【呪術×Bloodborne】

【ざっくり前提(これだけわかれば大体読める)】
19世紀寂れた辺境都市ヤーナムには風土病「獣の病」が蔓延っていた。「獣の病」に罹患すると人は獣になった。
医療協会は獣化を防ぎ人を救うという目的で設立された(実際はちょっと違ってたりする)。

[設定改変部分]
日本の呪術界が「獣の病」について聞きつけ、案外使えるんじゃね?(使役できたら)と思い立ち、色々使って医療協会に連絡。
(こっち(呪術)の技術使えばどうにかなるかもと甘言)既に自身の罹患を悟っていたエミーリアが立候補。
しかし獣化を押さえつけること(獣から人間に戻すこと)はできても、使役や病の完治ができず呪術界もお手上げ。とりあえずエミーリアを封印して五条家に押し付け。


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呪術師と獣の病

 

 

五条悟が住む屋敷は代々引き継がれてきた年代物のため、無駄に広い。中庭には池もあるし、ガラクタを詰め込んだ蔵も何棟もある。

 

周りの奴らは何代も前から継いできたこのオンボロ屋敷を誇らしそうにしているが、五条としては継いだ暁にはフルリフォームして屋敷の中をセグウェイで移動できるようにしようと考えている。

 

10歳になった五条は小学校にも通わず家庭教師が付けられていたが、くだらない授業から抜け出し、人気(ひとけ)のない蔵がいくつも建っているところに探検に来ていた。周囲からは近づかないようにしきりに言われていた場所であったが、老朽化して危ないだけだろうと認識していた。

 

蔵の周りをうろうろしていると見つかってしまう可能性があるため、蔵の中に入り物色する。

古ぼけた掛け軸やらひな人形やらが埃を被っている。昔は繁栄していた五条家も悟が生まれるまで術式を持つ者が少なく、衰退の一途をたどっていた。また御三家のどの家にも言えることではあったが生まれる子の数が減り、さらに術式を持つ子は稀であった。使う者がいなくなったこれらのガラクタをまだ家の者は大切そうに残しているらしい。

五条が頭の中で作成している「当主になったときやることリスト」に蔵のガラクタの廃棄を新たに追加した。

 

 

気分が乗ったのでいくつか蔵を見てまわる。

3つ目の蔵の中をあさっていた時、奥の方から声がかすかに聞こえた。誰かに見つけてほしくて叫んでいるわけではない。ただ消え言いそうなかすかな声で呟いているようだ。

五条はそこに足を向けた。床に埃が被っておらず誰かが足を運んでいることに気が付いた。

 

それを見つけることは容易かった。埃を被っていないところに沿って歩くだけでよかった。

 

五条がそれを見つけた時言葉が見つからなかった。格子ごしに女が蹲っていた。格子には御符が隙間なく貼り付けられている。

 

「聖血を得よ

祝福を望み、よく祈るのなら、拝領は与えられん

拝領は与えられん

密かなる聖血が、血の乾きだけが我らを満たし、また我らを鎮める

聖血を得よ

だが、人々は注意せよ 君たちは弱く、また幼い

冒涜の獣は蜜を囁き、深みから誘うだろう

だから、人々は注意せよ 君たちは弱く、また幼い

恐れを失くせば、誰一人君を嘆くことはない」

 

そう繰り返し呟いている。

蹲っていると五条は思っていたが、女の言葉を聞いてわかった。これは祈りだ。服から隠れていない女の手足には包帯が巻かれている。

その祈りに一瞬見とれていたのが悪かったのか足元に合った桐箱を蹴り倒してしまった。その物音に女も気が付いたようで顔を上げる。白銀の髪は長く流れるようではあったが、手足同様に白い包帯で顔の上半分を覆っていた 女の目は見えなかった。服はぼろぼろで端は解れてしまっている。

手には金色の何かが強く握られていた。

 

「…ごめん、おれじゃまするつもりはなくて…」

 

変声期前の五条が発した言葉で女は格子越しにいるのが子供だと気が付いたらしかった。

 

「――坊や、はやくここからでなさい。ここにいてはいけない」

女は静かなそして少し柔らかい声で諭すように言った。

 

「あんたもだしてやろうか?」

 

五条は目の前の女が何かへまでもして折檻された女中なのだと思った。それにしてもここまでぼろぼろにされるなんて家宝でも壊したのだろうか。

 

その言葉に女は口の端を僅かに上げたが首をゆっくりと横に振った。

 

「いいえ、その必要はありません」

そう言い切ると女は再度蹲り祈りの言葉を紡ぎ始めた。

 

 

五条はその後もその女の元に(かよ)った。女は相変わらず解れた服を纏い体中包帯塗れで飽きもせずに祈っていたが、五条には神聖なものに見えた。

五条は自身が出されたおやつやらを女に分けてやろうとしたが女は首を横に振るばかりであった。

 

