その前に、前回の次回予告と違う内容になってしまいすいません。
当初は、第壱話に前日談を少し書き足す予定がかなりの文量となってしまい(書くたびに増えていってる)、急遽差し替えました。「閑話Episode of Rituko若き正義の懸想」は次回更新の際に投稿しますので今回はこれで許してください何でもしますから(何でもするとは言っていない)。
あとは、未完成のまま投稿してしまったので、細かいところをあとで修正しておきます。話自体は完成しているので大丈夫です。
では、どうぞ!
「ハァッハァッハァッハァッ!」
人気のない路地裏で、男は走っていた。ただひたすらに、怒りと恐怖が入り混じった顔をしながら、ただただ走っていた。
しかし、ここまで休むことなく走り続けていたためか、どうやら限界が近づいているようで、自身に残るわずかな体力を駆使しつつも、その体はもはや、耐えきれなくなったようだ。
男は一旦立ち止まり、ひと呼吸する。
「ハ―ッハ―ッハーッ…ここまで走れば大丈夫かな?」
立ち止まった男は、深く呼吸をしながら来た道を振り返る。外灯の明かりが届いていないそこには何もなく、ただただ暗闇が広がっているのみだった。
その光景に落ち着いたのか、男はいったん壁に背中を預けた。
「……足止めはうまくいっているか。これならなんとか逃げ切r「残念だが、そうはならないぞ。」!?」
突然の声に驚く男。再び男が振り向くと、暗闇の中から一人の男が現れた。
見た目は若く、20代半ばといったところか。スーツを身に纏い、現れた男。右手には拳銃が握られており、その様相はまるで、死へと誘う死神のようだ。
その姿を見た男は、再び汗を滲ませた。なぜなら、その男の存在もそうだが、微塵の気配を感じさせず、いつの間に至近距離に詰め寄ってきたことに、多大な危機感を覚えたからだ。
「…ほかのメンバーはどうしました?それなりにいたはずなのですが。」
男は、追ってきた男に対し、質問をなげかけた。少しでも時間を稼ぎたいという気持ち
もあったが、相手の情報を知りたいという気持ちもあり、男は自身に迫る脅威に対して
冷静に対処しようと試みた。
そんな思惑があるなか、その男は、質問に淡々と答えた。
「あぁ、あれか。所詮はただの
が、それだけだ。」
あまりに淡々と話すその男に、より一層の危機感を感じ取り、場の緊張が高まる。
その雰囲気に、男は唾を飲み込み、先ほど滲ませた汗は、顔から滴り落ちる。
「…っそうですか。それより、あなたは何者です?武偵ではなさそうですが、どこの機関の人間ですか?」
最後に、男は再び質問する。
言葉の一つ一つが趨勢を決するこの状況下において、絶望的な状況に変わりないが、
「あぁ、お前には名乗っていなかったな。俺は、武装検事の神谷修也。お前を逮捕する者だ。」
そう述べた男、武装検事の神谷修也は、右手に携えた拳銃を向ける。スーツの襟に身に着けている正義の証を輝かせながら。
◆■◆■◆■◆
時は少し遡り…神谷修也は今、オフィスで直属の上司である角宮と話をしていた。
「テロリストの摘発ですか?」
修也がそう述べると、角宮は「そうだ。」と返し、話を続ける。
「先ほど、EOJの残党に関する情報が入ってきた。」
『EOJ』。Emissary of Justiceの略で『正義の使者』とも訳されるテロ集団の名前だ。この集団は、日本に真の正義を取り戻すことを信条としており、反権力思想を掲げる過激な集団である。
彼らは、武力による制圧を手段とし、これまで、民間人を含む多くの死傷者を出してきたが、メンバーの大多数は逮捕、死亡し、現在組織自体は瓦解している。
「しかし、彼らは潜伏しており、居場所すらつかめなかったはずです。その情報の出所は何処です?」
角宮は答えた。
「情報源は不明だ。だが、指定された場所に偵察させたところ、EOJの残党を確認したそうだ。情報源の存在は気がかりであるが、奴らの尻尾を掴んだ以上、行動するしかあるまい。今回の件で、我々をはじめとした捜査機関は世間の
上司の話に、修也はこう答えた。
「政治、ですか…。ですが、なぜ私に?私も別件で捜査中なのですが。」
そう。修也は現在、別の捜査をしていた。通常、武装検事は常に多忙なので、暇な日はほとんどないほどハードなスケジュールをこなしているのだ。
そう述べる修也に、上司はこう答えた。
