しない?」
「リアルでは合気道の黒帯を頂いています」
「大月プロやってんなぁ!」
「ひぇ…またとんでもない新人…」
と、思い付きで謎のカテゴリーが増えているがリアルで黒帯取っているのは事実である。
流石ノム、ツッコミの切れ味がすごい。
「よし、馴染んだな。これから今日の打ち合わせ始めんぞ」
「え、いや、熊公まだ来てないんですけど」
「…思ったより時間押してんだわ。始めるぞ、松田!」
「テッテレー」
先ほどまでだいぶ口数少なかった松田さんが鵜杉さんのガタイの良さを生かして隠していた小さい看板を取り出す。
「ドッキリ大成功!」
「……何が!?」
『新人ライバーが職場見学に来たと思ったら熊平虎徹の中の人でしたドッキリってことよ』
「……」
「……」
「……」
『ぽかん顔助かる』
「「「くぁwせdrftgyふじこlp」」」
ドッキリを行った結果同期がバグった。
コレドウスンノ?
ようやく同期の登場です。
誤字報告ありがとうございます。
後ほど行います。
感想評価もありがとうございます。
起きたらバーに色がついてておビビり申し上げた。
配信上のキャラセリフ前に略称
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いる
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いらない