東方絆紡録   作:空亡之尊

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序章『面倒事が嫌いな人間が幻想入り』
幻想入り


神無 悠月side

 

 

「ここか……」

 

 

石造りの階段を見上げながらそう呟いた。

階段の傍の立札には『××神社』と夜の暗さやそれ自体が薄汚れている所為でうまく読めない。

一応、神社と書かれているし、階段の先には大きな鳥居も見える。ここで間違いないだろう。

 

 

「行くか」

 

 

俺は黙々と階段を登り始めた。

今は草木も眠る丑三つ時、当然のことながら人の気配など一切しない。

ただ、階段を登る足音だけが静かな夜に響くだけだった。

 

登り終わって初めに目にしたものはひどく寂れた神社だった。

境内の石畳のヒビからは雑草が伸び切っており、本殿の方も柱が腐っており廃墟と化している。

まともに残っているモノといえば、錆びた鈴の下に置いてある賽銭箱だけだ。

 

 

『なんだか、嫌な感じがします』

 

 

スマホの中から少女の怖気づいた声が聞こえた。

俺はそれに目を向けると、そこには怯えた感じで神社を見つめている少女の姿があった。

黒髪のロングヘアー、黒いワンピースに黒いパーカー、頭からはアホ毛が飛び出している三頭身のデフォルメされた少女だ。

 

 

「なんだ、もしかして怖いのか?」

『そ、そんなことありません‼ ただ嫌な感じがすると言っただけです』

「はいはい、そうですね」

 

 

スマホの中の少女は腕とアホ毛をブンブン振り回しながら必死に抗議している。

彼女の名前は夢燈 月美、簡潔に説明すると先祖代々伝わる刀が擬人化してしまいそれがなぜか俺のスマホに住み着いている。自分で説明しても分からない。

まあ、可愛いAIという認識で大丈夫だと思う。……可愛いいは余計だったかな。

 

 

『しかし、なんでこんな所に来たんですか?』

「言っただろ、今回の『神隠し事件』のヒントがここに隠されてるって」

 

 

俺はそう言いながら事のあらましを思い出す。

事の発端は天上街で起きた連続失踪事件が始まりだった。始めは公園で遊んでいた男の子が行方不明となり、その次の日には会社員の女性、その次は学園の男子生徒と、この一週間で七人もの失踪者が続出している。警察も血眼になって失踪者の探索を続けているが、未だに進展はないようだ。

 

しかし、こういう不可思議な事件に首を突っ込む“あの人”がこの事件の異常さに気付き、その知り合いの中でも一番暇をしてそうな俺にこの事件の調査を頼んできた。

これでも京都で大学生やってるから暇ではないのだが。

そんなこんなで色々な所を調べた結果、この神社が一応怪しいという事で現在に至るわけだ。

 

 

「この近辺ではごく稀に行方不明者が出たりしてたそうだからな」

『それだったらもっと大事になってる筈ですけど』

「それがな、その行方不明になったほとんどが一日も経たずに戻ってきてんだよ」

『ああ、だからそんなに有名な話でもないんですね』

「そういうことだな。案外、この事件もすぐに解決しそうだけどな」

『でもこの神社、なんだか変な雰囲気がします』

「具体的には?」

『そうですね、まるで夢と現が境界線が曖昧になってるような、そんな感じです』

「夢と現ね……」

 

 

俺は神社の本殿を眺めていると、さっきまで無かった人の気配に気付いた。

 

 

「――盗み聞きとは趣味が悪いな」

 

 

ゆっくりと振り向きながらそう呟くと俺は鳥居の上を見上げた。

月明かりに照らされる綺麗な白髪に血の様な紅い瞳、黒いロングスカートに白いパーカー、腰には尻尾のように長く紅いリボンを巻いたアルビノの少女が月を背に座っていた。

少女は俺を見ると不敵に笑い、その口を開いた。

 

 

「盗み聞きとは失礼な言い方ね」

「じゃあどう言えばいい? 演技過剰のヤンデレ姫」

「その異名はやめてほしいわね。今はそこまで病んでないわ」

「つまり前までは病んでいたという事を認めるのか?」

「……そんな事より、貴方も神隠しを追ってるのね」

「話を逸らしたな…………その口調だとお前は何か知ってるみたいだな」

「さあ? どうかしらね」

『相変わらず芝居じみた胡散臭い物言いですね』

「あら、これは大人の余裕ってものよ。お嬢ちゃん」

『お嬢ちゃんではありません‼ 月美です、夢燈月美です‼』

「まあ、そんな事はどうでもいいわ」

 

 

彼女、明星 美羽は鳥居から飛び降りるとふわりと着地した。

彼女の手元を見ると一振りの刀と黒いカードホルダーが握られている。

それに視線が向いていることを察した彼女は口元をニヤッとさせ、刀と黒いカードホルダーを俺の方へ無造作に投げた。俺が二つを受け取ると彼女はこう言った。

 

 