「あぁ、お前が捜査中の件だが、進展がないのだろう?お前の捜査も中長期的に見れば重要だ。しかし、優先度で言えば、今はこの件が優位に立っている。また、他の武装検事は丁度手が空いていない。よって、この件はお前に任せる。」
「っしかし!私はこの捜査を継続する必要が「神谷!これはお願いではなく命令だ。」・・・。」
角宮の有無を言わさない発言に、修也は反論しようとしたが、上司の圧に口を閉じる。
角宮は、修也に対し話を続ける。
「いいか、この件は早急に終わらせなければならない。これは、我々の今後に禍根を残す案件だ。ゆえに、お前の意見は後回しだ。」
「…了解。」
渋々ではあるが、命令に従った修也は立ち去ろうとしたが、上司は声をかけて制止した。
「待て。まだ伝えておくことがある。」
「何ですか?」
足を止めて振り返る修也に、上司はこう述べる。
「この件だが、上は最悪の場合、EOJの残党を確実に排除しろと言っている。この意味は分かるな。仮に逃げられるようなら、現場判断で対処しろ。…それから、これは俺個人からの命令だが、残党の中にいるEOJのリーダー、こいつは可能なら拘束しろ。今回の事件における重要な情報源だ。」
「了解です。」
「では行け。頼んだぞ。」
こんどこそ、修也は立ち去って行った。そしてこの時をもって、EOJの残党の死亡フラグが成立したのだった。
◆■◆■◆■◆
コツ、コツ、コツ…
そして、修也は情報源にあった場所に向かっていた。場所は、都内にある廃ビル。人通りの少ないこの場所は、まさに潜伏するには格好の場所ではあるが、修也は以前先ほどの会話内容を思い出していた。
「(しかし、今回の件は不明瞭な点が多すぎる。どう片づけたものか。)」
内心そう語る修也の考えには、確かにそう考えうる根拠があった。
当初、各捜査機関はEOJの摘発は容易なものと考えていた。EOJが発足した当初の公安の報告によると、EOJのメンバーは学生を中心に構成されており、言動は過激だったものの、これまで武力行使による犯罪行為はなく、悪くても軽犯罪などで取り締まられてきたからだ。そのため、EOJが起こした今回の事件は、彼らを監視していた公安にとって望外の出来事だったという。
さらに、上述したようにEOJのメンバーは学生が中心で、その武力は無為に等しかったのだが、今回の事件で彼らは武装するにとどまらず、軍人レベルの技術を保持していたことが分かった。それにより、所詮学生と舐めていた捜査機関は、見事にしてやられたのだ。
ここで、ある疑問浮上する。それは彼らに資金提供し、戦闘訓練を施したのは誰であるのかだ。彼らが武装していた装備は、とてもただの学生には調達できないほどの金がかかる。当然、これには裏に資金提供をした者がいると考えるのが妥当だ。資金提供者は、国内の過激思想を持つ富裕層か、はたまたどこかの国からの破壊工作活動の一環なのか、依然として判明してない。この存在を見つけない限り、EOJを摘発するだけでは、根本的な解決にはならないだろう。
すでに逮捕しているメンバーに事情を聴いたところ、その正体を知っていると思われるのは、幹部の人間だけで、現在逃亡しているリーダーが最も可能性が高いと述べている。先ほど上司が言っていたのは、まさにこのことだ。今回、潜伏している残党を狩るのは上司にとって建前に過ぎない。今回の事件の真相を知るには、リーダーの情報が必要だ。これには修也も同意見だが、だからこそ今回の情報提供は危惧すべきだと考えている。
この情報に間違いがないのは、偵察からの報告で判明している。しかし、今回の一連の事件がEOMのみの犯行ではないことを考慮すれば、何かしらの意図があるはずだ。
「(よって、これは罠の可能性が高いわけだが…まぁこれも最早詮無きことか)」
コツ、コツ、コツンッ
思考しているうちに目的地のそばに到着した修也は、物陰に隠れ該当の廃ビルを伺う。地上4階のビル、建物の外に見張りなどはおらず、窓からも人影らしきものは見えない。
修也は、ビルの正面まで近づいた。
「(一見人がいる気配はないが……さて。)」
とても人がいるようには見えないものの、修也は目を閉じ、ある能力を使用する。
『(超感覚)』
瞬間、修也の感覚器官の能力が急激に上昇し、彼の世界は常人のそれとは一変した。
彼は気配察知能力を鋭敏にし、ビル内部の状況を探る。
ジャリ!