 

何度も通って慣れてしまったのが悪かったのか家の者に女と話したことがばれてしまった。小言を言われるだけで済むと思っていた五条の予想を超えて、一族ほぼ全員が集められた。どの大人の顔も強張っている。

その話し合いには五条は参加を許されず、監視付きで自室に閉じ込められた。五条が部屋から出されたのは3日後であった。

大人にはあの強張った表情は既になく、いつも通りの日常がそこにはあった。

 

女がいた蔵にも行ってみたがその蔵だけ跡形もなく壊されており、行方すらわからなかった。

 

 

 

 

 

高専で五条は他の同級生2名、夏油と家入と夜蛾に呼び出されていた。2人からの視線が鬱陶しかったが、特に今日は何もやらかした覚えがなく、首を傾げていた。

 

「――本来であればお前たちが行く必要はない任務だ」

めずらしく夜蛾が言い淀んでいる。

 

 

「「獣の病」罹患者の封印任務に参加してもらう」

「「「獣の病?」」」

3人は聴きなれない言葉を繰り返した。

 

「海外のある地方で流行った病だ。空気感染等はしないから安心していい。封印作業は別の者が行う。お前たちはそのサポートだ」

 

 

 

 

 

「俺らサポートってやる気でねぇな」

五条はヤンキー座りをしながらそこら辺で拾った木の枝で地面に落書きを始めた。

 

「ここまで大がかりな封印ってなかなか見ないね」

夏油の言葉の通り、高専の広大なグラウンドには重装備の呪術師が何十人も揃っていた。

家入は術式のこともあり医療班とともにおり、五条たちとは離れている。

 

「しかもあれってどっかで捕まえた呪霊だろ?」

五条が顎で示した先には何体もの呪霊が厳重に封印されて置かれている。気配でどれも1級あるいは特級相当だとわかる。

 

 

その場に車椅子に乗せられた女が現れると一瞬にして雰囲気が変わった。車椅子を押している呪術師も重装備だ。

五条はその女に見覚えがあった。幼い頃蔵で何度も会っていた襤褸を纏った女だ。相変わらず体は包帯で覆われている。

 

帳が張られ、グラウンドの中心に女だけ置かれる。封印されていた呪霊が放たれる。事前に躾けておいたのか女に向かって襲いかかった。呪霊がぶつかり車椅子ごと女が地面に放り出される。五条と夏油は構えたが近くにいた夜蛾に待ったを掛けられた。

そのまま呪霊が襲うかと思ったが、女から距離を取った。

 

女が蹲る。

五条が見た祈りの姿勢ではない。胸を抑え苦しんでいる。小さく蹲ったかと思うと体を反らせ、叫んだ。

女の出す声ではない。獣の声だ。その声が一面に響く。その声を挙げた後再度何かを耐えるように上半身を地につけた。

 

女の纏った襤褸の中で何かが蠢く。

女の体から鮮血が飛んだ。骨の折れる音や何かが裂ける音が続くと一気に姿が変化する。

 

夏油は羽化の様だとその光景を見て感じた。

呪霊は悍ましい、どちらかというと嫌悪感を感じる見た目をしているものがほとんどである。しかし目の前のものはそれとは一線を画していた。獣は女の何倍もの大きさではあったが、銀色の毛並で至る所に白い布を纏っており、女を思い出させた。右手は何かを握りしめている。角は長く鹿のようだ。

 

距離を取っていた呪霊の1匹は目の前の獣の爪で瞬時に切り捨てられた。上手くよけられた呪霊も獣に握り潰され、衝撃波で消し飛ばされた。

 

獣が呪術師の方向を向く。

事前に取り決めをしていたのか遠距離が得意な呪術師が全方向から獣に攻撃を浴びせかける。獣はその場でその攻撃を薙ぎ払った。

その衝撃波は呪術師たちを襲い、弾き飛ばされる者もいた。

 

足止めが得意な呪術師が何人かがかりで獣の動きを止める。

獣は発狂状態で叫び声をあげるが、四肢どころか体中固定されている。

呪術師が5つの小箱を獣を中心に五芒星を形作るように置き、呪を唱えた。

その小箱は中心にいる獣から何かを吸い取っているようでだんだんと獣が力を失ってきた。

獣が音を立てて地に伏す。獣の輪郭が解け、元の女の体が残る。

 

五条は周りが制止するのを振り切り、駆け寄った。

 

「おい!大丈夫か!!」

女の体を起こさせ、顔を覗き込んだ。包帯に隠されていた女の目は溶けていた。

弱々しく女の手が五条の腕に触れる。

 

 

 

「……わたしは、人として、死にたい」

 

そう言い残し気を失った女の右手には金色のペンダントが握りしめられていた。

 

 


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