「貴方への贈り物よ、ありがたく受け取っておきなさい」

「贈り物? 誰からだよ」

「私の親愛なるご主人様から。ああ、ちなみに旦那様はもちろんユウキよ♪」

「別にそこにはツッコミはしない――ッ‼」

 

 

その時、俺の足元から地面の感触が消えた。

反応が遅れた俺は重力に沿って下へと落ちるが、咄嗟に地面の端を掴んで落下を防いだ。その際に刀とカードホルダーを手放してしまった。

 

落ちたモノを視ようと下をの方へと視線を向けた。

そこには無限の闇と無数の眼が広がっている異様な光景があった。その眼はじっとこちらを見つめ、まるでこっち側への興味を示しているようにも見える。

そのままぶら下がっていると美羽は覗き込むようにしゃがみこんだ。

 

 

『ユウキ‼ 大丈夫ですか』

「これは……‼」

「さすがユウキ、そう簡単に落ちてくれないわね」

「おい美羽、“これ”はどういうことだ!?」

「“これ”ってどういう意味かしら? 面倒事? それともその“ハザマ”の事?」

「どっちもに決まってるだろ‼」

 

 

とぼけている美羽に向かって怒鳴った。

それ見た彼女は再び口元をニヤッとさせると、とある言葉を口ずさんだ。

 

 

「幻想郷はすべてを受け入れる。それはそれは滑稽な話よ」

「それは……‼」

「それでは、幻想郷に一名様ご案内いたしま~す」

「ちょ……‼」

『ユウキ‼』

 

 

飛び切りの笑顔で美羽はそう告げると思い切り俺の手を蹴り飛ばした。

落ちていく俺が最後に見たモノは心底楽しそうに笑う彼女の笑顔だった。

 

 

 

 

 

明星美羽side

 

 

落ちていくユウキを笑顔で見送ると、私は“コレ”を閉じた。

いつ見てもこれには慣れない。これの中では上下左右や方向バランスが狂ってしまい、たまに酔いそうになる。これで酔ってしまった場合、どう呼ぶのだろう……………………“ハザマ”酔い?

しかし、無限の貯蔵性と一瞬で好きな場所に移動できるという利点があるからか、あまり手放せない代物になっている。

 

 

「今度、“ハザマ”の中でもリフォームしてみようかしら?」

「あまり好き勝手に使ってはいけませんよ、美羽」

 

 

真剣に考えていると後ろから聞き慣れた声が聞こえた。

振り向くとそこには白いパーカーを羽織った黒髪の少年が立っていた。

彼は軽く溜息を吐くと私の頭を叩いた。それも思いきり。

 

 

「いたっ‼ 何するんですか、美命様」

「元々“それ”は私の友人から預かったモノです。勝手に模様替えされては困りますよ」

「でも、この中って不気味じゃないですか」

「森羅万象、モノが形を成すにはそれ相応の理由があるからです。それを理解しなさい」

「なんか、喋り方が義乃ちゃんに似て堅苦しいですね」

「そうですか、反省しませんか……」

 

 

美命様が見惚れるほどの笑顔で拳を思い切り握りしめている。

顔は笑えど心の中では笑っていないご様子、久しぶりに見た気がしました。

 

 

「じょ、冗談ですよ。それより、これからどうします?」

「まったく…………これからアナタには幻想郷に行ってもらいます」

「生徒会メンバーの方は順調なんですか?」

「大丈夫です。今のところは彼らの監視をお願いします」

「わかりました」

 

 

頭を下げお辞儀すると、私は再びスキマを開いた。

相も変わらず、中では不気味な目が私の方をじっと見つめている。

 

 

「うわ……」

「……(すっ)」

「わ、わかりましたから。その無言で銃を構えるのだけは勘弁してください‼」

「なら、さっさと行ってください。これから深夜アニメを見るので」

「はいはい。それでは、行ってきま~す」

 

 

“ハザマ”への嫌悪感と自分の主からの期待(?)を抱えながら私は飛び込んだ。

 

 

「まったく、面倒事を増やしてくれるわね、私の旦那様は」

 

 

 

 

 

 




空亡「どうも、今回からあとがきで茶番させていただきます。空亡之尊です」
悠月「駄作者の茶番に付き合わされる羽目となった神無悠月だ」
空亡「ここでは話の詳しい点や適度なおふざけをやっていこうと思っています」
悠月「こんなのを見て少しでも面白いと思ってくれるのなら幸いだと思っている」
空亡「実際、後書きなしだと文章が寂しんですよね」
悠月「だったら普通のあとがきで充分だろ」
空亡「いえ、どうせなら茶番やったほうが面白いんじゃないかなと思って」
悠月「いや、実際どうでもいいから、俺の今後を教えろよ」
空亡「次回まで待ってください。僕だって忙しんですから」
悠月「こんな小説書くぐらいの暇はあるだろ」
空亡「………では皆様、今後とも東方絆紡録をよろしくお願いします」
悠月「逃げやがった」
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