「…いるな。」
ビル内部のかすかな足あとを探知した修也は、目を開き、ヒップホルスターから拳銃を取り出し、スライドを引き、弾丸が装填されているか確認する。
チャキッ、チャッ
そして、銃を構えながら、ビル内部へと入っていた。
◆■◆■◆■◆
ビル内部は、外見通り無秩序な空間となっており、コンクリートむき出しでまさに廃ビルといってよい感じであった。
その中を、修也は気配を完全に消して進んでいく。床には破片などが散乱していて、普通に歩けば音がするのだが、全く音を出さずに、修也は上の階へと移動していった。
そして、二階へと到着すると正面にあるドアの中から、人の気配がし、立ち止まった。
「…(あそこか)」
ドアのそばに移動し、再び能力を使用すると、
「(人数は…2人か。少ないな。残りは何処にいる?)
部屋の中に感じる気配は、偵察の報告にしては少なすぎる。残りの残党の在り処を考えていると、中から声が聞こえてきた。
「…「ピピッ」時間だ。俺たちも移動するぞ。」
「やっとですか。次の拠点はここよりましだといいですよね。」
「文句を言うな。俺たちの大義のために、今は耐え忍べ。」
「へーい。」
どうやら、少人数に分けて拠点を移動しているらしい。リスクを分散しながら、拠点を移していく。道理で捜査機関が手をこまねいているはずだ。奴らは、ここまで周到に逃げていたのだから。
「(やはり、只の学生と侮ってはいけないな。学生がこの計画を立てたのなら称賛ものだ。しかし、所詮は学生、油断は禁物だ!)」
バン!
そう思いながら、修也はドアの正面に立ち、ドアをけ破る。
「「!」」
突然ドアがけ破られたことに驚いた中の二人だが、すぐさま腰にしまった拳銃をとりだそうと動くものの、
「甘いな。」
修也は銃を手にかけたところを狙い、即座に二発発砲した。
ババァン!!
「「ぐぁ!」」
撃たれて手が離れるや、修也は相手に接近し、まずは片方を制圧する。
「ふっ!」
「ぐはっ!」
相手との距離は5m弱、それを一瞬で埋めて、下から掌底を繰り出す。
顎にクリーンヒットすると、相手は呻き声をあげ、体勢を崩し倒れる。
片方を制圧し終えると、もう片方にすぐさま接近し、一瞬で組み伏せる。
「ぐあっ!」
そして、馬乗りになると、手錠をかけ拘束し、腰の拳銃を奪う。
「全く、これはじゃないぞ。」
そう話しながら、手早く弾倉を抜き、薬室を空にして銃を遠ざける。
また、ほかに武器がないかチェックし、仕込みナイフなどの武器も奪い、同様に捨てた。
ほかにも、
「自決用の毒は仕込んでいないのか。この辺はお粗末だな。」
歯などに毒を仕込んでいないか確認し、ないことを確認すると、先ほど掌底を食らい伸びている方も拘束しに行き、武装解除した。
ひと段落済むと、伸びていない方に近づき、話しかける。
「このまま学生として普通に過ごしていればこんなことにならなかったものを、人生を棒に振ったな、少年。」
それに反応したのか。その相手は、睨みつけながら修也を見上げて、
「ふざけるな!これは大義のためだ!この腐った社会を変えようとしてやったことの何が悪い!俺たちがこうして動くのは、この社会を変えようとしなかったお前らのような存在がいるからだ!」
「悪いが、お前の絵空事を聞くつもりはない。無辜の民を傷つけた以上、お前たちの掲げる大義とやらに正当性はない。諦めろ。」
「…っ!くそー!」
憤慨しながら叫ぶEOFのメンバー。20代前後、おそらく未成年と思われる少年に向かって、修也は容赦なく問い詰める。
「さて、お前たちの逃走の手順を聞かせてもらおう。先ほどの話を聞くに、大多数はすでに別の拠点に移ったようだが、その場所は何処にある?話してみろ。」
「ちっ!お前なんかに話すか!政府の犬が!」
案の定拒絶された修也であったが、すでに行動を起こしている以上、いつ相手に気取られるかわからない。この二人が移動してこないのに気づけば、不審に思ってすぐさま別の拠点に移動するかもしれない。それは、必ず避けなければならないことだ。
ゆえに、
「そうか、ならば仕方ない。少年、ここで死にたいなら話さずにいればいい。」
「え?」
修也は、極めて冷徹に接することにした。
「お前に撃った弾丸、貫通はしているが出血がひどい。このまま止血しなければ失血死するぞ。俺はそれでもかまわない。多少時間はかかるが、そこにいるもう一人のメンバーを止血して尋問するとしよう。少年、これは慈悲だぞ。ここでお前が俺に協力すれば、命を救うばかりか、ほかのメンバーより幾分か減刑するよう働きかけよう。そのまま死ぬか、生きて次の人生を少しでも楽に始めるか、どちらか選べ。」
未成年に対する態度とはいえないぐらいのレベルで話す修也に恐れを抱き始めたのか、少年は青ざめながら、わなわなと口を震わせ、言葉を発しようとする。
「おっおれは…」
その様子に好機と見るや、修也はさらに畳みかける。
「考えるのは結構だが、こちらに時間的猶予はない。早く決断しろ。」
「うっうぅ・・・」
ついには泣き始めた少年に、修也はとどめを刺す。
「そうか、話さないか。残念だ。なら、後悔しながらここで野垂れ死ぬといい。」
修也が立ち去ろうとすると、
「わかった!はなすよ!だから助けて!」
それを聞いた修也は、後姿を見せながらほくそ笑んで、少年に振り向く。
「では、話してもらおう。」
◆■◆■◆■◆
少年の話を聞いた修也は、二人に止血を施すと、廃ビルに救急車を手配してすぐさま移動した。
どうやら、EOFの残党は主に下水道を移動して拠点を移しており、目的地には、別に斥候が偵察し、周囲の状況を判断しており、慎重に移動をしているとのことだ。この手順で、少しずつ人数を移しながら、捜査機関の追跡から逃れていたらしい。
コツ!コツ!コツ!コツ!…
現在、修也はその下水道を走りながら、目的地に向かっていた。
また、会敵しないよう、超感覚を使いながら、慎重かつ迅速に行動していた。
コツン!
いったん止まって、現在地を確認する修也。ここまで数十分走ってきたようだが、疲れている気配を全く見せていない。
「(ここまで来たが、あの少年から聞いた情報通りならこの辺りに…あったな。)」
修也は、壁に刻まれた印をなぞる。少年によると、この印の50m先に出口があると言っていた。
出口が先にあるとわかり、修也は再び歩を進める。
コツ!コツ!コツ!コツ!コツン!
ようやくそれらしきものが目に入った。梯子だ。
「これか…」
梯子のそばに近づくと、修也は拳銃をホルスターに戻す。ここから先は、敵がいることが確定している。よって銃声を聞かれるわけにはいかないからだ。
修也は梯子を上っていき、マンホールのそばまで来ると、
コンッコンッ
二回たたいた。これが地上にいる斥候に向けての合図らしい。この音を聞いた斥候が周囲の安全を確認し、安全を判断するとたたき返すとのことだ。
修也がたたいてから少しすると、
コンコン
音が返ってきた。ここから先は、時間が勝負となる。まずは、上にいる斥候を制圧しなければならない。
修也は、合図を確認し、マンホールの蓋を動かしながら、ずらしていく。蓋が空くと、修也はすぐさま梯子を上り、地上に到達する。
出てきた修也の前には、斥候と思わしき青年が一名、こちらに後ろを向けている。どうやら、こちらを見られないように体全体で隠しているようだ。
これは好機と、修也は青年の背後を取る。青年は、こちらに振り向きながら声をかけるも、
「さぁ、お前たちが最後だ。早く蓋をもどしt!?おまえh「悪いな。」ぐっ!…」
時すでに遅く、手早く絞め落とされ気絶する。そして、これまでのように拘束し、武装解除させた。
最初の関門もあっさり片づき、修也はいよいよ、本丸へと移動していく。
先ほどみたような廃ビルが目の前にあり、今度は人の気配を多く感じた。
「では、制圧するとしよう。」
修也は目的地へと足を進める。
◆■◆■◆■◆
それからは、まさに圧倒的だった。
ビル内部へと侵入した修也は、見張りを悉く無力化し、先のビルの二人のバックにあった閃光手榴弾をメンバーが集っている部屋に投げ入れ、残党勢力がひるんでいる間に一瞬で無力化した。
カンッカンッ
『うん?…なっ!おい!敵襲d』
バー―ン!
『がーっ!目がー!』
『敵はどこだ!わからない!』
『くそ!迎撃しろ!撃てー!』
パン!パン!バババババ!バン!バン!
『おい!闇雲に撃つな!これだと味方n「まずは一人。」ぐは!』バタン!
『おっおい!敵は何処だ!「二人。」ぐほ!』ドン!
そして、閃光手榴弾の効き目が消えるころには、
「「「「…うぅ……。」」」」
EOFの残党たちは死屍累々だった。閃光手榴弾の効力が消えるわずかな時間の間に、計18名の武装したEOFメンバーを全員無力化したのだ。
しかし、どうやらこれで終いではなかったようだ。
ガタンッ!タッタッタ…
「…逃がしたか。」
すぐに追いかけたいところだが、彼らをこのままにするわけにはいかず、応援を要請したのち、拘束と武装解除を直ちに済ませ、その後あたりを見渡すと、
「ここから逃げたのか。」
どうやら、修也が入ってきたのとは別のドアがあったようだ。
「追わなくては…。」
修也は、銃を構え残党の追跡を始めた。
そして、時は冒頭へと戻る。
◆■◆■◆■◆
「しかし、仲間を見捨てて先んじて逃げるとは。リーダーとして失格ではないか?」
銃口を向けながら、修也は話す。
リーダーは苦笑交じりに答える。
「戦略的撤退ですよ。リーダーである僕が捕まれば、EOFは本当に終わる。我々の大義を叶えるためにも、この選択は正しい判断です。」
部下を見捨てたのはさも当然であるかのように話すリーダーに、修也は言い返す。
「だが、その大義もここで終わりだ。このままだとお前はここで拘束され、二度と日の目を浴びることはない。刑務所で一生を過ごすことになるだろう。」
修也の言葉に反応したのか、リーダーも聞き返す。
「このままだと?・・・あぁ、道理で武装検事であるあなたが僕を殺さないはずだ。なるほど、今回の一件を手助けした黒幕をあなたたちは知りたがっているのですね。」
「話が早いな。今回の一件で、お前たちEOFは統率された武装集団として、訓練が施されていた。それを実現した者の正体、リーダーであるお前は知っているのか?」
「えぇ、勿論・・・と言いたいところですが、残念ながらその正体はわかりません。」
「…そうか、ならば「だが、その目的は知っています。」・・・ほぉ、ぜひとも教えてもらいたいものだな。」
膠着状態が続く中、話は続いていく。
そんななか、リーダーは交渉をしかけ始める。
「ですが、その前に。今回の一件、司法取引で僕に減刑の処置を取ることを確約していただきたい。その確約が得られなければ、何も話しません。」
条件を出してくるリーダーに、修也は答える。
「あぁ、いいだろう。黒幕について有益な情報が得られるのなら、安い買い物だ。」
「では取引成立ですね。安心してください。あなたたちにとってこの情報は損ではないはずです。…あと、銃を下ろしてもらえませんか?これでは満足に話せない。」
そして、拳銃を下ろすよう催促するリーダーに、
「・・・あぁ、いいだろう。」
修也は従い、銃口を下ろした瞬間、
「!ッ」
ダァン!
突然、拳銃を取り出したリーダーが修也に発砲した。
しかし、
キィィン!!!!
「なっ!!!」
リーダーが驚愕する先にあったのは、
「隙を突こうとしたのはいい心がけだが、相手が悪かったな。」
左手でナイフを先に出している修也の姿だった。
その二人の物理的な距離は短いのにもかかわらず、しかしそこには圧倒的な差があった。
「…化け物ですね。これが武装検事ですか。」
「あぁ、これで満足か?」
「えぇ、満足です…(なるほど…これが…)。」
「?なんだ。」
「いぇ、なんでもありません。では、行きましょうか。」
何か思うことがあったのか、しばし修也を見つめていたが、拳銃を捨て、今度こそ降伏の意思を示すように両手を上げたリーダー。
それに倣い、警戒はしながらも武器をしまい拘束する修也。
これで、ようやく事件は一旦終息する……
はずだった。
◆■◆■◆■◆
リーダーを連れて行きながら、路地裏から大通りへと移動する修也。
電話で迎えの車を来させるように話しているなか、リーダーは修也に話しかけてきた。
「あぁ、すぐに車を寄こしてくれ。頼む。「ピッ」…「いいですか。」…何だ。」
リーダーは儚げな顔を浮かべながら、修也に語る。
「僕は、最初は純粋な思いでした。EOMを立ち上げたのは、我々若者も行動すれば、何かしらの変化を社会に対して促せるという思いがあったからでした。しかし、それは悉く水泡に帰しました。僕らは現実を直視して思い知らされたんです。僕たちはどうしようもなく、無力なのだと。」
「…。」
「そんな時でした。ある人物が、接触が僕たちにこんなことも持ち掛けたのです。「私が、君たちの望みを叶えるのに必要な力をあげよう。」と。先ほど話したように、その正体はわかりません。しかし、その人は僕らにあらゆる支援を施し、結果、僕らは力を手に入れることができたのです。」
「利用されているとは、考えはしなかったのか。」
修也の問いに、リーダーは答える。
「勿論考えました。ですが、結果的に僕らはその甘美な果実に飛びつき、もう後戻りはできない段階まで進みました。今にして思えば、その人物が接触してきた時点で僕たちの運命は決定付けられたのでしょうが、どちらにせよ、僕らの考えは変わらなかったでしょう。」
「…そうか。接触してきたとき、そいつは顔をさらしたのか?それとも、直接会っていないのか?」
「後者が正解です。電話以外の接触手段はなく、その声も変声機を使用していて、性別すらわからないまま、最後までその人物とは一度も会ったことがありません。」
どうやら、事件の裏にいる協力者は、その正体を知られないよう徹底していたようだ。
その後、訓練施設や、情報提供の方法など、いくつか質問したが確信に迫れるものはなかった。訓練施設については場所を聞いたものの、この分だとその施設が残っているのか疑わしいものだ。
流れに乗ってきたからか、修也は思わず核心について問いただそうとする。
「そうか、ではそいつの目的は…いや、これは後々の話だったな。忘れてくれ。」
「……まぁ、本来なら司法取引がなされるまで話すべきではないのですが…いいでしょう。あなたになら、話しても問題ないでしょう。実は、一度その人物に聞いたことがあるんです。一体どのような目的で、僕らに手を貸しているのか。」
リーダーは話し始める。ここまで話している間にいつのまにか大通りが目の前に見えてきていた。それでも、彼は話し続ける。
「変声機越しでしたが、今まで話してきて、これは本心だと僕でもわかったんです。その時、その人物が答えたことは…
そして、二人が大通りへ出てきて立ち止まった時、
リーダーに赤いレーザーが照射され、修也がそれを見た瞬間、
「!?伏せろぉ!」
「え?」
ダァァン!
銃声が鳴り響いた。
「かはっ!」
「くそっ!」
リーダーは倒れこみ、修也はすぐさま駆け寄り、近くの物陰に引きずりながら避難する。
狙撃されたリーダーはかなりの重傷で危険な状態だ。
「おい!しっかりしろ!死ぬな!」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
修也は、止血しようと出血個所を抑えるが、血が止まる様子はない。
また、リーダーには意識はあるものの、しゃべれそうにない。
「くっ!「ピピッピ」……救急車を一台寄こしてくれ!大至急だ!撃たれて重傷を負っている!」
「はぁ、はぁ、……。」スッ
その時、修也の様子を見ていたリーダーは、自身の血でぬれた手を彼に伸ばし、スーツの裾を掴んだ。
突然の行動に、修也は携帯電話から耳を離し、声をかける。
「どうした。今すぐ救急車を呼ぶからじっとしろ。」
「……。」ギュッ!
答える余力がないのか、言葉を発さないが、ただ掴んだ裾を強く握り、修也に目を向けて何かを伝えようとしていた。
しかし、
「……」ズルッ
彼の手は力を失い、そのまま地面に落下した。
同時に、修也は彼の脈を図るが、
「…。」
深夜、人通りのない寂しい道端で、EOJのリーダーは、若くしてその生涯を終え、それを見届けた修也は、サイレンの音が近づいてくるのを只聞くのみだった。
そのスーツの裾に、しわくちゃに掴まれた血の跡を残しながら。
◆■◆■◆■◆
夜が明け、場所は都内中心部にある高級ホテルのラウンジに移る。
その窓際の席で、EOJの事件に関する一面記事が載った新聞を読んでいる人物がいた。
『EOJ残党摘発、主犯格の●▲は死亡。武検局の大手柄。』
その人物は、一通り読んだのか、いったん新聞をテーブルに置き、あった紅茶を飲みながら、窓の外を見つめる。
それから少しして、携帯を取り出し、どこかに電話を掛けた。三度コール音が鳴り、電話がつながると、その人物は話し始めた。
「やぁ、新聞は読んだよ。ご苦労様。まぁ彼が死んだのは武検局の手柄ということになっているけど、全く問題ない。…あぁ、結果は上々だよ。死んだ彼を含め、EOJのメンバーは最後までよい働きをしてくれた。支援した甲斐があったものだよ。では、あとは手筈通りに片づけておいてくれ。よろしく頼んだよ。「ピッ」…。」
その人物は、テーブルにおいてある新聞に目を向ける。
「(しかし、急ごしらえとはいえ、私が仕込んだ駒がいとも容易く落とされるとは。私が考えていた以上に、君は素晴らしい演技を披露してくれた。なるほど我々に喰らいつこうとするだけはある。…ふふふ、ますます興味深い。さぁ、君は私を楽しませてくれるのだろうか。武装検事の、神谷修也君?)」
そして、その人物は、愉悦に浸りながら優雅に紅茶を味わう。
まるで、新しい玩具が手に入った時のような、無邪気な笑みを浮かべながら。
EOJが一連の事件を起こす前日の夜、リーダーと支援者はこのような会話をしていた。
『…そういえば、一つ聞きたいことがあるんですが…』
『何かな?』
『あなたが僕らに手を貸す目的が知りたい。』
『それは勿論、君たちの理念に共感して『嘘ではなく本心で教えていただきたい。』…ふむ、まぁ構わないよ。私の目的、それは快楽だ。だが、これはただの快楽ではない。それは、私の生み出す至高の劇でしか得られない唯一無二の快楽なのであり、この快楽でしか、私は十全に心を満たされないのだよ。しかし、至高の劇場には、それに相応しい至高の演者が必要になる。今回、私が君たちに手を貸すのは、その至高の演者になりうる逸材を見極めるためでしかない。これがすべてだ。満足したかな?』
『……つまり、僕らはあなたの生み出す劇の端役ですらないというわけだ。…では、その至高の演者になりうる逸材とは一体誰なのです?』
『誰かは、君も会えば自ずとわかる。だが、名前だけは教えてあげよう。その人物の名は……』
◆■◆■◆■◆
そして、この事件が一旦終息してから丁度1週間後、修也は謎の男と接触し、事態は急転する。それが修也に何をもたらすのか、今はまだ誰も知らない。
戦闘シーンが難しすぎる……。
さて、いかにも本編に絡んできそうな人物が出てきましたね…。その正体は一体?
前書きにも書いた通り、閑話は次回投稿します。次回の更新も生暖かい目でご覧ください。